旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第103話:女神の居場所

 

 

 サチ達はミカヅチと共に天の箱舟に乗り込んだ。

 

 

「わ~お!天の箱舟ってこんな感じだったのね!金ピカでゴージャスっ、さすが神の乗り物」

 

 

「感想までリリ姉と被ってるぜ…」

 

「二度も俺の舟を壊しやがったヤツを乗せるなんて屈辱だ!おいサチ。本当にアイツと行く気か?」

「そうだよ~、どこに案内されるか分かったモンじゃないよ?」

「危険は覚悟の上よ。今は何とかして女神さまの居所を突き止めなくちゃ」

 

「何かして来たら俺が叩っ斬ってやるさ」

 

 船内を我が物顔で歩き回るミカヅチを目で追いながらボシュが言う。

 

 

「ねえ妖精さ~ん、ここは飲み物のサービスないの?」

「はあ?ある訳ないっしょ!」

「あ、食事だけど、私のは魚じゃなくてお肉にしてね♪」

「どっちもないってば!アタシはCAじゃないんですケド!」

 

「やれやれ。先行き不安な旅になりそうだ!で、迅雷天とやら。どこへ向かえばいい?」

「まずは、コゴエール山脈に向かってもらえる?」

 

 

「う~ん…それにしてもあの女、やっぱどっかで会った気がする。気のせい?」

「リリ姉に似てるからそう思うだけだろ!」

 

「ちょっとー、アタシあんなカンジ悪くないんですケドー!」

 

 

 

 グリザードは舟に入れなかったため、後ろから付いて飛ぶ事となり一行は出発した。

 

 

 

 

 

 

 そして目的の山脈へとやって来た。

 

 降り立つや、体がブルブルと震え出す。

 

 

「チョー寒いんですケドっ」

「俺はとても快適だが」

 

「グリザードは氷魔の戦士だからね」

「私も暑いよりは全然平気。ちょっと寒いけど」

「ちょっとどころじゃねーだろ!」

「アタシも凍えそう!」

 

 

「迅雷天、ここに女神さまがいるの?」

 

「ここにはいないわ。あの場所に通じる道は、特別な扉で閉ざされているの。それを開くには、地上のオーブと星空のオーブが必要よ」

「ま~たその展開かよっ」

 

「でもその二つのオーブは、はるか昔に失われてしまったわ」

 

 

「ええ?何さ、じゃあどうすんのよ?」

「だから、これからオーブを作る事ができる者に会いに行くの」

 

 

 

 その時、邪悪な気配が漂って来た。

 

 

「何か来るぞ!」

 

 

 予想通り魔物が登場だ。

 

「やい!お前達!ここは我らシールド小僧の縄張りだぞ!」

 

 3体の緑色の小人が立ちはだかる。

 皆それぞれ背丈ほどもある円形の人面盾を構えて、ひょっこりチラチラとこちらを窺っている。

 

「防御は最大の攻撃!全員、反撃の構えー!」

 

 

「悪いが先を急いでいる。小物共など蹴散らしてくれよう!」

「グリザード、ここは私達に任せて。これ使ってみたいの!」

 

 ニンジャサチは懐から短剣を取り出した。

 おなじみの水竜の短剣ではなく、蜃気楼という短剣だ。

 

 

「何々、いつの間にそんなのゲットしたのよ」

「何かニンジャっぽいね!」

 

「でしょ?これね、驚きの技が使えるの。見てて」

 

 サチがニヤリと笑う。珍しい悪巧みの笑いだ。

 

「ボシュ、水竜の短剣使って。一気に行くよ!」

「お、おお。やけに張り切ってるな、サチ」

「あの盾、こっちの攻撃を跳ね返されるから要注意よ。ドラゴーンで痺れさせる。二人でね」

 

 サチはボシュにウインクを飛ばした。

 

 

「あ、あ?二人?お前は別の剣だろ?」

「まあ見ててって。それじゃ行くわよ、モシャス!」

 

 

 唱えるやサチが煙に包まれる。

 

 そして現われたのは何とボシュの姿となったサチだ。

 

 

「なんっ、俺?!」

「そんでもって分身の術ー!一発目よ、ドラゴーン!」

 

 あっけにとられる面々を尻目に、サチの放ったドラゴーンが敵の一体を痺れさせる事に成功した。

 

「ボシュ!集中して!」

「そうだ、集中集中。そんじゃ行くぞ、出でよドラゴーン、全速前進!」

 

 

「凄い、二人でドラゴーンやってる!」

「しかもまた一体痺れたよ。次はアイミー、凍らせちゃえ!」

「やってみる。マヒャデドスー!」

 

「そんじゃサチにアンコール!」

 

 

 こうして見事3体ともが痺れて動けなくなった。

 これで反撃される心配もない。楽勝で小人達を地に沈めたのだった。

 

「どひゃ~やられた!我らの鉄壁の守りが破られるとは…」

「こりゃ敵わん。全員退却~」

 

 

 

「手を貸すまでもなかったようだ。さすがだ、サチ。またさらに力を付けたな」

 

「思った以上の働きをしてくれるわ、これ!」

「いやはや恐れ入ったぜ、ニンジャ」

「ふふ~ん。見直したでしょ?」

 

 散々ニンジャを使えない職呼ばわりして来たが、ここで挽回できたか。

 

 

「じゃあ行きましょ。この先の氷のほこらに目的の人物がいるわ」

 

 

 

 

 

 文字通りの氷でできたほこらに入る。

 

 

 真っ先に目に入ったのは氷漬けになった魔物の姿。

 大きな三角帽を被った小さな一つ目悪魔だ。

 

『うひょひょぉぉ、人間達よ、氷のほこらに良くぞ来たぁぁ!』

 

 

「あらま可愛らしっ」

 

『オイラはベビーマジシャン。あらゆるモノを作る事ができる、唯一無二の芸術家さぁぁ』

 

 氷越しのせいか、その声は内側で反響しひび割れたように聞こえて来る。

 

 

「前に、よく似た一つ目のピエロさんに会ったような気がする」

 

『よよ!魔界の芸術家、一つ目ピエロを知ってるのか?アイツとは長年のライバルなのだ!』

「そんな事より。あなたにオーブを二つ作ってほしいんだケド」

 

『うひょひょ、オイラに作れない物はなーい!…と言いたいところだが、あいにくこの状態でな』

 

 

「どうしてあなたは氷漬けになってるの?」

 

『オイラを題材にしたアートを完成させるため、自ら呪いを掛けて氷のオブジェを作ったのさ!でも…凍ったせいで呪いが解けなくなった。で、困ってたのさ。うひょひょ』

 

 

「何がうひょひょだ。芸術家の考える事はどの種族も謎だらけだな!」

『済まないが、呪いを解くのに氷塊の雫を集めて来てくれないか~い』

 

「めんどくさいわねぇ。私の雷撃でその氷、打ち砕いてあげるわよ」

「そんな事したら、ピエロさんが感電しちゃう!」

 

 

 

 

 一行は素直に氷塊の雫を集めに向かった。

 

 

 

 今回は移動手段を確保しているため、あっという間に集め終える事ができた。

 

 

 再び神殿へ戻り、サチが凍り付いたベビーマジシャンに氷塊の雫を降りかける。

 

 呪いは簡単に解けた。

 

 

「魔力なくてもできちゃうって、ある意味凄いわ」

「どっちが?サチが?それともピエロさん?」

「どっちも単純だから波長合ったんだろ」

 

「何か言った?」

 

 

「お陰で呪いが解けた!創作活動も再開できる!」

「じゃあ早速だけど、地上のオーブと星空のオーブを作って」

「うひょひょ、任せろ!…と言いたいが」

 

「またかよっ」

 

「材料がない事には作れないな」

 

 地上のオーブには大地の水晶、星空のオーブには流れ星の欠片が必要だそうな。

 

 

「どこにあるかくらいは教えてくれるんでしょ」

「うひょひょ!大地の水晶は迷いの洞窟にあるらしいぞ~」

 

「という訳だから、あなた達。材料を探して来て」

「フン。俺達に探させて貴様は高みの見物か?」

 

「だ~って。私スプーンより重いモノ持った事ないんですケド。重労働は向いてなくって!」

 

 

「雨雲の杖、結構重いと思うけど」

「だわね~」

「全くだ」

 

 ミカヅチの持つ愛用武器の雨雲の杖を見て、皆が思うのだった。

 

 

 

「それじゃ、洞窟の方に行ってみるか」

「早く行こっ、こんな激サムなトコいらんなーい」

 

「連れてってもらえるのはラクチンだな」

「あ、筋トレとかしたい人は走ってもいいよ?ボシュ君!」

「時には筋肉を休ませる事も必要なんだ」

 

「ふう~ん」

 

 

 

 

 

 あっさり目的地に到着。迷いの洞窟にて。

 

 

「ここに水晶があるのか」

 

 ボシュの言葉に答えたのは魔物であった。

 

「ほっほっほ!その通り!」

 

「石像がしゃべった!」

「我はその名も動く石像なり。探している水晶はここの奥にある」

 

 

 話によると、この洞窟は一本道なのだが、心に迷いがある者が入れば無数の枝道が生まれ、死ぬまで外に出られない事もあるそうな。

 

 

「覚悟があるならば中へ進むがよかろう」

 

 

「マジすか?!だから迷いの洞窟なのねー」

 

 つまり心に迷いがない者が入るべきだ。無言の候補者選定が始まる。

 

「あ、私はパス。服が汚れちゃうから~」

「誰も貴様には聞いてない。俺はここで迅雷天を見張る。洞窟はサチ、お前達が行け」

 

 

 

 こうしてサチ達が向かう事となる。サンディとアギロも残留組となった。

 

 

「どこまで続いてるんだろう…」

「ねえ、あれ何だろ?」

「扉みたいだな」

 

 

 近づいて見ればどうやら扉だ。鍵が掛かっていて中には入れない。

 

 

「扉も気になるけど、私達の目的は水晶を探す事よ。扉の調査は後回しにして、まずは奥に進んでみよう」

 

 サチの指示で先に進む事となり、またしばらく歩みを進める。

 

 

 

 すると奥で何かが光っている。

 

 

「あれが水晶だな!」

 

 ボシュが率先して取りに行く。

 続いたサチがボシュの手にした水晶を眺めて言う。

 

「うん、これだね」

 

「だけどさ、このままあの女の言う事聞いてて、ホントに女神さまの行方が分かるのかな」

 

 こんなリリのセリフに、突然一本道が枝分かれを始めたではないか。

 

 

「ええっ、こんなに突然道って分かれるの?!」

「迷いが生じたせいだな」

「それってアタシのせい?どうしよう、生きて出られなかったら!」

 

 

 その時、下を向いたリリが何かを見つける。

 

「ん?これ何だろ」

 

 それは白い花びらだ。

 良く見れば、点々と落ちている。まるで道案内をするかのように。

 

 

「そんなの落ちてたか?」

「さっきまではなかったと思うけど…」

「これを辿れば外に出られるかもしれないよ!」

 

 

 

 サチ達が落ちた花びらを辿って進むと、やがて洞窟の入口に辿り着いた。

 

 グリザードの姿が見えて来て、一行が安堵の息を漏らす。

 

 

「戻ったな。遅いから心配した」

「目的は達したようで。安心したわ」

 

 サチの手にする水晶を見やり、ミカヅチが軽い口調で言う。

 

 

「うむ。無事に戻ったという事は、お前達の心に迷いがない証。これからも精進するがよい」

 

「ねえ。私達、流れ星の欠片も探しているの。どこにあるか知らない?石像のオジサン」

「うむ…。流れ星の欠片はアッチーナの山にあると聞く。探してみるとよかろう」

 

 

「前にもこんなシーンあったねぇ」

「まともに返事してくれる魔物さんに驚いたよね」

 

「サチだからこそできる事かもなー」

 

 

「じゃあ、お次はアッチーナの山だな。出発だ!」

「名前からして嫌な予感しかしないんですケド」

「全くだわ。寒かったり暑かったり、お肌に悪すぎ!」

 

 

「それにしても、さっき白い花びらで私達を導いてくれたのは誰なんだろう?」

 

 

 サチのつぶやきに答える者はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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