旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第111話:竜と戦う方法

 

 

 サチとナインは各地で人々を助け、順調に地上に落ちた女神の果実を集めて行った。

 

 

「ねえナイン、今集まってる分を天使界へ持って行っておこうよ」

「そうだね。失くしたら大変だし」

 

 

「そっちはいいねー。アタシの人探しは一向に進展ないんですケド!」

 

 こんな不満を言いながら、運転士サンディが最後に箱舟に乗り込む。

 

 

 すると、いつもとは違う光が辺りを包む。

 

「なっ、ナニゴト?」

「どうなってるの、サンディ!」

「分かんなーいっ」

 

 慌てる3人。

 

 

 その光の中から現われたのは…。

 

 何と本場物の天使の男性。背には大きな翼、頭の上に輪っかが浮いている。

 その頭は見事なスキンヘッド。

 

「久しいな、ナイン、サチ」

 

 

「えええ、イザヤール様っ!?」

「サンディ、心配ないよ、この方は僕達の師匠だ」

 

「マジ?!この人がサチのっ」

「だから違うったら!」

 

 

「果実を探し歩いていたのはお前達だったのだな。それは私が届けておこう」

「分かりました。それではお願いします、イザヤール様」

 

 何の迷いもなく果実を全てイザヤールに渡すナイン。

 

 

 するとイザヤールがつぶやいた。

 

「さすがだな。地上に落ちた果実はこれで全てだ。確かに受け取った、これで…」

 

 この時イザヤールの脳内にある声が響いていた。

 

 

『ご苦労であった。約束通りその果実を我が帝国へ送り届けよ』

 

 

「今、声が聞こえたような…?」

「僕も聞こえました、果実を帝国へ届けろと!イザヤール様、どういう事ですか?」

 

「聞こえてしまったか。私に歯向かうと言うなら、お前達とて容赦はしない。ぬんっ!」

 

 

 イザヤールは強かった。師匠なのだから当然だ。

 

 

 強烈な呪文が二人を襲う。

 

「く…っ、イザヤール様を、止めないと…!」

「ダメ、体がっ」

 

「動けまい、サチ、ナイン。弟子が師匠に逆らう事は許されない。それが天使の理」

 

 

「ええっ、ちょっと二人とも何やってんのよ!」

 

 目に見えない鎖で縛られた二人の周りを、サンディが飛び回る。

 

 

「…さらばだ」

 

 イザヤールは光と共に消えてしまった。

 

 

 

「果実が持って行かれちゃったよ!って、え~!何アレ、外にヤバそうなのがーっ!」

 

 空を覆っていたのは巨大な黒い竜であった。

 その名も闇竜バルボロス。

 

 

 イザヤールを背に乗せたバルボロスは、箱舟に強烈な攻撃を加えて去って行く。

 

 

「これってば、もしかしなくてもピーンチ!また舟がっ、あ~れ~…!」

 

 サンディの嘆きと共に天の箱舟は真っ逆さまに落ちて行った。

 

 

 

・・・

 

 

 

 またも二人は地上の人間に助けられていた。

 

 

「目が覚めた!お姉さん、なかなか起きないから心配したよ」

 

「ん…。ここは?」

「僕の家。お兄さんは向こうの部屋。もう目を覚ましてるよ」

 

「はっ、そうだ、箱舟は?サンディ!」

 

『ここ~。アタシは無事。飛べるから!それよりアンタよ。酷いケガしたみたいだけど平気?マジ死んだと思ったんだからねっ、グスっ』

「心配かけてゴメンね」

 

 サチが何もない空中に向かって頭を下げるのを、ポカンと見守る家主の少年。

 

「あっ、頭は問題ないからご心配なく!」

 

 

 そこへナインが顔を出した。

 

「サチも目が覚めたんだね。良かった」

「ナイン!私達、結局何がどうなったんだっけ?」

 

『アタシの箱舟がまた壊されたの!冗談じゃないわよ?』

 

「うん…。どうやら僕達、お師匠にしてやられたみたいだ」

「きっと何か事情があるのよ。そうでなければ…っ」

「そうだね。僕もそう思う」

 

 

「お兄さん達が川から流されて来る前に、この村の上を黒い竜が飛んで行ったんだ」

 

「「それ!バルボロス!!」」

 

 

 こう叫んだ二人の前に、新たな人物が現れた。

 

「やはりお前達はあの竜と関係があるのだな。あんなものに目を付けられればこの村は終わりだ。すぐに出て行ってくれ!」

「叔父…村長さん、そんな言い方はないよ!二人ともケガしてるんだよ?」

 

「子供は黙れ!不吉な客人になど関わる必要はない。いいな、すぐに立ち去ってくれ」

 

 そう言い残して、終始威圧的な村長は部屋を出て行った。

 

 

 

「…ゴメンよ。この村は元々よそ者を嫌うんだ」

 

「気にしないで。言い分はよく分かるよ」

『感じワルっ!ナインは人が良すぎだよ~』

 

「全くだわ。でも私達があの竜を退治すれば文句ないでしょ」

 

 

「お姉さん、それホント!?できるの?」

 

「サチ、そうやってキレないの。空を自由自在に飛び回る敵相手に、勝ち目あるの?」

「動きを封じるとか何かあるでしょ!」

「安易だなぁ」

 

「何よ。初めから諦める方がダサいわ」

「はあ?今なんて?」

 

 

「まあまあ!お姉さん達ケンカしないで。空の英雄グレイナルっていう聖なる竜がいるの知ってる?その竜が力を貸してくれれば、どうかな」

 

「それは本当?どこにいるの!」

「竜には竜を、って事だね」

 

 

「秘密の言い伝えがあるんだ。像の見守りし地に、封じられた光で竜の門を開くべしって」

 

 像の見守りし地は魔獣の洞窟、竜の門はこの村の谷にある事が分かっている。

 だが竜の門を開く方法だけが誰も知らないのだとか。

 

 

「とにかく行くしかないね」

「ええ。行ってみれば何か分かるでしょ」

「それじゃ、グレイナルさんに会いに行こう!」

「おー!」

 

「お兄さんもお姉さんも頼もしいなぁ」

 

 

 二人は隠れて回復呪文を唱え、あっという間に全快した。

 

 

「悪者、やっつけて来るからね!ってナイン。どうしたの、黙り込んで」

「…ううん。何でもないよ。それじゃ、行こうか」

 

 

 

 

 少年に別れを告げ、二人はサンディと共に歩みを進める。

 

 

「ところで、魔獣の洞窟ってどこにあるか知ってんの?アンタ達」

「私が知る訳ないじゃない」

「…だよね。僕も知らなんだけど」

 

「えー!ダメじゃん。どうすんのさ」

 

 

「サンディは箱舟の修理しなくていいの?」

「そうよ、ほったらかしはよくないんじゃない?神様に怒られるよー」

 

「こないだ直したばっかよ?やってらんない。あの竜に文句言わないと気が済まないの!」

 

「あはは…だね」

「ねー」

 

 

 

 しばし無言で森を進んで行くと、見覚えのある娘の霊に遭遇する。

 

『またここへ帰って来てしまった…あの人を見つける事もできずに…』

 

 

「キミは…前にもどこかで会ったよね?」

「確か、最初にこっちに来た時だっけ」

 

『あなた達には私が見えるの?…そんな人は初めて。私はラテーナ。一つお願いを聞いて』

 

「いいよ。何をすればいい?」

 

『村に置いて来てしまった大切なものを、見つけて来てほしいの』

 

 

 言い分によれば、それは村の守護天使の像の足元に隠したそうな。

 

 

「任せて!行くわよナイン!」

 

 すっかり人助けが生業となってしまったサチ、そしてナインであった。

 

 

 

 

 

 向かってみれば、像はボロボロに朽ち果てていた。

 

 

「まさかアレ?じゃ、ないよねぇ」

 

 二人の先を飛んでいたサンディが見つけて言う。

 

「他にないからこれだよ。長い間手入れもされてないカンジー」

「うん。ちょっと悲しい気持ちになるけど、今は探し物が先だね」

 

 

 それはすぐに見つかった。

 

 ひし形の青い石の付いたネックレスだ。

 両側から白い翼が生えたデザインが目を惹く、その名も星空の首飾り。

 

 

 

 

 それを持ってすぐに先ほどの森に向かう。

 

 

『私のお願いしたもの、見つかったみたいね』

 

「どうやらこれで合ってたね」

「あの像の朽ち果て具合からして、これがあまりに輝いてるから心配だったけどー」

 

『ありがとう…。それはあの人が私にくれた大切な首飾り。天使が近くにいると光を放つって』

 

 見れば青い石は二人が見つけた時から確かに光っている。

 

「なるほどそういう事!」

 

 

『まさかと思ったけれど、あなた達もあの人と同じ…天使なのね』

「と、いう事は、キミの探している人って…」

 

 

 

 首飾りを手にしたラテーナ。

 

『ああ…見える。あの人が…!』

 

 

 

 二人に見守られ、ラテーナは静かに語り出した。

 

 

『ある時、私は大ケガを負った人が倒れているのを見つけたの』

 

 声を掛けるも返事はない。見ればその人には翼が生えている。

 それでも放っておく事はできず、どうにか村へと連れて帰ったそうな。

 

『私の家で手当てして看病したわ。それが村の守護天使エルギオスとの出会い』

 

 

 エルギオスのケガも治り、ラテーナは天使に出会えた事を無邪気に喜んだ。

 そう、あの時までは…。

 

 

 

 突然村に兵士達が押し寄せた。

 

「この世の全ては我がガナン帝国のもの。例えこんなちっぽけな村でもな!」

 

 

 村長がすぐさま対応し差し出せるものなどないと訴えるも、兵士は村長の娘に目を付けた。

 それがラテーナであった。

 

「なかなか器量良しの娘ではないか。共に来るのだ。さもなくばこの村がどうなるか…」

 

 

 村長もラテーナも激しく抵抗したが、兵士の力には敵わない。

 

 

 そこへ強烈な何かが降って来て兵士を吹き飛ばした。

 次々に天からイカヅチが落ちて兵士達を倒して行く。

 

 そんな事ができるのは、守護天使エルギオスただ一人である。

 

 

「…その力、貴様はまさか…っ」

「ガナン帝国に逆らうなど、それがどれだけ愚かな事か、後で思い知らせてくれる!」

 

 

 

 

『私のせいであの人は…。だから私は、あの人を探し続けなければ…。これを見つけてくれたお礼に、何か私にできる事があれば言って』

 

「って、その後どうなったの?そのエルギオスさんが何かされたって事よね」

「アタシも超気になるー!」

 

 

 サチの質問に答えはない。ラテーナは無言で待っている。

 

「サチ。今はこれ以上の詮索はやめよう。キミはこの村の人だよね?」

『ええ。遠い昔だけれど…』

「もしかして、魔獣の洞窟ってどこにあるか知ってたりする?」

 

『それなら知っているわ。案内しましょうか』

 

 

「「お願いします!」」

 

 

 かくして二人は幸運にも洞窟の場所を知る事ができたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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