旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第102話:神の国へ

 

 

 ようやく二度目の箱舟修復が完了した。

 

 一行は改めて箱舟に乗り込み、神の国を目指す。

 

 

「本当に空を飛んでる…。こんなに大きな物がっ」

「どういう仕組みだ?」

 

「説明すると長くなるが、いいか?お嬢ちゃん、兄ちゃん!」

 

 突如アギロの目が輝き出す。

 

 

 それを見たサンディがギョッとなって割って入る。

 

「細かい事はいーじゃないのさ!余計なコト聞かないのっ、アンタ達!」

「あ、ゴメンなさい。いいです。きっと聞いても分からないし」

 

 アイミーの癒しスマイルにぽうっとなるアギロ。

 久々舟の仕組みを楽しく語れる機会を奪われたというのに、どうでもよくなっていた。

 

 

 

 

 

 やがて神の国が見えて来る。

 

 

「見て、空に島が浮かんでる!」

「とうとう女神さまの住む国にやって来たんだね」

 

「突然押しかけて迷惑だったかな…」

「連絡手段ないんじゃ仕方ねーだろ」

 

 

「平気だよ。お姉ちゃんはそういう細かい事気にしないから」

 

 

 

 

 舟から島へと降り立つ面々。

 

 

「着いたはいいが、何だか草が生い茂って荒れ果ててるな」

 

「おっかしいな~、神の国ってこんな寂れたトコだったっけ?チョー久々だから道間違えたんじゃないの?テンチョー!」

「んな訳あるか。この舟は神の国から各方面への交通手段として造られたんだぜ?間違いようがない」

 

 

 そうは言え、周囲の様子はただ事ではない。

 まるで長い間放置されて来たような様相だ。

 

 

「神様は行方不明でも、女神さまがいるはずだよね」

「どこにいるんだろう」

「手分けして探してみよう」

 

 

「じゃあ皆、一通り探したら、あの木の下に集まろう」

 

 

 

 

 探してはみたものの、女神の姿はどこにもない。

 

 それどころか人っ子一人いない。どうやらここには誰もいないようだ。

 

 

「皆、どこに行っちゃったんだろうねー」

「ねえ」

 

 そこへ、まさかの魔物が登場だ。それもオレンジ色のドロドロした物体だ。

 

 

「ありゃ一体なんだ?」

「泥ヌーバに似てるね」

 

 

「ややっ、人間共め、どうやってここへ来た!」

 

 

「ひえっ、魔物が出た~!」

「何で神の国に魔物が…」

 

 魔物に慣れていないサンディとアギロがうろたえる。

 

 

「俺達はマグマロン!ここに来る者は始末するよう命じられてる!」

「熱い血潮から繰り出される灼熱パワーを受けてみろ!レッツ・ファイアー!」

 

 それぞれは集まり出し、巨大な一つのドロドロとなる。

 一行の元までメラメラと熱が伝わって来る。

 

 

「おおマグマか。熱は冷気に弱い。サチのドラゴーンとアイミーのマヒャデドスでイチコロだな」

「ボシュの八竜神の剣の出番だってあるよ。じゃあ一番手行きます、出でよドラゴーン!」

 

 サチは元のニンジャに戻っている。

 

 大津波を呼び起こし船が魔物に突進して行くも、さすがに一発ではビクともしない。

 

 

「それじゃ次は私ね。ええい、マヒャデドス!」

「アイミー、連続呪文行けるみたいよ」

「え、ホント?久々だから感覚が。それならも一回マヒャデドスー!!」

 

 アイミーは大魔道士に戻っている。時として2連続攻撃が可能だ。

 そのお陰で凍結はしたものの、敵にまだ変化はない。

 

 そしてゴッドハンドのボシュ、大神官のリリが続く。

 

「俺の出番か?手加減しないぜ!食らえ、ドラゴンソウル!」

「なかなかしぶといね、もっと凍らせよう。アイミーにアンコール!」

「了解、またまたマヒャデドスー!」

 

 

 途中炎を放たれたりしながらも、攻撃を何度か繰り返し勝利した。

 

 

「ぬおおっ、やられた~。熱き戦いに燃えたゼ…」

「凍ったけど燃え尽きたゼ…。ぐふっ」

 

 再び数体に分離したドロドロが、捨て台詞と共に消えた。

 

 

「さっすがサチ!やっつけたね~!」

「しかしなぜここに魔物がいる?」

 

「何だか嫌な予感がするわ…」

 

 

 一行は眉根を寄せる。

 

 と、その時、どこからか声が響いて来た。

 

 

『サチよ…。私の声が聞こえますか?この国によくぞ来てくれました』

 

 そしてぼんやりと女神の姿が現れたではないか。

 

 

「女神さま!無事だったんですね!」

「一体ナニがどうしたんですかーっ?」

「ここで何が起きてるんですか?」

 

 

『魔王の復活が近づき、世界は邪悪な空気で満ちています。そのため、神の国にまで魔物が現れるようになってしまったのです』

 

「どうすれば魔王の復活を止められる?」

 

『残念ですが、止める事はできません。魔王は復活するでしょう…。その時あなたはかつての英雄達と同じように、命と引き換えに封印しなければなりません。それが運命なのです』

 

 

「ちょっと何それ、いくら何でも一方的すぎない?」

「リリ姉っ、女神さま相手に…」

 

 

 そこへ今度は別の声が響く。

 

「お前達、だまされるな!」

 

 

 その声と共に女神の姿がかき消えた。

 

 

「女神さまが消えた…」

「今の声は?!」

 

 

 空から舞い降りたのはグリザードであった。

 

「今のは本物の女神じゃない。お前達は幻を見せられていたのだ!」

 

 

「グリザード、何でお前がここに…」

「ねえ、それよりも幻ってどういう事?」

 

 

「フッ…相変わらず姑息な手を使うな。迅雷天よ?」

 

 グリザードは問いには答えず、まだ姿が見えない相手に話しかけた。

 

 

 するとすぐにミカヅチが霧の中から現われた。

 

「あ~ら、とんだ邪魔が入ったわぁ。久しぶりね豪氷天。すっかり白くなっちゃって。前の姿の方がステキだったのに」

「俺はもう四天王ではない。その呼び名はやめてもらおう」

 

 

「お話し中のところスミマセンが!グリザード、どうしてここに?」

 

 割って入るサチ。

 

 

「お前達が灼爍天ブレアを倒したと聞いて、次は迅雷天が動くだろうと来てみたのだ」

「なかなか鋭い感性をお持ちで…」

 

「案の定だった。迅雷天!よくも俺をだましてくれたな。今ここで決着をつけてやる!」

 

 

「待ってよ。だましただなんて人聞きの悪い?ねえ、一旦休戦しましょ」

「何だと?」

「聞こえなかった?無益な争いはやめて、平和的に話し合おうって言ったの」

 

「貴様、ふざけてるのか!」

 

 

「とんでもない。私はこう見えて白いモフモフに弱いの。今のあなたとは、とても戦えないんですケド!」

 

 モフモフは正義よ!モフモフが世界を救うの!と、訳の分からない自論を展開するミカヅチに、あっけにとられるグリザード他一同。

 

 

「全然信じてない顔ね。だったらこうしましょう。休戦の証として、魔王様の秘密と女神の居場所を教えてあげる。それでどう?」

「サチ。聞く必要はない。これがコイツのやり口だ。本題を煙に巻いてはぐらかす。裏があるに決まっている」

 

「それはどうかしら。裏の裏はオモテ、だったりするものよ?」

 

 

「確かに怪しい話だが、女神がここからいなくなったのは事実。ここは話を聞いてみてもいいんじゃないか?」

「フン…危険な賭けだが、お前達がそう言うなら付き合うとしよう。だが妙な真似をしたら、その場で引き裂いてやる」

 

「ま~怖い!でもこれで決まりね。じゃあ、神の国の神殿に来て。そこで魔王様の秘密、教えてあげる」

 

 

「四天王と休戦なんてビックリ展開なんですケド!」

「どうなる事やら。俺達は成り行きを見守るしかないがな」

 

「それにしてもあの女の雰囲気、どっかの誰かに似てるような…う~ん」

 

 一人小首を傾げて思案するサンディ。

 

 

 何かが引っかかるが、それが何か分からないのだった。

 

 

 

 

 

 

 そして神殿にて。

 

 

「あなた達も、ある程度はこの世界の成り立ちを知ってるでしょ?」

 

「えっと…例えば?」

「まさか知らない?!…まあいいわ。その昔、神の国の神殿には世界を創ったという本物の神様がいたの。で、あなた達が魔王と呼ぶ存在だけど。実はその神様なのでーす」

 

 

「ええ?!それってサチがこの間言ってたヤツじゃん…」

「マジ、だったの?」

 

「何だつまらない。予想はしてたワケ。世界を創った神様が消されたら、当然世界も消えてなくなる。だから、絶対に魔王様を倒す事はできないの」

 

「まさかそんな事って…っ」

 

 

「いや…その話は俺も聞いた。魔王の正体は、バラバラにされた創造神の一部だと。魔王と、魔王に従う魔物は創造神が遺した負の遺産という訳だ」

 

「バラバラ…どうしてバラバラに?誰がっ」

 

 青ざめるアイミーを少しでも励ますべく、ボシュはあえて軽い口調で言い放つ。

 

「魔王の正体が神様って、笑えないぜ?まさかバラバラ事件の犯人はお前か!」

 

 

「まさか!私じゃないわ。ま、信じるかどうかはあなた達次第だけど」

「でもちょっと待て。神の一部を手に入れて、魔王を生み出したのはお前なんだろう?そんなもん、どこでどうやって手に入れた?」

「そうよ。そんな事ができるあなたは一体何者?」

 

「さあ~どこで手に入れたんだったっけ?大昔すぎてもう覚えてないんですケド!」

 

「チッ。答える気ナシかよ」

 

 

 

「さあ。魔王様の話はお終い。今度はあなた達を女神の居場所に案内してあげる。天の箱舟で移動するわよ」

 

 

 

 そう言うとミカヅチはさっさと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

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