指定されたブツを集め終えたサチ達一行。
ミカヅチがそれを眺め満足そうに頷く。
「これだけあれば十分だわ」
「これをどうすればいいの?」
「目の前に撒けばいいのよ。それで見えなかったモノが見えるはず…」
疑惑に満ちた視線を送りつつも、サチは粉を振り撒いた。
すると辺りがまぶしく輝き、やがて目の前に塔が現れたではないか。
「あらヤダ。目の前にあったんじゃない」
「ウソでしょ~!この暑い中せっせと歩いたのは何だったワケ?」
「お前は歩いてないだろ、飛んでたんだから!」
「それ、前にもどっかで聞いたセリフだわねー」
「さあ、中に入りましょ。とこしえの祭壇はこの塔の最上階よ。祭壇に二つのオーブを捧げれば、いよいよ扉は開かれるわ」
その塔はしかし、随分と古めかしい。
「誰が何のために建てたものだったんだろう」
「俺はむしろ、なぜ隠されていたのかが気になる」
「確かに。扉の先に何があるんだ?」
様々な憶測が飛び交う中、入ってみれば何やら黒っぽい物体がうずくまっているではないか。
それは良く見れば、毛むくじゃらの大きな一つ目の魔物だ。
膝を抱えて座っている。
「ここに人が来るなど随分久しぶりじゃのう」
「あらま~デッカい目玉ね~」
「そこの金の髪の娘、見る目がある!ワシはビックアイ、祭壇の番人じゃ」
「早速魔物を魅了しやがったぜ。さすがだリリ姉」
「そんなつもりじゃっ、うふっ」
こんなやり取りを無視して、魔物はおもむろにサチを見る。
「手にしているのは地上のオーブと星空のオーブか。それを持ってここに来たという事は、扉を開くつもりだな、サチよ」
「…」
無言のサチはこう思う。なぜ名前を知っているのかと。
代わりにボシュが尋ねた。
「おい。なぜコイツの名前知ってる?」
「ワシのこの目は伊達ではない。真実を見抜く力があるのだ。お前達が扉を開くに相応しい存在か、しかと見てやる」
そして魔物は大きな目玉をさらに見開き唱える。
「見え~る、見え~る、見えて来た~、やや、そっちの女は…」
「ん?私がどうかした?」
「何という…深き闇…。いやそれだけでない。そなたは女神さまのっ」
「ストーップ。余計な事は言わなくていいわ」
魔物の言葉を遮ったミカヅチはビックアイに雷撃を放った。
「うぎゃあっ!…何をする、おのれ!お前達に扉は開かせん。まとめて始末してくれよう!」
「大変、魔物が暴れ出したよ!」
「ったく。余計な事してんのはオメーだ、カミナリ女め!」
「とにかく大人しくさせないと!ボシュ、今回はモシャスやらせて。八竜神よろしく!」
「任せろ!アイミーはいつものな」
「また怯えちゃったらゴメン、先に言っとく」
「ねえアイミー、アタシにエンジェルロッド使わせて!アイツを魅了してやるわ」
「それはいい手だわ」
「すでに魅了されてたもんな」
こうして戦いが始まる。
魔物は激しく怒り、攻撃力を上げて来た。
サチがモシャスで最初のドラゴンソウルを放ち、二番手でアイミーが安定のサイコストームを浴びせる。
そしてボシュの本家本元ドラゴンソウルが炸裂すると、魔物は大きな目玉から大粒の涙を撒き散らして泣き出した。
「うわっ、ちょっと~キモっ!」
「こんなのじゃ怯えないもんっ!」
今回はアイミーが持ち堪えた。
「泣くな泣くな~、ウルトラハッスルダンスー!」
リリのウインクが魔物に向けて飛んで行くと、それに釘付けになったではないか。
一気に静まり返ったその場の空気がガラリと変わる。
「今よ!ドラゴンソウル!」
「二連発だ!」
そして魔物は力尽きた。
「うう…いかんぞ、もしお前達が扉を開いてしまったら…ぐふっ」
「それにしても、やかましかったわね~」
「リリ姉のお陰で助かったぜ」
「だけど魔物さん、あの人を見て何て言おうとしてたのかな」
「ふふっ!私のピュアすぎるハートでも見えちゃったんじゃなくて?そんな事より早く扉を開くのよ」
サチは頷くでもなくミカヅチを一瞥してから、祭壇に向かう。
そして二つのオーブを捧げた。
外からゴゴゴと音が鳴り響いて、一向は窓から外を窺う。
「何あれ!空に大きな穴が空いてる!」
「扉は開かれたわ。あの向こうに女神はいる」
外に出ると、急いで天の箱舟に乗り込み穴の開いた場所へ飛び込む。
その先では、普通の青空が広がっていた。
少し先には大きな樹木がそびえ立っている。
良く見ればここは空中に浮く、浮き島だ。
「テンチョー、これってもしかして…」
「ああ…だがそんなはずは」
「どうした?この樹が何だと言うのだ?」
二人が思ったのは、神の国にあった世界樹にそっくりだという事。
「これは世界樹よ。感動のご対面ね。これがあなた達の女神様の今の姿」
「これが女神さま…?」
「いや、それはおかしい。女神さまは天使達の働きで元の姿に戻ったはず」
「そうよ!アタシ元の姿に戻ったお姉ちゃんと会ってるんだから!」
「でもまた世界樹になったのよ。今度は魔王様から世界の人々を救うためにね」
「どういう事だよ」
「鈍い人達ね。言ったでしょ、神である魔王様は絶対に倒せないって」
そこで女神は特別な扉からしか行き来できないこの異空間を造り出し、自らを再び樹木に変えて魔王を封印したのだとミカヅチが説明する。
「そうか…塔を隠していたのはそのためか」
「この異空間を作ったせいで、世界そのものに歪みが生じ始めている。混沌に満ちた世界で生き残るのは、果たしてどの種族かしら?」
恐ろしい内容なのに、さも楽し気に語るミカヅチ。
皆が閉口する中、サチが果敢に声を発する。
「生き残るのは当然強い者でしょうね。でも…魔王を封印するために木になるって、どういう事?」
「それはその目で見るといいわ。向こうに地下に通じる道があるから。特にサチには絶対に見てもらいたいの」
多くの疑問を抱えながら、一行は示された方に進む。
「…って事はお姉ちゃん、魔王が復活するって分かって、また世界樹になってたって事?でも何のために?」
「だから神の国には誰もいなかったんだな」
「神様は魔王なんだもんねぇ。フクザツ!」
「でも神の国って、他には誰もいないの?天使さんとか」
「天使は役目を終えて皆消えちゃってるから」
それは創造神が魔王になる以前の話。
天使を作り出した本当の目的は、人間の清い心を集めるためだった。
娘女神セレシアを元の姿に戻すために。
「あの国の荒れ果て具合からして、かなりの時が経ってるな」
「ウソでしょ…。キツネに化かされてる気分!」
こんな会話をしながら、一行は地下へ通じる洞窟を進む。
「ここに何があるっていうの?」
「分からん。だが迅雷天が理由もなく俺達をここへ案内するとは思えん。必ず思惑があるはず…ムム、あれは!」
少し先の洞窟の壁の一部が動き出す。
「ゴゴゴ…待テ、オマエ達」
壁から分離したそれはゴーレムであった。
「コレヨリ先、女神様ノ許シナキ者ハ通サヌ。今スグ立チ去レ!」
「こんな所にも番人を置いてるの?やれやれね!ここまで来てすごすご帰る気はないわ」
「立チ去ラヌナラ、力ヅクデ排除スルマデ!」
問答無用で襲い掛かるゴーレムだが、今のサチ達は無敵と言っても過言ではない。
またもサチのモシャスでダブルドラゴンソウルをお見舞いする。
「こいつは呪文は使わない力バカだ、一気に押し切るぞ!」
「アタシも雨雲で参戦すれば良かった?」
「そんなに甘くはない。リリ姉、ボシュが皆のガードで確実に消耗する。回復優先でお願い!」
「オーケー。なら玉で。余力あるからラッキータロット行くよー!それアイミー!」
「ありがと!そーれ、連続呪文ー!サイコストーム二連発!」
そして倒れたのはゴーレムの方だった。
だがしかし、不安になるアイミー。
「ねえ。この魔物さん、世界樹を守ってたんだよね?やっつけて良かったのかなぁ」
「致し方あるまい。倒さねばこちらがやられていた」
「さあ、邪魔者もいなくなったし、先に進みましょ」