旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

126 / 126
第125話 暴走する力

 

 

 サチがマジンコアを叩き斬ったのと同時に、人間世界では神の軍団の動きに変化が現われていた。

 

 

 ヴェル、ラシーン、レグナのグループが対峙する魔物達の勢いが弱まり出した。

 

「何これ、敵の様子がおかしいわ」

「混乱してるように見える。統率も乱れて動きが鈍くなった」

 

「そうか!サチ達がマジンコアの破壊に成功したんだ」

「やってくれたか。本当に大したヤツだぜ!」

 

 

 これのお陰で制圧するスピードも格段にあがり、神の軍団は次々と倒されて行った。

 

 

 

・・・

 

 

 

 ペルセリアの神殿にて、倒れ伏したペルセリアに背を向けたサチ達一行。

 

 

「早くあっちに戻ろう。私達も救助活動を手伝わなきゃ」

「だな。急ごうぜ」

「うん!」

「行こ行こー!」

 

 

「…待ちなさい、あなた達…」

 

 

「お前、まだ起き上がる力が残ってたのか」

 

 ボシュがペルセリアに剣先を向けて構える。

 それを無言で制するサチ。

 

 

「やってくれたじゃない?…でもこれで終わりだと思わない事ね。…むしろこれから始まるんだから」

 

 

 その時、どこからか声が響く。

 

『もうおよしなさい、ペルセリア』

 

 その声と同時に女神セレシアの姿が空間に浮き上がる。

 

 

「あら。…セレシアお姉さまじゃない」

『もう分かっているはずです。こんな事を繰り返しても、あなたの想い人は戻らないのですよ』

 

 こんな言葉に、珍しく無言になるペルセリア。

 

 

 そんな際どいシーンに割って入ったのはリリだ。

 

「あの!ペルセリアって本当にセレシアさんの妹なんですか?」

 

 

『そうです。人間達の文明が発展して大きく広がり、地上を見守るためと創られた二人目の女神です』

「そうそう。これでも昔はマジメに仕事してたのよ?」

「でもセレシアお姉ちゃんが追放したって、何やらかしちゃったワケ?」

 

 言いにくそうなセレシアにペルセリアが言う。

 

「隠すような事でもないでしょ。もったい付けてるみたいでイヤだから早く言って」

 

 

『ペルセリアは…女神にあるまじき過ちを犯してしまったのです』

 

 

 ここで再びセレシアは、一行に瞬間的に映像を見せた。語るより見るが早い。

 

 

 

「ペルセリア、私の目を盗んで地上の世界に降りている事は分かっています」

「バレちゃった?地上を見守る者として知るためよ。大事な事でしょ?」

「本当は他に目的があるのでしょう。例えば特定の人間と逢う事、とか」

 

「ええそうよ。私…あの人にぞっこんなの!」

 

 

 予想はしていたのか、セレシアの表情は変わらず。

 

「とにかく、これがお父様に知れたら一大事です、対策を考えねば。私にだけは詳しい事を聞かせてください」

 

 

 聞き出してみれば、それはビビビ…と来る出会いだったとか。

 

 

「胸がズキューンって、分かるでしょ?そういうの」

「まるで想像がつきません」

 

 

 ただ相手は少し変わっているという。

 本来人間には神の国の存在を見る事はできないのだが、ペルセリアの姿が見えるのだと。

 

「そんな人間がいるのですか…?」

「それだけじゃないわ。あの人は夢の中で未来を知る事ができるの!」

 

 周囲の人間はその者を神の生まれ変わりだとか、奇跡の仔と呼んでいるそうだ。

 

 

「奇跡の、仔…?」

 

「お姉さま。あの人には特別な力がある。世界を変えられるほどの…。私はあの人の側にいて、それを見届けてあげたいの」

「あなたは地上を見守るべき女神なのですよ?分かって言っているのですか」

 

「もちろん分かっているわ」

 

 

「ならばその行為が許されない事も分かるはずです。お父様に知れたら…」

「お父様には黙っておいて。折を見て自分で話すから。お姉さま、私は本気であの人を愛しているの」

 

 

 セレシアは何も言えなくなってしまった。

 

 

 

 

 

 現在へ戻る。ペルセリアの神殿にて。

 

 

『お父様には…言えるはずもありませんでした。もし話せば、ペルセリアは重い罰を受けます…その前に考え直してほしかった』

 

「女神と人間の愛って、そんなにイケナイものなの?」

「まあ、どこの世界にもルールってもんがあるからな」

 

 

『ですが、お父様は私達の話を聞いてしまった。そのせいであの悲劇が起きたのです』

 

 

 再び映像に切り替わる。

 

 

 

 

 鋭い雷が轟いた事に驚いたセレシアは、急ぎ父グランゼニスの元へ。

 

 

「何事ですか!」

 

「我が娘セレシアよ。私に隠し事とは感心せぬな」

 

 

 当然それは、ペルセリアが人間と恋に落ちた事であった。

 セレシアは必死で庇う。

 

「あの子に自由奔放な一面がある事は認めます。でもそれは、純粋であるという証です。どうかご慈悲を…。私が過ちを正し、女神の本分を全うさせます」

 

「その必要はない。もうあの人間はこの世におらぬ。先ほど我がイカヅチで存在を消した」

「何ですって…?人間を、処分したとおっしゃるのですか…!」

 

「女神が人間と恋など愚の骨頂。身の程を弁えぬ人間には、戒めを与えねばならぬ」

 

 

「何という事を…!」

 

 

「ペルセリアも同罪だ。どうやら女神としては失敗作だったようだ。処分せねばなるまい」

「お待ちください!妹の不始末は、私の責任です。どうか…処分は私にお任せを」

 

 

 

 

 セレシアは大急ぎでペルセリアを探しに向かう。

 

 そして二人は口論となる。

 

 

「お姉さまね?お父様に告げ口してあの人を…!」

「ペルセリア…全ては、神がお決めになられた事です」

 

「神だからって、何をしても許されると思ったら大間違いよ!思い知らせてやるわ」

 

 ペルセリアが背を向けた。

 

 

「どこへ行くのですか?」

「決まってるでしょう。お父様に復讐するのよ」

 

「お待ちなさいペルセリア!あなたを…神の国から追放します!」

 

 

「はあ?何ですって?」

「あなたは女神の力を一部失い、これから地上で生きるのです」

「冗談じゃないわ、ふざけないで!」

 

 

「父なる神に代わり私が決めました」

 

 威厳を持って言い放たれ、ペルセリアは口を閉ざす。

 

 

「…分かったわ。こんな所、こっちから願い下げよ!でも忘れないで。私は絶対にあなた達を…この神の国を許さないんだから」

 

 

 

 

 

 映像を見終えた一行が、現在に意識を戻す。

 

 

「そんな事があったのね…」

「そりゃアタシだって怒るわ」

「ペルセリアさん可哀そう…」

 

『ほとぼりが冷めたら、ペルセリアを神の国に呼び戻すつもりだったのですが…』

 

「それどころじゃなくなった、か」

 

『はい。父はあろう事か、人間そのものを抹消しようと言い出し、阻止するために私自身を木に変えてしまったので…叶いませんでした』

 

 

 

 一連の内容を無言で聞いていたペルセリアが口を開いた。

 

「…で?カビの生えた昔話はお終いでいいかしら。今にして思えば、お父様はあの人の奇跡の仔の力を恐れていたのね。二度とそんな仔が生まれないよう、人間全てを滅ぼそうとした。ホント…、ちっぽけな神だこと!」

 

『あなたがお父様や私を恨む気持ちは分かります。ですが、これは神の国の問題、これ以上人間達を巻き込むのはおやめなさい』

 

 

「どの口が言ってるの!お姉さまこそいい加減人間を巻き込むのをやめたら?今まで一体何人の英雄達がその身を犠牲にしたのかしらね!」

 

 セレシアの表情が強張った。

 

 

「いい機会だからハッキリ言わせてもらうわ。私はね、お姉さまの誰にでもいい顔する態度が大嫌いなのよ!その慈愛に満ちたお顔で、人間の最期を見届けるといいわ」

 

 そう言ってペルセリアが何やらのボタンを押した。

 

 

 すると砕けたマジンコアの破片が集まり、元の球体に戻り出したではないか!

 

 

「おいおい、何が始まった?」

「マジンコアが復活する!」

 

「ええっ、マジ!?」

「大変、復活を止めなくちゃ!」

「もっかいブっ壊した方がいいよな!」

 

 

「そうは行かないわ。悪いけどあなた方はこの子達と遊んでてちょうだい?」

 

 ズシーン、ズシーンと地響きが聞こえて来る。

 

 

「何か来る…っ」

 

 

 現われたのは巨大な金色の石像だ。それは二体でマジンコアの前に立ち塞がった。

 

「我は天の門番!我の鉄壁の守りを見るがいい!」

 

 

「私達を近づけさせないつもりね」

「そうは行くか!遊んでやろうじゃねーか?行くぞサチ!」

 

 

 今やサチもボシュも神喰らいの大剣のお陰で無敵だ。呆気なく勝敗が決まる。

 

 

「鉄壁がこんなにもあっさり破られるとは…」

 

 バターンと派手に地響きを立てて石像が倒れた。

 

 

「サチ!早くマジンコアを壊して!」

 

 再び大剣を振り上げたサチ。

 だがその瞬間、強烈な光を放ちマジンコアはサチを弾き飛ばした。

 

 

「「「サチ!」」」

 

 

「危ない危ない、もうちょっと遊んでてくれると思ったけど。でも間に合ったみたいね~」

 

 

「復活しちまったのか…?」

「しかも何か、前よりパワーアップしてない?」

 

 

 

 マジンコアの禍々しさは勢いを増し、近寄る事さえはばかられるほどになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。