マンハッタンカフェは喫茶店をやりたかった   作:南亭骨帯

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 さすが喫茶(お食事処)まんはったん





その時ふと閃いた!

 

 

 やあ、オグリキャップの撃退に成功した『喫茶まんはったん』だよ。お前のような喫茶店がいるかーっ。

 

 夫もあの有名なアイドルウマ娘のサインを貰えて大喜び。あの、隣にいるのもだいぶ有名なウマ娘ですよ?

 

 

 まあその後に北原というトレーナーが頭を下げに来たりタマモクロスが様子を見に来たりと色々あったが、オグリが去ればまたいつも通りの営業に戻るのみ。

 

 さあ今日はどんな手を使ってコーヒーを飲んでもらおうかとカフェが頭を悩ませていると、ふとある事に気がついた。

 

 

 あれ?今のこの店、喫茶店らしいメニューなくね?

 

 

 いや待て。早まるな。確かにカツ丼だの生姜焼きだのと様々なお食事メニューを追加してはいたが、まだ最後の砦にサンドイッチがいたはずだ。

 

 でもサンドイッチを最後に提供したのいつだっけ?カフェは何となく気味が悪くなってきた。

 

 まさか消した?いや追加こそすれどメニューを削った覚えは無い。じゃあ仕入れるだけ仕入れて全部無駄になってる?

 

 

 カフェは頭を抱えそうになりなからも、業務の手は止めない。お客さんの注文を取って厨房の夫に伝えなければ。

 

 

「すみません、このカツサンド二つお持ち帰りでお願いします!」

「…………かしこまりました」

 

 

 いたわ。サンドイッチ。変わり果てた姿で。

 

 

 そういえば提供してた。たまには変わったものを、と言って単行本四冊重ねたみたいなサイズのカツパン出てたわ。お前そんな所にいたのか。

 

 あれ?いつの間に?とお目目グルグルなマンハッタンカフェ。混乱は後にしてまず夫に注文を伝えると、揚げていたカツを二枚取り出すと手際よくカットして野菜、マヨネーズ、カツ、ソース、そしてパンと手際よく重ねていく。

 

 はい、と手渡されたそれはもう何度も見ていたはずのメニュー。なのに何故だろう、急に変わり果てた姿に見えてきた。

 

 

「……カフェ?」

「あっ、なんでもないです……」

 

 

 ちょっとお客さんが減ってから一回問いただそう。カフェはそう決意した。

 

 

 そして同時に冷や汗が頬を伝った。もしかして知らないうちにメニュー変わってたりする?と。

 

 いやそんなはずは流石にない。だってそういう時はちゃんと話し合って改変を行っている。いくら売れるからといって夫も黙って変えたりは……しない、よね?

 

 

 胸中のモヤモヤを抱えながら、それでも何とかお客さんを捌き続けたカフェ。ピークを過ぎてお客さんがいなくなるまでに二時間の時を過ごした。

 

 お客さんがいなくなったのなら、尋問タイムだ。お前またやったんか、と聞かなければならない。

 

 

「その……サンドイッチ用のパンが勿体なくて……お客さんに相談したら、お持ち帰り用メニューにしたら?って」

「…………ゎぁ」

 

 

 何も言えなくなっちゃった。オラッ、悲しい現実をまんじりともせず受け入れろ。

 

 

 どうもサンドイッチ系統のメニューは人気がなく、時々注文が入ったかと思えばテイクアウト用としての物がほとんど。

 

 それを何とかできないかということで開発したのがカツサンドだったらしい。

 

 思えば時々テイクアウトのお客さんはいたけれど、心を無にして働いていたものだから頭から抜け落ちていたようだ。

 

 

 あーあ、またカフェ泣いちゃったじゃん、と思ったそこの君。今日は一味違うぞ。

 

 

 

 その時ふと閃いた!

 

 

 

「……!いい事を、考えました……!」

「えっ?」

 

 

 カフェ、いいことを考えた。

 

 サンドイッチはコーヒーにあうメニューとして考えたもの。しかしテイクアウトの需要ばかりで店内で食するものはほとんどいない。

 

 ならば逆に考えるんだ……持ち帰らせちゃってもいいさ、と……!

 

 

「コーヒーとサンドイッチのテイクアウトセット……!これです……!」

「お、おお……?」

「……微妙な反応ですね……?」

「いやあ……そんなに上手くいくかなあって……」

「っ……!?」

 

 

 まさかの否定意見。カフェヲイジメヌンデ……。

 

 

 しかし夫の考えもごもっとも。コーヒーを付けるとその分値段は上がってしまうし、値段が上がるくらいならコーヒー無しで頼む人ばかりになるんじゃないだろうか、という心配があるのだ。

 

 事実、それをカフェに伝えると耳をペタンと垂れさせてしまった。可愛いね♡

 

 

 それでもカフェはへこたれない。

 

 

「っ、そうです……!手持ちのタンブラーや水筒にも入れるようにすればいいんです……!」

「……と、いうと?」

「容器のサイズを問わずにコーヒーの値段を一律にすれば……トラックドライバーの人なんかは喜んでくれるはずです……!」

「言われてみればそう、かも?」

 

 

 というわけで仮の値段設定がこちら。

 

 ・カツサンド800円

 ・ハムチーズサンド700円

 ・テリヤキサンド700円

 ・カツパン900円

 ・エビカツパン900円

 ・カツカレーパン900円

  ↳全メニューにコーヒー追加で+100円

 

 うおっ、お手頃価格(サイズ比)……しかし消費者に寄り添うその姿勢誉れ高い。

 

 ちなみにそれぞれのサイズはウマ娘基準。つまりヒトミミ労働者でも容赦なく腹いっぱいになる代物である。

 

 

「これならいけます……!今度こそコーヒーを広められます……!」

「……まあ、カフェが楽しそうでなによりだよ」

 

 

 ふんすふんすと張り切りながら、カフェは明日が待ち遠しくなった。流石に今日からは無理でござる。

 

 

 

 

 

 そして翌日。新たな売りとして外に看板を立て、店内のメニューにもデカデカと新商品としてアピールを開始。

 

 どうなるかと思われたテイクアウト中心メニュー。その初日はというと……そこそこ成功した。

 

 

 というのもこの店、徐々に評判が広まりつつある為ピークタイムだと待ちが入ることが増えてきたのだ。

 

 その為、中で食べられなくともテイクアウトなら……という客を回収することに成功。今まで取りこぼしていたお客さん達を満足させられるようになった。

 

 じゃあ普通に大成功でいいんじゃないかって?うん、夫の目線だと大成功なんだけどね?そこそこの成功に収まった理由は翌日にある。

 

 

 

「いやあ、この店のコーヒーはいいね!」

「……!ありがとう、ございます……!」

「スッキリしてて飲みやすいし、眠気覚ましに丁度いいよ!」

「……ありがとう、ございます……」

 

 

 褒められたのは嬉しいし、美味しいと言ってくれたのも嬉しいんだけども。なんか思ってたんと違う。

 

 コーヒーを頼むお客さんは増えたよ?増えたんだけど、その分豆に拘る余地が減ったといいますか。

 

 数をこなさなきゃいけなくなったので、一杯一杯心を込めて……という風にはいかなくなった。手で挽くのでは間に合わないので業務用の機械まで導入した。

 

 カフェの理想とは一杯一杯自らの手で豆を挽き、その日その日でのベストな配合を考えたりとか、そういうやつ。

 

 現状はカフェの理想とは大きくかけ離れていた。

 

 でもこれまでに比べたら100倍喫茶店らしくなってきたのでまた微妙な顔をしていたり。

 

 

「でも……喫茶店として一歩前進です……!」

「カフェ!1/10サイズオグリカツ丼持って行って!」

「……一歩、前進です……」

 

 

 尚、喫茶店として一歩進むうちに食堂として菊花賞くらい進んでる気がする。うーん3000メートル。

 

 






常連A「眠気覚ましに丁度いい」
常連B「コンビニのより美味い」
常連C「豊かなコクとフルーティーな酸味があって素晴らしい一品。これを100円で水筒に入れてくれると聞いて正気かと思った。悪いことは言わないからもう200円くらい値上げしてもバチは当たらないと思う」

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