旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第9話:武器の調達・第二弾

 

 

 翌朝。

 

 

「おはよう!」

「お、もう起きたのか?」

 

 夜明け前からの鍛練はボシュの日課となっている。

 そこへ顔を出したのはサチであった。

 

 

「付き合うよ。相手いないと感覚掴めないでしょ?」

「その通りだが、二日酔いとか大丈夫なのか?昨夜大分飲んでたが」

「昨日の事は翌日に持ち越さないタチなので」

「そりゃ都合のいい体質だな!なら頼もうか」

 

 

 

 剣術と体術の稽古は延々と続き、二人がひと汗かいた頃、リリとアイミーが起きて来た。

 

 

「おはよー…、何、二人で稽古してたの?」

「ちゃんと体を休めてもらわないと困るよ!」

 

「休んだよ?」

「俺も」

「何か信用できないんだよね。リリ姉、何とか言ってやって」

「本人達がそう言うんだから、そうなんじゃない?」

 

 

「そんな事よりさ、今日は早めに出て武器屋に行くよ」

「武器?誰かの武器壊れたの?」

 

「ううん。ボシュにもっと適した武器ないかなって思ってて」

「はぁ?何をいきなり。上達したってたった今褒めてくれたの誰だよ」

「もちろんウソじゃない。でもボシュにはもっと合う武器があると思うんだ。もっと他に試してもらいたくて」

「そうだね。アタシらと違って、選ぶ余地があるんだし。どう?ボシュ」

 

 

 しばし剣を見つめていたボシュだが、すぐに納得。

 

「そうだな。一理ある。もっとしっくり来るのがあるかもしれない」

 

 

「そう来ると思い、武器屋を見繕っておいたのである!」

「ジョニじい、いつの間に?」

「千里眼でも持ってそうだわね」

「探す手間が省けた、さすがジョニじい!朝ご飯食べたら早速行こう!」

 

 

 

 

 

 一行が訪れたのは、武器屋というよりも骨董品屋だ。

 

 

「こういうところに掘り出し物が眠っているのである。探してみるがよい」

「もっともらしい事言ってるが、ここしか見つからなかっただけだろ」

「ぐぬぬ…っ。ワシはちょっと野暮用を思い出したのである!用事が済んだら構わず出発せよ。後から追うのである!以上!」

 

 挙動不審気味に言い募り、あっという間にいなくなった。

 

 

「あの図体の割りに、素早いよな、アイツ!」

「そうなの。時々目で追えない時ある」

「サチでも見えないの?アタシしょっちゅうよ」

「気配ないよね、あの人、人?で、いいか」

 

「姉さまの師匠って分かったから、今では納得だけどさ。やっぱ引っかかるなぁ」

「それはあのエロ具合だろ。難大アリだ!」

 

「被害に遭ってない人が言うなー」

「そうだそうだー!」

 

 

 話が別の方向に行って、サチは内心ホッとした。

 口にすべきではなかった。

 ジョニーが別の目的で近づいて来たのではという疑惑についてはまだ…。

 

 

 

 やがて薄暗い店内を物色していたボシュが声を上げる。

 

「これなんか、案外俺の手にしっくり来るな」

「槍か。いいんじゃない?それ使ってみれば?直感は大事よ」

「あっ、アタシもいいの見~っけ」

「何なに?あ、ブレスレット?」

 

 リリが手にしていたのは、小さなスライムを3匹繋げたデザインのブレスレット。

 それぞれが違う色をしていて可愛らしい。

 

 サチも興味深げに覗き込む。

 

「リリ姉って意外、そういうの好きなんだね」

「ね~。もっと大人っぽいの選ぶと思った」

「うるさいっ、人の好みはそれぞれでしょ」

 

「あっ!なら私あれ買おうかな」

 

 サチが指で示したのは、ピンクのスライムを象った何ともボリューミーな帽子だ。

 2点並んだうちの片方を手にして被ってみる。

 

 

「しっくり来る!」

 

 

「マジかよ…」

「もう一個あるよ、アイミー、お揃いで買おうよ!」

「ええぇ?!私はいいよ、ほら、似合わないし?!」

 

 全身を使って拒絶を示すアイミー。

 そこへ店主が近づいて来て、声を掛けられた。

 

 

「お嬢さん方、お目が高い!それはついさっき入荷したばかりで、被るだけで経験値が50%も上がるという貴重な帽子だよ!見たところお客さん、基本職の冒険者さん達だろ?」

「はい!よくお分かりで!」

「経験値が上がる?そんなの被っただけで?眉唾モンじゃないの~」

 

「失敬な!疑うなら買わなくていいよ。欲しいってヤツが山ほどいるんだ。今日中に売れちまうだろうなぁ」

 

 どこまでも胡散クサい店主だが、サチは目を輝かせて聞いている。

 

 

「カワイイし、私買っちゃお!オジさん、1個ください!あ、やっぱ2個ください」

「毎度あり~♪」

「おい、マジで買ったのか?絶対だまされてるぜ、リリ姉、何で止めないんだよ!」

「だってぇ…」

 

 

 リリの手首にはすでに購入済みのブレスレットが揺れている。

 それもまたスライムであった。

 

 

「お前ら、あのフォルムに完全に毒されてるな…。ま、自分の金だしいいんじゃねーの?」

「お兄ちゃんはその槍を買ったんだ」

「ああ!これからは槍の鍛練も追加しなきゃな」

「忙しいね、次から次へと。貪欲な若者、結構な事だね、未来は明るいよ」

 

 子供っぽい趣味と思いきや、コメントは老の方か。

 

 

「リリ姉!いいのゲットできて良かったね!」

「そうだね。アイミーも何か買えば良かったのに」

「欲しいのなかったし、私はまた今度でいいよ」

 

 

 サチが密かにアイミーの背後に回り、ピンクスライム帽を被せようと迫る。

 

 

「サチっ、何する気?」

 

「鋭い、見つかった~」

「お前の異様な熱気が伝わったんだろ」

「それは良くない。修行を積まねば!」

「そんな修行はいりません!そんな事より、お兄ちゃんの槍の練習に付き合ってあげて」

「それはもちろんよ。さて。じゃあ先に進もう」

 

 

 

 ピンクスライム帽を被ったまま、サチは颯爽と歩き出す。

 

 

「ホントに被って行く気だわね…」

「だから止めろって言ったんだ」

 

「そこ!何をコソコソ話してるの?」

 

 先頭にいたサチが振り返らずに言う。

 

 

「まさかあの帽子、後ろに目が付いてるとか?」

「増々コワっ…」

 

 

「それより、本当にジョニじいの事待ってなくていいの?」

「あの人なら平気。恐ろしく鼻も利くみたいだし?」

「鼻?犬じゃないんだから、そういう言い方は良くないよ」

「ここにはイイ女が揃ってるからね~」

「まあそんなとこ」

 

「えっ、そういう意味?」

「冗談だよな?それはさすがに!」

 

 

「さあ?それよりボシュ、さっさと槍使えるようにしないと、魔物が襲って来るぞ~」

「別に武器がなくったって倒せる」

 

 

「そうも行ってられなくなるわ、この先からは…」

 

 不意にサチの口調が変化した。それに気づいた面々も、真剣な表情で身構える。

 

 

「恐らくジョニじいが私達と行動しないのはそういう事」

「ってどういう事よ」

「あの人は、人間ではないからよ」

「人間じゃないのか、やっぱり」

「ま、あの成りだ。分かってたろ?」

 

「そうだけど…。でも、魔物でもないよね?あんなに親切だし!」

「どっちかに区分するなら魔物よ」

 

「つまりあれか。魔物の自分がいると、同族を惹き寄せてしまうから、とか?」

「私の勘だから、真実は分からないけれど」

 

 

 真面目な顔でも頭にはスライム帽が乗っているため、周囲の緊張感は続かない。

 

 

「…ぷぷっ!」

「やめてよリリ姉!我慢してたのに?くぷぷっ」

 

 笑われている事など気にする事なく、サチは拳を握って意気込む。

 

「さあ、魔物達。掛かって来なさい?そんでもって私の経験値、どんどん上げてちょうだい!早く姉さまに認めてもらうのよっ」

「ブレないなぁ、お前って。感心するよホント」

 

 

 

 ボシュは、いつでも姉さま一筋のサチを羨ましく思う。

 自分にもそこまで入れ込めるものがあったなら、世界は違って見えるのか。

 

 リリもアイミーも、何だかんだと言いながらサチから目が離せない。

 突拍子もない言動、根拠不明な謎の自信、自身らを惹き付けて止まない魅力。

 

 

 きっとジョニーも、そんな魅力に誘われてやって来たに違いない。

 

 

 

 

 

 

 

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