月姫 X 廻戦   作:資格者:U

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第一話から第三話の後日談のような短編集です。
こーゆうの書くのが意外と得意なんです(笑)

因みに台本形式です。




つきめぐさんぽ

 

 

 

『吸血姫の応急処置』

第一話のその後の話。

 

 

悠仁「…なぁ、外寒くなって来たからさ、アルクェイドが良いなら俺ん家来るか?」

 

アルク「えっ良いの?丁度行く宛もなかったし、ありがとうね!」

 

虎杖の自宅

 

アルク「お邪魔しまーす!」

 

悠仁「何か食べるもん作るわ」

 

虎杖がそう言った瞬間、ソファに座ったアルクェイドの純白色のハイネックから虎杖によって切断された箇所から血が滲み出てきた。

 

アルク「……あ。しまった」

 

悠仁「うわっ、血! ごめん、やっぱりまだ治りきってなかったか!?」

 

アルク「うーん、ちょっとわたしの出力不足かな? でも大丈夫、これくらいならすぐ止まるし!」

 

アルクェイドは、何処からか出してきたガムテープを手に取った。

 

アルク「よし悠仁、これでペタッと……」

 

悠仁「待て待て待て! お前、何しようとしてんだ!?」

 

虎杖は反射的にアルクェイドの手首を掴んで止めた。

 

アルク「何って、補強よ? 離れないようにコレで貼っておこうかなって」

 

悠仁「普通はガムテープは傷に貼るもんじゃねーよ! お前の肌、ボロボロになるぞ!?」

 

アルク「えー? 私は平気だよ?その内くっつくんだから、わたしにとって一晩経てば傷も治るからガムテープも包帯も変わらないわ。」

 

悠仁「お前が良くても、俺の気が済まねーんだわ!ちょっと待ってろ、すぐ戻るから!」

 

虎杖は自分の財布を掴むと、脱兎の如く家を飛び出して行った。

 

ーー十分後

 

息を切らして戻ってきた虎杖の手には、コンビニの袋が握られていた。

中には清潔な包帯と大きめのガーゼ、それに消毒液とサージカルテープが詰まっている。

 

悠仁「悪い、待たせた! ……ほら、俺も手伝うから」

 

アルク「ふふ、悠仁ってば大げさなんだから」

 

畳に座り込んだアルクェイドは傷口の腹部を出して、虎杖は真剣な手つきでガーゼを当てていく。

 

悠仁「……痛くないか?」

 

アルク「全然。むしろ、なんだか温かくて変な感じ。こうやって誰かに手入れしてもらうのなんて、わたし初めてかも」

 

悠仁「俺が無意識とはいえ切断しちまったんだからさ。これくらい当然だろ」

 

包帯を巻き終え、最後にテープで止める。

虎杖が顔を上げると、至近距離でアルクェイドがじっと彼を見つめていた。

その瞳は少しだけ驚いたように見開かれ、次の瞬間、悪戯っぽく微笑んだ。

 

アルク「うん、完璧! ありがと、悠仁。これならガムテープよりずっといいわ!」

 

 

 

 

『吸血姫の暇潰し』

第二話でアルクェイドが杉沢第三高校に向かうまでの話。

 

それは虎杖が学校へ向かってから、数時間が経過した。

家の中に一人残された金髪の吸血鬼、アルクェイド・ブリュンスタッドは、悠仁の自宅で盛大に退屈をもてあましていた。

 

アルク「……はあーっ、やっぱりつまんなーい! 待ってるって決めたけど、やっぱりわたしにとっては退屈すぎるわ!」

 

ベッドの上でゴロゴロと転がり、手近なクッションを放り投げる。窓の外を見れば、雲一つない快晴。

本来なら街へ繰り出し、昨夜自分をバラバラにした少年の後を追いたいところだが、一応は「約束」という概念を尊重してみることにした。

ふと、部屋の隅にある棚が目に留まる。そこには、虎杖が買っていたであろう大量の漫画本が整然と、あるいは少し乱雑に並んでいた。

 

アルク「なになに……『少年ジャンプ』? ふーん、これが現代の若者のバイブルってやつね」

 

彼女は適当な一冊を抜き取り、ページを捲った。 最初は「ふーん」と鼻で鳴らしていたアルクェイドだったが、真祖の超人的な動体視力と理解力が、凄まじい速度で物語を吸収していく。

 

アルク「……ちょっと、この主人公、案外無茶苦茶やるじゃない! でも、この『仲間を助ける』っていうの、どこかの誰かさんに似てるわね」

 

一冊、また一冊。 気づけば彼女の周りには漫画の山が築かれていた。

友情・努力・勝利。

時には理不尽な死や、血生臭い復讐劇。

それらは、長く千年城で眠り続けてきたアルクェイドにとって、人間の「熱」を擬似体験できる新鮮な刺激だった。

 

アルク「面白いじゃない。今の人間って、こんなに短い一生の中で、こんなに濃い空想を本として描いていくなんてね」

 

漫画の山を読み終える頃には、時刻は正午を回っていた。 次に彼女が手を伸ばしたのは、部屋の隅に置かれた古びたテレビのリモコンだった。

 

「次はこれね。今の世界で起こってる文明の利器、見せてもらおうかしら」

 

スイッチを入れると、画面には賑やかなバラエティ番組が映し出された。 芸人たちが大声を出し、派手なテロップが画面を埋め尽くす。アルクェイドは目を白黒させながら、そのテンポの速さに食らいついた。

 

アルク「…なにこれ。 なんでこの人、熱そうなお湯に浸かって喜んでるの? 人間の娯楽ってなんか複雑すぎるわね……」

 

独り言を言いながらも、彼女の口角は上がっている。

続いてチャンネルを切り替えると丁度始まったばかりの再放送の恋愛ドラマだった。

男女が雨の中で抱き合い、すれ違う想いを吐露する。

 

アルク「……『俺が責任を取る』、ねぇ」

 

ドラマの台詞を聞きながら、アルクェイドは昨夜の虎杖の真剣な眼差しを思い出した。

自分を初めて殺した何の変哲も無い少年。

なのにも関わらず、自分をただの怪物として恐れず、一人の「怪我をさせた女の子」として扱い、真っ直ぐに謝ってきた不思議な少年。

 

アルク「うーん、悠仁なら、このドラマの主人公みたいに『好きだ!』…なんて叫ばないわよね、きっと。……もっと、こう、『好きだ』以外の言葉を言ってくれそうかな?」

 

たまたま見つけた漫画で読んだ「ヒーロー」の姿と、

たまたま放送された恋愛ドラマで見たお互いの「約束」の重み。

それらを自分なりに解釈し終えた時、アルクェイドの中の「退屈」は、抑えきれない程の強い「好奇心」へと変化した。

 

アルク「よし! 今の時代の勉強は一旦終わり! やっぱり、画面の中よりも実物を見たり観察した方が面白そうだもの!」

 

午前10時から始まった彼女の「人間文化研究」は、午後には「強行突破」という結論を導き出していた。

アルクェイドは窓越しの空を見上げていた。

 

その後、彼女が杉沢第三高校のグラウンドに現れ、学校中をパニックに陥れるまで――あと、わずか30分前の出来事であった。

 

 

 

 

『乖離されし邂逅』

第三話のとある人の視点

 

虎杖達が総耶に向かった後。

宮城県仙台市の昼頃の杉沢第三高校の校舎は、どこか不気味な静寂に包まれていた。

カツ、カツ、と乾いた足音を響かせ、一人の少年が校庭の隅にある百葉箱へと呟きながら歩み寄る。

 

伏黒「…こんな所に特級呪物保管するとか馬鹿すぎるでしょ」

 

呪術高専東京校の一年生、呪術師伏黒恵。

彼が杉沢第三高校に来た目的は、この場所に封印されていた特級呪物「両面宿儺の指」の回収だった。

本来なら早く来ていたのだが向かう最中に大量の低級呪霊がまるで時間稼ぎの為に出現したのか全部祓うのに時間が掛かってしまったからだ。

 

伏黒「……ここか」

 

伏黒は迷いなく百葉箱の扉を開ける。

だが、そこにあるはずの「禍々しい気配」は、影も形もなかった。

 

伏黒「――っ、ない!?」

 

伏黒の表情が険しくなる。

本来なら扉を開けた瞬間に肌を刺すような呪力が溢れ出すはずだった。しかし、中を開けたら木箱も何もかも、呪物を封印するための呪符すら残っていない。

 

伏黒「無いですよ」

 

『…えっ?』

 

伏黒「…だから、百葉箱の中空っぽです」

 

『…マジで?今日の恵、何か災難過ぎない?天気いいから散歩してんのかな?』

 

伏黒「ぶん殴りますよ。……一応、近くにいる人に聞き込みに入ります」

 

伏黒は電話を切り「…今度マジで殴ろう」と呟きながら鋭い視線で周囲を見渡した。

幸いにも昼休みで校内やグラウンドには多くの生徒が残っていた。

 

「そーいや、オカ研の連中なら何か知ってるんじゃない?」

 

「あー、つい最近、虎杖が何か変なもん拾ったって言ってたし」

 

聞き込みの結果、浮上したのはある一人の少年の名前だった。

虎杖悠仁

オリンピックの最高記録を塗り替える程の常人離れた身体能力を持ち、つい最近では昨日に祖父を亡くしたばかりだという元心霊現象研究会の部員であり、杉沢第三高校の男子生徒。

学校の用務員の話によれば、彼は丁度昨日の放課後に突然やって来た「金髪で赤い目の少女」と一緒に、慌ただしい様子で今日中に仙台から離れたというらしい。

 

一時間後。

 

伏黒は他の生徒の聞き込みしていく中、虎杖が住んでいた自宅が判明して自宅の跡を確認していく中、自宅内で僅かに残された「残穢(ざんえ)」を読み取っていた。

 

伏黒(…僅かだがこの独特の呪力……。間違いない。両面宿儺の指が一本、既に持っていた形跡がある。)

 

そして、一旦外に出て虎杖の自宅の近くに住んでいる近隣住民の証言から、更に不可解な事実が判明する。

 

「悠仁君なら確か、東京の方へ行くって言ってたよ。悠仁くんの親戚……だったかね、何か用事が出来たって言ってたよ」

 

伏黒「東京……」

 

伏黒は自身の手帳に「虎杖悠仁」と力強く書き込んだ。

容姿はピンク色の短髪で、オリンピックの最高記録を塗り替える程の常人離れた身体能力に長けた少年。

だが、彼と共にいたらしい「金髪で赤い目の少女」については、目撃情報が曖昧で正体がつかめない。

 

伏黒(よりにもよって特級呪物を持って、東京のどこかへ消えたか……。手に入れたのが偶然か、それとも奴も『こちら側』の人間なのか)

 

伏黒は既に日が暮れそうな夕日の空を見上げ、深く溜息をついた。

この時、彼はまだ知らない。

その少年ーー虎杖悠仁が東京の「総耶区」という、死徒と呪いが交差する特異点に足を踏み入れ、あの日の夜に吸血姫との協力関係になっていることを。

 

伏黒「……虎杖悠仁。必ずおまえを見つけ出してやる」

 

本来なら虎杖悠仁と出会うはずだったが、白き月が照らす夜に吸血姫との出会いによって乖離した世界線で。

伏黒恵の追跡は、ここから静かに始まった。

 

 

 





おまけ「もし伏黒の前に現れたのが…」

伏黒「早く特級呪物を回収しよ」

「待つにゃ、そこのウニ頭の少年」

伏黒「なんだコイツ、呪霊か? いや、それにしても呪力がスカスカすぎる…」

「あちしの名はネコアルク。しがない派遣バイト戦士にゃ! 雇い主から『黒いウニ頭の少年を足止めしろ』って言われてるんだにゃ。ちなみに時給は驚愕の100円! 令和の時代にありえない労働搾取だにゃ、逆ギレしちゃうにゃ!」

伏黒「……100円? そもそも誰に雇われてる。どけ、急いでるんだ」

ネコアルク「断るにゃ! 今こそ低賃金の恨みをおみゃーにぶつけるにゃ!いでよ、我が同胞たちよ!」

ネコアルクがそう叫ぶと、何処からか物理法則を無視して全く同じ顔をしたナマモノたちがワラワラと現れた。
ーーその数、およそ百匹!

ネコアルク「にゃにゃにゃ。おみゃーが挑むのは無数の我が同胞、恐れずにくたばりやがれぇえーーーー!」

ーー22秒後、ネコアルクの言葉は叶わず伏黒によって同胞含めて全員瞬殺されたのだった。

伏黒「……何だったんだ、今の」

《完》
(※ 因みに本作とは無関係です。)




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