旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

116 / 117
第16章 前日譚~絶望と憎悪と愛の鎖(2)
第115話 女神の果実集まりて


 

 

 天使界にて長老オムイに出迎えられたナインとサチは、これまでの経緯を説明。

 

 

「何と、あの魔帝国ガナンが人間界に甦っていたのか…」

 

 ガナンは数百年前に滅びた邪悪なる帝国だと知らされる二人。

 

「イザヤール様がそのガナンの味方となり、僕達から果実を奪って行きました」

「いや。それならばもうここにある」

 

 

「「…え?」」

 

 

 イザヤールはここに果実を持って帰った。

 

 だがまだやる事があると言って再び地上へ行ってしまったそうな。

 

 

「何がどうなってるのー!」

「本当だよ!」

 

「イザヤールは地上でお前達と共に果実を集めたと言っておったぞ」

 

「はぁあー?!」

「サチ、興奮しすぎ」

「ナインだって驚いてるでしょーよ。自分ばっかり優等生になる気?」

「はあ?」

 

「こら、ケンカはよしなさい、二人とも!」

 

 

 時折こんな展開になる事など、幼い頃から成長を見守るオムイは百も承知。

 勃発しそうな言い争いを慣れた様子で鎮めた。

 

 

「話を続けるが。よろしいかな?二人とも」

 

「「…はい、お願いします」」

 

 

「イザヤールが言うには、途中ではぐれてしまったとか。お前達をよろしくと言っておった。ワシにはあいつが裏切り者とは到底思えん」

「僕達だって思いたくありません!」

「そうよ、でもっ…」

 

「まあ、今は考えてもラチが明かぬ。真実はいずれ明らかになろう」

 

 

 停泊している天の箱舟に目をやり、オムイは静かに語る。

 

「言い伝えでは、女神の果実が実る時、神の国への道が開かれ、我ら天使は永遠の救いを得るという。そこでじゃ、ワシは神の国へ行ってみようと思う。アレがあれば可能であろう?」

「それはもちろん」

「本物の運転士も見つかった事だし?」

 

 

「そうと決まれば、二人も共に来るのだ」

「「はい。お供します、オムイ様」」

 

 

 

 アギロに事情を話すと、快く神の国へと運んでもらえる事となる。

 

 早速乗り込んだ3人の天使達。

 乗船初体験のオムイは終始感動冷めやらずといった様子で、年甲斐もなくはしゃいでいる。

 

 

「ところでサンディは?」

 

「疲れたから休むとさ。静かでいいだろ」

「代わりにウチの長老サマがちょっぴりにぎやかで、スミマセン…」

「構わんさ!ここまで喜ばれると嬉しいもんだぜ?」

 

 

 

 

 ほどなくして目的地へと到着した。

 

 

 空に階段が浮かんでいる。その先に宮殿が見える。

 

「天使界数千年の悲願、神にお会いする時がとうとう…っ!」

 

 

 やって来た念願の神の宮殿はしかし、壁も天井も何もかもボロボロで見る影もない。

 

 

「長年地上とこの国を往復して来たが…こんな事態は初めてだ。一体どうなってやがる?」

「アギロはずっと囚人やってたんだもんね」

「ずっとったって、この放置具合は数百年単位だと思うぜ?」

 

 

「ねえ見て、あんなとこに大きな穴まで空いてるよ」

 

 それは巨大な穴が床から天井まで突き抜けるように空いていた。

 まさに邪悪な光が貫いた痕跡だ。

 

 

「天使界を襲った邪悪な光は、この神の国をも…?!何たる事だ!」

 

 

 

 広大な宮殿を隈なく調べて行くも、神の姿どころか人っ子一人いない。

 

 

「一体ここの人達はどこへ行っちゃったんだろう」

「これナイン!ここの人達などと恐れ多い、我らが神とその関係者と呼びなさい」

「ナイン怒られたー!」

「むっ。バカサチ」

 

 ケンカに発展しそうな気配を察したオムイ。

 すぐさま二人に睨みを利かせれば効果てき面。

 

「!…ああ神様仏様ー、ご無事ですかー?」

「!…あっ、見てよ、あっちが光ってる。行ってみようっ!」

 

 

 偶然不思議な光を見つけたナイン。ここぞとばかりに一番乗りでその場から離れる。

 

「やれやれ。どれ、ワシらも行ってみるかの」

 

 

 

 そこは実際、朽ち果てた建物の中であり得ないほどのまばゆさを称えている。

 

 

「何と神々しい…。もう試しに、ここで果実を捧げてみてはどうじゃ」

 

「何だか投げやりじゃ?」

「サチっ、仰せの通りに!オムイ様」

 

 ナインが代表して7つ揃った果実を捧げる。

 

 

 すると、どこからか不思議な声が聞こえて来たではないか。

 

『守護天使ナイン、サチ…そして長老オムイ。私の声が聞こえますか』

 

 

「これは…神様の声なのか?」

 

『私はセレシア。神ではありません。残念ながら…私の父グランゼニスは消息不明なのです』

 

「父、って事はあなたは女神様っ?!」

「サチ、馴れ馴れしいよ」

「これ二人とも、女神様の御前で見苦しいところを見せるでないっ」

 

 

『構いませんよ。あなた達天使が、長い間人間界を守り星のオーラを捧げてくれたお陰で、私は数千年の眠りから目覚める事ができました。感謝します』

 

「それでは、我々天使の役目は無事に達成されたという事ですかな…?」

 

 

『天使達よ、私の元へお帰りなさい。あなた方が守ってくれた世界樹の元へ』

「この神の国には、本当に誰もいないのですね」

 

『ええ。こうして話していますが、私の体はここにはありません。さあ、天使界に戻りなさい。待っていますよ』

 

 

 やがて声は聞こえなくなった。

 

 

「女神様が待っていらっしゃる!こうしちゃいられん、すぐに向かうぞお前達!」

「「御意!」」

 

 

 

 

 我に返った3人は超特級で天使界に戻って来る。

 

 

 

 すっかり見慣れた世界樹の前に、見慣れぬ一人の女性の姿があった。

 

 淡いブロンドのロングに月桂樹の冠を載せた女神セレシアだ。

 

 

『父グランゼニスは、世界樹に仕える者として天使と天使界を創りました』

 

「女神様がお目覚めになったというのは…」

『いろいろあって、私は世界樹となって様子を見守っていたのです』

「元の姿に戻れたのなら、そのいろいろは解決したのですね」

 

『いいえ…。神の国を襲った邪悪な光…その源たる邪悪な者が、次は世界を滅ぼそうとしています。甦りしガナン帝国城…そこに邪悪な気配を感じます』

 

「ガナン帝国!やっぱりあそこには何かあるんだ」

「何だかワケアリの魔物もいたしね。陰謀を感じるわ」

 

「じゃが、囚われた天使達は全員解放できたはずでは?」

 

 

『ナイン、サチ。再びあの地へ赴き、邪悪の根源を絶つのです。世界を、人間達をどうか守って、くだ、さい…』

 

 

 セレシアの姿が薄らいで行く。それと共に声も小さくなり、そして消えてしまった。

 

 

 

「女神様はその邪悪な者のせいで完全には戻っていないんだね」

 

「あそこに何が隠されてるのか、暴いてやろうじゃない?行こうナイン!」

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。