旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

114 / 115
第113話:獄中の出会い

 

 

 闇竜バルボロスとの戦いは熾烈を極め、ナインとサチは地上へと叩きつけられた。

 

 

 落下した二人は、地上にてガナン帝国の兵士に捕らえられた。

 

「新しい囚人が二名か」

 

 

「油断するな。こ奴らドラゴンの背に乗って戦いに挑み、ゲルニック将軍を倒したらしい」

「ゲルニックが死んだのはラッキーだ。忌まわしきグレイナルも消えたとなると…」

 

「我が帝国に逆らう者は破滅の運命が待っていると証明された訳だ」

 

 

「ところで、捕らえるのは天使のはず。こいつらのどこが天使だ?」

「確かに。でもまあ牢にでもぶち込んでおこう。人手はいくらあっても足りない」

 

 

 

 こうして二人は牢屋に入れられる。

 

 

「あーあ。何てザマ?こんな鉄格子の鍵、壊せば出れるんじゃない?」

「やってみよう。えーい!」

 

 ガシャン!と派手に音が鳴り響くも壊れない。

 

「やけに頑丈だね」

 

 

「おい!ドタバタうるせえぞ!」

「さっき入った新入りか?」

「ムダな事はやめておけ。ムダな体力使ってるヤツからおっちんじまう場所だからな」

 

 

 スミマセン、と声を揃えて返した二人。取りあえず今は大人しくする事にした。

 

 

 

 

 翌朝。叩き起こされ外に出る。

 

 作業場に連行され、向かった先では日に焼けた細マッチョの男が待ち構えていた。

 

 

「オレはアギロ、隣りの囚人だ。ここの作業場のリーダーをしてる」

「昨日忠告をくれた人だね。僕はナイン」

「サチです。お世話になります、でいいのかな?」

 

 

 二人をマジマジと見るなり、アギロが表情を変える。

 

「…こいつは驚いた!あ、いや何でもねえ。よろしくな」

 

 

 アギロはここでの生活が長いようで、いろいろ知っていた。

 ここでは大きな装置をひたすらグルグル回すのが仕事だとか。

 

「これが何の意味があるのかは兵士ですら知らないようだ。あと一つ、大事な事を教える。場所を移動するぞ。あっちに見える塔だ」

 

「「はーい」」

 

 

 

 そこは見張りの塔や兵達の宿舎があるエリアだ。

 

 それと秘密の地下牢があり、特別な者達が捕まっているそうな。

 

 

 薄暗い塔の中に入ると、電子音のような耳障りな音が一定のボリュームで響いている。

 

「何の音?」

「あれじゃない?」

 

「あれは結界だ。ここガナンの関係者は通れても、俺達が触れたら大変な事になる。試しに触ってみろ」

「え。だって大変な事になるんじゃ?」

「ナインー、ビビってるのー?」

 

 

「むっ」

 

 若干頬を膨らませたナインが腹いせも込めて触れると…。

 

 

「アギロさん、何ともないですよ」

 

 何とナインは結界を通過したではないか。

 

 

「こりゃどういう事だ?!兵に見られたらマズイ、一度戻るぞ!」

 

 

 

 塔から出て走りながら、アギロがナインの胸元に光るものを見つける。

 

「おい、それは何だ?」

 

「これは、グレイナルがくれたガナンの紋章ですけど」

「あの老ドラゴンがお前に託したのか。いいじゃねえか、これなら計画も実行できる!お二人さん、俺達の脱出計画に協力してくれないか?」

 

 

 その計画とは、隙を窺って連中の武器を奪い、蹴散らして脱出するというもの。

 

「計画と呼ぶにはザツじゃない?」

「サチ、しーっ!」

 

 

「問題はあの結界だった。そこからしか出られないんだ」

 

「オーケー。協力しましょ」

「うん。賛成。こんな所にいつまでも留まる訳には行かないからね」

 

 

 

 

 こうして、タイミングを待つという事で一旦解散となった。

 

 

 しかしながらここは常に過酷な環境だ。

 囚人達は今日も兵達にこき使われ暴力を振るわれで、現場は凄惨を極めている。

 

 

「ダメだ、タイミング待つなんて言ってられねえ!もう限界だぜ!」

 

 アギロは今しがた張り倒された囚人を保護して兵を睨む。

 そしてついに反撃に出た。

 

「食らえ!」

 

 硬い拳が兵に直撃、兵は吹き飛ばされる。

 

 

 現場はたちまち大騒ぎとなった。

 

 

「皆、今こそ自由のために戦う時が来たぞ!」

 

 その場にいた囚人達がざわつく中、アギロが端的に計画についてを説明する。

 

 

「アギロの大将を信じてみよう」

「もうこんな毎日はゴメンだ!」

「帝国兵め、覚悟しろ!」

 

 アギロの熱意に感化され、囚人達にも活気が生まれる。

 

 

「良かった、アギロの言葉で皆にも火が点いたよ」

「脱出計画、開始ー!」

 

 

「そっちは頼んだぜ、ナイン、サチ!」

 

「「任せといて!」」

 

 

 

 二人は塔に向かい結界の発生装置を見つけ出す。

 

 

「これを止めればいいんだね」

 

 

 結界はすぐに消えた。

 

「これで皆外に出られるわ!」

 

 

 アギロはまず先に多くの囚人達を逃がした。

 

 

 次々と出口から抜けて行く彼らを見送るアギロにナインが問う。

 

「アギロは行かないの?」

「まだ助けたいヤツらが残ってるんでね。全員逃がしてからだ」

 

 

「それって塔の地下牢にいる特別な人達でしょ」

 

「当たりだサチ。あそこに行くには、ちいと勇気がいるんだ」

「分かった、一緒に行くよ」

 

「そうか?心強いぜ。ありがとよ」

 

 

 

 3人は地下牢へと足を踏み入れる。

 

 

「見てくれ。牢の中にいるのが帝国が探してる特別な連中さ」

 

 中にはそれぞれ大きなマユがつり下がっている。

 

「あの中には天使達が閉じ込められているんだ」

 

 

「へーそうなんだ。って、えー!!今天使って言った?!」

「それじゃ、地上に降りて戻らなかった天使達って、ここに閉じ込められてたのか!」

 

 思わぬ展開となり、急いで助け出そうと牢の扉を揺する二人だがビクともしない。

 

「やっぱり鍵は必要だよね」

「手に入れるしかないわね」

 

 

「俺に任せろ」

 

 兵を力業で倒して行くアギロ。

 

 

 騒ぎを聞きつけ、責任者らしき人物が現われた。

 金のマスクで頭部を覆い、両サイドからは黒い角が生えている。

 プロレスラーのようなマッスルで太い鎖の付いた鉄球を手にしている。

 

「そこで何をしている!お前達は囚人だな?ここは立ち入り禁止区域だぞ、仕事はどうした!」

 

 

「あれは人?じゃないよね、どう見ても」

「微妙に区別つかないけど、雰囲気からして魔物よ」

 

「何をごちゃごちゃ言っている?オレはゴレオン将軍だぞ!知らないとは言わせ…ん?待て、お前の持つそれは…。えー!」

 

 魔物は途中で言葉を切り、ナインの胸元に掲げられた紋章に驚いている。

 

 

「今だ!お前達、攻撃しろ!」

 

 アギロの合図で強烈な呪文を放つ二人。

 

 

 魔物の動きは封じられ、力がじわじわと削がれて行く。

 

「これは夢だ、夢に違いない…。いや、オレは遥か昔グレイナルに焼かれ死んだのだ。ではオレは死者なのか?そんなバカな。これまでの日々は幻?この帝国も、オレも…ぐはっ」

 

 やがて魔物は力尽きて倒れた。

 

 

「どうやら、ただの魔物じゃなかったみたいだね」

「このガナンって国、一体何なの?」

 

「考えるのは後だ、鍵を奪え!それから俺のホイッスル…あったぜ!これさえあれば」

 

 

 

 疑問を抱えながらも、3人は地下牢の天使達を助け出す事に成功した。

 

 

「助かった…。おお、ナインじゃないか!来てくれたんだな」

「サチも!ありがとう、サチ」

「おや、ナインにサチ、羽はどうした?」

 

「それは追々話すよ。でも皆、どうして捕まったりしたの?」

 

 

 どうやらガナンの人間には天使が見えてしまうらしい。

 

 あのマユを使って天使の力を吸い取っていたのだとか。

 

 

「奴らは、天使の力を闇竜バルボロスに与える事で操っているんだ!」

「なるほどな。俺達が回してた装置は、力を吸い取るためのものだったのか」

 

「この奥にもまだ天使達がいるわ。助けてあげて!」

 

 

「よし、行こうサチ!」

「レッツゴー、ナイン!」

 

 

 

 二人はアギロと別れて奥へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。