旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第12話 重症の女の子

 

 

 ようやく光が見えて来て、出口へと辿り着いたボシュとアイミー、そして子供達。

 そこではサチとリリが待ち構えていた。

 

 

「ボシュ、アイミー!無事ね。子供達も…っと元気そうだね!これが気になるのかな~?」

 

 子供達はサチのピンクスライム帽に夢中で手を伸ばす。

 

 

「この子だけ重症だ」

「こっちへ」

 

 

 ボシュの背から受け取ったリリが、近くの草むらに女の子を寝かせる。

 

 

「ケガをしてる様子はないから、体の中に入った何かに侵されてるんだと思う」

「毒の類ではなさそうじゃが」

「ジョニじい、見て分かるの?」

「何となくだがの」

 

「そうすると、やっぱり瘴気かな…」

 

 自分も悩まされているアイミーは、その気持ちが分かるのだ。

 そしてサチも頷く。

 

「そうだとすると、治す手立てはない」

「え、ないの?」

「そうだね。毒は毒消しで対処できるけど、魔物の瘴気は違う。綺麗な空気を与えて、待つしかないんだ」

「この子の生命力に賭けるしかないって事」

 

 

 現状を知ったボシュとリリは口をつぐむ。

 横たわる子供を見守る事しかできない事に、それぞれがやるせない思いを噛みしめる。

 

 

 

 森を抜けると、あれほど息苦しかった空気がウソのようにスッキリとしている。

 子供達をそれぞれの家に送り届けた後、開放感に浸る面々。

 

 

「あ~、やっとしっかり息吸えた気分!」

「ホント。ここの空気、少し良くなった?」

 

「魔物が消えたせいじゃろう。おぬしら、良くやったぞい」

 

「随分上からだが。ただのお供に何でそんな事言われなきゃならねえんだ?」

「お兄ちゃん、いいじゃない。ジョニじいは私とリリ姉の先生なんだから」

「それからドラちんさんもねー」

「うげっ。思い出させるな!」

 

 

 楽し気な笑い声を上げるリリとアイミーだが、サチの表情は曇ったままだ。

 

「サチ?さっきから黙って、何考えてるの」

「あの子の母親、行方知れずって言ってたよね。父親もいないのに、子供一人残してどっか行くってあるのかなって」

「それは私も思った。もしかして、そのお母さんも魔物にさらわれてたりしない?」

「子供達が全員無事だった事と関係あるとかな」

 

 

 一同がボシュのコメントを受けて考え込む。

 

「何かありそうだわね」

「でも、敵さん全部やっつけちゃったから、聞き出す事もできない」

「ジョニじい!ちょっと来て。助言がほしい」

 

 

 辺りをボヨンボヨンしていたジョニーがこちらへ戻って来た。

 

 

「おぬしらが頑張った褒美に、一つだけ教えて進ぜよう!」

「…だから、一々押し付けがましいっつってんだよ」

「お兄ちゃん。黙って」

「へいへい!」

「ゴメン、ジョニじい、続けてください」

 

「良かろう。子供らがなぜ無事だったと思う?」

 

 ジョニーは質問形式で語り始める。

 

 

「さらったはいいが、興味を失くしたってか?」

「方向は間違っていない。ではなぜ一人だけあのような濃い瘴気に当てられていたのかは?」

「だからそれはあの子が人一倍敏感で…」

「あっ!」

「何だよアイミー、まだ俺が話してる途中だぞ」

「構わん。アイミー殿、申してみよ」

 

「何で構わねえんだよっ、てめぇは俺に興味なしみてえだな!」

 

 ボシュの頭が後ろから小突かれた。

 

「いって!」

 

 

「口の利き方。いい加減覚えな?」

「何だよリリ姉まで!」

「ボシュ、ここは引いて。話を聞いてみよう」

「…チッ」

 

 サチの言葉に、ようやくボシュが引き下がる。

 

 

「アイミー、話してみて」

「うん。きっとその子が魔物達の目的に一番近かったんじゃないかな」

「そうか。だから他の子達よりも魔物と過ごす時間が多かったのね」

 

 

 子供達は地下牢のような場所に閉じ込められていた。

 牢の前に魔物がいたとはいえ、ある程度の距離はあったのだ。

 それを考えれば、その子供だけが別の待遇だった可能性はある。

 

 

「だが皆と一緒に牢屋に入ってたぜ?」

「そりゃだから、用済みになって戻されたのよ」

「なぜ殺さない?そんなお情けあるかね、魔物に!」

「目的が達成されていないのかも。もしくは交換条件か…」

「それって魔物と対等に話せるって事になるが?子供の関係者にそんな人間がいるかよ!」

 

「ねえ。最初に言ってたよね。リリ姉みたいな強い魔力を持ってる人間を、魔物が狙うって」

「…強い魔力を持つ、人間。それが母親とか?」

「そうだよ、やっぱり捕まってるんだよ!」

 

 

 ここまで導き出された答えに、ようやくジョニーが言葉を発した。

 

「よく答えに行き着いた。さすがはワシの見込んだ者達じゃ。もうろくジジイの助言など不要ではないか?ワッハッハー!」

 

 満足げなジョニーは、高笑いして飛び跳ねながらどこかへ行ってしまった。

 

 

 

「…ワシの見込んだ者達、って…?」

「おい、いいのかよ。どっか行っちまったぜ?」

「好きにさせてあげて。どうせ夜の居場所は決まってるんだし」

「酒場よね。この村にジョニじいが入れる店はないと思うけど~」

「冬じゃねぇんだし、外でいいだろ」

 

「ねえ。話戻していい?そうするとさ、あの子の母親が魔物達の目的で、その人はどこにいるのかな」

「あの森?洞窟のどこかに閉じ込められてるとかは?」

「いいえ。それはないと思う。子供達以外に人の気配はなかった」

「俺もそう思う。地下は隅々まで確認した」

 

「あの子に話を聞ければ、だわね…」

「回復するまで、少し待ってみる?」

 

 アイミーがサチを見て確認する。

 

 

「そうね。しばらくここを拠点にして動こう。次の敵と戦う前に、皆の防具ももっと整えたいし」

「それ賛成!この盾よりマシなの、一個くらいはあると思うのさ!」

「え~、一個じゃダメ、私のもね?リリ姉!」

「これそんなに不評なのか?俺は案外気に入ったけどな!」

「だから男物って事っしょ」

「でしょ、どう見ても?」

 

「んでもって、サチもいい加減その帽子じゃなくてもっとカッコいいヤツ被りなよ?」

「賛成だな。一々笑いそうになるこっちの身になれ」

「でも今回は子供達に大人気だったね」

「まさかお前、そういうの狙ってたのかよ」

 

「さあ?」

 

 とぼけるサチは、どこかジョニーと重なる部分が。

 

 

「考えてみれば、お前とあのジジイ、何か似てね~か?」

「やめてよ。あんなエロじじいに似てるなんて?」

「いきなりの真顔。サチってホント変わってる!」

「何がよ」

 

「本人以外は皆分かってるから。いいじゃない、それがサチなんだし!それより、最後の地響きスゴかったね。あれリリ姉でしょ?」

「おい、アレをあそこでやったのか?よくあの洞窟無事だったな…」

「全くよ。未だに半信半疑!でもサチ見てて吹っ切れた」

「アレ見てて、ってか」

 

 皆の視線の先にはピンクスライムののん気な笑顔がある。

 

「ピンポーン」

「気が抜けるわな、確かに!」

「そんなメリットがあるとは知らなかった」

「…マジ?」

「で、サチの経験値は実際俺達より上がってるのか?」

 

「分かんな~いっ」

 

 

 小首を傾げて言うサチの姿が、ボシュの目にはやけに愛らしく映った。

 

 

「あれ。お兄ちゃん顔赤いよ?日焼けした?」

「それはないでしょ、一日中薄暗い森の中にいたんだから?」

 

「勝利の美酒を想像してたら酔っちまったんだ!」

「おおお、なかなか言うじゃない?よし、想像じゃなくて現実世界で飲みましょ!サチ、行くよね?」

 

「もち!レッツゴー!」

 

 

 

 

 

 

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