憑依転生者伏黒くんは最強になりたい   作:つーふー

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見切り発進&プロットなしです。
失踪したら誰か代わりに伏黒くんを最強にしてあげてください。


呪いの始まり

 

 

 

 気付いた時、俺は伏黒恵となっていた。

 理由に関しては分からない。

 伏黒恵になる前の記憶はあるが、途中からぷっつりと途切れている。

 死んだのか、それとも死んでないのかは分からない。

 けれど不思議とそういうものなんだと納得した。

 そんな状況を鑑みるに、前世の記憶を思い出したと表現する方が適切なのかも知れない。

 少なくとも伏黒恵としての記憶も、己の中にあるのだから。

 

「呪術廻戦、か……」

 

 前世の記憶の中に、この世界についての知識がある。

 虎杖悠仁を主人公とした呪いの物語だ。

 伏黒恵となった自分のポジションは、主人公の友人であり呪いの王である両面宿儺に身体を乗っ取られる存在。

 半分ラスボスみたいなものである。

 

「……………」

 

 そんな存在になってしまった。

 けれど心の中は怒りも悲観も沸かず、とても穏やかなものだった。

 こんなハードモードな世界に生まれたと嘆く?両面宿儺に狙われる存在になってしまったと恐怖する?それならば呪術に関わらず生きるべき?

 いいや、それは違うだろう。

 

 俺は伏黒恵になってしまったが、その精神性は伏黒恵そのものではないのだ。

 善人が報われない世界だとか、平等に幸せを享受出来る世界だとかそんなことはどうでもいい。

 呪術廻戦を読んだ時、俺は思ったのだ。

 十種影法術があれば、五条悟や両面宿儺を倒すことが出来るのではないか?と。

 もちろん簡単なことだとは思ってないし、ありとあらゆる努力と工夫、そして策略を尽くした上で勝機が生まれる程度の勝算だとも思っている。

 だけど、それでもゼロではないと十種影法術の強さを信じているのだ。

 

「折角だ。目指してみるか、最強を」

 

 ここは呪いの世界。

 俺という存在が伏黒恵に憑依転生してしまったのも呪いのひとつなのかも知れない。

 少なくとも、伏黒恵という存在は俺という存在に塗り潰されたのだから。

 だったら、呪いらしく自分のやりたいようにやってみようじゃないか。

 原作なんて気にしても仕方ない。

 いくらでも好きなように解釈すればいい。

 

 例えば、ここは平行世界であり別の世界ではちゃんと原作通りの結末を迎えられるだとか。

 自分という存在が生まれた時点で何らかの因果が狂い原作通りに進まないだとか。

 自分の都合の良いように考えればいい。

 ただ平和な世界を目指したいのなら、伏黒恵になりきって行動すればいいだけの話である。

 それも悪くない。

 彼の信念に基づき、彼の生き様を成していくのも立派なことだ。

 けれど、俺は俺という存在を証明したいのだ。

 原作をなぞるだけならば、俺という存在は不要である。

 前世の記憶の価値なんて一切なくなってしまう。

 自分の感情の問題でしかないが、それは嫌だ。

 まあ、犠牲を無くして誰も死なないハッピーエンドを目指すのも悪くないかもしれない。

 しかしそれを目指すのであれば、どのみち力が必要になる。

 

 だったら初めから最強を目指し、自分のやりたいようにやろうじゃないか。

 周りを気にせず、目的のために進んでやろうじゃないか。

 孤高の存在を目指そうじゃないか。

 それが俺という存在の証明になるだろう。

 

 なあ、それでいいだろう()()()

 これは縛りだ。

 誰もが幸せを享受出来る世界を目指すという信念を捨てることで、俺が最強になるための道程を考えようじゃないか。

 

 十種影法術。

 両面宿儺も認めるポテンシャルがあるのだ。

 俺たちなら、きっとなれるさ。

 最強にな。

 

 

ーーーー

 

 

 さて、十種影法術がいくら優秀だと思っていても、それを扱う術者のレベルが低くては話にならない。

 原作における伏黒恵は、残念ながら最強とは程遠い存在だ。

 呪力量や呪力操作など、根本的な地力の不足と言わざるを得ない。

 そして呪力量に関しては限度がある。

 もちろん努力によって伸ばすことは出来るだろうが……。

 常人がどれほどの努力を重ねようと世界新記録を更新出来ないように、俺が両面宿儺のような呪力を手にすることは出来ない。

 だからまずは、その問題をどうにかしなくてはならない。

 

 話は変わるが、今の俺は7歳だ。

 両親が蒸発した後くらいと考えてもらっていい。

 義姉の津美紀とアパートで2人暮らししている最中だ。

 五条悟の援助により、施設に預けられることなく生活出来ている。

 もちろん五条悟とは既に何度も顔を合わせているし、術師になりたいことも伝えている。

 特級術師であり忙しいためたまにでしかないが、彼から直接術師のいろはを教わってるのは大きなメリットだろう。

 独学でやっていく意味なんてないし、先人がいるのならばその教えを先に踏襲する方が効率がいいだろう。

 

 因みに、両親が蒸発する前から俺は憑依転生しているが、特に何も干渉していない。

 毎日ひたすら呪力操作の練習だ。

 十種影法術によって生み出され、俺の愛犬となった二匹の玉犬とともに修行である。

 千里の道も一歩から。

 まずは基礎を固めるところからだ。

 まあ、両親が蒸発しないように手を打つことも出来た。

 例えば伏黒甚爾は意外にも父性が備わっていたため、わがままを言うことで日程をずらしたりなど。

 子どもであることを利用することで、死の運命に抗うことも出来ただろう。

 だが、俺は敢えてスルーした。

 理由は後述する。

 

 俺は小学生の時代は全て基礎訓練に身を費やした。

 家の中でも呪力操作。学校でも呪力操作。授業中も呪力操作。食事中も呪力操作。お風呂の中でも呪力操作。睡眠中も可能な限り呪力操作。

 正直、頭がおかしくなりそうだった。

 常に呪力操作をしているのだ。

 だが、この程度の努力をしたからと言って、天井組の五条悟と両面宿儺に届くわけでもない。

 禪院家風に言うならば、その程度の呪力操作など皆手ぬかりなくできるのだ、だろうか。

 最強を目指すに当たっての必要最低限の努力と言えよう。

 その甲斐もあってか、俺は無事に十種影法術の魔虚羅以外を調伏出来たのだった。

 

「恵、ずっとボーッとしてるよね? そんな調子で大丈夫?」

 

 最初の頃は日常生活すらままならない状況だったため、義姉の津美紀にとても助けられることになった。

 呪力操作に集中するあまり、転けたりぶつかったりなどの怪我が絶えなかったのだが、その度に津美紀は心配し処置などをしてくれた。

 家の掃除や料理などの日常生活も、ほぼ全部彼女に投げっぱなしの状況だ。

 俺は禪院家の血を引いているが、彼らのようなドブカスな性格という訳でもない。

 その献身を当然などと思わず、非常に感謝していた。

 多分、津美紀がいなければ俺は呪力操作のしすぎで不注意により死んでいただろう。

 彼女の存在は今の俺にとって必須だったし、血の繋がりがないとは言え大きな情を抱くようになるのも必然だった。

 そもそも小学1年生の頃からずっと2人で暮らしているのだ。

 いくら俺が憑依転生者と言えど、好意はかなりあった。

 もちろん喧嘩もあったりしたが、それも込みで信頼関係を構築していったのである。

 とても大切な存在と言えよう。

 原作の伏黒恵が津美紀の死に激しく動揺し、宿儺に身体を乗っ取られてしまったのも仕方ないことだった。

 今の俺も、きっと動揺してしまうだろう。

 

 原作において伏黒津美紀は、中学を卒業して間もなく原因不明の呪いによって倒れ、寝たきりとなってしまう。

 原作を知っている俺は、その理由について知っている。

 もう一人のラスボスと言える存在である羂索。

 その彼が新たな呪いの可能性を模索するため、予め厳選した千人の非術師にマーキングを施したことが原因で倒れるのだ。

 

 これについては、簡単に回避が出来る。

 羂索は五条悟を警戒しており、彼に近付くのは必要最低限だけとなっているのだ。

 五条悟と直接対面することだけは絶対に避けるだろう。

 マーキングされる時期が分かっているため、その時期に五条悟に協力要請すれば問題なく回避出来るのである。

 普段から五条悟とは関わっているため、恐らく回避は問題なく可能だろう。

 

(まあ、それはしないけど)

 

 俺は両親の時と同様に、それをスルーした。

 結果、津美紀は原因不明の呪いによって倒れるのであった。

 

 もちろん、原作をトレースするためではない。

 これは全て俺が最強になるために必要な行動だ。

 

「やり方さえ間違えなければ便利だな、縛りってのは」

 

 未来に起こる原作のやり方だ。

 呪術廻戦モジュロのネタバレになるので明言は避けるが、縛りというものは手放すことでも効果を発揮する。

 俺は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 両親の蒸発をスルーしたのもそれが理由だ。

 

「伏黒恵の信念、両親、義姉。それらを捨てることで得たものだ。彼らの犠牲を無駄にしないように頑張らないとな」

 

 助けられる存在を見捨てる。

 これにより俺の呪力量は、多大に底上げすることに成功するのだった。

 

「原作知識はやっぱり便利だな。これからも活用しようか」

 

 情報は武器である。

 使えるものを使い、最強を目指そうじゃないか。

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