月姫 X 廻戦   作:資格者:U

6 / 7

ようやく原作キャラ登場出来た…!
今回もオリジナルキャラ登場します。
少し物語の展開が進みます。




獣王の咆哮

 

 

東京都総耶区で朝の暖かい日差しが照らす。

 

上田邸の虎杖の部屋でスマホのアラームが鳴り、虎杖はベットから起き上がって、ハンガーに掛けている新しく入る総耶高校の制服に着替えた。

総耶高校の青黒色の制服の下にいつもの赤いパーカーを仕込んだ虎杖らしい独特のスタイルで自分の部屋から出ていった。

 

上田邸のダイニングに降りたらリビングのキッチンで上田とアルクェイドが椅子に座っていてテーブルには、艶のある白米と焼き立てのウインナーと目玉焼き、味噌汁が置いてあった。

 

「ほら、悠仁。しっかり食っとけよ。悠仁ぐらいの高校生は育ち盛りなんだからな」

 

「上田さん、朝飯サンキュー。いただきます」

 

虎杖はそう言って勢いよく上田が作ったウインナーを口に運んでいく。

 

「おい悠仁、その格好……まあ、お前らしいか。ここの学校の校則が緩いといいな」

 

上田が呆れ顔でコーヒーを啜っていると、隣でじっと虎杖を見ていたアルクェイドが身を乗り出した。

 

「ねえ悠仁、やっぱりわたしも学校に行きたい! あの時は家で我慢したけど、今日はもう限界なの!」

 

「ダメだって。今日は転入手続きとかでバタバタするし、おまえが来たら学校が騒ぎ起こして授業になんねーだろ。帰って来るまで上田さんと情報収集したりテレビ見たりして待っててくれないか?」

 

「…むっ。わかったわよ。でも、早く帰ってきてよね。退屈過ぎるとわたし、死んじゃうかもしれないし。」

 

「はいはい、なるべく早く帰ってくるよ。」

 

 

頬を膨らませるアルクェイドに対して虎杖は手をひらひら上げて、総耶高校へと向かって登校した。

 

 

 

 

 

「東京都立総耶高等学校」

略称は「耶高」。

今年で創立四十周年を迎える学校で進学率そこそこで、部活動ほどほど、校則はそれなりに自由なごく平均的で普通な高等学校である。

 

 

学校に着いて虎杖の担任の先生が「呼んだら入ってきてくれ」と言い、教室の中へ消えて行くのを見送った虎杖は自分が入るクラスプレートを見上げる。

 

「1ーCか」

 

「それじゃあ、編入生を紹介する。虎杖、入ってきてくれ」

 

担任の先生の声を聞いて虎杖は1ーCの扉を開けた。

 

「今日から総耶に編入してきた虎杖悠仁だ。みんなよろしくな!」

 

1ーCの教室内の教壇に立った虎杖の明るい挨拶は、一瞬でクラスの空気を和ませた。

その後休み時間に入って虎杖の持ち前の親しみやすさは虎杖の居る机を中心にクラスメイト達が押し上げていく中、一人の眼鏡を掛けた銀色の短髪の少年が虎杖の前に現れた。

 

「…オマエ、虎杖悠仁で合ってるか?」

 

「あぁ、そーだけど…おまえの名前、教えてくれないか?」

 

「…宇都宮京(うつみやきょう)。学校の事で何か分かんない事があったら俺に聞け。」

 

「おう、ありがとな!」

 

そう言って宇都宮は「…フン」と言って素っ気無く教室から出て行った。

 

その様子を見ていたクラスメイトは「アレがいつものだから慣れてくれ」、「まぁ、アイツああ見えてアドバイスとかくれるから良い奴だけどなぁ」、「まぁ単にツンデレみたいなもんだから」と虎杖に背中を叩いてそう呟いた。

 

総耶高校1ーCの教室で無事に紹介を終えて通常授業を終えて、虎杖は休み時間に学校内の散策しながら周り様子を伺うため廊下へと出た。

 

(ここの吸血鬼の事件について、何か手がかりがあればいいんだけどな……)

 

虎杖がそう思いながらキョロキョロと周囲を大体見渡しながら歩いていると、向こうから二人の生徒が歩いてくるのが見えた。

 

 

 

一人は、眼鏡をかけた物静かな雰囲気の二年生。

どこか影があるが、芯の強そうな瞳をした黒髪の少年――遠野志貴。

もう一人は、青い髪と緑のスクールリボンが特徴的な、凛とした佇まいの三年生――シエル。

 

「…ですから遠野君、放課後の寄り道はあまり感心しませんよ?」

 

「わかってますって、先輩。でも、ちょっと気になることがあって…」

 

二人は親しげに、それでいてどこか独特の距離感で会話を交わしていた。

虎杖がその横を通り過ぎようとした瞬間、奇妙な感覚が全身に走った。

 

(……なんだ? 今の二人……。ただの学校の先輩だけど、何か変な圧があるっていうか……)

 

虎杖は足を止めそう思うも、再度歩き始めた。

 

 

「……遠野君? どうかしましたか?」

「…あ、いえ、何でもありませんよ。先輩。」

 

 

 

 

 

 

新しい学校の自己紹介などの1日が終わり、放課後を迎えた虎杖は上田邸に帰宅した。

家に入ると居間で4K液晶テレビでバラエティ番組を見てたアルクェイドが居た。

 

「おかえり、悠仁!」

 

「ただいま、上田さんは?」

 

「将人なら部屋で何か調べ物するって言ってたわ。」

 

「んじゃあ、今日は本格的に吸血鬼探し始めるか」

 

そう言って虎杖は一旦自分の部屋に戻っていつもの普段着に着替えに行った。

 

夕闇が総耶の街を包み込む頃、虎杖とアルクェイドは吸血鬼探しをしつつ夜のパトロールへと足を踏み入れた。

 

「いい、悠仁。屍鬼や吸血鬼は主に夜に活動して人に紛れているの。人のフリをしていても、その内側は空っぽの亡霊よ」

 

「オッケー。つまり街の人達が襲われる前に叩けばいいんだな」

 

二人が入り組んだ路地裏に差し掛かった時、鼻を突く死臭が漂った。

ゴミ捨て場の影、建物の隙間から、青白い肌をした人間だったモノーー屍鬼たちが次々と這い出してくる。

ーーその数、およそ十体ほど

 

「……随分と集まったもんだな。ゾンビの同窓会でも始めるつもりなのか?」

 

「ううん、たぶんただの『餌場』の確保ね。悠仁、昨日は練習台として一体倒したけど、今回は敵の多いけど、いける?」

 

無問題(モーマンタイ)!」

 

虎杖はアルクェイドにグッドサインを送るとコンクリートを蹴った。

超人的な身体能力から繰り出される拳が、死徒の頭部を次々と粉砕していく。

アルクェイドもまた、舞うような足捌きで真空の刃を放ち、近づく屍鬼を塵に変えていった。

 

「チッ、一体逃げたか!」

 

路地の奥へ逃げ込む影を見た虎杖が叫ぶ。

 

「アルクェイド、一旦ここは任せた! 俺は逃げた屍鬼を追う。終わったら此処で合流しようぜ!」

「えっ、悠仁!? ……もう、危なっかしいんだから!」

 

アルクェイドが残りの死徒を引き受ける隙に、虎杖は壁を蹴り、屋上を伝って逃亡した死徒を追い詰めていく。

 

 

人気のない廃ビルが立ち並ぶエリアに差し掛かった時、逃げていた屍鬼の気配が唐突に消えた。

 

 

「……消えた、のか? ーーーッ!?」

 

 

虎杖の直感を感じたのか足が急に止まった。

 

奇妙な静寂が支配する広場だった。

そこには、黒いコートを着た影そのもののような壮年の大男が佇んでいた。

大男の周囲には、黒い泥のような「影」が渦巻いている。

その近くから今、確かに逃げてきたらしい屍鬼の残骸が残されていた。

 

「……ふむ。吸血鬼の末端を此処まで追ってきたかと思えば、現れたのは真祖の使い魔か?一見、ただの人間のようだが、その生命力の密度、少し興味深いな」

 

大男――ネロ・カオスは、抑揚のない声で呟いた。

その体内には六百六十六の獣を宿す「混沌」が渦巻いている。

 

「……あんたが、この騒ぎを起こした親玉か?」

 

虎杖が拳を構える。

ネロは冷静に、観察するように虎杖を見据えた。

 

「親玉……。俗な表現だが、否定はせん。私はただ、この地で混沌の果てを観測し、探求するのみ。……だが、貴様のような人間は私の計算には含まれていなかった。実に不確定要素だ」

 

ネロの黒色コートから、血のような赤い目を光らせた黒い豹のような獣の頭が這い出してくる。

 

「…今貴様に出来る選択は自分が理解できない事象は排除するか、我が混沌に取り込むかだ。……貴様の肉体(にく)は私の『混沌』にどのような血の色に添えてくれるのだ?」

 

「悪いが、まだ食われるわけにはいかねぇーよ!」

 

 

 

 

 

日が既に沈み、黒い夜が総耶の街を包みこんだ中。

廃ビルに囲まれた静寂の中、ネロ・カオスの黒いコートがまるで生き物のように蠢いた。

 

「…まず手始めだ。我が渦巻く混沌の一部、貴様の身でとくと味わうがいい」

 

ネロの黒いコートの中から、黒い「何か」が飛び出してきた。

そこから形を成したのは、漆黒の毛並みを持つ巨大な狼、鋭い嘴を持つ怪鳥、そして岩のような鱗に覆われた大蛇。

 

――合計5体の獣たち。

 

それらは意思を持つ「影」の怪物として、一斉に虎杖へと牙を剥いた。

 

「こいつら、さっき戦った屍鬼(グール)とは格が違う……!」

 

「……私をあのような死体如きと同じにするな」

 

虎杖は飛来する怪鳥の爪を紙一重でかわし、着地と同時に大蛇の頭部を自慢の脚力で踏み砕く。

間髪入れずに襲いかかる黒い狼の顎を、自身のパーカーの袖を犠牲にしながらも強烈なアッパーで狼の顎を打ち砕いた。

足元から飛び出した鋭いギザ歯がびっしりと生え揃ったサメを回避して先程の黒い狼同様に渾身のアッパーでサメの上顎をギザ歯ごと殴り砕いた。

常人離れた凄まじい身体能力で5体の獣を仕留めた虎杖だったが、息を整える間もなかった。

 

ネロ・カオスは、表情一つ変えずにそれを見つめていた。

しかし、その瞳の奥には、計算外の頑強さを見せる人間への、わずかな「興味」が揺らめいている。

 

「……ほう。ただの人間にしては蠅のようによく動き回る。だが、この程度で終わりかと思ったか?」

 

ネロが黒いコートを大きく翻すと、今度は路地全体が黒い影に飲み込まれた。

 

「我が身に宿るのは、六百六十六の獣。その一部を解放しよう」

 

影の中から、先ほどとは比較にならない数の気配が立ち上がる。

 

 

獰猛な肉食獣、空を覆わんばかりの猛禽類、毒液を滴らせる爬虫類。さらには、巨大な鎌を持つ昆虫、宙を泳ぐ異形の魚類、そして物語の中から這い出してきたような、角を持つ「幻獣」の姿まで。

 

ーーその数は先程の4倍、およそ20体。

 

 

「おいおい、普通動物園でもここまではいねーぞ……!」

 

虎杖の頬を冷や汗が伝う。

一体一体が先ほどと同等、あるいはそれ以上の戦闘能力を持っている。それが波のように押し寄せ、四方八方から虎杖を食い殺そうと殺到する。

 

「……『混沌』を前に、個の力がいかに無力かを自らの肉体で知るがいい」

 

ネロの冷徹な死刑宣告に等しい宣言と共に、獣たちの咆哮が総耶の夜を震わせた。

 

 

四方八方から襲いかかる猛獣達の牙と爪。

虎杖の赤いパーカーは至る所が裂け、額から流れる血が視界を赤く染める。

ネロ・カオスの操る「獣」は、一匹一匹が殺意そのもので出来た塊であり、その波状攻撃は休む間もなく虎杖の体力を削り取っていった。

 

「……はぁ、はぁ……っ!」

 

膝が震える。意識が遠のきかける。

だが、ネロの冷徹な視線が自分を通り越し、まだ合流していないアルクェイドの方向を向いていることに気づいた瞬間、虎杖の心臓が爆ぜるような鼓動を打った。

 

 

(……痛い痛い痛い痛い痛い。)

 

(……)

 

(……痛いが、)

 

(……この痛みと比べたら)

 

虎杖の脳内に溢れ出たのは『あの日』の出来事だった。

 

彼女を殺してしまった罪悪感。

復活した彼女が「吸血鬼」だとしても、人としての感情も痛覚もあった。

『あの日』の約束を果たせなかったら彼女はどうする?

この怪物を野放しにしたら?

そう思っていると自分の不甲斐なさに怒った。

 

(……あの日、あの夜で俺はアルクェイドを殺しちまった責任があるんだ……。あの日、アルクェイドを守るって、決めたんだろ……!)

 

祖父の遺言が脳裏をよぎる。

 

『人を助けろ』

 

殺してしまった筈の自分を頼り、それでも笑ってくれた「彼女」を、こんなドロドロした混沌そのものに引き渡すわけにはいかない。

 

 

「動け……動けよ、俺の体ッ!!」

 

 

ーー瞬間、虎杖の拳に「澱み」のような何かが集束した。

それは怒りでもあり。

それは恐怖でもある。

人の負の感情という力とただ単純に「自分はまだ死ねない」という強い意志が形を成した、青色の炎のようなモノが拳に集束していく。

 

「……何だ? そのエネルギーの揺らぎは」

 

ネロが眉をひそめた瞬間、虎杖は地面を爆破するように踏み込んだ。

最短距離であり自身における最速の一撃。

 

 

「ーーアァアアアアアアッ!!!」

 

 

一瞬でネロの懐に移動して腹部に拳を突き刺さる。

ーー刹那、この空間を切り裂くような黒い火花が激しく飛び散った。

 

 

「ーーーぐあああぁぁッ!!!?」

 

 

ただの衝撃ではない。

魂そのものを打ち据えるような、未知の力がネロの「混沌」を内側の一部が崩壊させる。

六百六十六の獣の内の一部が共鳴して悲鳴を上げ、ネロの存在を維持する理が激しく揺らいだ。

 

 

「……計算外だ。貴様の内側には、これほどの『不浄』を飼っているのか……!?」

 

 

致命傷ではない。

だが、ネロは瞬時に判断した。

このままでは自身の「混沌」の均衡が壊れる。

黒い泥が渦を巻き、ネロの姿を包み込む。

 

「……貴様の顔、覚えたぞ。……今は、我が混沌を立て直すとしよう」

 

夜の闇に溶けるように、ネロ・カオスは一時撤退を選んだ。

静寂が戻った廃ビル街。

虎杖がその場に膝をついたのとほぼ同時に、アルクェイドが駆け込んできた。

 

「悠仁! 無事!? ……って、ひどい怪我!」

 

「……あ、アルクェイド。わりぃ、ちょっと……手こずったわ」

 

「この傷跡から見て、まさかネロ?わたしを狙っていたのに何で悠仁を…?」

 

駆け寄る彼女の手を借りて、虎杖はフラフラと立ち上がる。

 

「アルクェイド、さっき俺に襲ってきたネロって奴何か知ってるのか?」

 

「わたしたちの間ではかなりの変種でね。実を言うと今の悠仁だったら多分勝てない相手だわ。死徒の階梯の話はしたでしょ?あれは祖――それも二十七体しかいない最上位の個体の一人よ。」

 

「マジかよ、俺さっきまで最上位の吸血鬼と戦ってたのか?」

 

「ネロはその中でもさらに特殊で、古参の吸血鬼なのに城も領地も持たないで彷徨っている変わり者。教会からはカオスなんて名前を付けられてるけど」

 

「カオスって?」

 

「混沌って意味のこと。原初の地球みたいに色々なモノが混ざり合って何が飛び出してくるか分からない……って意味もあるのかもしれないわね。でもその様子だとネロを一時撤退しただけでも運が良かったのよ?」

 

「………。」

 

さっきの黒い火花――自分の拳から出た、あの不思議な力の感覚がまだ掌に残っている。

だが、それ以上に残っているのは、圧倒的な「恐怖」と「無力感」だった。

 

「……なぁアルクェイド。……俺さ、そのネロって奴相手に全然、歯が立たなかった」

 

虎杖は、震える自分の拳をじっと見つめた。

もしあの一撃が出なければ、自分は多分確実に食い殺されていた。

そうしたら、彼女を守るという約束も多分果たせなかった。

 

「……俺、もっと強くなりたい。あの日、おまえを『殺した』責任、俺の口先だけじゃなくて……おまえの隣に立てるぐらいに、守りきれるくらいの力が欲しいんだ」

 

血にまみれながらも、真っ直ぐに自分を見つめる虎杖の瞳。

アルクェイドは、そんな彼の背中にそっと手を添えた。

 

「……うん。悠仁なら、きっと強くなれるよ。わたしも、あなたがもっと強くなるのを手伝ってあげる」

 

夜空に浮かぶ月は、まだ冷たく、されど確かな光で二人を照らしていた。

 







《オリジナルキャラ紹介》
宇都宮京(うつみやきょう)
本作のオリジナルキャラ
呪術廻戦で言うと伏黒恵(親友)ポジション。
銀色の短髪で眼鏡が特徴の少年。
(※ 因みに学校での異名は「銀メガネ君」とまれに呼ばれているらしい。)


《突然の質問コーナー》

Q. 悠仁君、序盤から黒閃出しちゃってるんだけど、どーなってんすか!?

A.原作では宿儺の指食って呪力得たのですが、本作はこう言う展開もアリかと思ってネロ・カオス戦(前哨戦)で覚醒シーン(なのかな?)を書いちゃいました。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。