二人が次に向かったのは、花の町と呼ばれる地だ。
「果実があちこちに散ってるなら、これからは船が必要かもね」
「羽があれば飛んで行けたのにー!」
そこへ町の娘が寄って来た。
「今、船が欲しいって言った?だったらマキナお嬢様のお友達になるといいわ。あの人、何でもお願いを聞いてくれるから!」
「それマ?船くれるの?行ってみようよナイン、サチ!」
早速行ってみれば、すでに何人もの男が贈り物を手に言い寄っているところであった。
順番待ちの後、ナインが代表して声をかける。
「あの~ええと…はじめまして。初対面でスミマセンが、僕達船がほしくて」
「ナインたら、なかなか直球で行くね…」
「だあれ?新しいお友達?」
「そうなれたらいいな。私からもお願い!船をください!」
「サチだって直球じゃないか」
「だってもう要求しちゃってるんだし仕方ないでしょ?」
「それ僕のせい?」
言い合いが勃発しそうなところでマキナが答える。
「ええと…船?いいわ、あげる。その代わり私のお友達に…」
そこまで言って言葉が切れた。
「待って!あなた方は町の人じゃないわ。もしかしてマキナを迎えに来たの?」
「え?違いますが」
「ええ、違います」
「絶対ウソ!マキナを迎えに来たの!でも絶対ダメ!私あなた達の事嫌い。お友達じゃない。船もあげない。帰って!」
訳も分からず追い返された二人。
「サイアク!あの女、いきなり何キレてんのさ、意味不明なんですケド!」
「あっ、あれを見て」
ナインの示した先では、マキナに瓜二つの幽霊が通りを横切って行くところだった。
「マキナに似てる。どういう事?追い駆けてみよう」
そして辿り着いた先は墓地であった。
「大好きなお友達、ここに眠る…だって」
『あの子は私の、たった一人の大切なお友達…』
全体的に青白い少女が現われた。
『私はマキナ。この墓の下で眠る者です』
「ええ?!マキナはさっきお城に…」
「どゆこと?!」
『あの子は私のお人形、マウリヤ。不思議な光る果実のチカラで命を宿したの』
普通の子のように外で遊ぶ事ができなかったマキナは、毎日マウリヤと遊んだ。
やがて病気はどんどん酷くなり、ある時召使が万病に効くという珍しい果実を取り寄せた。
『そんなものを食べても治らないって分かってた。だから私は、果実を手に願った。マウリヤに命が宿って、人間のように動いてしゃべってくれたらと』
その時、奇跡が起こった。人形が語り出したのだ。
「やっとお話できた。とっても嬉しい!」
願いが叶ったと同時、マキナの命は尽きようとしていた。
『私はマウリヤに言いました。あなたがマキナになって、私の代わりにたくさんお友達を作って幸せになって、と』
そしてマウリヤは、私のお墓を誰にも気づかれぬよう作り、自分がマキナになった。
「えーと…?女神の果実のチカラで、人形がヘンテコお嬢になったって事?!」
「そうか、だから僕達が行ったら、天使が迎えに来たと思ったんだね」
「ちゃんと話せば誤解解けるんじゃ?」
「船、欲しいよねー」
墓地を後にし、もう一度お屋敷へ行く事に。だがマウリヤはおらず。
テーブルに手紙がある事に気づく。
「娘は預かった、返してほしくばカネを北の洞窟まで持って来い、だって!」
「「ウソ、誘拐!?」」
そこへ幽霊マキナも慌てた様子で登場。
『あの子が私の代わりにひどい目にあってしまう…。天使様、どうか私の大切なお人形を、
大切なお友達を助けて!』
「こんだけ頼みこまれちゃ、断れないよねー?二人の天使サマ?」
「助けに行こう!」
「もち!」
すぐさま指定された洞窟にやって来ると、ゴツイ体格の男が待ち構えていた。
「お前達、まさか身代金を?いやぁ~こんなとこまで持って来てくださるとは!」
「この人本当に誘拐犯?倒していいのかなぁ」
「いいんじゃない?えい!」
「く、いてぇじゃねーか!身代金持って来たんじゃなかったのか?ちくしょう!」
男が逃げ出す。
「きっとこの奥にいるんだ、追い駆けよう!」
読み通り洞窟の奥にマウリヤはいた。
「大丈夫?!マウリヤ!」
「どうして私の名前を知っているの?…ううん、私はマキナよ。みんなが欲しい物をたくさんあげて、お友達を作らなきゃ」
「マウリヤ、それは…」
「…分かってる。皆ほんとのお友達じゃない。みんな、ほんとは私なんていらない」
これに答えたのは幽霊マキナだった。
『いらなくなんかない。あなたは私の大切なお友達よ、マウリヤ…』
「マキナ!お帰りなさい!どこへ行ってたの?ねえ、今日は何して遊ぶ?」
『ごめんなさい、もう二度と遊べないの…。私は遠い国へ旅立ちます。マウリヤ、私のお願いはもういい。ニセモノのマキナじゃなく、どうかお人形のマウリヤに戻って…』
そう言うとマキナの霊は消えてしまった。
「マキナ…旅立つ。私は…マウリヤに戻る。…でもその前に…天使さん、船をあなた達にあげる。最後にマキナとお話できたのは、二人のおかげ…ありがとう」
そう言うとマウリヤは動かなくなった。
その手には女神の果実が握られていた。
「こちらこそありがとう」
「果実も船も、大切に使わせてもらうね」