旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第1章 導きの力
プロローグ


 

 

 XX24年9月22日。

 今まさにサチの冒険が始まろうとしていた。

 

 それはサチにとっては寝耳に水。

 それでも師と仰ぐドラキオ姉さまの命令ならば従うしかない。

 

 

「サチよ。お前も十分な力が付いた。戦士を名乗って良かろう。自立して魔物討伐に出るのだ」

「ついに私も戦士に…嬉しい!でも一人では心細いです…ああそうか、姉さまはサチが邪魔なのですねっ、そうですよね、私なんて邪魔ですよね!ぐすっ」

「…おい。勝手に理由を決めつけて泣くでない」

「だってっ」

「くどい!」

 

 サチの大きな瞳から涙が溢れ出す。

 感受性豊かなのは結構だが、この世界では役に立たない。

 サチの先行きを案じドラキオはため息をつく。

 

 

 とある事情から、サチは国を飛び出し放浪していた。

 

 そんな中で出会ったのがこのドラキオ通称ドラちん、現在上級職の冒険者だ。

 凛とした美しさの中に隠された恐るべき戦闘能力。否、近寄りがたい雰囲気がすでにその強さを物語っているであろう。

 そんな冷たい印象とは裏腹に情に厚く、赤の他人のサチをこんなにも気に掛ける。

 今や本当の妹のように。

 

 行動を共にするうちにすっかり虜となったサチ。ドラちんを姉さまと呼び大いに慕う。

 自分もこんなふうに強く、美しくなりたい。そうすれば憎き仇を討てる。

 自分の国を、さらにはこの世界を破滅に追いやろうとしている魔物達を、この手で倒せる!

 

 それが今、たった一人で放り出されようとしているのだから必死だ。

 

 

「こんな私がついて回っても役にも立ててないし、邪魔に決まっています!だからでしょっ」

「そうではない。俺と共に行動すればお前は確かに強くなる。だがこの世は強さだけでは生きてゆけんのだ」

「強ければ魔物にも勝てますっ」

「その辺の雑魚にならばいくらでも勝てよう。だが強敵はそうは行かない。連中はバカではない。力業では太刀打ちできん敵もいる」

「ではお勉強でもしますか?」

「方向性は間違っていない。必要なのは経験だ。実戦により学ぶのが一番。様々な経験を積んでこそ一人前になれるのだ」

「経験…」

「お前はまだ小さな世界しか見ていない」

 

 

 サチの知る世界は、生まれた王国とドラちんと共に旅をした地。

 いずれも自分の意思で選んだ場所ではない。

 

 

「姉さまと一緒に見てはいけないのですか?サチはまだまだ姉さまと一緒にいたいです!」

「甘ったれるな。付いて回るだけでは、真の世界は開けん」

「うう…っ」

 

 再びサチの瞳に涙が溜まって行く。

 

「そうやって泣きべそをかくな。いつまでもお前の面倒を見られるほど、俺も暇ではない」

「だったら、面倒を見てくれなくていいですからっ」

「俺とお前はレベルが違い過ぎる。自らのレベルにあった仲間が必要だ」

「レベルにあった仲間…?」

「そうだ。その仲間と共にお前が道を決めるのだ」 

 

 

 冒険者は皆それぞれパーティに所属し、魔物討伐の旅をしている。

 

 ドラちんにも3人の仲間がいる。彼らも全員上級職だ。

 年下でか弱すぎるサチはほぼ相手にされておらず、酒の肴にされからかわれる程度。

 その度にドラちんが“怒る”のだが…。

 ちなみに現在のドラちんの職業はバトルマスター。怒りはこの職業の重要な特性である。

 

 

「仲間を3人集めろ。そして連れて来い。俺が素質を見定めてやる」

「仲間が集まったら、また一緒に付いて行ってもいいですか!」

「状況が許せば、そんな事もあろうな」

「本当ですね?今すぐ超特急で探してきます!待っててください、姉さま!」

 

 

 

「…。全く落ち着きのない娘だ。独り立ちはまだ早かったか?」

 

 慌ただしく、しかし案外あっさり去って行ったサチを見送るドラちん。

 世話の焼ける弟子を持ってからというもの、ドラちんの悩みは尽きない。

 だがそんな子ほど可愛いものだ。

 

 

「サチよ、俺を越えてみせろ」

 

 

 

・・・

 

 

 

 こうして敬愛する師の元を飛び出したサチ。

 目を皿のようにしながら、点々と町を彷徨い歩く事ひと月近く。

 こうと決めたら一心腐乱。寝食も疎かに歩きまくった結果は当然…。

 

 

 

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