といっても、ほとんどSCPは登場する予定はありませんが……。
また、作者はブルアカユーザーではありますが、基本的に知識は某掲示板等の二次創作から得ているにわかです。
同様に、SCPもそれほど詳しくありません。
色々と粗があると思いますが、どうかご容赦を。
「──お疲れ様でした、平山先生」
頼もしくも可愛らしい相棒と最期の会話をしていた時、突如としてシッテムの箱の画面が乱れる。
そして画面には、見たことのない──いや、どこかで見たような……?──少女が映っていた。
「私は連邦生徒会長と呼ばれる者です。これはシッテムの箱に仕込んでおいたメッセージです。そのため先生からの質問には答えられません」
平山は驚きこそしたが、自己紹介を聞き平静を取り戻した。
キヴォトスをまとめていた存在が、常識に縛られた存在であるはずがないのだと思ったからである。
「まずは謝罪を。何も知らないあなたを利用したことをお詫びします」
利用とはなんのことだろう。
確かに平山には、キヴォトスに来た経緯の記憶はない。
ある日目を覚ますと、キヴォトスに来ていたのだ。
その際になにかあったのだろうか。平山に思い当たる節はない。
平山はごく普通の一般家庭で育った。平凡でどこにでもいるような、まさに一般人というべき人間だった。
そんな平山を利用?
確かに正義感というか、そういうのは強い方かもしれない。
少なくとも、見ず知らずの存在であったはずの"生徒"達の"先生"と成り、全員を平等に導き……大袈裟に言うなら、全員を平等に愛していた。
そんなことを数年間、世界が終わる
「まず……この世界がどうあれ滅亡することは、避けられないものでした。つまり、あなたに最初から敗北が決まっていた世界の世話を任せたことになります」
それを聞いた時、妙に平山は納得していた。
確かに平山が"先生"としてキヴォトスを駆けずり回ったこの数年間で、いくつもの世界が終わりかねない出来事が起きた。
平山はこれまでそれらを死に物狂いで阻止してきたが、最後の最後に避けられない"終わり"に直面してしまった……それが今だ。
きっと引き伸ばし続けた"終わり"がついに来たのだと、平山は納得した。
同時に、今までそれほど多くの滅亡案件が発生したのも、最初から"終わり"が決まっていたからだろう。
「しかし……少なくとも、このメッセージを聞いているならば、平山さん。あなたは最後の滅亡以外を乗り越えてきたのでしょう」
これが"終わり"で、最後の滅亡案件であったか。
確かにどう足掻いても避けられそうにない。"これ"さえ始まれば世界が終わることは避けられない。
……なら最初からこの最後の滅亡を起こせばいいのでは?
その考えを見抜いていたかのように、メッセージは言葉を紡ぐ。
「あなたが辿り着いた果ては、全ての滅亡を回避した場合発生するもの。我々が真に解決策を見つけねばならない最悪の"終わり"。勿論それ以前の滅亡案件にも対応しなければなりません。しかし、それらはあなたが既に"解答"を見つけてくれました」
正直、意味がわからない。
平山にはそんな事しか考えられなかった。
───真に解決策を見つけないといけない"終わり"。
平山が出した"解答"により、それ以前の終わりは問題外となった。
……そこがわからない。結局世界は滅亡するし、何もかもが意味がないのではないか。
「平山さん」
投げかけられるメッセージ。平山は意識を引き戻される。
「あなたは、きっと何にしても意味はないと思ったことでしょう。しかし違うのです、あなたの行動には意味があった。最初に……約束、したでしょう?」
約束。平山に思い当たる節は一つしかない。
キヴォトスで目を覚ましたあの時、連邦生徒会首席行政官……七神リンに言われた事。
『連邦生徒会長の伝言です。この割り箸を、どうしようもなくなったその時に割ってほしい、約束ですよ……以上です。意味がわからない? ……私もです』
そうして渡された、どうにも開けられないケースに入れられた割り箸。それが連邦生徒会長が遺した"約束"。
正直意味わからんと思っていたが、不思議とその割り箸に愛着のようなものを持っていた。
「荒唐無稽な話だと思われるかもしれません」
メッセージは一拍置いて、言う。
──平山すら知らない、平山の秘密を。
「あなたには現実改変能力……俗に言う、超能力が備わっています。それも……他に類を見ないほどの性能で」
平山は驚愕する。
超能力……自分に? 平凡な一般人である平山に、そんなものがあるとは思えないのである。
……メッセージは続ける。
「平山さん、あなたは史上最強の能力を持っていました。しかし、あなたがその力を自覚していなかったが故に、あなたの力はただ一つ……"割り箸を綺麗に割る"行為だけに使われていました」
割り箸を、綺麗に割る。
確かに、平山は割り箸を綺麗に割れる方であった。それが、この能力とやらを無自覚に使用していたがためだったというのは、なんとも驚きを隠せない。
「今その時まで世界が存続したのは、あなたが"約束"を守ってくれたからなのです」
どうしてそこで"約束"が出てくるのだろう。驚きの連続で、平山には理解できていなかった。
「あなたの力は"割り箸を割る"事にしか使用されない。ですがそれによって、あなたの力はあらゆる妨害にあっても割り箸を割る事に特化しました……それこそ、あなたが割り箸を割るという結果以外を全て打ち砕くほどに」
つまりは、そういうことである。
今まで平山を、ひいてはキヴォトスを襲った多くの滅亡は、平山が"割り箸を割っていない"がために回避……否、打ち砕かれてきたのだ。
──割り箸を割る"まで"に襲いくる脅威、その尽くを平山は無自覚に打ち破った。
「きっと、天変地異は軽くなり、隕石の軌道はキヴォトスを外れ、侵略生命体が現れても撃退できる程度の事態に収まる……その他様々な脅威を、平山さんがその力で打ち破ったのです」
なんとも、恐ろしいほどの力だ。
平山は、深くため息をついた。
無自覚故に、"割り箸を如何なる脅威があろうと割る"ことにしか使われていない。
少なくとも平山が異変を感じ取るほどのおかしなことは起きなかった。
それが、唯一安堵した要素だった。自身が本当にそんなデタラメを可能とする能力者であれば、自分自身がキヴォトスの脅威となりえる。
生徒の、敵になる。それだけは避けねばならないのだから。
「それでも最後の"終わり"には太刀打ちできない。あなたの力でも、全てを平等に無にするアレは、どうにもできない────それが、私が出した結論です」
確かにそうだ。少なくとも能力を知っただけの今の平山に、この事態の打開策は思い浮かばない。
「しかしそれ以前の滅びは、先程申した通りあなたが解決策を提示してくれました。あなたの力ありきの部分は外部から別の神秘を利用することで代用し、あなたの力なしでも解決可能なものには我々の力だけで解決してみせます」
それは、力強い言葉であった。
絶対に成功させる、絶対に滅びを退けるという、"子供"とは思えない決断。
これが、この精神力こそが連邦生徒会長が"超人"と言われる所以なのか。
「……私は現在、ある方法を使用しキヴォトスの外──いえ、世界の外側からキヴォトスを観測しています」
連邦生徒会長は現在も行方不明。
それがまさか、世界そのものからいなくなっていたとは……数年探しても見つからないわけだ。
「平山さん。言わなくてはならないものがあります。私が行方を眩ませた理由……あなたを、利用した理由です」
連邦生徒会長は、緊張しているのか、一拍を置く。
かくいう平山も緊張している。謎に包まれた"超人"……そんな彼女が如何なる理由で自分のような凡人──連邦生徒会長が言うには、どうにも非凡な者らしいが──を、利用した訳を知れるのだから。
「このキヴォトスは……既に何度も滅んでいるのです」
──平山は、一瞬思考が止まった。
キヴォトスは既に滅んでいる? 何度も?
しかし滅びは"今"起きている。つまり、"まだ"滅んでいない。
一体、どういうことなんだ……?
メッセージは、告げる。
「始まりは、唐突でした。生徒のテラー化……キヴォトスのテクストの崩壊。キヴォトスは青春テクストを失い形を壊し滅びました」
テラー化。確かに幾人かの生徒がテラーと化した事はあった。
幸い、平山とテラー化した生徒と縁のある生徒達の尽力により、生徒は元に戻り被害も……まぁ滅ぶほどではなかった。
「私は生き延びた生徒達の護衛の元、この事態をなんとかするために、時間という線路を移動する時間列車……それにより私は時間旅行を行い、やり直しました」
時間列車。確かハイランダー鉄道学園に安置されて"いた"という古代人が遺したオーパーツ。
平山が赴任した際には既に存在していなかったもの。もしかしたから、連邦生徒会長が動かしていたがために、無くなったのだろうか。
「しかし、滅びはやってきました。生徒のテラー化以外に、侵略者が襲来したり、天変地異が起こったり……これでは駄目だと、私は最終手段を使用しました。即ち今の状態……世界から切り離される選択をしたのです。」
平山は、その話に既視感を覚えていた。
連邦生徒会長が語った滅びは、恐らく断片だろうが平山が経験した滅びかねない事象と同一だ。規模は……平山の力無し故に違うかもしれないが。
「私のいない世界。それで何か変わるかと思いましたが、事態は変わりませんでした。……そうして、あらゆる手段を使用し、それでも滅びが避けられないと理解しました。ですから、私は……どんな滅びが訪れるか……どうすれば解決できるか……それが可能な手段、あるいは人物を探すことにしました……それが、あなたです」
「あなたは……あなたの力を使えば、あらゆる終わりを避けられる。様々な情報を元にそう導き出した私は、あなたを利用し滅びを避ける解決方法を探すことにしたのです」
それが、平山が選ばれた理由。
平山の力を使えばいとも容易く滅びを乗り越えられる。どんな滅びだろうが乗り越えられる平山。
そうして"どんな滅びが訪れるか"、"どうすれば回避可能か"を調べる。
──これを"解法"とする……それが連邦生徒会長の作戦。
そこで平山に全てを託さなかったのは、平山では最後の滅びが超えられないからか、それとも……。
「気を悪くされるかもしれません。いえ、それが普通のことでしょう。あなたを、捨鉢にする……それが私の出した滅びへの手段なのだから。恨んでくれて構いません。私はそれらを飲み込み、次の先生と共に、今度こそ世界を救います」
次の世界に、平山はついていけない。平山では、最後の滅びは超えられない。
次の先生であれば、超えられるのだろうか?
いや、そうなるよう、連邦生徒会長がサポートするのだろう。
──ならばいい、
平山は、どこか非人間的な……ある種聖者の精神に到達していた。
能力を自覚したからか、"先生"をしてきたからか。
……それは平山にもわからない。
今の平山には、"生徒のためになれた"ということが、とても喜ばしいことになっていたのだ
「それでは、割り箸を割ってください。お疲れ様でした」
平山は直感する。
今なら割り箸のケースを開けられる。
──能力を自覚した今なら、ケースを"割れる"
メッセージ動画はノイズが走り消滅する。
そして残ったのは、可愛らしい今や最後の生徒となった、とても頼りになる相棒……A.R.O.N.Aであった。
「不明なメールを収納……先生、大丈夫ですか」
「"大丈夫だよ、A.R.O.N.A。……割り箸を、割るね"」
「! ……"その時"ですか、今が」
「"あぁ。最期まで私のサポートをしてくれて、ありがとう"」
ケースを"割る"。
このケースはそもそも開けられる構造ではない。そう
能力を自覚した今の平山なら
そうして、開けられたケースから割り箸を取り出し、左右に引く。
──分子のひとつひとつがプチプチと引き裂かれるのが、平山にはわかった。
最後まで、割ろうとして……。
「"あっ"」
「先生!」
世界は、終わりを迎えた。
……さて、ここで連邦生徒会長の誤算を紹介しよう。
一つ、平山の力を史上最強としながら、その力の強大さを理解してきれていなかったこと。
一つ、割り箸を割る"その時"を、曖昧に設定していたこと。
一つ……平山に、能力を自覚させたこと。
──平山は"終わりなんてやだなぁ"と心の中で思った。
それが、現実改変を起こしたのだ。
無に帰した世界から、彼と彼の愛する最後の生徒は脱出した。
連邦生徒会長も、平山も予期せぬ事であった。
持ち物
シッテムの箱(メインOS A.R.O.N.A)
約束の割り箸(現在行方不明)
約束の割り箸が入っていたケース
大人のカード
護身用の拳銃(使用した形跡がない)
財布、スマホ、普通免許
連邦生徒会長の状態や時間列車云々はオリジナル設定(のはず)です。
平山が味わったキヴォトスの終わりは、tale:割り箸を割る人の最期と似たような物です。