再び舞い上がった箱舟。地図に示された場所へとアギロが船を進める。
やがて窓の外に大きな穴が見えた。空に開いた大きな穴。かなり異様な光景だ。
「あ、あれか?」
「うん…あれがミカヅチさんの世界への入口みたいだね。少し怖…」
怖がるアイミーを気にする事もなく、一行を乗せた箱舟は迷わず飛び込む。
その先は雷雲立ち込める空間だ。すぐ横に大きな雷が落ちる。
「ひゃあっ!テンチョー、気を付けて!」
「分かってる。確かにこんな場所、コイツじゃなきゃ移動できないな」
「見て、建物がある。あれが神殿?」
「よーし、着陸する、しっかり掴まってろ!」
どうにか無事に降り立った面々。目の前の建物を見上げる。
「ここのどこかにマジンコアがあるんだね」
「早くぶっ壊して、あいつらの襲撃を食い止めようぜ!」
一行が一歩踏み出した時、どこからか黒髪の少年が現れた。
「ちょっと待って!」
一番に反応したのはアギロだ。
「お前、…まさかナインか?」
「えー!守護天使改め、勇者ナイン?何で!」
「サチ、キミが持ってる大剣は危険な物だ。今すぐ封印した方がいい。さあ、ボクに渡して!」
「どーすんのサチ、…渡す?」
「どうして私の名前を?誰かと間違えてるわ。良く知らない人にこれは渡せない!」
「そーよ!もしかして、あの金髪オバンが化けてるんじゃないのー?」
こんなリリのコメントに、ナインが頭に手を当てて舌を出す。
「バレた~?って、誰がオバンよっ。さすがに同じ手は通用しなかったわね。でも驚いたわ。まさか本当に神を引き裂いた力が遺されていたなんて?で。そんな物騒なモノ抱えて何しに来たワケ?」
「とぼけんな!あのおかしな軍団を止めるために決まってんだろ」
「急に来られても困るのよね~。部屋も散らかってるし~」
「良く言うぜ。俺達が来る事などお見通しだったんだろ?」
「ちょっとズボラな一面を見せて好感度上げようったって、そうは行かないんだからね!」
「来ちゃったものは仕方ないわ。せっかくだから私の超ステキな神殿を案内してあげる」
「え…、いいの、かな?」
「遠慮する事ないわ。どうせ断っても強引に入るつもりでしょ。そっちの方がメンドーなんですケド!さ、ボサッとしてないで入りなさい」
「あっさりすぎて逆に怪しいな」
「イヤな予感しかしないんですケド!」
迅雷天ミカヅチに付いて神殿内に足を踏み入れる一行。
サチはいつものごとく単刀直入に切り出した。
「迅雷天。マジンコアはどこにあるの?」
「な~んだ。それが見たかったの?だったらそう言ってよ。広間にあるわ、付いて来て」
「マジ?ありかまで教えてくれるって、やっぱ怪しー」
「グリザードの言うように油断するなよ、お前達」
やって来た神殿の広間には、不気味な光を放つ深紅の球体が鎮座していた。
「あれがマジンコアか…」
「見るからにヤバそうな代物だぜ!」
マジンコアを前に、ミカヅチがご丁寧に説明をし始める。
かつて偉大なる魔王は、人間を滅ぼすため破壊兵器キラーマジンガを作った。
その破壊力は、緑の大地を一瞬で荒野に変えてしまうほどであったと。
「当然よ。原動力であるマジンコアには、神の力が宿っているんだから?」
「あなたはその力を利用して、神の軍団を造って世界中の人を苦しめている!」
「サチったら人聞きが悪いわ。言ったでしょ、人間を滅ぼすのは私ではなく神のご意志。彼らはその意志に従って動いているだけよ」
「じゃあ、あなたの目的は何?何のために魔王を生み出したの?」
「私の目的?別に大した事じゃないわ。ただセレシアお姉さまが苦しむ姿が見たいの!それだけよ」
皆が同時に声を発する。
「「「セレシア、お姉さま?!」」」
そして次に声を上げたのはサンディだった。
「ああーっ!どっかで会ったと思ったら、あんたもしかして…もう一人のお姉ちゃん?」
「あらサンディ。まだ私の記憶が残っていたの?」
「今の今まで忘れてた…何で?」
「ちょっと待って、一体何のハナシ?」
何でもミカヅチは、かつてセレシアの妹として造られた女神であったそうな。
その名もペルセリア。
「マジか…あいつが女神だなんて?」
「そんなはずはない、神の娘は一人だけのはずだ…。おいサンディ、お前操られてやしないか?」
「う~ん、ないとは言い切れないケド…。だってアタシ、そのお姉ちゃんにギャルの事とか教えてもらったんだよ?」
「…まあ、あのセレシアって人じゃ、その手の事は教えられんだろうが」
「あの清楚なカンジだもんねー」
「覚えていないのも無理はないわ。私が存在した痕跡や記録は全て抹消されたんだから。私を知っているのは限られた一部だけ」
はるか昔、天使達が創られるよりももっと以前。
ある事件が元で、自分はセレシアに神の国を追放されたのだと語る。
「神の国を追放、だと?」
「あのセレシアお姉ちゃんが?!」
「地上に落とされた私は、お父様とお姉さま…そして神の国への復讐を誓ったわ」
「またそういう展開か」
「復讐劇、好きよね~皆」
「でもちゃんと聞けば誤解だったって事多いよね」
かつてブレアもそうだった。エルギオスもある意味では元恋人への復讐とも取れる。
「そうこうしているうちに、お父様は人間を滅ぼそうとするわ、セレシアお姉さまが世界樹になるわで、挙句お父様が自らの創った天使にバラバラにされちゃって。だから超ラッキー♪ってカンジで、お父様の魂を手に入れたってワケ」
「その魂と黒王の肉体を利用して、魔王を生み出したの?」
「良く知ってるじゃない?そうよ。これでお父様とお姉さまは永遠に戦う事になった。これが私の神の国への復讐」
「んだよ、その親子ゲンカのために俺らの世界は脅威にさらされてるってのか?」
「そのために、かつての英雄達は命を犠牲にしたっていうの?」
「尊い命を!」
「そんな事に巻き込んだの!」
一行に等しく怒りが込み上げる。
「ちょっと待ってよ。それはそっちが勝手にした事でしょ。恨むなら、あなた達人間を巻き込んだセレシアお姉さまを恨むのね!人間を守ろうとするから争いが長引くのよ?」
「あなたは間違ってる!これ以上世界をメチャクチャにさせはしない!」
「良く言ったアイミー!」
「サチ、マジンコアを壊すんだ!」
「やるだけやってみたら?お勧めはしないケド!」
サチは鎮座したマジンコアに、怒りに任せて神喰らいの大剣を振り上げる。
とその刹那、激しい雷撃がサチの体を貫いた。
「ああぁぁっ!!…っ」
「だから言ったでしょ。無防備のままここへ案内すると思う?あれは私の帯電領域で守られている。近づけば雷に打たれて命を落とすだけよ」
「サチ!しっかりして!」
「まずい、息をしてないぞ!」
「あ~あ。お姉さまのせいで、また一人尊い命が失われたわねぇ」
「アンタ!女神のくせに、何でこんな事するのさ!」
その時、サチの懐から光が漏れ出した。
リリがそれを抜き取る。
光っていたのはセレシアから授けられた小枝だった。
それは強い光を放ち、サチを包み込む。
そしてサチがゆっくりと目を開く。そして立ち上がったではないか!
「ザオリク…?そう、お姉さまったら、あくまでも神のご意志に逆らうというのね。ムダよ!私を倒さなければ、あれに触れる事すらできないのだから!」
サチはミカヅチを見据え、再び神喰らいの大剣を構える。
「うふふ…。いい顔つきね。大剣からあふれる絶望と憎悪が濃くなって行くのが分かるわ。神を引き裂く力が相手なら、私も本気を出すしかなさそうね」
そう言うと、ミカヅチの装いが変化した。
「迷える人間達よ。我が名は女神ペルセリアなり」
「…あれが本当の姿?やっぱりオバンだけど!」
「でも断然女神っぽくなったね」
「何てこった、本当に女神だったのか…」
「これより神の名において裁きを与える!な~んて?一度言ってみたかったのよね~。女神だった時期が短いもので、その機会もなくって?」
「ムダ口はいい。覚悟して!天裂く凶刃!」
サチは大剣を振り抜いた。
そしてそれは見事にペルセリアを打ち倒した。あまりにあっけない展開だった。
「これが、神を引き裂いた力…?なんと恐ろしい、ぐふ…っ」
「アイツが倒れたお陰で帯電領域が解かれた、今のうちにマジンコアを打ち壊すんだ!」
サチは再び大剣を大きく振り上げる。そして一撃で叩き斬った。