C.T.B 揺り籠から戦場まで ―老人徴兵制の未来。武器は阿波踊り!?― 作:電機羊
【時代】2136年(送信側)
【送信枠】sideA(比較的安全)
【位置】GPS:取得不能(妨害)
【ノードID】torrent-1 人間交差点・課長 前田吾郎
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(送信開始)
[sideA]
(Jun)「ここからは、この時代の人々の暮らしを、定年退職を翌年に控えたとある人物の人生から眺めていく。
sample:前田 吾郎(まえだ ごろう)
age:64
family:妻1、子1
region:東京都アンダーカツシカ区…。」
* * * *
「…課長!」
「…前田課長!!」
(前田)「ん? あ、あぁ…トキタ君か。どうした?」
(常田)「どうしたじゃないですよ〜。最近よくボーっとしてますけど、大丈夫っスか?
あの、例の三ツ橋工房さんの企画書って、課長まだ目を通してくれてませんよね?」
(前田)「ありゃあ! しまった!! ごめんトキタ君。夕方までに終わらすわ。もうちょっと待ってて!」
(常田)「もお、頼みますよぉ…
まぁ前田課長は俺の心のGrandpaなんで(笑)。別にいいですけどね!でも来年定年ですよね!?
前田課長にちゃんと軍人が務まるんスかね〜(笑)。」
(前田)「…トキタ君(苦笑)。君の“ジジ”ってのはちょっと酷くないかい?
でも…僕は軍には入隊しないつもりなんだ。性格的にどうも…ね。」
(常田)「ええ!? マジっスか? いやいや!!
ここの退職金なんて『スズメノナミダ』みたいなもんって、前に課長言ってませんでしたっけ?
…一体どうするんすか? 民間の再就職先なんて、もうコネでもない限り皆無っスよ。」
(前田)「うーむ…それはそうなんだけどね…。でも僕にはドンパチの世界は、やっぱり向いてない気がするんだよなぁ…。」
(常田)「またそんな事言って! 奥さんはどうするんスか!?
ここは一発ビシッと入隊して、退役後に絢爛優美に余生を送りましょうよ!」
(前田)「ビシッと、かぁ…。」
(常田)「そうっス! 一昨年定年になった二課の山中係長、いたでしょ?
あの人いま米軍との合同作戦中で、南イエメンでバリバリ活躍してるみたいですよ!
この間も反政府軍のトラック5台爆破したって、TikTokにアップしてました。
いまやイエメンで“オニノヤマナカ”といえば有名だそうですよ!」
(前田)「―そうなんだ。…あの山中さんがなぁ。ブービートラップの名手だって?
うちではいつでもコピー機の前にいる“コピーのヤマナカ”だったのに。」
(常田)「―少しは知ってるんですね。そうですよ! めっちゃ頑張ってるんです。
あ、あと去年退職したシルバーの小畑さんは、フランス外人部隊とのチームで、検挙100%不可能って言われてたルーマニアンマフィアの大物の捕獲に成功したらしいですよ。
単独潜入中の小畑さんが撮った写真が、逮捕の決定打になったようです。」
(前田)「……小畑さんって昔っからコアな盗撮マニアだったんだよなぁ。
一度、女子大生に訴えられかけて、200万円払って和解した事もあったっけ…。」
(常田)「い、いま輝いてるからいいんスよ!
課長もそんな皮肉ばっか言ってないで、一旗上げてくださいね! 応援してますから。
あ、じゃ、その前に今日中にその企画書頼んます!(笑)」
(前田)「あぁ。またね、トキタ君。」
…まったく、お節介な奴だなぁ。
でもほんとに、俺の孫でもおかしくない歳なのに、今の子はちょっと…しっかりし過ぎだよなぁ。
若者ってやっぱりもっと…あ! いかんいかん。企画書に目を通さないと。
うわ…何ページあるんだぁ、これ…。
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※ 一年後 ※
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(常田)「お疲れ様でした! 課長。」
(社員A)「お元気で。前田さん!」
(社員B)「寂しくなります(泣)。私が新入社員の時から、いつも色々……。」
(前田)「いや〜。みんな、ありがとう。本当に僕は幸せ者だよ。
プロジェクトの成功を一緒に見られないのは残念だけど……みんなで頑張って成功させて下さい。」
(常田)「わかってますって。(泣)
わかってますって、課長。そんなことより今後の予定はどうなんスか?」
(社員A)「やっぱり新日本軍、入隊ですか?」
(社員B)「いまはもう、大した資格のない定年退職者の働き口なんてありませんしね。」
(社員A)「課長なら薄くてどこにでもハマりそうだから、再就職先もありそう。」
(社員B)「まさか…無職ですか(笑)? 前田課長。」
(前田)「…参ったな。君たち言いたいこと言ってくれるね(苦笑)。
僕は健康で、どうやら長生きしそうだから(笑)、寿司職人見習いにでもなろうかと思ってる。
自分より若いオヤジにドヤされるだろうけど、なに、君たちの相手をしてると思ってればいいさ(笑)。」
(常田)「酷いですよ〜課長!!…(涙)でも応援しますから。 しっかり頑張って下さいね!」
(前田)「ありがとう! みんな。本当にありがとう…ありがとう…。」
⸻
※ 半年後 ※
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(掃除機の音)ヴォーーン
(妻)「…あなた。お父さん。ちょっと掃除の邪魔よ。そろそろコタツから出て。」
(前田)「うーむ…ここが一番居心地が良いのに。」
(妻)「もう…面接を2つや3つ断られたぐらいで、やる気をなくされちゃ困るわよ。
私のパートがなかったら、どうする気だったの?
…やっぱり軍隊に入れば? 内勤になるかもしれないし。」
(前田)「うーん。でも…なぁ…
いや…まぁ就職先をこれ以上探すのも面倒だし、ちょっと話だけでも聞いてくるか。」
(妻)「嬉しい!(笑)やっとやる気になってくれたのね。
ほら、従軍中はJRフリーパスが貰えるって言うじゃない? 休日にはまた昔みたいに旅行に行けるわね。」
(前田)「まったく、かあちゃんはいい気なもんだよなぁ。
俺が死んだらどうするの? 向かいの安川さんとこみたいに。」
(妻)「だって安川さんは競輪にハマって、物凄い額の借金があったのよ?
借金を返すための手当目当てで、毎回最前線を希望してたんですって。
そんな事してたら、そりゃいつかは弾に当たっちゃうわよ。
お父さんみたいな“戦う気のない人”は、出撃なんてさせてもらえないわよ。きっと。」
(前田)「俺に戦う意志がないだって?…いや、まぁ、そうだけど…。
とりあえず説明会、毎日やってるみたいだし。お昼食べたら行ってくるわ。」
――こうしてマエダは、説明会へ出掛けるためにサンダルをつっかけ、
何となくそのまま入隊してしまった。
―マエダの第二の人生が始まる。
(送信終了まで1分)
sideB]
世界中で行われているブートキャンプ―老人への過剰なトレーニングと反老化薬剤のオーバードーズ、遺伝子組換え施術の結末…彼らはとうとう『寿 命』という曖昧な概念を超越した死ぬような訓練と忍耐を経て、
ついに『不老』を勝ち取った。
事故などの不慮の出来事にさえ遭わなければ、寿命は尽きず、永遠に生は続くのだ。 …しかしその結果が、『揺り籠から戦場まで』を“終わることなく繋ぐ”この社会を加速させてしまうことになった。
65歳以上の人類は皆戦う。
戦死しなければ結局は老齢人口は増え続け、国は困窮し始める。
そうならないように退役は強制的に延長される。
その結果彼ら<br>
[WARNING]
逆探知のリスクが増大しています。
現在のノードを破棄し、座標を移動します。
次の接続予定地点:東京都 豊島警戒区域内
送信予定ファイル:進め一億!青老年錬成所
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