C.T.B 揺り籠から戦場まで ―老人徴兵制の未来。武器は阿波踊り!?― 作:電機羊
【時代】2136年(送信側)
【送信枠】sideA(比較的安全)
【位置】GPS:取得不能(妨害)
【ノードID】torrent-6 暁ーあかつきー
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(送信開始)
[sideA]
0930(9時30分)
巣鴨練兵場 兵舎裏にて
決闘当日の朝、マエダたち(前田/佐藤/木戸)と対戦相手(鬼若)は午前の訓練を免除された。
1200から始まる決闘の準備のためである。
なお本日、佐藤と木戸はマエダのセコンドを許可された。
鬼若はキャンプ内を散歩したり、コンクリート塀を殴り続けたりと、彼なりの決闘前の集中力を上げていた。
ーマエダたち。
(佐藤)「ここ、ここだよ! 押すの。」
(木戸)「かなり急ごしらえだったからのぉ。」
(前田)「え!? なに? イヤホンこれ…うるさ!! 耳イタ〜。」
(木戸)「わしが調整しよるきに! 勝手に触るな!!」
(佐藤)「…ダメだ、もう腹減った。今から昼食って来ていいかい?」
(前田)「サトちゃん! ちゃんとしてよ〜。俺、ホントに死んじゃうよ!?」
(木戸)「でも、あんた“だけ”は骨になっても四国には絶対入れんきな!!
…あ〜いや教練場で死んだ練兵は政府は事実隠蔽で、遺体ば隅田川に流すっちよ。」
(前田)「やめてよ〜。ちょ、考えたくもない。サトちゃんも木戸さんになんか言って〜。」
(佐藤)「俺はそれを食った魚を店で売って線香代を……。」
(前田)「も〜〜〜〜!」
(木戸&佐藤)「わはははは!!」
(鬼若)「余裕ですね…。なんだか楽しそう。」
いつの間にかオニワカが立っていた。
マエダが飛び起きた。
(前田)「わわ。いつからいらっしゃったんですか!? 鬼若さん!ほうじ茶でもいかがですか? ティーバッグですが……。」
(鬼若)「いえ、お構いなく。で…いかがですか?
あと数時間でこの兵舎…いえ、この世を去るお気持ちは?」
チームマエダは鎮まり返った。
―鬼若は続けた。
(鬼若)「…冗談ですよ。私はあなたに“望み”を土産に来たのです。
…もしあなたが今、棄権すれば命だけは助けます。
代償として、今の仲間と同僚すべての嘲りと罵りを受けますが、
それが何だって言うんです? どうせ皆すぐに忘れます。
皆、戦争に忙しいのです。
いずれはここにいるほとんど全員が、虫ケラのように意味もなく死んでいく事でしょう。
そんな彼らに、あなたがプライドを張る必要はない。
いいですか? 私は…武術を体得した“あなた”を買ってるんです。
他の無能な人たちと違ってね。
ここの兵士なんて無価値で、
『野獣の本能の上に理性の皮を被せてある、ただのソーセージ』みたいなもんです(笑)。
あなたが本気を出せば、私以外の同期全員があなたに負ける。
彼らは、そんな現実を思いつくことすらないでしょう。
だ・か・ら・私は今、こうして話しているんです。
私やあなたは……価値のある人間だ。命を無駄にせず、
次の世代に、未来に、
この価値ある命を繋ごうではありませんか!!」
(佐藤)「…クッ。」
(木戸)「…あんた…友達おらんじゃろ。」
マエダは少し間を置いて、応えた。
(前田)「鬼若さん。…私はね、こんなに悲しい言葉を聞いたのは初めてです、
こんなに悔しい想いを持ったのも初めてで…。
……こんなに……こんなに怒った事もありません!!
鬼若さん!
許、許しませんよ!!!
も、もう、ほうじ茶返して下さい。帰って!
言葉だけで悔しい。涙が出る。
鬼若さん、あなたは本当に、
『可哀想』
なんですね。」
―その言葉を聞いた瞬間、オニワカは逆上し、吾郎めがけて全身の力で右拳を放った。
…が、その前に彼を羽交締めにして吾郎から引き離す者がいた。
(檜山)「鬼若さん、いけない! もう少し待つんだ!! 今やったらすべてを失う!!」
檜山だった。オニワカが何か起こさないか、後を付けて来ていたのだ。
(檜山)「何やってんだ、あんた…そんな頭に血が昇る漢じゃないだろ?(苦笑)
…あと2時間だよ、鬼若さん。そうしたら何やってもいいんだから。
一緒に飯食って、スパーリングして、時間潰そう。な。」
徐々に、オニワカという野獣に“理性の皮”が戻っていくのがわかった。
(鬼若)「あぁ。そうですね……すみませんでした、檜山君。」
オニワカは目を閉じて完全な呼吸を取り戻した。
(鬼若)「…では、前田さん、私は本当に現れなくても、何とも…思いませんよ。」
オニワカと檜山は食堂へ歩いて行った。
マエダはまだ興奮していた。
今起きたことを整理しようとしているが、脳の処理が追いつかない。
不意に木戸がマエダの額をチョップした。
(前田)「あいた! 何するんですか!! 木戸さん。」
(木戸)「阿呆! コントロールじゃ! 気を鎮めぃ。そんな顔で踊れるか?
漫画みたいに怒ったら強くなれるんか?
……なぁ。お前さんがあいつに“笑顔で”勝ったら、
それが本物の勝利やと思わんか?」
マエダから毒気が退いた。
(前田)「…ありがとう、木戸さん。その通りです。…感謝するがで。」
(木戸)「こら! 薄情もんが気安う四国の言葉使うな。」
(前田)「(泣)木戸さん、そりゃあんまりだぁ。」
(前田・木戸・佐藤)「わはははは」
そして1200。
時は満ちた。
(送信終了まで1分)
[sideB]
現在アメリカやヨーロッパ諸国は今でも昔のように老若男女が入り混じって生活している。
しかし、郊外を改造車で暴走する老人グループ、街中での若者によるいわゆる『オヤジ狩り』が横行し、決して上手くいっているとは言い難い。
"シルバニア王国"のスパイの巣窟にもなっている。彼らの各大陸での活動は有能な高齢者を拉致し、同国へ送る為と、先の大戦で故郷へ帰れなくなった元新日本兵を探し出しシルバニアに帰化させる事であった。
今日、いつもの様に元新日本軍兵士が1名発見された。
彼はC.T.B時代の伝説の兵士だったが、ボリビアでの作戦中に彼の小隊は全滅し、死亡したと思われていた。
が、実は敵の攻撃から逃れてジャングルに迷い込み身を隠していたのだった。
そして長い時間が流れた。
この間にC.T.Bが廃止され、終戦を迎え世界のパワーバランスは”老人対若者”にチェンジし、日本は消えた。
ブラジルの奥地で発見されたその元新日本軍兵士もその事実を聞いた。
veteran:前田 吾郎(まえだ ごろう)
age:Unknown
family:妻 1 子 1
region:シルバニア王国東京都アンダーカツシカ区
(送信終了)
-log-
シルバニア王国東京都台東区浅草雷門跡地
Next Packet: Nothing but Strong
Est. Time: Unkonwn
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