第115話 女神の果実集まりて
天使界にて長老オムイに出迎えられたナインとサチは、これまでの経緯を説明。
「何と、あの魔帝国ガナンが人間界に甦っていたのか…」
ガナンは数百年前に滅びた邪悪なる帝国だと知らされる二人。
「イザヤール様がそのガナンの味方となり、僕達から果実を奪って行きました」
「いや。それならばもうここにある」
「「…え?」」
イザヤールはここに果実を持って帰った。
だがまだやる事があると言って再び地上へ行ってしまったそうな。
「何がどうなってるのー!」
「本当だよ!」
「イザヤールは地上でお前達と共に果実を集めたと言っておったぞ」
「はぁあー?!」
「サチ、興奮しすぎ」
「ナインだって驚いてるでしょーよ。自分ばっかり優等生になる気?」
「はあ?」
「こら、ケンカはよしなさい、二人とも!」
時折こんな展開になる事など、幼い頃から成長を見守るオムイは百も承知。
勃発しそうな言い争いを慣れた様子で鎮めた。
「話を続けるが。よろしいかな?二人とも」
「「…はい、お願いします」」
「イザヤールが言うには、途中ではぐれてしまったとか。お前達をよろしくと言っておった。ワシにはあいつが裏切り者とは到底思えん」
「僕達だって思いたくありません!」
「そうよ、でもっ…」
「まあ、今は考えてもラチが明かぬ。真実はいずれ明らかになろう」
停泊している天の箱舟に目をやり、オムイは静かに語る。
「言い伝えでは、女神の果実が実る時、神の国への道が開かれ、我ら天使は永遠の救いを得るという。そこでじゃ、ワシは神の国へ行ってみようと思う。アレがあれば可能であろう?」
「それはもちろん」
「本物の運転士も見つかった事だし?」
「そうと決まれば、二人も共に来るのだ」
「「はい。お供します、オムイ様」」
アギロに事情を話すと、快く神の国へと運んでもらえる事となる。
早速乗り込んだ3人の天使達。
乗船初体験のオムイは終始感動冷めやらずといった様子で、年甲斐もなくはしゃいでいる。
「ところでサンディは?」
「疲れたから休むとさ。静かでいいだろ」
「代わりにウチの長老サマがちょっぴりにぎやかで、スミマセン…」
「構わんさ!ここまで喜ばれると嬉しいもんだぜ?」
ほどなくして目的地へと到着した。
空に階段が浮かんでいる。その先に宮殿が見える。
「天使界数千年の悲願、神にお会いする時がとうとう…っ!」
やって来た念願の神の宮殿はしかし、壁も天井も何もかもボロボロで見る影もない。
「長年地上とこの国を往復して来たが…こんな事態は初めてだ。一体どうなってやがる?」
「アギロはずっと囚人やってたんだもんね」
「ずっとったって、この放置具合は数百年単位だと思うぜ?」
「ねえ見て、あんなとこに大きな穴まで空いてるよ」
それは巨大な穴が床から天井まで突き抜けるように空いていた。
まさに邪悪な光が貫いた痕跡だ。
「天使界を襲った邪悪な光は、この神の国をも…?!何たる事だ!」
広大な宮殿を隈なく調べて行くも、神の姿どころか人っ子一人いない。
「一体ここの人達はどこへ行っちゃったんだろう」
「これナイン!ここの人達などと恐れ多い、我らが神とその関係者と呼びなさい」
「ナイン怒られたー!」
「むっ。バカサチ」
ケンカに発展しそうな気配を察したオムイ。
すぐさま二人に睨みを利かせれば効果てき面。
「!…ああ神様仏様ー、ご無事ですかー?」
「!…あっ、見てよ、あっちが光ってる。行ってみようっ!」
偶然不思議な光を見つけたナイン。ここぞとばかりに一番乗りでその場から離れる。
「やれやれ。どれ、ワシらも行ってみるかの」
そこは実際、朽ち果てた建物の中であり得ないほどのまばゆさを称えている。
「何と神々しい…。もう試しに、ここで果実を捧げてみてはどうじゃ」
「何だか投げやりじゃ?」
「サチっ、仰せの通りに!オムイ様」
ナインが代表して7つ揃った果実を捧げる。
すると、どこからか不思議な声が聞こえて来たではないか。
『守護天使ナイン、サチ…そして長老オムイ。私の声が聞こえますか』
「これは…神様の声なのか?」
『私はセレシア。神ではありません。残念ながら…私の父グランゼニスは消息不明なのです』
「父、って事はあなたは女神様っ?!」
「サチ、馴れ馴れしいよ」
「これ二人とも、女神様の御前で見苦しいところを見せるでないっ」
『構いませんよ。あなた達天使が、長い間人間界を守り星のオーラを捧げてくれたお陰で、私は数千年の眠りから目覚める事ができました。感謝します』
「それでは、我々天使の役目は無事に達成されたという事ですかな…?」
『天使達よ、私の元へお帰りなさい。あなた方が守ってくれた世界樹の元へ』
「この神の国には、本当に誰もいないのですね」
『ええ。こうして話していますが、私の体はここにはありません。さあ、天使界に戻りなさい。待っていますよ』
やがて声は聞こえなくなった。
「女神様が待っていらっしゃる!こうしちゃいられん、すぐに向かうぞお前達!」
「「御意!」」
我に返った3人は超特級で天使界に戻って来る。
すっかり見慣れた世界樹の前に、見慣れぬ一人の女性の姿があった。
淡いブロンドのロングに月桂樹の冠を載せた女神セレシアだ。
『父グランゼニスは、世界樹に仕える者として天使と天使界を創りました』
「女神様がお目覚めになったというのは…」
『いろいろあって、私は世界樹となって様子を見守っていたのです』
「元の姿に戻れたのなら、そのいろいろは解決したのですね」
『いいえ…。神の国を襲った邪悪な光…その源たる邪悪な者が、次は世界を滅ぼそうとしています。甦りしガナン帝国城…そこに邪悪な気配を感じます』
「ガナン帝国!やっぱりあそこには何かあるんだ」
「何だかワケアリの魔物もいたしね。陰謀を感じるわ」
「じゃが、囚われた天使達は全員解放できたはずでは?」
『ナイン、サチ。再びあの地へ赴き、邪悪の根源を絶つのです。世界を、人間達をどうか守って、くだ、さい…』
セレシアの姿が薄らいで行く。それと共に声も小さくなり、そして消えてしまった。
「女神様はその邪悪な者のせいで完全には戻っていないんだね」
「あそこに何が隠されてるのか、暴いてやろうじゃない?行こうナイン!」