旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第114話:天翔ける激突

 

 

 ナイン達と別れたアギロ。

 

 外へ出て見ればまだ数名の囚人達が残っているではないか。

 

 

「アギロの大将が来たぞ!外の兵共はあらかた片づけたぜ!」

 

「おいお前ら、何で逃げてないんだよ!」

「そりゃリーダーのあんたと新入り、置いて行けないだろう?」

 

 

「…こんの、バカ野郎がっ」

 

 

 束の間、肩を抱き合い涙ぐむ男達。

 

 

 そんな感動的シーンの最中、兵の生き残りが起き上がる。

 

「浮かれている場合じゃないぞ?聞こえる、破滅の羽音が!帝国に逆らう者に災い、あ、れ…」

 

 

 今度こそバタリと倒れた兵。

 直後に空が見る見る闇に満ちて行く。

 

 

 その彼方から現れたのは闇竜バルボロスだ。

 

 上空にて留まったまま、バルボロスは闇の力を集めてまたも鎌首をもたげる。

 その先はナイン達がいる地下牢だ。

 

 

「まだ中に大勢いるだろうに?味方ごと焼き払う気か!」

「あんなの相手にどうしろってんだ、もう終わりだ…!」

 

「諦めるなお前ら!まだ間に合う、出口に一直線に走るんだ!」

「でもアギロの大将は?」

 

「俺は大丈夫だ。考えがある。ほら早くしろ!」

 

 

「…分かった、もうそれしかない。イチかバチか!」

「アギロ、絶対に死ぬなよな!」

 

 

 皆が決意を固め一斉に走って行く。

 

 

 

「俺は死ぬ気はないさ。これでいい。さてと、俺の仕事はここからだぜ?」

 

 グレイナル亡き後、空中戦を得意とするバルボロスと戦う方法は?

 

 

 

 

 アギロは一人高台に走る。

 

 

「よし。ここなら良さそうだ。見てろよ!」

 

 ホイッスルを取り出し力いっぱい吹き鳴らした。

 

 

 そして空の彼方から現われたのは、何と天の箱舟であった。

 

 

 箱舟が、まるであるじを迎えるように扉を開く。

 そこから中へと飛び込んだアギロ。

 

 

 もちろん中にいたのはサンディだ。

 

「ビックリしたぁー。突然呼ぶんだから。こっちは一人で大変だったんだからね?残骸探して直して、しかも二回目!テンチョー今までどこ行ってたのさ!」

 

「話は後だ。急いでナインとサチを拾って、こいつをバルボロスに向けるぞ!」

「え?あ、ラジャーっ!」

 

 

 

 地下牢での救出作業を終えた二人も、バルボロスに気づいて外に飛び出していた。

 

 それを瞬時に見つけ出して拾い上げ箱舟に乗せる。

 

 

「天の箱舟、完全復帰だね」

「姿が見えないと思ったらいつの間に?凄いじゃん、サンディ!」

「ようやくサチからお褒めの言葉、いただきましたー!」

 

 

 

 バルボロスが突如現れた箱舟を見やり吐き捨てる。

 

「フン、天の箱舟か。乗っているのはドミールでグレイナルといた奴らか。何度来ても同じ事。己の無力を噛みしめて、今度こそ死ぬがいい!」

 

 

「今度は負けられない。必ず倒す!」

「ええ。勝つまでやるわ!」

 

 

 

 今回は箱舟の力を借りて空中戦に挑む。

 

 天使達の力が蓄えられたというだけあり、これまでで一番の強敵だ。

 どんなに攻撃を加えてもビクともしないのだから。

 

 

「ダメだ、これじゃ体力のムダ遣いだ。どうする?…何か手を考えないと!」

「こうなったら私のセクシービームで幻惑させちゃうんだからっ」

 

「えっと、サチ?血迷ってる場合じゃ…」

「これでもかー、えーい!」

 

 

 これがどういう訳か効き目ありで、バルボロスが幻に包まれたではないか。

 

 

「ほーらご覧なさい。誰が血迷ってるって?」

「まさかそんな手が。勉強になったよ。それじゃ一気に行くよ、今度は僕だ、えーい!」

 

 

 幻惑していたお陰でバルボロスの焦点は定まっておらず。

 攻撃を上手く交わしながら戦う二人。

 

 

 やがてバルボロスの方が力尽きた。

 

「おのれ…まさかこの私が貴様らのような弱く小さき者共に…」

 

 

 

 箱舟内ではもちろんこの人が大騒ぎ。

 一転、力を使い果たしたナインとサチはぐったりと座り込む。

 

「キャー、勝利!凄いじゃんアンタ達、今までで一番サイコーだよ!」

 

「…これでグレイナルも心安らかに眠れるね」

「…そう祈るわ」

 

 

「ってか説明してくんない?何でアンタ達がテンチョーと一緒にいたのさ!」

「おい、誰がテンチョーだ。アギロさんと呼べって言ってるだろうが」

 

 

「サンディは元気だね」

「こっちはもうヘトヘト!」

 

 

「二人ともご苦労さん。しかしこっちだって驚いたぜ?まさかお前達がサンディと知り合いだったとはな!」

「それはまあ、何と言うか、ね」

「うん。ね」

 

 もう疲れすぎて返す言葉も見つからない二人。

 

 

「ちょっとー。そこは、天の導きとか運命の出会いとか、言い方あるでしょーが?んもう、張り合いないんだから!」

 

「ま、会った時からただの人間じゃないってのは分かってたけどな」

 

 

「そうだったの?」

「それであの時、驚いた顔してたのね」

「アギロだってただの人間じゃないよね?天の箱舟を呼び出せるなんて。それに天使達の事も見えてたし?」

 

「そこはほら、ガナンの人達皆見えてたし?」

「あ、そっか」

「でもまあ、箱舟は度肝抜かれたよねー。お陰で助かったわ!」

 

 

「ゴホンっ、そろそろいいか。聞いて驚け!それは俺が、この天の箱舟の責任者だからだ!」

 

 

 このセリフに本来なら響くはずの驚きの声はない。

 

 

 しばしの沈黙を破り、アギロが嘆き声を上げた。

 

「おいおい、マジで張り合いないぜ?お二人さんよ」

「本気で驚くと声を失うって事かー」

 

 

「まあいいさ、それより早く天使界に向かうぞ。囚われの天使達を送って行かないとな」

 

「そうなんだけど…女神の果実がもう手元になくて」

「そうなんだ。イザヤール様があのガナンに味方してるって、どうなってるんだろう?」

 

 

 

 一難去ってまた一難。

 

 二人の苦難の道はまだまだ続く。

 

 

「お陰でアタシはミッション・コンプリーートっ!全く人騒がせなテンチョーなんだから」

「あ?何か言ったか」

 

 

 ようやく戻れた本職に、アギロはとてもご機嫌であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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