旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第16章 世界樹の檻
第100話:狙われた箱舟


 

 

 妖精サンディが再びサチ達の元に現われたのは案外すぐであった。

 

 

「ねえアンタ達、ちょっと手伝ってくんない?」

 

 

「あらサンディ。最近良く会うね」

「ちょっとサチ、それイジワル?言ったでしょ、力貸してもらうカモって。もうギブっ!」

 

「意味は分からんが、自分で何とかするとも言ってたぞ」

「アタシもしっかり覚えてるー」

「うん、言ってたね。ギブアップするの早いんじゃない?事情知らないけど」

 

 

「知らない割によくもポンポン言ってくれるよね!まるでアタシが努力してないみたいに?」

 

「そりゃアレだ。日頃の行いってヤツか?」

「否定はしなーい」

 

 

「ヒドーいっ、サチ、この人達に何とか言ってよぉ」

 

 

 サンディを見てしばし沈黙を続けていたサチが、3人に向き直る。

 

「皆、これくらいにしようか」

 

「そうだね」

「しゃーねぇな、在り処分かってて黙ってるのも気分悪いからな」

「全くだわね」

 

「って、え?天の箱舟とテンチョーの居場所分かってるって言うの?」

 

 

 皆はあえて答えず肩をすくめて笑う。

 

 

「ちょっと~!どゆこと?」

 

 

 ここでサチが流星群の一件について説明した。

 

 

「それじゃ、天の箱舟はダーマ神殿にあって、テンチョーはこっちの世界放浪してるって事?」

「そ。でも何で店長?その舟ってお店も付いてるとか」

「アタシが勝手に付けたあだ名。アギロはただのオッサンだよ。だけど手紙ね~、そんなマメなヤツだったっけ」

 

 

 手紙は宝箱に戻して来た。

 天使の短剣については、ゼアルと共に行方不明だ。

 

「店長とアギロって、一文字も合ってねえじゃねーか」

「あだ名って文字合わせだけで決めるんじゃないっしょ!雰囲気よ、雰囲気」

「店長の雰囲気って?」

「ナゾっ」

 

 

 サチが話を戻す。

 

「でも待って、サンディが私達と女神さまを対面させようとした時って、まだ箱舟はダーマ神殿にはなかったよね」

「すでにガナサダイが盗んでたのかもな」

「あん時は急遽幻影での登場になっちゃったケド。ホントは直接会わせたかったんだよね~」

 

「でもどっちみち、女神さまは木に変わっちゃってるんだから対面できないじゃん?」

 

 

「ああ、それって世界樹の事?そんなの大昔のハナシよ。もうとっくに果実を実らせて人間の清き心は証明された。元の姿に戻ってますケド!」

 

「でも、女神さまこの間会った時、自分は自由にならないって言ってましたよ?」

「そりゃ、女神があちこちほっつき歩くワケ行かないでしょーよ。そういう意味じゃん?」

 

「なんだ、元に戻れたなら良かった良かった!」

 

 

 皆が喜ぶ中、サチだけは思案し続ける。

 

 

「アギロさんと連絡する方法はないの?こっちの世界にいるみたいよ」

「それが連絡付かないから困ってるの!」

 

「要するに居留守使われてる訳か」

「ええっ、そうなのかな…って、またイジワルするー。イケメンが泣くよ?」

 

「アギロさんが振り回されてる姿が目に浮かぶ!」

「疲れちゃったのかもね。だから旅に…」

 

 

 こんなコメントの数々に、ついにサンディが泣き出した。

 

「うえ~ん!」

 

 どう見てもウソ泣きっぽいのだが、イケメンと言われたボシュだけが気にする。

 

「おい皆、程々にしようぜ」

 

 

「それアンタが言う?まあ、何もかも忘れた~いみたいな心境になるの、誰にでもあるさ」

「それってやっぱアタシのせい?!」

 

「だけど、何かの事件に巻き込まれた可能性もある」

 

 

「そうそれ!それだよきっと!さすがサチ」

 

「サチは甘いよな、いつも」

「そこがサチだよ。困ってる人を見過ごせない」

 

「しゃーねえな。探してやるか」

 

 

 

 

 

 

 こうして一行はまずダーマ神殿を訪れた。

 

 だがどういう訳か、そこに保管されているはずの箱舟が忽然と姿を消していた。

 

 

「申し訳ございません、ここには普段誰も入れないようにしてあるのですが…。妙です」

 

「やっぱり何か起きているのね」

「こちらでも調査を進めます。何か分かりましたらご連絡ください。力不足で本当に恐縮です」

「いいえ。では一先ず失礼します」

 

 

 

 

 

 神殿を出て途方に暮れる一行。

 

 

「で、そうなると次の手は?どうやって探す?」

 

 自然と皆の視線がリリに集まる。

 

 

「ん?アタシが何さ」

 

 

「ここは久々に登場じゃねーか?」

「そう!頼りにしてるよ、リリ姉サマの占い!」

「…あー、そういう事?ってかサンディまで知ってるワケ?」

 

 おもむろに麻袋を漁り出すリリ。そしてピカピカの水晶を取り出した。

 

「今日も曇りなく輝いてる~。どれどれ。占いご無沙汰だから上手くできないかも…」

 

 

 一同に緊張が走る中、リリがそれっぽく両手を掲げて玉を覗き込む。

 

 

「暗くて何も見えないわねぇ…」

 

「あっ、あれ、天の箱舟の残骸!」

「え、どれ?木片がどこかの海の底に打ち捨てられてるみたいだけど…まさかアレ?」

「そんなぁ、どうして?!どうしようっ」

 

 場所は不明だが、どこかの海底にバラバラになった舟の残骸が沈んでいる。

 

 変わり果てた姿に、陽キャなガングロ妖精もさすがに青ざめる。

 

 

「ねえリリ姉。この場所、もっと前に時間を戻せたりはしない?」

「やった事ないけどやってみるよ。戻れ戻れ~!」

「ありきたりな呪文だ」

「うっさいわ。ほれ戻れ~時間よ戻れ~」

 

 

 すると、映し出されていた画が切り替わった。

 

 

 今度はバラバラだった舟が元の姿で海上に浮かんでいる。

 

 海は次第に荒れ出し、空には稲光が走る。そして見事に舟目掛けて雷が落ちた。

 

 

「ひえぇ~~っ!」

 

「今のカミナリ、何かおかしかったね」

「アイミーも気づいた?アタシも思った」

「ええ…魔力を感じたわ」

 

「魔力の雷?それって誰かの仕業って事か?」

 

 

「何なの、もうっ。ワケ分かんない!それじゃテンチョーは死ん…」

 

 

「ストーップ、勝手に殺さないの!見て、今度は牢屋みたいなのが見えてるよ」

「あれ、ここってついこの間に行ったあそこに似てない?」

 

「あっ!ここ知ってる、何とか帝国だよね。昔凶悪な皇帝が…って、どうしてテンチョーがそんなとトコに?」

 

「その前に、その国は大昔に滅んで今は砂漠地帯だぜ。過去にタイムスリップしたとでも?」

「だとしたら探してもいない訳だわ」

 

「それってもしかして、あの時もこの牢屋にアギロさんがいたって事?」

「それ分かってたら連れ帰れたじゃん!目の前まで行ったのにっ」

 

 

 悔しがる中、サチがリーダーらしく結論を出す。

 

「もう一度あの場所へ行くしかない。大賢者にお願いしてみよう」

 

 

 

 

 

 

 こうして一行はフォズに連絡を取ってもらい大賢者と再会。

 

 再び大地の記憶を辿りガナン帝国へと足を踏み入れた。

 

 

「まさかキミらに呼び出されるとは思わなかった。寝てたのにー」

「ごめんなさい、でも本当に助かりました。ありがとう、大賢者様」

 

 サチにチュっとキスを贈られて、ワタワタと震え始める大賢者。

 

「そそそ、そんなにボクの事…っ」

 

 

「おい。なんか勘違いしてんぞ」

「ここにもいたか、チェリーボーイ」

「にも、って何だよ、にもって?」

 

「えー何だろー」

 

 

 

 

 

 その後、無事に地下牢からアギロを助け出す事ができた。

 

 

「やれやれ。とんだ事になっちまったぜ」

「テンチョー、一体何があったの?いつから?」

「聞いたところで、俺の記憶は確かじゃない。しかし、またここに閉じ込められるとはなぁ!」

 

「「また?」」

 

「まあまあその辺の昔話は置いといてだ。助かった、礼を言う」

 

 

「何にせよ、一連の出来事に悪意を感じるわ…」

「ああ。間違いないのは、誰かが妨害してるって事だ。クソがっ」

 

 

 この時、サチの脳裏にぼんやりと映像が浮き上がる。

 

 それはたくさんの背に大きな羽を生やした者達が、この地下牢に囚われている姿。

 先日訪れた際にはなかった現象だ。

 

 

「っ、これは…?」

 

「サチ?どうかしたか」

「ここって確か、以前罪のない多くの天使達が囚われていたのよね」

「そう言ってたよね。え、どしたの、急に」

 

「今見えたの。その人達が囚われている映像が」

 

 

「ちょっと?そういうのはアタシが玉で見るヤツなんですケド?」

 

 役目を奪われたような気がしたリリは、少しだけサチを睨んだ。

 

 

「サチ凄い、いつからそんな過去を見る力が?」

「そんなの持ってないよ。今何となく見えただけ…待って、まだ続いてる、誰かがその天使達を助け出した!」

「そういうのは英雄の仕事だろうな。で、どういうヤツだ?」

 

 あわよくば自分に似ている事をと願うボシュ。

 

 

「若い男性みたい」

「髪の色は青かったりするのか?」

「う~ん。黒っぽいね。でもボシュに似てるかな」

「おお!俺に似てるか。そうかそうか!」

 

「お兄ちゃん嬉しそう」

「男は英雄に憧れるモンだよ」

 

 

「べ、別にそういうんじゃねーよ?」

 

 

 

 

 

 

 次に一行は、問題の箱舟の沈んだ海へとやって来た。

 

 

「俺を出してくれて正解だ。箱舟を動かせるのは運転士の俺しかいないからな」

「だから起動しても動かす事ができなかったのね」

 

「ちょっと待て。起動しただと?」

 

「ああ。ゼアルが乗った瞬間にな」

「ゼアル?どっかで聞いたような…」

 

 

「テンチョぉ~、頼りにしてるよ~」

「真っ先に死んだと思ったヤツが、手の平返したな」

 

「何か言った~?」

 

「なあお前、女神と姉妹なんじゃなく、リリ姉と姉妹なんじゃねーの?言動似すぎだ!」

「ボシュ君~、何か言った~?」

 

 

 

 

 そして…。

 

 しばしの時間はかかったが、見事に天の箱舟の復元に成功した。

 

 

 

 早速いざ神の国を目指そう!と乗り込んだ一同。

 

 

「スッゴいゴージャス!この前のと全然違うわ」

「これって本物のゴールドですか?」

 

「当たり前だ。神の国へ行く乗り物だぜ?安物じゃ神々に申し訳ない」

「そんなもんかぁ?」

「私に聞かれても」

 

 

 このほのぼのした空気を、外からの音が一転させた。

 

 空がゴロゴロと唸り声を上げている。

 

 

「ねえ、この音って…」

「雷っ、だよね」

 

「ウソでしょ、また?!テンチョー何とかして!」

「無理に決まってるだろ、俺は天地雷鳴士じゃない!」

 

「はいっ、アタシ!それですけどどうすれば?」

 

 

 

 一行は、ああでもないこうでもないとオロオロするうちに、意識が遠のいたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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