突如現れた青い光は、4人が通り終えると段々小さくなって行く。
「アイツら、追って来ないみたいだな」
「ここはどこだろう?見覚えのない場所だね」
そこに、背に翼を生やした人間に似た容姿のショートの女性が現われた。
すでに青い光は消えてしまっている。
「頭に輪っか!まさかの天使?」
「キミ達は…まさか人間か?どうやってここに?それに気のせいか、そっちのキミとはどこかで会った気がする」
「あなたは誰?ここはどこ?」
「私はラヴィエル。閉ざされた運命の扉の管理者、ここは天使しか開けない扉の中だ」
「「「運命の、扉?」」」
「さあ、次はキミ達の番だ。答えろ、何者でどこから来たのか」
おもむろに自己紹介を始めるサチ。
メンバー全員を紹介し終え、女神の指示で探し物をしている事を伝える。
「セレシア様の、使いだと?」
「ええ。世界を守るために、どうしても大剣が必要なの!」
ラヴィエルはサチ達の素性を疑いつつも塔の中に案内し、傷の手当までしてくれた。
「セレシア様のご決断とあらば、私に反対する理由はない。アレなら塔の地下にある」
案内されてやって来た地下にて、ついに大剣とご対面である。
それはむき出しの岩壁に打ち込まれた、四方八方からの鎖で何重にも巻かれていた。
「これが、神喰らいの大剣だ。まあ、私が名付けたのだが」
「見るからに禍々しい雰囲気だわね…」
「まるで生きてるみたいっ」
「これは当初、セレシア様から賜った聖なる世界樹の枝だった」
「これが、枝?マジかよ、変わりすぎだろ」
「呪われた力を宿すうちに、こうなってしまったのだ」
「それだけ宿された力が強いという事ね…」
「サチと言ったな。キミの目はナインに良く似ている。これもエルギオス様のお導きかもしれない。封印を解く事を許そう」
ラヴィエルはそう言って自らを納得させてから、封印していた鎖の束を引き千切る。
直後、まるで断末魔のような音が響き、一行は堪らず耳を塞ぐ。
そして周囲はさらに禍々しい気配に包まれた。
「さあ。この大剣をキミ達に託そう」
「って言われると何か、怖くなって来た…。誰が持つ?」
「あっ、私は魔法専門だし!」
「大剣と来れば…やっぱ俺か」
「いいえ。私が持つわ」
どこかホッとした様子のボシュだが、サチの事も心配だ。
ついさっきむくれていたサチはすでにいない。
いつもと明らかに違う、追い詰められたような表情のサチがいた。
・・・
その頃、各地に散った冒険者達も果敢に神の軍団に挑んでいた。
「風よ!魔物の動きを封じよ!」
戦闘には加わらず調べ物をする予定だったシェントと大賢者だが、そんな悠長な暇はなかった。
それにしても数が多すぎて太刀打ちできていない。
「ダメだ、また次が来る、間に合わないっ!」
「シェント!大賢者さん!離れて!」
そこへ間一髪で駆け付けたサチ達。軍団に向けて大剣を振るう。
それは一撃でその場の全てを制圧してしまう。
「凄い…あの手強い魔物達をほぼ一瞬で!」
「やれやれ助かったよ。ところで、物騒なモノ持ってるね」
「やっと手に入れた必殺武器だぜ!」
自分は持っていないのに得意げなボシュ。
「あ、ねえ、何か落ちてる」
アイミーが何かを見つけた。
大剣が消し去った魔物の痕跡のようにそれはあった。
「それは記憶の欠片だね」
「誰のだい?大賢者」
「さあ。神の軍団が神の力を与えられていたのなら、神の記憶、だったりしてね」
「神様の記憶!」
「それが本当なら、かなり気になる!」
「取りあえず集めてみたら?」
こうして一行は軍団を倒しつつ欠片集めをして行く事にした。
次はスライムの里だ。様々なスライムの姿にリリがテンションマックスだ。
だがそこには先約がいた。
「ここは私が食い止めるわ。皆は早く安全な場所へ!掛かって来なさい、グリザードもどき!」
「勇敢な女がいるぜ」
「あれってヴェルさんだわ」
「おお、良く見ればそうみたいだな。何か納得」
「あの子、アタシと衣裳被ってない?」
「瞳の色も緑だ、リリ姉と同じだね」
「でも二人は初対面だよね。リリ姉の親戚?」
「って、どう見ても人種違くない?」
「そうだよ、アイツ、魔女の血筋って言ってたぜ」
ほらやっぱり!とリリが胸を張って返した。
そうこうする間に、魔物の数は倍以上に増えてヴェルはたちまち劣勢となった。
それを察知しサチがおもむろに大剣を構える。
「行って来る」
「お、おう…。俺の出番、ないよな、きっと」
「ない。皆はここで待ってて」
やはりサチの様子がいつもと違う。サチはまたも一振りで大群を成敗した。
「助かったわ。憎らしいほど絶妙のタイミングね、サチ。見た目よりやるじゃない?」
「ヴェル、ケガはない?」
「ひっ…!」
サチの手にする大剣を見たヴェルは、突如魔女に変身した。
その姿を見たサチは、下ろした大剣を再び構えて言う。
「なるほど…それがあなたの正体か。変身したって事は、私と戦うって意味?」
「違ーうっ!ソレ一体なに?!凄まじい絶望と憎悪が渦巻いてる!思わず魔女の血が反応してしまったじゃないっ」
そう言うと元の姿に戻った。
「その剣は危険よ。今すぐ手放した方がいい」
「でも、神の軍団と戦うためには必要なの。ようやく手に入れて来たのよ?」
そこへピンク色のスライムが慌てた様子で近づいて来た。
「ベビースライムがいなくなっちゃったー!」
「何なに、それは大変!探しに行かなきゃ!」
真っ先に反応したリリがスライムと駆け出す。
「あ、待ってよリリ姉、私も行く!」
「ちょっと!…ホントに大丈夫?あの子、な~んかやらかしそうとは思ってたけど。だって、あのドラちんの弟子よ?…まだ信じらんない!」
その後ベビースライムはすぐに見つかった。
「ぷるる~~~ん」
「私のベビーちゃ~ん!!今行くわよ~」
ところがそのベビーを例の魔物が狙っていたから大変。
空から素早く近づくバゴスには追いつけそうもない。
「ダメ、間に合わないっ」
そこへサチが全力で飛び上がる。
リリの頭上を飛び越えてバゴスに大剣を振り下ろした。
「半端ないぜ…ドラゴーンの時より跳躍力あるな」
「サチ!ナイス!」
ベビーと再会を果たしたピンクスライムを、安堵した様子で眺めるリリ達だが。
「ねえ、あの子の様子がおかしいわ」
気づけばサチの体は、大剣から湧き上がる邪悪なオーラに包まれている。
そしてサチは、大剣を振り回して暴れ始めたではないか。
「おいサチ!一体どうした!?」
「しっかりしてよ!」
「だから言ったの!呪いの力に囚われてしまったんだわ!」
「どうすればいいのー!」
ヴェルが懐から巻物を取り出す。
「悟りの光よ、忌まわしき闇を払え!」
だがその呪文はサチには効かない。
「そんな、ウソでしょ…?私の力が弾かれるなんて!どんだけ深い闇なの…」
困惑するヴェルを横目に、ボシュがサチに近づく。
「おいサチ。俺の声、聞こえるか?正気に戻れ!」
「そうだ、ねえ光の玉は?あれで闇をうち消せたりしないかな」
「あ、あれ今私がお守りにって借りてた。サチ、これ持って!」
こんな我を失っているサチの脳裏に声が響く。
『冒険者よ。私は守護天使エルギオス。忌まわしき力に心を囚われてはならない』
「…」
『これは未知なる力。冒険者よ。今こそ真実を伝える』
それは女神セレシアから知らされた話の、エルギオス視点のものであった。
かつて自分は、ガナン帝国の地下牢獄に囚われた。
人間を滅ぼす事を先延ばしにした神を憎みながら、3百年の時が流れた。
そこへ黒ネコが現れ、まもなく天使界の世界樹に女神の果実が実る。
それは人間達の清き心が証明される事を意味する。
そうなれば神は人間を滅ぼす事をやめるだろうと言った。
『だがそれでいいのか?ガナン帝国の人間共がお前にした仕打ちを思い出せ。何よりお前の信頼を裏切り、帝国に売ったラテーナの仕打ちを!』
「黒いネコめ、その名を口にするな…!思い出すのもおぞましい」
『神がやらないならお前がやればいい。役立たずの神など消し去るのだ。その気があるのなら、お前に特別な力を与えよう』
それを受け入れるや、力を得た途端に抱える憎悪が何倍にも膨れ上がった。
気が付いた時には天使界を貫き、創造神の体を引き裂いていた。
『正直、あの力の正体は私にもよく分からない。だがこの力は、手にする者によって光にも闇にも変わるようだ。今は絶望と憎悪に満ちているが、いずれはお前が望む力になり得る』
『そしてもう一つ。その力を得た者は知覚が研ぎ澄まされる。私はかつて、二人の天使が世界を救う歴史を見た。一人は勇者ナイン。もう1人は、冒険者よ、お前だったのだな…』
「違う!それは私じゃない…っ」
ここでサチは目を覚ました。
「見て!気が付いたわ」
「サチ!アタシの事分かる?」
「サチ大丈夫?」
「あれ…私。リリ姉、アイミー…、ボシュも」
「大暴れして気を失ったから心配したぞ」
「見たところ正気に戻ったようね。闇も消えてるわ。でも念のため、ダーマ神殿で医官に診療してもらった方がいいかもね」
「おお、あそこなら優秀な医者もいるだろう」
「それがいいよ、そうしよう?サチ」
「じゃあ、すぐにダーマ神殿に向かおう」
「…神を引き裂く力を手に入れるという事は、それ相応の代償を払うという事なのね」
サチは一人小さくつぶやいた。
大剣はニンジャサチもゴッドハンドボシュも得意武器ではないですが、誰が持っても強くてお陰様で一気にサチパーティがパワーアップしました(;^_^A