旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第99話:命燃やして

 

 

 ゼアル、シェントと大賢者を加えたサチ達一行が天使の短剣が示した光を辿って着いた先は、 岩山の麓であった。

 

 そこは不気味な霧が立ち込めている。

 

 

「これじゃ何も見えないっ」

「任せて。ここは僕の呪文で。風よ!邪悪な霧を払え!」

 

 

 こんな事を繰り返しながら進んで行くと、谷の奥に城が現れた。

 

 

「あそこに皇帝が…。行きましょう、サチ」

 

 

 いつでもサチだけに向けられるゼアルの言葉。

 思わずボシュがボヤキを口にする。

 

「なあ。ゼアルってヤツ、サチサチって、めちゃ懐いてるよな」

「アタシら見えてないカンジー」

 

 リリまでも同調し始めたせいか、ゼアルが応じた。

 

「ちゃんと見えてるわ。ここのリーダーはサチでしょう?」

 

 

「聞こえてたのかっ」

 

 

 ゼアルは出会って一度も笑顔を見せない。今も変わらず無表情だ。

 

 思わずアイミーが謝る。

 

「ごめんなさい、変な事言って!」

「別に構わないわ」

 

 一応返事は返されたが、ゼアルの意識は前方の城にしかなかった。

 

 

 

 城に入ると、早速魔物が待ち構えていた。

 

 

「ギャギャギャ!ここから先へは行かせぬ!天使の力の残りカスめ!」

 

「あのキモい魔物と同じ事言ってる。カスって言葉、超ムカつくー」

「キサマらを血祭りにあげれば、陛下はこのウィングデビルを新たな将軍にしてくれるはず!」

「ごちゃごちゃうるせぇ魔物だ。とっとと消えろ!」

 

 

 そして戦いはあっさり終わる。

 

「グギャー。オレ様の栄達の夢が…陛下バンザイ、ぐふ」

 

 

「ガナサダイは、この城からまた魔帝国を再興させる気ね」

「さっきの魔物、新たな将軍って言ってたよ」

「皇帝は魔物達を従えて新たな軍勢を作るつもりよ。世界征服の手駒としてね」

「世界征服なんて、絶対させる訳には行かねぇ!」

 

「ええ。あなた達の未来は大切なもの。私が責任を持ってあなた達の明日を守る」

 

 ここでついにサチが反論した。

 

「それは違うわ。あなた達、じゃなくてゼアルと私達皆の明日よ」

 

「そうだよ!」

「だわね」

「ちげーねー」

 

 

「皆…ありがとう。これまでの旅は孤独で乾いたものだったけれど…会えて良かったわ」

 

 ゼアルは今回ばかりはきちんと皆に向けて言葉を発した。

 

 

 

 

 

 引き続き一行は城の中を進んで行く。

 

 

「きっと一番奥に玉座があって、そこにデーンといらっしゃるわね」

「たくさん魔物を従えてるんだよね、気合入れなくちゃ」

 

「それぞれの因縁に決着をつける。皇帝は強大よ。それでも、何としても倒さなければ…。力を合わせて皇帝を倒しましょう」

 

 

 

 そして宿敵の姿がついに現われた。

 

「くくく…性懲りもなく我が前に立つとは!どこまでも不遜な虫けらよ。残りカス共が束になろうと我が覇道を阻む事などできん。今一度それを思い知らせてくれる!」

 

 

「暗黒皇帝ガナサダイ!私がその歪んだ妄執を絶つ!忌まわしき者に裁きを…エターナルジャッジメント!」

 

 巨大な断頭台が現れてガナサダイに襲い掛かった。

 

 

「手応えはあった。これで…」

 

 ところが背後から声が響いた。

 

「クククっ!その程度で勝った気になるか。愚かだな!だが残りカスにしては上出来だ。その力も我が物として召し上げてやろう」

 

 

 この言葉と共に、ゼアルの姿がガナサダイの中に吸い込まれてしまった。

 

 

「マジか!ゼアルが取り込まれた!」

 

 しかしゼアルの声が聞こえて来た。

 

「愚かなのはあなたの方よ。この時を待っていたの。こうして取り込まれれば、私のコアも共に刺し貫けるのだから!この天使の短剣で」

「何?!おのれ、たばかったな!」

 

「今こそ地獄に落ちる時よ。さあお父様、もういい加減、私と共に地獄へ落ちましょう!」

 

 

 ゼアルは天使の短剣を取り出し、ガナサダイの体内にある自分のコアに突き立てた。

 

 

「お…おのれ、小賢しい真似を!」

「今こそ皇帝を倒す好機よ!そちら側から止めを刺して!」

 

「ボシュ、お願いしていい?」

「お前やらないのかよ」

「ここは一発でカッコ良く決めたいじゃない」

「つまりサチ、一撃で倒す自信がないのね…」

 

 

「何だっていい。やっていいなら喜んで!喰らえ、ギガブレード!」

 

 ボシュの技が炸裂、会心の一撃を放って仕留めた。

 

 

「ぐぬぉぉ…またしても世界征服の野望が…」

 

 

「倒したね!でもゼアルが魔物の中にっ…」

 

 その時、天井が崩れ始めてシェントが駆け付ける。

 

「皆さん!戦いの衝撃で城が崩壊寸前だ、早く逃げましょう!」

「待って、まだゼアルがっ」

 

 

 どんどん崩れて行く城。

 

 逃げる間もなく瓦礫に行く手を阻まれてしまった。

 

 

「皆、…くっ」

「ひぃ~、神様仏様…っ」

「お兄ちゃんっ」

「こっち来い、アイミー。こんな所でお陀仏か?クソっ…」

 

 ボシュはアイミーを呼び寄せると、瓦礫から守るように抱きかかえる。

 

 

 

 やがて皆の意識は薄れて行った。

 

 

 

・・・

 

 

 

「皆さん!起きてください!」

 

 

「ん…、あれ?私達何ともない」

 

 気づくと、そこは岩山の麓だ。思い思いに転がっているサチ達一行。

 起き上がったサチは皆の無事を確認してから、横で浮いている大賢者を見る。

 

 

「良かった、ギリギリ呪文が間に合ったね」

 

「大賢者が助けてくれたのね。ありがとうっ」

 

 サチに頬擦りされたから堪らない。大賢者の達者なはずの口がしどろもどろになる。

 

「どどど、どういたしましてっ!ボク凄く疲れたから、寝ていいっ?」

「どうぞ」

 

 

 入れ替わりに皆が目を覚ました。

 

「まーた寝てんのか、この本は?」

「違う。今寝たの。助けてくれたのは大賢者よ」

「マジ?寝るの早すぎ!お礼言う暇もなかったじゃなーい」

「ホントだよ!ところで…、」

 

 アイミーが辺りを見回す。

 

 

「残念だけど、ゼアルの姿はどこにもないんだ」

 

「そう…。探してくれたのね、ありがとうシェント」

「アイツは、自分の望みを叶えたんだ」

「でも、もっと一緒に冒険できたら良かったっ…」

「そうだね。そしたら、死ぬ事以外の希望だって見つかったかも…」

 

「…取りあえず引き揚げよう、皆」

 

 

 思いを共有するように、サチはアイミーの背に手を当て、そしてリリがサチの背に手を当てる。

 

 一行にしては珍しく、言葉少なにその場を去った。

 

 

 

 

 一夜明け、引き続き砂漠地帯を歩くサチ達。

 だがゼアルはやはり見つからなかった。

 

 それでも思う事は一緒だ。ゼアルはあのまま死んだのではないと。

 

 

 そこへシェントの姿が見えて来た。

 

 

「シェント!もしかしてまだ探してくれてる?」

「うん。それと、大賢者がもっと昔の事を思い出したくなったとかで、あちこち連れ回されてるんだ」

 

「むにゃむにゃ…」

「大賢者さん。おはよう」

 

「やあ。ゼアルは、気が遠くなるほどの歳月を一人で旅して頑張ってた。僕もいつまでも寝ぼけていられ…グーグー」

 

 

「言ってる側から寝やがった!」

「のん気なモンだわねぇ」

「でも見慣れて来るとさ、そこがほっこりするよね」

 

「ところでサチさん。天の箱舟だけど、どうしようか。復元して起動まではできたけど、あれから結局動かす事はできなくて」

 

「そうね。これまでの事をフォズさんに報告に行って、指示を仰ごう」

「それにしても、流れ星の調査からあんなキモイ魔物との戦いになるなんてね」

「最初にアイミーに言われた言葉、身に沁みるよ」

「何の事?」

 

 アイミーはわざと誤魔化した。口は災いの元、今だけはケンカしたくない。

 

「魔物だけど、元は人間だよ。ゼアルのお父さんだもん」

 

 

「なー。魔物と人間は切っても切れない関係、なのかもな」

 

 

 

 

 

 

 

 こうしてダーマ神殿を訪れた一行。一連の出来事を伝え終える。

 

 

「そうでしたか。あの流星群は遥か昔の天使達の乗り物であったとは…想像だにしませんでした。さらにその裏にあった悪しき者の野心までも砕いたとの事、誠に感謝いたします」

 

「私達だけでなく、シェントや大賢者、ゼアルという仲間のお陰です。だた…ゼアルは戦いの後消息が分からなくなってしまって」

「そうなのですね。私もゼアルさんがご無事であるよう祈りましょう」

 

「ありがとうございます」

 

 サチに続いて皆が頭を下げる。

 

 

「ところでフォズさん、天の箱舟はどうしましょうか」

 

「そうですね。いつか必要となる時が来るかもしれません。それまでこちらで預かります。もしかしたらそれは、大いなる戦いの時、かもしれませんが…」

 

 意味深な言葉を口にしたフォズだが、それ以上は語らなかった。

 

 

「何にせよ、俺達はもっともっと力を付けるだけだ。だろ?サチ」

「ええ。ここぞの時に一撃で決められる技を身に着けるっ」

「俺の見せ場がなくなるから、そんなに頑張らなくてもいいぜ?」

 

「いいえ!頑張る!姉さまの名に懸けて!」

 

 

「アタシ、ちょっと意味がよく…」

「久々登場だね、お姉さん系の話題」

 

 

 

 サチの熱意は相変わらずドラちん姉さまに注がれているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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