月姫 X 廻戦   作:資格者:U

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今回、オリジナル回を含めた月姫リメイクの舞台「総耶」到着回です。
オリジナルキャラも登場します。
オリジナルキャラについては後書きで。




総耶編
総耶到着


 

 

 

 

 

 

 

 

総耶

東京都内に存在する東京二十三区に相当する町。

街の東西に線路が伸びており「総耶駅」を境として町のエリアは大きく駅の北側と南側に分かれていて、北側は主に繁華街と住宅街が広がり、南側はビジネス街が広がっている。

 

総耶駅の新幹線の乗り継ぎ場に虎杖悠仁とアルクェイド・ブリュンスタッドが新幹線から降り立った。

 

「へぇー、ここが総耶か。東京とはあんまり変わらないな」

 

「わたしも初めて来たけど、多分東京と似ているんじゃない?」

 

二人がそう言うと乗り継ぎ場から駅の出入り口に出た。

出た頃には、空はすでに薄紫色に染まっていて夕日が照らしていた。

 

「よしっ、じゃあ早速ホテルとか泊まれる場所確保しておくとするか!」

 

虎杖は慣れない都市で、まずは今夜の宿を確保するため探そうと奔走する。

しかし、高校生の虎杖と浮世離れした美貌を持つアルクェイドの組み合わせは、どこへ行っても不審な目で見られてしまい二人は一応広場の噴水のベンチに座って休憩していた。

 

「あー……何処もダメだぁ。ダメ元でラブホに行っても『未成年はちょっと…ね?』ってやっぱスタッフに断られちまったしな」

 

「ここ最近吸血鬼が関わる事件の被害が増えてるからあまり泊まれないからね、…私は別に野宿でもいいのよ?」

 

「アルクェイドは吸血鬼でも女の子だろ。こんな外で寝かせるわけにいかねーだろ」

 

虎杖がベンチから立ち上がって頭を掻きながらこれからどうするか考えていたら

突然アルクェイドの表情が「処刑人」としての狩人の表情に切り替わった。

 

 

「……悠仁、この近くに単体の屍鬼(グール)が誰かを襲ってるわ。」

 

「確か屍鬼(グール)って吸血鬼のランクで下から二番目の奴だろ?アルクェイド、そこに案内してくれ!」

 

「任せて、その代わり今回は悠仁が屍鬼と戦ってくれないかな?一応悠仁が何処まで渡り合えるか確かめたいから」

 

「もしヤバかったらすぐパパッと私が片付けるからね!」とアルクェイドは言って、屍鬼(グール)が居る場所に向かって行った。

 

 

 

 

 

「……はぁ、…はぁ……ッ」」

 

日が暮れ既に夜の帳が降りた路地裏の突き当たり。

そこに吸血鬼に血を吸われて死亡した人間が変転して生まれるゾンビのようなの存在――「屍鬼(グール)」が、一人の傷だらけの男が建物の壁を背に追い詰められていた。

 

「くそっ……こんな生臭い場所で、野垂れ死ぬわけにはいかねェんだよ!」

 

男の名は上田将人。

ブラックな眼鏡と顎鬚がトレードマークなどこか軍人崩れのような雰囲気を持つ30代らしいボロボロの白いワイシャツを着たサラリーマン風の男性は、自身の持ち前の直情的な正義感で死徒に立ち向かっていた。

上田は傷があちこちにあるのか震える手で懐に仕舞ってた投擲用のナイフを構え、屍鬼の眉間を狙った。

 

だが、屍鬼(グール)の動きは常人の身体能力の倍も速い。

屍鬼(グール)の手が上田の喉元を裂こうとしたその瞬間――。

 

 

「させるかッ!!」

 

赤い影が閃光のように割り込んだ。

 

虎杖悠仁の助走付きの渾身のローキックが、屍鬼(グール)の胴体目掛けて蹴り飛ばす。

さらに体勢を崩した屍鬼(グール)の顔面に、虎杖が追撃で渾身の正拳突きがめり込んだ。

 

「ーーーーーッ!?」

 

屍鬼(グール)は頭部が吹っ飛び、後ろの壁を貫通して砕かれ、屍鬼(グール)はもう動かなくなったのか砂のように散っていった。

 

「……おい、大丈夫か? おっさん」

 

虎杖が手を差し伸べると、上田は呆然としながら虎杖の手を取って起き上がった。

 

「……あ、あぁ、助かった……。あのまま俺一人じゃ今ので終わりだったよ。それにしても君、今の身体能力、ただの人間じゃないな?」

 

「まあ俺、体力とか力仕事は自信あるんだわ」

 

上田はずれていた眼鏡をかけ直し、虎杖の隣に立つアルクェイドを見て、さらに目を見開いた。

 

「……あんた、もしかして真祖か? まさかこんなところに真祖のお姫さんに会うなんてな……」

 

「自己紹介が遅れたね。わたしはアルクェイド。こっちは悠仁。この総耶に潜んでいる吸血鬼を処刑しに来たのよ。そう言うあなたは魔術回路は少ないけど魔術師(メイガス)でしょ?」

 

アルクェイドの屈託のない紹介と発言に、上田はその言葉を聞いて毒気を抜かれたように笑った。

 

「…全くよりによって真祖のお姫さんが人間の子とコンビを組んでるなんてな世も世だなぁ。俺は上田正人。しがない魔術師だ。…まぁ今は隠居の身だがな。」

 

上田は路地裏の周囲を警戒するように見渡すと、自分のズボンのポケットからハンカチを出して冷や汗を拭った。

 

「……お前ら、その様子だとどっかで宿を探しているんだろ? 訳ありの客二人を泊めてくれる場所なんて、今の総耶じゃ限られてる。どうだ、俺が今住んでる屋敷があるんだが……お前らが良いなら来るか?」

 

「えっ!?良いの!?」

 

「あったりめーだろ?助けてくれた恩人に持て成すのが当然だろ?」

 

 

総耶駅から北側方向の繁華街を抜けた先にある住宅地でうっそうとした木々に囲まれた場所にその屋敷はあった。

多少古びてはいるが手入れの行き届いた和風の住処――それが上田将人の邸宅だった。

虎杖達が上田邸に上がって居間にたどり着いた。

 

「まぁ適当に二人ともソファに座ってくれ。茶くらいは出すよ」

 

リビングのソファに腰を下ろした虎杖とアルクェイドに対し、上田はキッチンで手際よく準備をしながら問いかけた。

 

「で……こんな若い高校生と真祖の姫君であるアルクェイド・ブリュンスタッドさんが、この物騒な総耶に何しに来たんだ?」

 

虎杖は、あの日の夜でアルクェイドを無意識に「殺害」してしまった責任を取るために彼女が追っている宿敵である吸血鬼を倒しにここへ来たことを正直に話した。

上田は呆れたように眼鏡のブリッジを押し上げる。

 

「殺した責任ね……。ははっ、若いのに真っ当すぎるぜ。…だが俺は気に入ったぜ、悠仁。いいか、この魔街にいる間は俺を頼れ。なんなら、お前の父親代わりになってやってもいいくらいだぜ?」

 

「はは、上田さん、気が早ぇよ。でも、ありがとな」

 

「…あ、そういや上田さん。さっきアルクェイドが『メイガス』って言ってたけど、メイガスってなんなんだ?」

 

虎杖の素朴な疑問に、上田は苦笑いを浮かべた。

 

「…ああ、魔術師(メイガス)ってぇのは魔法使いみたいなもんで、この世の理を自分の力で捻じ曲げる連中のことさ。代償を払って、常識じゃありえない現象を引き起こす。まぁ等価交換みたいなもんさ。俺にはあんま才能がなくてその道をドロップアウトした口だが、魔術とかの知識だけは叩き込まれてる」

 

アルクェイドが「普通の魔術師にしては案外物知りそうよね」と横から口を挟む。

 

「なら情報を集めるなら、まずは人が集まる場所だな。明日から、俺は『総耶高校』に編入の手続きをして通ってみるよ。ここの学生として活動するなら怪しまれずに街を歩けるしさ」

 

虎杖の提案に、上田は「おっ、行動が早いな」と感心しながら頷いた。

その後、二階の客間に案内された虎杖達が、リュックから荷物を取り出していた時のことだ。

虎杖のリュックから、あの時、杉沢第三学校で再度回収した木箱が転がり落ちた。

 

「おっと……」

 

「ん?なんだそれは。……ちょっと待て。悠仁、それを俺に見せてくれないか?」

 

上田の顔つきが、これまでにないほど険しくなる。

彼は手袋をはめると、慎重に箱の中身――布に包まれた「人間らしき指」を確認した。

 

「……こいつは驚いた。ただの呪物じゃない。伝説に聞く特級呪物『両面宿儺』の指の一本か……? なんでこんなもん持ってんだよ…?」

 

「上田さん、それについて詳しいのか?」

 

「まぁな、辛酸、後悔、恥辱などの人間の負の感情から生まれる禍々しいエネルギーが具現化して人を襲う呪いーー「呪霊」として死に追いやる怪物のことさ。そして今、悠仁が持ってんのは呪いが宿った物品ーー「呪物」と呼ばれるもので魔除けとして使われてるが…、今は呪いを呼び起こしちまうけどな。」

 

「そん中でもこの「両面宿儺の指」ーー両面宿儺ってのはな、千年以上前に実在した人間でな。呪術全盛期の時代で術師が総戦力で挑むがそれでも敗れた。その絶対たる力から呪いの王と異名が付かれたって訳さ。」

 

「…そんな恐ろしかったのか、この指…。ってか何で上田さん、その呪物とか色々知ってんだ?」

 

「……まぁ色々とな。とにかく悠仁、こいつは俺が預かっておく。俺の部屋には一応魔術的な防壁がある。お前が持ち歩くよりはマシだ」

 

「……わかった。頼むよ、上田さん」

 

虎杖は上田の真剣な表情を信じ、指の入った箱を託した。

祖父を亡くし、故郷を離れた虎杖にとって、厳しくも温かい上田の存在は、いつの間にか大きな支えになろうとしていた。

 

 

 

虎杖達の話し合いが終わり、上田は虎杖とアルクェイドを二階の空き部屋へと案内した。

 

「悪いが、今すぐまともに使えるのはこの部屋だけだ。俺が独り身なもんでな、客間をいくつも管理してねえんだよ」

 

そう言って二人を案内された部屋は、古い邸宅らしい趣のある広い2部室だった。

部屋の中は服など入れる重厚なタンスと、部屋の真ん中に鎮座する大きなセミダブルサイズのベッドが置いてあった。

 

「よし、右側がアルクェイドで左側が悠仁の部屋でいいな?」

 

「…上田さん、もしかして俺たち隣同士なのか?」

 

「ああ、 悠仁。お前も男なら四の五の言わずに腹をくくれ。アルクェイドだって、こんな広い屋敷の部屋で一人にされるよりは、隣に顔見知りのお前が居たら安心だろうよ」

 

上田はニカッと笑って虎杖の肩を叩くと「んじゃ、俺は下で調べ物があるからな」と部屋を後にした。

静まり返る部屋前の廊下で虎杖は困ったように頭を掻いた。

 

「…上田さん、アレ絶対ワザとだろ…」

「えー? 悠仁、わたしと隣は嫌なの?」

 

アルクェイドが部屋のドア前で背を掛けて「むー」と不満げに頬を膨らませていた。

彼女にとって「恥じらい」という概念は、人間が抱くものとは少しズレている。

むしろ、信頼できるパートナーが傍にいることの方が重要だった。

 

「嫌とかじゃなくて……ほら、男と女だし。おまえが女の子なんだからさ」

 

虎杖がそっぽを向くと、アルクェイドはすうっと立ち上がり、虎杖のすぐ目の前まで歩み寄った。

そして、長い睫毛を揺らしながら少しだけ首を傾げて下から虎杖の顔を覗き込む。

 

「……悠仁。そんなにわたしと一緒にいるの、いや?」

 

潤んだような赤い瞳に、至近距離での上目遣い。

いつもは太陽のように明るい彼女が見せた、少しだけ寂しげで、それでいてひどく可憐な表情。

虎杖はその破壊力に、思わず心臓が跳ね上がるのを感じた。

 

「……っ。いや、ダメじゃねーけど」

 

「じゃあ、決まり! 寝る前に悠仁の部屋でわたしの話し相手になってね」

 

ぱっと花が咲くような笑顔に戻ったアルクェイドに、虎杖は深い溜息をついた。

あの日の夜、彼女を「殺してしまった」ことで背負った責任と言うなの罪。

それがまさか、隣同士の部屋で共にするという展開にまで発展するとは、自分でも想像していなかっただろう。

 

「わかったよ。……だけど、俺が寝てる時に変なことすんなよ?」

「それ、わたしのセリフじゃない?」

 

 

 







《オリジナルキャラ紹介》

上田将人(うえだまさと)
本作のオリジナルキャラ。
真面目かつフランクな人柄で、直情的な一面を持つ自称落ちこぼれの元魔術師で善人な30歳独身。
かつては魔術協会の総本山「時計塔」に所属していたが、ある事件をきっかけに魔術師を辞めて、現在東京都内総耶区にて隠居生活している。
本作では虎杖達の良き理解者としての立場で書きました。

(※ 因みに鋼の錬金術師の「マース・ヒューズ」と「野原ひろし」、そして作者()が一番お世話になった学校の先生を合わせてイメージしたのが設定理由です。)


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