闇竜バルボロスとの戦いは熾烈を極め、ナインとサチは地上へと叩きつけられた。
落下した二人は、地上にてガナン帝国の兵士に捕らえられた。
「新しい囚人が二名か」
「油断するな。こ奴らドラゴンの背に乗って戦いに挑み、ゲルニック将軍を倒したらしい」
「ゲルニックが死んだのはラッキーだ。忌まわしきグレイナルも消えたとなると…」
「我が帝国に逆らう者は破滅の運命が待っていると証明された訳だ」
「ところで、捕らえるのは天使のはず。こいつらのどこが天使だ?」
「確かに。でもまあ牢にでもぶち込んでおこう。人手はいくらあっても足りない」
こうして二人は牢屋に入れられる。
「あーあ。何てザマ?こんな鉄格子の鍵、壊せば出れるんじゃない?」
「やってみよう。えーい!」
ガシャン!と派手に音が鳴り響くも壊れない。
「やけに頑丈だね」
「おい!ドタバタうるせえぞ!」
「さっき入った新入りか?」
「ムダな事はやめておけ。ムダな体力使ってるヤツからおっちんじまう場所だからな」
スミマセン、と声を揃えて返した二人。取りあえず今は大人しくする事にした。
翌朝。叩き起こされ外に出る。
作業場に連行され、向かった先では日に焼けた細マッチョの男が待ち構えていた。
「オレはアギロ、隣りの囚人だ。ここの作業場のリーダーをしてる」
「昨日忠告をくれた人だね。僕はナイン」
「サチです。お世話になります、でいいのかな?」
二人をマジマジと見るなり、アギロが表情を変える。
「…こいつは驚いた!あ、いや何でもねえ。よろしくな」
アギロはここでの生活が長いようで、いろいろ知っていた。
ここでは大きな装置をひたすらグルグル回すのが仕事だとか。
「これが何の意味があるのかは兵士ですら知らないようだ。あと一つ、大事な事を教える。場所を移動するぞ。あっちに見える塔だ」
「「はーい」」
そこは見張りの塔や兵達の宿舎があるエリアだ。
それと秘密の地下牢があり、特別な者達が捕まっているそうな。
薄暗い塔の中に入ると、電子音のような耳障りな音が一定のボリュームで響いている。
「何の音?」
「あれじゃない?」
「あれは結界だ。ここガナンの関係者は通れても、俺達が触れたら大変な事になる。試しに触ってみろ」
「え。だって大変な事になるんじゃ?」
「ナインー、ビビってるのー?」
「むっ」
若干頬を膨らませたナインが腹いせも込めて触れると…。
「アギロさん、何ともないですよ」
何とナインは結界を通過したではないか。
「こりゃどういう事だ?!兵に見られたらマズイ、一度戻るぞ!」
塔から出て走りながら、アギロがナインの胸元に光るものを見つける。
「おい、それは何だ?」
「これは、グレイナルがくれたガナンの紋章ですけど」
「あの老ドラゴンがお前に託したのか。いいじゃねえか、これなら計画も実行できる!お二人さん、俺達の脱出計画に協力してくれないか?」
その計画とは、隙を窺って連中の武器を奪い、蹴散らして脱出するというもの。
「計画と呼ぶにはザツじゃない?」
「サチ、しーっ!」
「問題はあの結界だった。そこからしか出られないんだ」
「オーケー。協力しましょ」
「うん。賛成。こんな所にいつまでも留まる訳には行かないからね」
こうして、タイミングを待つという事で一旦解散となった。
しかしながらここは常に過酷な環境だ。
囚人達は今日も兵達にこき使われ暴力を振るわれで、現場は凄惨を極めている。
「ダメだ、タイミング待つなんて言ってられねえ!もう限界だぜ!」
アギロは今しがた張り倒された囚人を保護して兵を睨む。
そしてついに反撃に出た。
「食らえ!」
硬い拳が兵に直撃、兵は吹き飛ばされる。
現場はたちまち大騒ぎとなった。
「皆、今こそ自由のために戦う時が来たぞ!」
その場にいた囚人達がざわつく中、アギロが端的に計画についてを説明する。
「アギロの大将を信じてみよう」
「もうこんな毎日はゴメンだ!」
「帝国兵め、覚悟しろ!」
アギロの熱意に感化され、囚人達にも活気が生まれる。
「良かった、アギロの言葉で皆にも火が点いたよ」
「脱出計画、開始ー!」
「そっちは頼んだぜ、ナイン、サチ!」
「「任せといて!」」
二人は塔に向かい結界の発生装置を見つけ出す。
「これを止めればいいんだね」
結界はすぐに消えた。
「これで皆外に出られるわ!」
アギロはまず先に多くの囚人達を逃がした。
次々と出口から抜けて行く彼らを見送るアギロにナインが問う。
「アギロは行かないの?」
「まだ助けたいヤツらが残ってるんでね。全員逃がしてからだ」
「それって塔の地下牢にいる特別な人達でしょ」
「当たりだサチ。あそこに行くには、ちいと勇気がいるんだ」
「分かった、一緒に行くよ」
「そうか?心強いぜ。ありがとよ」
3人は地下牢へと足を踏み入れる。
「見てくれ。牢の中にいるのが帝国が探してる特別な連中さ」
中にはそれぞれ大きなマユがつり下がっている。
「あの中には天使達が閉じ込められているんだ」
「へーそうなんだ。って、えー!!今天使って言った?!」
「それじゃ、地上に降りて戻らなかった天使達って、ここに閉じ込められてたのか!」
思わぬ展開となり、急いで助け出そうと牢の扉を揺する二人だがビクともしない。
「やっぱり鍵は必要だよね」
「手に入れるしかないわね」
「俺に任せろ」
兵を力業で倒して行くアギロ。
騒ぎを聞きつけ、責任者らしき人物が現われた。
金のマスクで頭部を覆い、両サイドからは黒い角が生えている。
プロレスラーのようなマッスルで太い鎖の付いた鉄球を手にしている。
「そこで何をしている!お前達は囚人だな?ここは立ち入り禁止区域だぞ、仕事はどうした!」
「あれは人?じゃないよね、どう見ても」
「微妙に区別つかないけど、雰囲気からして魔物よ」
「何をごちゃごちゃ言っている?オレはゴレオン将軍だぞ!知らないとは言わせ…ん?待て、お前の持つそれは…。えー!」
魔物は途中で言葉を切り、ナインの胸元に掲げられた紋章に驚いている。
「今だ!お前達、攻撃しろ!」
アギロの合図で強烈な呪文を放つ二人。
魔物の動きは封じられ、力がじわじわと削がれて行く。
「これは夢だ、夢に違いない…。いや、オレは遥か昔グレイナルに焼かれ死んだのだ。ではオレは死者なのか?そんなバカな。これまでの日々は幻?この帝国も、オレも…ぐはっ」
やがて魔物は力尽きて倒れた。
「どうやら、ただの魔物じゃなかったみたいだね」
「このガナンって国、一体何なの?」
「考えるのは後だ、鍵を奪え!それから俺のホイッスル…あったぜ!これさえあれば」
疑問を抱えながらも、3人は地下牢の天使達を助け出す事に成功した。
「助かった…。おお、ナインじゃないか!来てくれたんだな」
「サチも!ありがとう、サチ」
「おや、ナインにサチ、羽はどうした?」
「それは追々話すよ。でも皆、どうして捕まったりしたの?」
どうやらガナンの人間には天使が見えてしまうらしい。
あのマユを使って天使の力を吸い取っていたのだとか。
「奴らは、天使の力を闇竜バルボロスに与える事で操っているんだ!」
「なるほどな。俺達が回してた装置は、力を吸い取るためのものだったのか」
「この奥にもまだ天使達がいるわ。助けてあげて!」
「よし、行こうサチ!」
「レッツゴー、ナイン!」
二人はアギロと別れて奥へ向かった。