旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第13話:ことの真相

 

 

 この夜、村の酒場は勇者一行を称える村人達で賑わい、大変な盛り上がりとなった。

 

 

「いやぁ、サチさん達が来てくれて本当に良かった!」

「子供達も全員無事だったし、めでたい!」

 

「でも、一人だけ無事とは言えない状態です…」

「ああティルかい。あの家はいわくつきでね。魔物に目付けられたのだってそれのせいさ」

「あの子、ティルっていうのね。その子の事、具体的に教えてください!」

「昔から魔物と取引してるって噂があるんだ」

 

 酒を酌み交わしつつも情報収集を欠かさない。

 

 

「サチったらさすがね。こんな時にも抜かりないわ」

「酔いが回る前に聞けるといいんだけど…」

「大丈夫でしょ、ボシュも横で聞いてるみたいだし」

 

 

 いつの間にか、サチとボシュがメインで村人にもてなされている。

 

 

「だけど今回一番の貢献者、ここにいるのに!リリ姉もあっちに混ざって来なよ」

「アタシはいいって。目立ちたがり屋だけどね、今はその時じゃないの」

「ふうん。よく分かんないけど、ならいいか。ジョニじい、結局来てないね」

「これだけ村人が集まってる中で、仮にも魔物が顔出せないでしょうよ?」

「何だか可哀そう…」

「優しいねーアンタは!」

 

 

 二人もそれとなくあちらの会話に耳を傾ける。

 

 瘴気にやられた子供はティルというらしい。

 母親が昔から魔物と何らかの関わりを持っているとか。

 

 

「な~んか、他人事じゃないって気がする」

 

「え?」

「もしもよ?その母親が強力な魔法使いとかで、悪の道を選んでしまったんだとしたら…」

「魔物と取引して、何か悪い事するって?」

「子供を人質にされたら言いなりになるしかない。悪の道を選んだ時点でその力は魔物のもの」

「子供の命と引き換えって事?あり得ない!」

 

「アタシの祖母と母親、事故で死んだって聞いてるけど、本当は魔物に殺されたんだと思ってる」

「え…どうして?」

 

「もしかしたら、取引した後に、自害したんじゃないかって」

「でも、それならあの杖は魔物が持ってないとおかしくない?」

 

 

「取り返したのよ。最後の力を振り絞って奪い返した、とかね。分かんないけど!これは単なるアタシの妄想。受け流して!」

 

 

 あえて明るく振る舞っているリリを見つめながら、アイミーは旅に出る前にジョニーが言っていた事を思い出した。

 

 本人が望んだ事ならばどうしようもない。

 

 

 決死の覚悟で死の道を選ぶ。それはもちろん究極の選択である。

 だが母というものは、愛する子と己の魔法使いとしての矜持を守るためにそうするのだろう。

 

 

「リリ姉…」

「いずれにしろ、手遅れになってない事を祈るばかりだわね」

 

 

 

「二人とも!飲んでる?盛り上がってないよ!」

「そんな事ないよ。それよりサチ、帽子どうしたの?」

 

 気づけばサチの頭にスライム帽がない。

 

「ティルちゃんの家にあるよ」

「ティルちゃん?」

「あの子?」

「そう。お守り代わりになるかなって。また明日様子を見に行くしね」

「久々に素のサチを見た感じ!」

 

 

 わざとポーズを決めてみるサチだが、リリのダメ出しが入る。

 

「違う違う、もっと胸を張って強調するように。そんで腰をクイッと…そうそう!イイ感じ」

「リリ姉、それ何のポーズよ…」

 

 

 ポーズが決まったタイミングで、たまたまボシュと目が合ったサチ。

 自然な流れでウインクを飛ばす。

 

 それを見たリリが冷やかしを入れる。

 

「お~っと?あっちに誰か意中の男でも?」

 

 

「ってお兄ちゃんじゃない」

「目が合ったから」

「勘違いするからやめてよ、お兄ちゃんそういうの全然慣れてないんだから!」

「リリ姉に散々からかわれてるんだし、そろそろ免疫付いたんじゃない?」

 

「どうだかねぇ、あの様子じゃ」

 

 ボっと音を立てて顔から火が出ていそうなボシュを見てリリが言う。

 

 

「良く見れば、ボシュだけじゃなくて周りのオジサン達にも、火、点けちゃったみたいだわねぇ」

「サチ、無自覚が過ぎるよ?美人さんは、無闇にそういう事しないの。いい?」

「ビジンサン?」

 

 ポーズを決めたまま首を傾げるサチは、全くピンと来ていない。

 

「あははっ、ウケる~!」

「リリ姉!笑ってないで説得に加わってよっ」

「アタシにそれ頼む?色気が溢れ出てるこのアタシに?この酒場だけじゃなくて村中の男を虜にしてみせようか」

 

 

「やめとけ。男だけじゃなくて魔物まで寄って来る」

 

 ようやく顔色の戻ったボシュが横から割って入る。

 

 

「あらチェリー君。もうあっちの接待はいいの?」

「サチが消えたから全部俺に酒が回って来る。言っとくがな、顔が赤いのは酒のせいだからな?」

「何も言ってないけど~」

「お兄ちゃん、あんまり飲みすぎないでね?」

「だから戻って来たんだろうが。女子でピーチク楽しそうだが、お邪魔だったか?」

 

 

「何を言いますやら!大歓迎、待ってましたわ~」

 

 リリがボシュの肩に腕を回して引き寄せた。

 

 

「なっ!何をする?!近いっ」

「いいじゃない、もう家族みたいなモンだし。ね!」

「許可します」

「何でだよっ!」

 

「じゃ、次私ね」

「おいサチ、お前までっ。勝手に順番待ちすんな!それよりお前、さっきのアレ何だったんだ、お陰でからかわれたぞ!」

「アレってこれ?」

 

 サチがもう一度ウインクをして見せる。

 

「だっ、だからそれの意味、分かってやってるのかって聞いてんだ!」

「分かってないと思うよー」

「右に同じ」

 

「もしやそういうのを、あのドラなんとかに教わったのか…そら恐ろしや!」

「おやおや。まだアンタはドラちんって呼ばないかー」

「なんとか、の方が失礼だよ。お兄ちゃん?」

 

「ま、サチは気づいてないみたいだから聞かなかった事にするよ」

 

 

 実際耳に入っていないサチは、ウインクの後に続ける。

 

「これはまだ序の口よ。そのうち第二段階を披露するわ。期待しててねっ」

「きゃ~楽しみ!」

 

 

 

 

 

 こうして夜は更けて行った。

 

 

 

 

 

 

 

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