旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第14話:ティルのお願い

 

 

 翌朝。ティルの家に向かった一行。

 

 

「ティルちゃん!目が覚めたんだね、良かっ…」

 

「全く面倒を掛けてくれる!さっさと元気になってくれないと困るよ!」

 

 

 アイミーの声掛けを遮ったのは、世話をしに来ていた叔母だ。

 あまりの辛辣ぶりに、一行は目を合わせて肩をすくめる。

 

 その場の空気を読み取ったのか、ティルが言葉を発した。

 

「ごめんなさい、おばさん。私もう大丈夫だから、家に帰ってください」

「おやそうかい?ならそうさせてもらうよ!じゃあアンタら、どうぞごゆっくり。それとこのデカいピンクの帽子、アンタのかい?邪魔だから置いてかないでおくれね!」

「はい、それはもちろん」

「来てくれてありがとう、おばさん」

 

 

 叔母はサチの返答にもティルの礼にも応じず、振り返りもせずに出て行った。

 

 

 

「…あ~あ!なぁんか増々親近感湧いたわ。ティルも大変だね」

「リリ姉?」

「ううん、何でも。ティル、本当に体は平気なの?」

「はい。これのお陰で」

 

 ティルが見せて来たのは、枕元にあったバスケット。

 離れた位置にいる訳でもないが、中身は見えない。

 

「やっぱスライム帽は役立たずか!で、何か入ってるのか?そのバスケット」

「食べちゃったから、もうスカスカなの」

 

「それ!すかすかバスケット!」

 

「何それ?」

「回復効果とか魔力がアップしたりするの」

「ま~た眉唾モンだな!」

 

 

 アイミーが近づいてバスケットの中を覗く。

 

「でも実際ティルちゃんが元気になったんだから、効果あったって事じゃない」

「ねえティル、それをどこで手に入れたの?」

「食い付くな、サチ!」

 

「いつの間にかあった。お母さんが置いて行ったんだと思う」

「きっと、こういう事態を想定しての事よ」

 

 

 一同は頷き合う。

 

 

「私、お母さんを探しに行かなきゃ!」

「私達も付き合うわ。付いてってもいいかな」

「え…本当に?」

「本当だよ。ここで会ったのも何かの縁。子供なんだから、一人でやろうとせずに頼れる時は頼った方がいい」

 

 

 こんなリリの言い分に、ボシュは横にいたアイミーにさり気なく耳打ちする。

 

「何だか説得力あるな」

「きっとリリ姉は昔、一人で頑張っちゃったんだよ」

 

 一人だけ真実を知るアイミーはそれだけ言った。

 

 

「よぉし、お姉さん達と行こう、ティルちゃん!」

「行くったって当てはあるのかよ」

「何か知ってる?ティル」

「あの森で魔物達はお母さんと何か話してた。姿は見えなかったけど、あれは絶対にお母さんよ」

「どんな話か聞こえた?」

「子供達に手を出さない代わりに、自分が行くって」

 

「どこへ?」

「分からない」

「行くって事はあの森からどこかへ移動したんだね」

 

 

「人間と交渉しようとするような魔物は、小物じゃない。次の敵はもっと手強いよ」

 

 サチの一言に、一同が決意を固める。

 

 

「こんだけ首突っ込んどいて、逃げ出せるかっつーの。やるに決まってるだろ?」

「もちだわよ!こっちにはジョニじいという心強い味方がいるしね」

 

「そう言えば今日は姿見てないね」

「どーせ村の若い娘にでも鼻の下伸ばしてんだろ」

「もうっ、アタシという女が近くにいるっていうのに?」

「えっと…それ私も言った方がいいかな」

 

「私という女もいるのにっ」

 

 アイミーよりも先にサチが声を上げた。

 

 

「ほらほら、ピーチク言ってないでとっとと行くぞ」

「ちょっとぉ、ピーチクでまとめないでくれる?」

 

 

 

 ボシュが家の外に出て行ったのを追い駆けるリリ。

 サチは手にしていたスライム帽を被ると、すかすかバスケットに目を向ける。

 

 

「ティル、もうバスケットは使えない。もしつらくなったらすぐに言って。こっちのお姉さんが治してくれるから」

「私アイミー。よろしくね」

「ありがとう!お姉さん達がいてくれて良かった」

 

 

 笑顔で答えたティル。二人と手を繋いで外へ出る。

 外ではリリとボシュがまだ何やら言い合っていた。

 

「お兄ちゃん!まだ自己紹介してないでしょ?リリ姉も!」

「おお。俺はボシュだ。ちゃんと守ってやるから安心しろ」

「リリよ。回復魔法は使えないけど、強敵メインでやっつける係よ」

 

「お姉さん…強いね。私、分かる」

「マジ?オーラ出てるって良く言われる~」

 

 

 真顔で返され、若干照れたリリはわざとおどける。

 見ただけで強さが分かるとは、この娘はただ者ではないと一同は思うのだった。

 

 

 

 そんな一同の元に異様な影が迫った。

 それぞれが身構えた時、飛び出して来たのは…。

 

 

「間に合ったようである!セーフ、である!」

 

「まぎらわしい登場の仕方すんなよ…敵かと思ったぜ?ようやく来やがった」

「ジョニじい、どこに行ってたの?」

 

 ボヨンボヨンと軽快に登場したジョニー。

 

 

 突然の魔物の姿に恐怖を感じたティルが、リリの後ろに隠れる。

 

「怖がらなくても大丈夫よ。あの人は私達の味方」

 

 

「知らぬうちに、小さき冒険者が加わったようじゃな!これまた勇敢そうなお嬢ちゃんである!」

「ティルっていうの。優しくしてあげてね、ジョニじい」

「ティル、あんまり近づくなよ。女に見境ねーからな、あのジジイは!」

「何やら聞き捨てならん事を言っておるのー」

 

 

 ジョニーが口調とは裏腹な不穏な空気をまとわせた時、透かさずサチが前に出て声を張る。

 

「ジョニじい!待ってたのよ。これからティルの母親を探しに行くの。何か情報持ってない?」

「ジョニじい、何か知っていれば教えてください」

「ヨロシクっ」

 

 最後にリリがウインクを飛ばす。

 途端にジョニーの顔が見る見る緩んで行く。

 

 

「そこまで請われては仕方がない。東の地が何やら騒がしいようじゃぞーい」

「東…か」

 

 

 一同は揃って東に目を向ける。だが視界がはっきりせず何も分からない。

 

 

「何も感じないけど。ジョニじいが言うならそうなんでしょ。じゃ、行く?」

「異議なし。ここに突っ立ってたって何も始まらねえしな」

「うん。そうだよね。ここの武器屋さんには残念ながら良さそうな物置いてなかったし」

 

 アイミーの惜しむらくは、盾を新調できなかった事。

 

「次に期待しよう。不足分は私が補う。皆を守るわ」

「そうやって一人で抱え込むなって、アンタにも言わないといけない訳?」

 

 ため息交じりにリリが言う。

 

 

 するとティルがサチの手を握って見上げた。

 

「サチさん。私のためにありがとう。でも無理しないでね?」

「しっかりしてるわ、この子!だってさ。サチ、分かったの?何か言ってあげたら?」

 

 

 サチは手を握ったまま、目線を合わせるためにしゃがみ込む。

 

「無理はしないよ。こちらこそ、心配してくれてありがとう、ティル」

 

 

 

 

 

 こうして東へと足を進めた一行だが、サチの懸念は的中してしまう。

 次なる強敵は物理攻撃をメインとする魔物だったからだ。

 

 

 小人やら小悪魔やら小剣士を難なく倒す。

 その先の、人食い箱とスライムタワーも蹴散らした。

 オオタカの剣士から鳥型ロボット、縞模様の化け猫も下した。

 

 こうして余裕で進んだ先に待ち構えていたのは、キラーマシン。

 その名の通り、ロボット型の魔物で攻撃力が非常に高い。

 

 

「クッソ、手も足も出ねえ!アイミーに続きリリ姉まで、雨雲の出番なくやられるなんて!」

 

 最初の斬撃をもろに受けた二人は、あっという間にリタイア。

 そしてすぐにボシュもサチも力尽きる結果となった。

 

 

 

 ジョニーと共に待機していたティルと合流する。

 

 

「皆さん、私のせいで…ゴメンなさい」

 

「いいのよ。冒険者はこうやって戦って強くなるんだから」

「そうよ。強くなる機会を提供してくれたって事だわよ?」

「むしろ今までの敵が弱すぎたんだよな。ほぼ瞬殺?」

「ね~。考えたら、まともな攻撃された事なかったんだから。大したモンよ、アタシら!」

「そうだよ。それに私達冒険者には生き返る特権も与えられてる」

 

 

 瀕死状態にあっても、薬草やら魔法の聖水で回復可能、しかも一瞬である。

 然るべき武器を持ち技を習得すれば、魔法によって生き返る事も可能になる。

 それらが不足した場合は、時間をかけて癒して行くしかないのだが。

 

 幸い今現在、薬草類は揃っている。

 

 すっかり回復した一同は、ジョニーを交えて作戦会議を開く。

 

 

「しっかし、どうしたら倒せる?じいさん、何か助言してくれよ」

「おぬしにはせーん」

「んなっ…」

「まあまあお兄ちゃん、抑えてっ!とにかくまずは自分達だけで考えてみようよ」

 

「せめて、アタシが先手必勝で攻撃を仕掛けられればいいんだけど。素早さに欠けるのよね…ゴメン、トレーニング不足だわ」

「謝らないで。そのために私達がフォローしてる。でもそのフォローが足りてない」

 

 

 サチは再び考え込む。

 

 

「何とかあの攻撃に持ちこたえられればいいんだけどね…」

「いやアイミー、それだけじゃダメだ。いくら耐えてもアイツは何度でもメッタ斬りにしてくる。倒さない限りな」

「そうよ、それよ!うん、それだ!」

「は?リーダー自らメッタ斬りをご所望か?ドMだな!」

「違うっ。アイミーは一切攻撃せずに、回復魔法だけに徹するの」

 

「そっか。アタシらだけで攻撃してく戦法ね」

「でも少しでも敵を弱らせた方が良くない?余力がある時は私も戦えるよ?」

「微々たるモンならなくても一緒だ」

 

「ボシュ!言い方っ」

 

 アイミーが落ち込むだろうと思っての指摘だったが。

 思いのほかアイミーはショックを受けていなかった。

 

 

「いいのよリリ姉。事実だし。自覚してる。分かった、私は攻撃じゃなくて回復に回る。それでやってみよう!」

 

 

「アイミー殿も大人になったのう…」

 

 

 このままの装備でも、多分行ける。

 サチはそう判断する。何せリリの雨雲の杖は今のところ無敵だ。

 まだあれを試せていない。今諦めるのはまだ早い。

 

 そうは言え、自分の力不足は否めない。最も戦力のはずの戦士なのに。

 

 

「ゴメンね。先手で私がもっと強烈な打撃を与えられれば…」

「それを言うなら俺だって!」

「やめやめ、そういうの!皆思ってる事だよ?」

 

「そうだね。うん。頑張ろう、皆」

 

 

 

 おー!と声を揃えた一行であった。

 

 

 

 

 

 

 




この「すかすかバスケット」が錬金により「もりもりバスケット」にできる事を知ったのはかなり後でした。。。
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