C.T.B 揺り籠から戦場まで ―老人徴兵制の未来。武器は阿波踊り!?―   作:電機羊

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【時代】2136年(送信側)
【送信枠】sideA(比較的安全)
【位置】GPS:取得不能(妨害)
【ノードID】torrent-3 暴力革命
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(送信開始)



【ノードID】torrent-3 暴力革命

[sideA]

 

1900(19時00分)

place:巣鴨練兵場 兵舎内

今は練兵たちの唯一の自由時間である。

いつも通り前田吾郎は、妻からのメールをチェックしていた。

 

(前田)「なに!? かあちゃん、また家の改築したのか!?

あちゃぁ…またローンの上乗せ…。もうこれ以上は…ブルッ(汗)くわばらくわばら……。」

 

ゴッ!!

(前田)「あいたぁ!!」

 

マエダの頭に何かが当たった。

うつ伏せのベッドから起き上がり、後ろを振り返る。

(前田)「な、何するんですか!?」

 

…そこには同僚で、ガタイの良い大男が立っていた。

靴下に錘のようなもの(大きさからたぶん中身は石鹸だろう。)を入れ、

それをぐるぐると振り回している。

 

大男はマエダを睨み付け、低く言った。

(靴下男)「……おい、このタコ野郎。

俺らはお前さんのせいで、新日本軍始まって以来の延長補習記録を喰らってんだよ……。

俺ぁこないだなんか、孫との“HR(ハイパー・リアリティ)面談”の時間が、お前の連帯責任のお陰で潰れちまったんだ。

…なぁ前田さんよ。いつまでも俺たちの足を引っ張ってんじゃねぇよ

お前が言わないなら、俺が言わせてやるよ―

『私は新日本軍を除隊します』ってな!!」

 

 

そして大男は靴下を力いっぱいマエダめがけて振り下ろした。

 

それは目に当たり、マエダは痛みに悶えながら言う。

(前田)「すみません! すみませんでした。私、もっと努力しますから!!」

 

(靴下男)「うるせぇや! 早く辞めちまえ!!」

 

マエダはベッドから通路へ逃げ出し、赤く腫れた片目を押さえながら言った。

(前田)「わ、私も私なりに頑張っているんです。…が、迷惑をかけてすみませんでした…お孫さんとの事。…私たちは明日の訓練でどうなるかわからない高齢者です…お気持ちはお察しします。

でも私にも、愛する家内がいるんです!! …皆さんもそうでしょ!?

…どうか…私も仲間と認めてください!!」

 

心からの懇願だった。

靴下を振り回す大男‥靴下男は、いや、周りにいた兵士すべてが一時マエダの言葉に聞き入った。

…しかし日々の訓練の過酷さとペナルティの残酷さが、彼らを狂気へ引き戻した。

 

(兵士A)「ちょ、調子のいい事言うんじゃねぇ!」

(兵士B)「お前のせいで今日もズタボロだ!!」

(兵士C)「肩がもう上がらないんだぞ!」

(兵士たち)「―殺せ! 殺せ!! 殺せ!!」

 

(靴下男)「お、お前だけはなぁぁぁ!」

煽られた靴下男はマエダの頭上めがけて、靴下を力いっぱい振り下ろした。

 

(前田)「やめて…下さい!!」

 

その瞬間、マエダの身体が勝手に動いた。

半身で攻撃をかわし、靴下を突き上げた右腕に絡ませ、もう一方の手刀にした左手の爪先を男の顎下に突き付けた。

 

…あっという間の出来事だった。

皆、マエダの頭が割られる光景を想像していた。

なので今見た事の処理が追い付かない。

 

(靴下男)「ち……くしょうっ!!」

靴下男は一歩下がり、もう一度殴りかかろうとした。

が、それを別の誰かが静止した。

 

(鬼若)「待て。……私が相手する。」

 

兵士たちの中から出てきたのは、一見して普通の男だった。

…が、何と言うか、彼の周りには一切の“空気”を感じなかった。

そうだ。「真空男」と呼ぼう。マエダは怯えながらどうでもいいことを心の中で決めた。

 

真空男はうっすらと笑って言う。

(鬼若)「前田さん……でしたっけ? 本当に何なんですか?

……いや、貴方は一体……“誰”なんですか……。」

 

マエダは怯えた。

たまたま身体が勝手に動いて、うまくいっただけなのに。

―なんだか物凄い人に、物凄い勘違いをされている。

 

(前田)「あ、あの、すみません。いや私はね、みんな同世代というかね、その…揉めたくはないんですよ。」

 

真空男はイラッとした顔を隠そうとせずに言った。

(鬼若)「…そうじゃない…そういう事じゃないでしょ…だから…あぁ…貴方は……本当は一体、いったい何流なんでしょうか!?」

言うが早いか、真空男は軍靴のいちばん硬い部分――すなわち踵底で、人の弱点である左膝を完璧に踏み込んだ。

 

……かに見えた次の瞬間。

マエダは左膝を軽く曲げて攻撃をいなし、半拍で左の掌底を、真空男の顎下で寸止めした。

 

バンッ!!

 

……兵舎の扉が開いた音だった。

 

 

2020(20時20分)

 

(教官)「やめーい!! 貴様ら何をやっておるか!!」

教官が入ってきた。かなり激怒している。

 

(教官)「貴様たちの自由時間はすでに終わっている!

すなわち今のお前たちは新日本国軍の所有物である!!

お前らに人権は認めない!! さっさとベッドに――」

 

そのとき、多くの兵士に囲まれた真空男とマエダが視界に入った。

 

(教官)「貴様ら…なんだ。決闘か?」

興味深げに言う。

 

(教官)「……鬼若海衆(オニワカ・カイシュウ)。

お前みたいな朝倉流武道家が、なぜこんなタコ助を相手しているのだ?」

 

(鬼若)「オヤジ(教官)…すみません。それは…。」

 

その時、間に割るように靴下男が入って来て土下座をした。

(靴下男)「すみませんでした! オヤジ!! 俺が始めたんです!!」

 

恐怖で汗まみれの靴下男が言う。

(靴下男)「俺が…こいつ、前田のせいでペナルティ喰らったってイチャモン付けて喧嘩を売って…だから鬼若さんは関係ないんです。俺のせいなんです!!」

 

―教官はふと閃いた。

ふむ、これは好都合だ。

誰かが公式にマエダをブチのめせば、皆の日頃の鬱憤を晴らせ、隊の規律が戻る。

そして、自身が急所を打ちそこねてしまった「目障りな出来損ないの新兵」”も消せる。

 

しばらくの沈黙の後、教官は言った。

(教官)「良かろう!正直で何よりだ。

……では、1週間後の格闘技の授業で公式に前田と鬼若を戦わせる。

武士道の復興により決闘が法で認められているのは、皆、知っての通りだな?

その決闘の栄誉は――

前田が勝てば、皆、すべてを忘れ、前田を仲間として認める事!

しかし鬼若が勝った時は――」

 

教官はマエダの方を向き直した。

(教官)「…なぁ前田よ…これだけお前は皆に疎んじられ、迷惑をかけているんだ。

どうすればいいのかは、新日本男児である貴様にはわかるな?」

 

マエダは涙をこらえながら言った。

(前田)「はい……。私……除隊します。」

 

(送信終了まで1分)




[sideB]

その気付きはほぼ同時に、多方面で始まった。
世界中の老人達は、戦う相手は他国ではなく自国の政府だと。

彼らにとって何よりまず重要なのは、C.T.B法を潰すことだ。

覚醒し団結した彼らの集中力は凄まじかった。
年の功から、経験と知識は政府側を軽く凌駕していたので、WEB上のデータベースへのアクセスも65歳以上のみ((65禁))とし、あらゆる情報を独占。
そして時の流れも味方した。彼らには『寿命』が存在せず、出生率は減っても、若者はいずれ年を取り、彼らの一員になっていく。仲間は自然と増えた。

…さらに、実際に内戦が起きたらやたらと強かった。
長年の経験がさまざまな戦略を生み出し、また実戦のプロを日を重ねるごとに生産していった。

こうして―もともと出生率が低く平均年齢が高い国『日 本』は、高齢者側が勝利し、2000年以上続いた国の象徴 「天 皇」とその周辺の制度は消え去った。

その後、新たな王政を施き、その第一の王座には―
先の世界大戦で活躍をし今回の内戦の英雄だった

鬼若 海衆(オニワカ カイシュウ) が選ばれたのだ。

(……通信品質低下)
(パケットロス率:51%)
(再送要求中……)

Next Packet: Whole new world
Est. Time: Unkonwn

(接続待機中……)
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