・平山の容姿は一般的な日本人男性で、強いて言うなら顔がワカモ好み。
・キヴォトスで先生になってから既に数年経過。就任直後が二十代前半。終焉時で二十代後半。そのため一部の原作生徒は卒業していた。
・先生になる以前に"先生"に必要な技術を得ていたわけではなく、先生になってから経験を積んでいった。
・平山先生は全ての先生の原点であり、決してプレナパテス先生と同一人物ではない。つまり本編の始発点先生とも別人である。
・tale:「割り箸を割る人」のように不老ではない。そう思い込まされていないため、普通に歳をとる。ただ、生徒のために多くの学園を駆けずり回る事が多かったので、無意識下で身体能力だとかが違和感がない程度に強化されていた。そのため、二十代後半だが若干若々しい(老化による身体能力の低下を抑制するために無意識で能力が行使されていた)。
──喧騒が耳に届く。平山は目を覚ました。
ありえない光景だった。平山が過ごしていたキヴォトスは、ついさっきまで終焉へ向かっていた。
キヴォトスに住むあらゆる住人は、ある日唐突に消失した。当然それは、生徒達も同様だ。
唯一の例外は、最後まで平山と共にいたA.R.O.N.Aのみ。そしてそのA.R.O.N.Aも、平山と共に消滅したはずだ。
──だというのに。今目の前には、在りし日のキヴォトスらしい日常が広がっていた。
わけがわからないと、平山は目をこすった。眼前の光景が現実のものなのか判別出来なかった。
そこでふと、手に持っていた割り箸がどこにもないことに気付いた。檜の木で作られたろう割り箸は、亀裂が入り、後は力を入れれば割れるだろう状態で、平山の視界は暗闇になった。
──つまり、平山は割り箸を
……平山は軽く頭を振る。今は割り箸について考えるより先にすべきことがある。
この状況の把握と、自分に残ったはずの、最後の生徒の安否である。
懐からシッテムの箱を取り出し、パスワードを入力する。
……我々は望む、ジェリコの嘆きを。
……我々は覚えている、七つの古則を。
パスワードの認証が完了したようで、シッテムの箱が立ち上がる。そして。
「……生体認証完了。平山先生を確認……平山先生、ご無事ですか」
平山に残った最後にして、唯一の生徒……A.R.O.N.Aが、画面に映し出された。
「
「命令受諾。周辺情報のスキャン開始……解析────? ──っ、先生……」
A.R.O.N.Aの可愛らしい顔が歪む。疑念、そして困惑……教師として数年間、生徒と向き合い続けた平山の観察眼は、A.R.O.N.Aの表情にそんな感情を見出した。
A.R.O.N.AがAIらしくなく、人間らしい感情表現を行うが故に通用する技術ではあるが。
「どうしたの、
「困惑……先生、私の解析機能が故障した可能性があります。そうでなければ──」
「
平山はA.R.O.N.Aに絶大な信頼を置いている。キヴォトスに先生として就任してから、ずっと助けられてきていた。
いくらかは平山自身の能力があったとはいえ、キヴォトスが終焉する"その時"まで生き延び、先生としてやってこれたのは、間違いなくA.R.O.N.Aのおかげである。
故に、A.R.O.N.Aの言葉に間違いはないと信じている。
「……指示了解。先生……私の解析結果では、ここは──我々から見て、
「──なんて?」
平山は耳を疑った。A.R.O.N.Aの言葉ではなく、自分の身体機能を疑ったのだ。
残念ながら、平山の肉体は健康体──訂正、日々のハードスケジュールでかなり不健康だが、少なくとも身体機能に障害は認められなかった。
◆◆◆
「──つまり、このキヴォトスは私達からすると数年前の姿で……なにより、
「肯定。時系列で言うと、連邦生徒会長が失踪し、シャーレに先生が就任して
「……その就任した"シャーレの先生"は、過去の私ではないんだね?」
「肯定。防犯カメラ等に記録されたシャーレ奪還時の状況は、かつて平山先生が体験した事と同一だと思われます……ただひとつ、"シャーレの先生"が平山先生ではなかった事以外は。映像をご覧になりますか?」
「……見よう」
──防犯カメラに記録されていた映像を観る。そこに映るのは、確かに平山がキヴォトスで目覚めたあの日の光景だった。
ただ一つ、シャーレを奪還するべく集まった──随分と語弊があるが……──生徒達を指揮する"大人"が、後の"シャーレの先生"が、自分ではないという一点のみが違っていた。
「そっか……本当に、別の世界なんだね」
「肯定。とはいえ、完全に別の世界であるかどうかを確定させるには、情報が足りません」
「そうだね……うん。"彼"は私ではないね、
平山はキヴォトスに来る以前、軍に属していたわけではない。
平山は、どちらかといえば割り箸を綺麗に割れるだけの、至って平凡な日本人男性であった。特別なことはなく、少なくとも戦略指揮を行える"指揮官"ではなかった。
あの日。キヴォトスで目を覚ました平山は、わけも分からず銃撃戦の争いに身を投じた。
あの時、平山は戦略指揮を行えなかった。正確には、平山の指揮は指揮とも言えぬ稚拙なものであった。
銃弾一つで死に至りかねない恐怖と、そもそも"戦争"を知らない未熟な覚悟。
それらを、生徒の為という曖昧な意志を持って心にしまい込み、指揮をし続けた。
幸運だった。今にして思えば、自身の
粗末な指揮は有用な指揮に見せかけられた。生徒達は先生の指揮を評価した。
唯一人、平山だけがその戦闘結果に疑問を抱いた。自分では、これほどの成果を出せないと理解していたからだ。
……この"大人"の指揮は、"先生"として数年間、キヴォトスにて戦略指揮をしてきた平山の経験をして、"完璧"と言わざるおえない。
今の平山ですら、シッテムの箱抜きでこれほどの
この"大人"がキヴォトスに来る前に何をしていたかはわからない。しかし、少なくとも……連邦生徒会長が選んだ"先生"なだけはある、ということか。
……平山は頭を軽く振る。"シャーレの先生"についてはこれからも情報を手に入れる事が出来るだろう。
平山の"先生"としての生活は、既に終わりを迎えた。このキヴォトスには、平山ではない"シャーレの先生"が既にいる。
──つまり平山はお役御免ということだ。
「色々、気になる事はあるけど……これから、どうしようか」
そのため、平山達はなによりも当面の生活について、考えねばならない。
平山も死にたいわけではない。それに、"先生"ではない状態でキヴォトスを見て回るのも面白そうだ。
「提案。アビドスに潜伏するのはどうでしょうか? この世界で平山先生の身分を証明する物を、まともに使えるとは思いません」
「確かに……大人のカードも、
「……不確定要素が多いです。"シャーレの先生"から見て、平山先生は突如キヴォトスに現れた不審者です。それも、自分と同じ外から来た人間……ゲマトリアとは接触していないでしょうが、警戒はされる可能性が高いと思われます」
今の平山に、自身の身分を証明する物はない。それらは全て"シャーレの先生"のモノだ。
平山が表舞台に出れば、存在する筈のない2人目の"シャーレの先生"が存在することになる──信じられればの話だが。
「……自分の身分を証明する物を、また別に手に入れなきゃいけない、か。うーん……あんまり良くないけど、ブラックマーケットとかに────」
「──先生! 逃げてください!」
ジャキッ。
今後、自分がすべき方針を考える平山。刹那、A.R.O.N.Aからの鋭い警告が走るが──遅かった。
──平山の後頭部に、銃身が押しつけられた。
「一つだけ聞きます──貴方は、何者ですか?」
それは、七囚人が1人──「厄災の狐」狐坂ワカモの、急襲だった。
シッテムの箱のパスワードは、プレナパテス先生と同一です。これに深い意味はありません。
単純にシッテムの箱のメインOSが"アロナ"ではなく"A.R.O.N.A"であるため、本編先生のパスワードではなくプレナパテス先生のパスワードを採用しただけです。
少なくとも現状、"アロナ"でないシッテムの箱のパスワードは全て同一であり、"アロナ"であるシッテムの箱のみパスワードがちがう……という設定でいきます。
平山さんが"原点"でないなら、また別のパスワードでも良かったかもしれませんが……。
平山さんはもう"先生"ではないので、先生特有の「 "( 台 詞 )" 」は無くなりました。既に彼からは"先生"のテクストが