ようやく二度目の箱舟修復が完了した。
一行は改めて箱舟に乗り込み、神の国を目指す。
「本当に空を飛んでる…。こんなに大きな物がっ」
「どういう仕組みだ?」
「説明すると長くなるが、いいか?お嬢ちゃん、兄ちゃん!」
突如アギロの目が輝き出す。
それを見たサンディがギョッとなって割って入る。
「細かい事はいーじゃないのさ!余計なコト聞かないのっ、アンタ達!」
「あ、ゴメンなさい。いいです。きっと聞いても分からないし」
アイミーの癒しスマイルにぽうっとなるアギロ。
久々舟の仕組みを楽しく語れる機会を奪われたというのに、どうでもよくなっていた。
やがて神の国が見えて来る。
「見て、空に島が浮かんでる!」
「とうとう女神さまの住む国にやって来たんだね」
「突然押しかけて迷惑だったかな…」
「連絡手段ないんじゃ仕方ねーだろ」
「平気だよ。お姉ちゃんはそういう細かい事気にしないから」
舟から島へと降り立つ面々。
「着いたはいいが、何だか草が生い茂って荒れ果ててるな」
「おっかしいな~、神の国ってこんな寂れたトコだったっけ?チョー久々だから道間違えたんじゃないの?テンチョー!」
「んな訳あるか。この舟は神の国から各方面への交通手段として造られたんだぜ?間違いようがない」
そうは言え、周囲の様子はただ事ではない。
まるで長い間放置されて来たような様相だ。
「神様は行方不明でも、女神さまがいるはずだよね」
「どこにいるんだろう」
「手分けして探してみよう」
「じゃあ皆、一通り探したら、あの木の下に集まろう」
探してはみたものの、女神の姿はどこにもない。
それどころか人っ子一人いない。どうやらここには誰もいないようだ。
「皆、どこに行っちゃったんだろうねー」
「ねえ」
そこへ、まさかの魔物が登場だ。それもオレンジ色のドロドロした物体だ。
「ありゃ一体なんだ?」
「泥ヌーバに似てるね」
「ややっ、人間共め、どうやってここへ来た!」
「ひえっ、魔物が出た~!」
「何で神の国に魔物が…」
魔物に慣れていないサンディとアギロがうろたえる。
「俺達はマグマロン!ここに来る者は始末するよう命じられてる!」
「熱い血潮から繰り出される灼熱パワーを受けてみろ!レッツ・ファイアー!」
それぞれは集まり出し、巨大な一つのドロドロとなる。
一行の元までメラメラと熱が伝わって来る。
「おおマグマか。熱は冷気に弱い。サチのドラゴーンとアイミーのマヒャデドスでイチコロだな」
「ボシュの八竜神の剣の出番だってあるよ。じゃあ一番手行きます、出でよドラゴーン!」
サチは元のニンジャに戻っている。
大津波を呼び起こし船が魔物に突進して行くも、さすがに一発ではビクともしない。
「それじゃ次は私ね。ええい、マヒャデドス!」
「アイミー、連続呪文行けるみたいよ」
「え、ホント?久々だから感覚が。それならも一回マヒャデドスー!!」
アイミーは大魔道士に戻っている。時として2連続攻撃が可能だ。
そのお陰で凍結はしたものの、敵にまだ変化はない。
そしてゴッドハンドのボシュ、大神官のリリが続く。
「俺の出番か?手加減しないぜ!食らえ、ドラゴンソウル!」
「なかなかしぶといね、もっと凍らせよう。アイミーにアンコール!」
「了解、またまたマヒャデドスー!」
途中炎を放たれたりしながらも、攻撃を何度か繰り返し勝利した。
「ぬおおっ、やられた~。熱き戦いに燃えたゼ…」
「凍ったけど燃え尽きたゼ…。ぐふっ」
再び数体に分離したドロドロが、捨て台詞と共に消えた。
「さっすがサチ!やっつけたね~!」
「しかしなぜここに魔物がいる?」
「何だか嫌な予感がするわ…」
一行は眉根を寄せる。
と、その時、どこからか声が響いて来た。
『サチよ…。私の声が聞こえますか?この国によくぞ来てくれました』
そしてぼんやりと女神の姿が現れたではないか。
「女神さま!無事だったんですね!」
「一体ナニがどうしたんですかーっ?」
「ここで何が起きてるんですか?」
『魔王の復活が近づき、世界は邪悪な空気で満ちています。そのため、神の国にまで魔物が現れるようになってしまったのです』
「どうすれば魔王の復活を止められる?」
『残念ですが、止める事はできません。魔王は復活するでしょう…。その時あなたはかつての英雄達と同じように、命と引き換えに封印しなければなりません。それが運命なのです』
「ちょっと何それ、いくら何でも一方的すぎない?」
「リリ姉っ、女神さま相手に…」
そこへ今度は別の声が響く。
「お前達、だまされるな!」
その声と共に女神の姿がかき消えた。
「女神さまが消えた…」
「今の声は?!」
空から舞い降りたのはグリザードであった。
「今のは本物の女神じゃない。お前達は幻を見せられていたのだ!」
「グリザード、何でお前がここに…」
「ねえ、それよりも幻ってどういう事?」
「フッ…相変わらず姑息な手を使うな。迅雷天よ?」
グリザードは問いには答えず、まだ姿が見えない相手に話しかけた。
するとすぐにミカヅチが霧の中から現われた。
「あ~ら、とんだ邪魔が入ったわぁ。久しぶりね豪氷天。すっかり白くなっちゃって。前の姿の方がステキだったのに」
「俺はもう四天王ではない。その呼び名はやめてもらおう」
「お話し中のところスミマセンが!グリザード、どうしてここに?」
割って入るサチ。
「お前達が灼爍天ブレアを倒したと聞いて、次は迅雷天が動くだろうと来てみたのだ」
「なかなか鋭い感性をお持ちで…」
「案の定だった。迅雷天!よくも俺をだましてくれたな。今ここで決着をつけてやる!」
「待ってよ。だましただなんて人聞きの悪い?ねえ、一旦休戦しましょ」
「何だと?」
「聞こえなかった?無益な争いはやめて、平和的に話し合おうって言ったの」
「貴様、ふざけてるのか!」
「とんでもない。私はこう見えて白いモフモフに弱いの。今のあなたとは、とても戦えないんですケド!」
モフモフは正義よ!モフモフが世界を救うの!と、訳の分からない自論を展開するミカヅチに、あっけにとられるグリザード他一同。
「全然信じてない顔ね。だったらこうしましょう。休戦の証として、魔王様の秘密と女神の居場所を教えてあげる。それでどう?」
「サチ。聞く必要はない。これがコイツのやり口だ。本題を煙に巻いてはぐらかす。裏があるに決まっている」
「それはどうかしら。裏の裏はオモテ、だったりするものよ?」
「確かに怪しい話だが、女神がここからいなくなったのは事実。ここは話を聞いてみてもいいんじゃないか?」
「フン…危険な賭けだが、お前達がそう言うなら付き合うとしよう。だが妙な真似をしたら、その場で引き裂いてやる」
「ま~怖い!でもこれで決まりね。じゃあ、神の国の神殿に来て。そこで魔王様の秘密、教えてあげる」
「四天王と休戦なんてビックリ展開なんですケド!」
「どうなる事やら。俺達は成り行きを見守るしかないがな」
「それにしてもあの女の雰囲気、どっかの誰かに似てるような…う~ん」
一人小首を傾げて思案するサンディ。
何かが引っかかるが、それが何か分からないのだった。
そして神殿にて。
「あなた達も、ある程度はこの世界の成り立ちを知ってるでしょ?」
「えっと…例えば?」
「まさか知らない?!…まあいいわ。その昔、神の国の神殿には世界を創ったという本物の神様がいたの。で、あなた達が魔王と呼ぶ存在だけど。実はその神様なのでーす」
「ええ?!それってサチがこの間言ってたヤツじゃん…」
「マジ、だったの?」
「何だつまらない。予想はしてたワケ。世界を創った神様が消されたら、当然世界も消えてなくなる。だから、絶対に魔王様を倒す事はできないの」
「まさかそんな事って…っ」
「いや…その話は俺も聞いた。魔王の正体は、バラバラにされた創造神の一部だと。魔王と、魔王に従う魔物は創造神が遺した負の遺産という訳だ」
「バラバラ…どうしてバラバラに?誰がっ」
青ざめるアイミーを少しでも励ますべく、ボシュはあえて軽い口調で言い放つ。
「魔王の正体が神様って、笑えないぜ?まさかバラバラ事件の犯人はお前か!」
「まさか!私じゃないわ。ま、信じるかどうかはあなた達次第だけど」
「でもちょっと待て。神の一部を手に入れて、魔王を生み出したのはお前なんだろう?そんなもん、どこでどうやって手に入れた?」
「そうよ。そんな事ができるあなたは一体何者?」
「さあ~どこで手に入れたんだったっけ?大昔すぎてもう覚えてないんですケド!」
「チッ。答える気ナシかよ」
「さあ。魔王様の話はお終い。今度はあなた達を女神の居場所に案内してあげる。天の箱舟で移動するわよ」
そう言うとミカヅチはさっさと歩き出した。