月姫 X 廻戦   作:資格者:U

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呪術廻戦と月姫を読んでいく中でふと「…あ、両作品見て悠仁とアルクェイドって案外共通点あんだな!そうだ!呪術廻戦×月姫の小説書こう!」と好奇心と妄想を弾ませて書いたのが誕生理由です。

宿儺さん?あぁ、本作では悠仁君は宿儺受肉無しifルートでよろしくお願いします。




虎杖悠仁立志編
月を見た夜


 

 

 

ある日の放課後の柔らかな夕日が、杉沢第三高校の旧校舎をオレンジ色に染め上げていた。

オカルト研究会の部室。使い込まれた学習椅子に腰掛ける虎杖悠仁の耳に、先輩である佐々木せつこの少し興奮を帯びた声が飛び込んできた。

 

「ねえ、虎杖。これ知ってる? 最近ネットで話題になってる総耶の連続殺人事件の『吸血鬼』の話」

 

佐々木が差し出したスマートフォンの画面には、ニュースサイトの掲示板が映し出されていた。

そこには、東京都内の一角、総耶区で起きている連続殺人事件の詳細が並んでいる。

 

「吸血鬼……? また物騒な呼び名っすね」

 

虎杖が画面を覗き込むと、隣に座っていた井口たかしが顎を手に添えて神妙な面持ちで補足した。

 

「いや、ただの誇張じゃないんだよ。見つかった遺体はどれも、体内の血液が一滴残らず抜き取られていたらしい。医療的な処置をした痕跡もない。現場は血の海……どころか、あまりに綺麗すぎて、逆に不気味だって噂だ」

 

「完全に抜き取られてる……、その犯人って、輸血マニアか何かっすか?」

 

「それが、目撃証言も全くないのよ」

 

佐々木が声を潜める。

 

「警察も手出しできてないみたい。まるで、夜の闇そのものが人を食ってるみたいだって……。虎杖、あんたも東京に行くことがあったら、本当に気をつけなさいよ」

 

「はは、俺は仙台っすから。大丈夫ですよ、先輩」

 

虎杖は軽く笑って席を立った。手元にあるビニール袋には、見舞い用の果物が入っている。

 

「じゃ、俺、爺ちゃんの病院行かなきゃいけないんで。お疲れ様でした!」

 

 

 

 

時刻は夕方となり、杉沢病院内の廊下に虎杖の足音が響く。

病室のドアを開けると、そこには相変わらず機嫌が悪そうに窓の外を眺めている祖父、虎杖倭助がいた。

 

「また来たのか。暇な奴め」

 

「いいだろ別に。ほら、梨。剥いてやるから待ってろよ」

 

虎杖が淡々とナイフを動かす間、祖父は文句を垂れながらも、孫の持ってきた果物を口にした。

とりとめのない会話。

 

ーー今日の何気ない学校生活のこと、オカルト研究会のこと、そして先輩達が話してくれた東京の総耶区での不気味な事件のこと。

 

「……血液を抜く、か。つまらん世の中になったもんだ」

 

祖父はポツリとそう呟いた。 やがて太陽が沈み夜の時間が近づく中、虎杖は自分の荷物をまとめて立ち上がる。

 

「じゃあな、爺ちゃん。また明日来るから」

 

「おい、悠仁」

 

背中にいつもより低く、鋭い声が投げかけられた。

ふと振り返ると、祖父はベッドに深く体を預け、どこか遠くを見るような。

あるいは「見えない何か」を睨みつけるような目で、孫である虎杖をじっと見つめていた。

 

「いいか。夜には気をつけろ」

 

「……え?」

 

「日が沈んだら、あんま一人で歩くな。影が伸びる時間は、向こう側のモノがこっち側に混ざる時間だ。お前のようなお人好しは、特に狙われやすい」

 

「何だよ、急に。さっきの総耶の吸血鬼の話、信じてんのか?」

 

虎杖は茶化すように笑ったが、祖父の目は笑っていなかった。

 

「……いいから、覚えておけ。お前には力がある。だが、その力が届かない理不尽も、この世にはあるんだ」

 

「わかった、わかった。ちゃんと真っ直ぐ帰るよ。」

 

そう言って「じゃあな。」と虎杖は軽く手を振り、祖父の居る病室を後にした。

 

 

 

 

 

 

杉沢病院を出た虎杖悠仁の頭には、先ほどの祖父の言葉が鐘の様に響き続けていた。

 

 

夜には気をつけろ(・・・・・・・・)

 

 

普段の虎杖なら気にも留めないはずのその言葉が、なぜか自身の胸にざわつきを残している。

 

「……なんか、真っ直ぐ帰るとは言ったんだけど何か落ち着かねーな。たまには気分転換に、別の道から帰るか」

 

いつも通る街灯の多い大通りを避け、虎杖は住宅街の裏手にある公園を突っ切るルートを選んだ。

 

 

夜の公園は静まり返っている。

風が木々を揺らす音だけが響く中、公園の広場の真ん中、街灯の光が届かない境界線に噴水の前に「女性」は立っていた。

 

月光を反射するような首元まで伸びた金色のショートボブ。

赤い血を彷彿とさせる緋色の瞳。

清楚な純白色のハイネック。

夜の闇に溶け込むようなミニスカート。

黒のタイツを包んだ長く綺麗な脚。

まるで人気の有名人を思わせるような穢れのないシルエット。

そして、胸元には十字架のような銀色のペンダントが光っている。

 

虎杖と同年代の様な金髪の女性は、ただ夜空を見上げていた。

その姿はあまりにも浮世離れしていて、まるでそこだけが切り取られた美術館の絵画のようだった。

 

(……綺麗な人だな。でも、こんな時間に一人で何してんだ?)

 

虎杖がそう思った瞬間、脳内で何かが弾けた。

祖父の言った「夜には気をつけろ」と「向こう側のモノ」という言葉。

あるいは、オカ研の先輩が言っていた「吸血鬼」という不吉な単語。

 

無意識だった。

虎杖の手は制服のポケットに忍ばせていた、オカ研の部室の段ボールの開封に使うためのカッターナイフに伸びていた。

 

ーー 殺意があったわけではない。

 

ただ、その瞬間の彼にとって、眼前の美しい存在は「この世にいてはいけない異物」として無意識に認識されてしまった。

 

虎杖悠仁の常人離れした身体能力が、人の理解を超えた速度で駆動する。

 

静まる夜の公園の地面を力強く蹴り、一瞬で女性の背後へ。

 

「――え?」

 

女性が背後から近づく影の驚きに目を見開き、小さな呟きを漏らしたその時。

手に持っていたカッターの刃が、まるで熱したナイフがバターを切るように。

ーー彼女の体を滑った。

 

ーー 一線で彼女の首を。

ーー二線で彼女の右腕上腕を。

ーー三線で彼女の左腕肘を。

ーー四線で彼女の左足股を。

ーーそして、五線で彼女の綺麗に整った腹部を。

 

ありえないほどの精密さと速度で放たれた一撃は、彼女の体を物理的な法則を無視して五つに解体した。

 

鮮血が舞うことも、断末魔が響くこともない。

ただ、美しい糸がハサミで切り裂くように、彼女だったものは公園の地面へと崩れ落ちた。

 

虎杖は、血の付いていないカッターを握ったまま、呆然と立ち尽くした。

自分の手が何をしたのか、理解が追いつかない。

ただ、夜の風が急に冷たくなったことだけを感じていた。

 

 

 

自分がした事に理解が追いついたのは数分後の事だった。

夜の公園の地面に散らばった女性だった「モノ」を前に、虎杖悠仁は全身に汗を流しながら震える手で顔を覆った。

 

「……うそだろ。俺、何やってんだ……?」

 

 

ーー祖父の遺言を待つまでもなく。

ーー自分は取り返しのつかない一線を越えてしまった。

ーー喉の奥がせり上がり。

ーー心臓の音が耳元でうるさいほどに鳴り響く。

ーー殺意なんてなかった。

ーーただ、俺の身体が勝手に動いてしまったのだ。

 

 

知らない女性を殺してしまった後悔と絶望が自分の身体全身を支配しようとした、その時。

 

 

「――もーっ! いったぁぁぁーーい!!」

 

 

不意に、場違いなほど明るい悲鳴が夜の空気に弾けた。

地面に伏していたはずの彼女が、まるで寝起きの背伸びでもするように、ゆっくりと上体を起こしたのだ。

 

「え……?」

 

ーー虎杖の思考が停止する。

 

彼女の体は、先ほどバラバラになってしまった筈だった。

 

純白色のハイネックも、

黒いタイツに包まれた長い脚も、

まるで時間が巻き戻ったかのように一点の曇りもなく再生しているかのように元に戻っていた。

 

彼女は殺されたのにも関わらず太陽の光の如くお天気娘のような屈託のない仕草で膝の砂を払うと、ジロリと虎杖を睨みつけた。

 

「もう信じられない! いきなり切り刻むなんて、どんな挨拶よ。今の本気で死ぬかと思ったんだからね?」

 

「あ、えっと……、それは本当にごめん!……ってかあんた、本当に、生きてるのか? 」

 

「生きてるっていうか、直したっていうか! 反撃出来ずに綺麗にバラバラにされたのは初めて。貴方、見かけによらず相当な腕前ね?」

 

彼女は楽しげに首を傾げると、一歩、また一歩と距離を詰めてくる。

虎杖は恐怖よりも、困惑で頭がいっぱいになった。

 

「あ、あのさ。本当にごめん。俺でも何が起きたか分かんねーけど、あんたを……」

 

「いいよ。本当なら起き上がった瞬間に貴方を殺そうと思ったけど一瞬冷静になっちゃった。でも、復元するのに少し力使っちゃったから一晩経てばば回復すると思うけど、貴方にはその間、わたしの盾になってもらうんだから」

 

彼女はそこで言葉を切り、悪戯っぽく、それでいて逃れられない運命を告げるような、爛漫な笑みを浮かべた。

 

「わたしを殺した責任、ちゃんととってもらうんだから。いいわね?」

 

その言葉は、ある種の呪いのようでもあった。

だが、虎杖の反応は彼女の予想を裏切るものだった。

 

 

彼は目の前の女性から逃げることも、

目の前の女性に怯えることもなく、

真っ直ぐに彼女の瞳を見返した。

 

 

「……ああ。分かった。俺がやったことだ、その責任ちゃんと取るよ」

 

 

「……え?」

 

 

今度は彼女が目を丸くする番だった。

冗談のつもりだったのか、あるいはもっと困惑されると思っていたのか。

虎杖のあまりに真剣で、淀みのない返答に、彼女は少しだけ驚きながらも頬を染めていた。

 

「……ふーん、変なの。普通、そこまで本気で言う?普通はもっとこう、わたしの事見て『化け物!』とか言って逃げる場面じゃない?」

 

「…あんたが化け物だろうがなんだろうが、俺があんたを傷つけた事実は変わらねーよ。……それで、あんたは?」

 

「……わたしは、アルクェイド・ブリュンスタッド。長い名前だからアルクェイドだけでいいわ。一応、真祖って区分される吸血鬼よ」

 

「俺は虎杖悠仁。杉沢第三高校に通うただの学生だ」

 

彼女ーアルクェイド・ブリュンスタッドは夜なのにも太陽のような微笑みながら名乗ると、虎杖も同様に名乗りお互いに握手した。

 

「本当はちょっと『探しもの』で東京の方に行く予定だったんだけど……気がついたら仙台に寄り道しちゃってたのよね。そしたら、いきなり君にバラバラにされちゃうし。散々な一日だわ」

 

「寄り道って……仙台から東京まで随分な距離だぞ」

 

虎杖が少し安心したのか苦笑すると、アルクェイドもつられて「あはは!」と笑った。

ーー夜の公園。

異常な出会いを果たした二人の影が、月明かりの下で一つに重なった。

 

「よろしくね、悠仁。貴方のその『責任』、たっぷり使い倒させてもらうから!」

 

 

ーーこれが、本来起こる事の無い呪いと吸血鬼が交差する

ーー長きに渡る白き満月の光が照らす夜の始まりだった。

 

 

 

 






《突然の質問コーナー》


Q. 何で悠仁は志貴と同じ十七分割では無いんか?

A. 原作の呪術廻戦の「呪胎戴天編」で宿儺さんが「伏魔御厨子」で少年院の呪霊(ふんどし呪霊)を五分割してたのでそれを元にしてみました。

Q. 何でアルクェイドさん(本作)の復元時間が早いんだ?

A. 原作だと志貴の直死の魔眼で十七分割されたじゃないですか。
アレ物を壊す効果の魔眼でしたから多分再生すんのに時間が掛かっただと思ったので、対する虎杖は純粋な身体能力で五分割したから原作よりも早く復元出来たかと思います(多分)。

Q. 本作の年代の設定ってどうなってんすか?

A.原作呪術廻戦の世界線の年代では2018年で、月姫リメイクの世界線の年代では2010年代の東京都内となっていて作者が考えた結果、呪術廻戦第一期が2020年から始まり、その1年後に月姫リメイクが2021年に発売されたので本作は「平成」ではなく「令和」を舞台とした2020年と設定しようと思いました。
後年代変えただけで物語とは関係しません。ただ各キャラの生まれた年が2年進むというだけです。
(例. 虎杖悠仁の生まれた年が2003年3月20日なら2005年3月20日ということで)


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