旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第17話:失意の旅人

 

 

 次なる戦いに向け、サチ達一行は行く手を阻む魔物達を倒しながら、順調に経験値を積み上げて行く。

 

 そしてついにアイミーにその時がやって来た。

 

 

「アイミー、魔法使いに転職おめでとう!一緒にガンバろっ」

 

 

 リリに肩を抱かれて激励されたアイミー。はにかみながらも頷いた。

 

 気弱な自分を卒業しようとここまで旅を続けて来た。

 兄やサチ達に助けられながら、確かに自分は成長している。

 まだ自信はないが、やれるだけの事をやろうとあの夜に誓った。

 

 

「私頑張る。いろいろ教えてね、リリ姉」

 

「もちろん。この雨雲の使い方もね」

「え!それはダメだよ、リリ姉の得意武器なんだから!」

「だから、交換しよって意味。ほら、アタシが踊り子になったら魔力も減るし。アイミーが持ってた方が役に立つのよ。ねえサチ、そうでしょ?」

 

 前方を歩くサチに話を振ると、振り返ったサチが大きく頷く。

 

「そうよ。臨機応変。どんな武器も使いこなせるようになった方がいい。私の剣もね。ボシュの大剣は…ちょっとキツイけど、オチェーアノならリリ姉も使えるよ。踊り子に最適かも」

 

「アタシが剣かぁ。意外とサマになるかも?」

「リリ姉カッコいい!」

「まだ使ってないんだけども」

「ううん、想像しただけでカッコいいの!」

 

「使ってくれ使ってくれ!何なら槍も貸すぞ?これ以外なら何でもな!」

 

 ボシュは、背にした大剣をチラと見ながら言う。

 真新しい鎧を身に付けた姿がとてもまぶしく映る、のだが。

 

 

「う~ん…何かしっくりこないのよねぇ」

「リリ姉?どうかした?」

 

 腕組みを始めたリリに、首を傾げる面々。その瞳はボシュを映している。

 

「うん、やっぱりしっくりこない!ねえ、ボシュって髪型にポリシー持ってる系の人?」

「あ?髪型?別に。何でだよ」

 

 

 いそいそとリリがボシュの横まで移動する。そしておもむろに髪に手を伸ばした。

 

「ならちょっと失礼っ」

「だから何だって…っ、おい!」

 

「ほら!どう?」

「あら。雰囲気変わったね」

「いい!ステキよ、お兄ちゃん!」

 

 リリはボシュの分け目をセンターから少し左にずらしたのだ。

 

「そっ、そうか?」

「どうしても田舎の兄ちゃんっぽさが気になってさー」

「…ああそれね」

「サチも思った?立派な鎧着けたら、さらに際立っちゃって!」

「うんうん、分かる。でもこればっかりはって思ってたよ。リリ姉さすが!」

 

「二人とも言いたい放題ね…私も若干、鎧が似合ってるのか疑問なところがあるにはあったけど」

 

 

 ボソリと小声で同意を示しながら、恐る恐る兄を覗き見るアイミーだが。

 ボシュは気にした様子もなく、アイミーの盾に自分を映して満足げだ。

 

「へ~。これだけでこんなに変わるんだな。よし決めた、バトルマスターになった暁には、またイメチェンするぞ!そん時はアドバイス頼むな、リリ姉」

「お安い御用よん♪」

「え~いいな~、私もイメチェンしたい!リリ姉、私はどういうのが似合うと思う?」

 

 

 兄妹というものは何かと羨ましがるものである。

 一人っ子だったリリはちょっぴり羨ましい気持ちになった。

 

 

「動きやすいように、ポニーテールにでもしたら?」

「それだとサチと被らない?」

「じゃあツインテールは?やってあげる。後ろ向いて」

 

 リリは器用にアイミーの髪を二つに分けて結い上げた。

 

「こんな感じでどう?」

「えへへ…何か落ち着かないけど、雰囲気は変わったかな」

「うん、カワイイ魔法使いさんだね!」

「露出も少なめで健全な魔法使いだな」

 

「何よ、それじゃアタシが健全じゃないみたいじゃない?」

「そんなヘソ出した魔法使いがいるかよ」

「いるじゃん、ここに。踊り子の衣裳よりは全然肌も出てないけど?これだからチェリー君は!」

 

 

「まあまあ二人とも!個性は大事にしないと、ね?サチ」

「そうだよ。似合ってるんだからいいじゃない。それに尽きる!」

「…ま、今回は折れてやるよ。借りもあるしな」

 

「オホホホ!」

 

 

 

 

 

 こんな楽し気な会話を繰り広げながら、再び歩みを進める一行。

 しばらく進むと、丘の上の木の下に、人影らしきものを見つける。

 

 

「おい、あそこに誰かいるみたいだぞ」

「怪しい気配は感じない。見たところ人間みたいだわね」

「何か困ってるのかな。聞いてみる?」

「そうだね。行ってみよう」

 

 

 周囲に村はない。どこからやって来たのか、疲れた様子で木陰に座り込んでいる。

 相手が男性だったため、ここはボシュが声を掛ける事となった。

 

 

「おいアンタ、どうかしたのか?」

 

「誰ですか?その出で立ちは、もしや勇者様!おお、僕は何て運がいい!どうかお助け下さいっ」

「あー、いや。勇者っつーか何つーか。なあ?」

 

 困惑気味に後からやって来た女子3人を見るボシュ。

 

「いいじゃない。見た目は十分勇者様よ?私はサチ。こっちはボシュです」

「やっぱこの格好は、俺だけ目立ちすぎか…」

 

 自分以外の装いを見てボシュは思う。

 

 

 サチの出で立ちはパンツスタイルになった事で、清楚なご令嬢から風変わりな令嬢に。

 もちろん勇者にも盗賊にも見えない。

 アイミーは逆にパンツスタイルから紺系のロングスカートに衣裳替えし、余計にシスター感が出てしまった。

 リリに至っては色気漂う酒場の占い師か。

 

 

 困惑が消えないボシュを押し退けて、サチが話を進める。

 

「何があったか話してください」

「僕はピートです。護衛の仕事をしている友人が、魔物に石にされてしまって…国の兵士達も全員です!」

 

「あなたはなぜ助かったの?」

「僕は兵士ではありません。戦う術を知らず、単に逃げ出したんです…」

「そんなに大勢が魔物に…。どこまで人を苦しめれば気が済むの?許せないっ」

「サチ、アタシも同じ気持ち。協力してあげよう?あ、アタシリリ、ヨロシクね」

 

 

 珍しくサチから怒りの気配を感じる。それを見て、リリも同意を示した。

 サチもリリも魔物に大切な者の命を奪われている。

 

 

「どうせいずれは討伐するんだしな。どこから退治しようが同じ事だ」

「ありがとうございます、これ以上心強い事はありません!」

「私は元僧侶のアイミーです。衰弱が激しいようです、今薬草をお出ししますね」

「これはご親切に…っ」

 

 アイミーはカバンから薬草を出すと、魔法で煎じて差し出した。

 

 

 サチが話の続きを聞き出す。

 

「それで、国が襲われたのはいつ?」

「3日ほど前です。国で動ける男は僕だけ。途方に暮れてしまって…」

「全く。人と交渉しようとしたり石にしたり、何がやりたいのかしらね、あの連中は!」

「翻弄して楽しんでいるだけよ。この世界が自分達のものだと思ってる。何をしてもいいとね」

 

「冗談じゃないわね」

「ぶっ殺してやる!」

「今回ばかりはお兄ちゃんに同意!」

 

 

 諦めかけていたピートも、一行の血気盛んな様子に感化され次第にやる気を取り戻して行く。

 

 

「ピートさん。諦めたらそこで終わりよ。希望は最後まで捨てないで」

「サチさん…ありがとう。まるで天女様だ!」

 

 羨望の眼差しでサチを見るピート。

 期待に応えるように一度頷くと、サチは踵を返す。

 

「さあ皆。次のターゲットを見つけたわ。準備はいい?」

「この大剣の実力を試せるいい機会だぜ。ワクワクするな!」

「アタシだって。この雨雲が暴れたくてウズウズしてるんだから?」

「あの、取りあえず私はまだ、引き続き皆のサポートで、…いいよね?」

「そうだね。アイミーはピートさんを守ってあげて」

 

 

「待ってください!僕も男です、戦えます!」

 

 薬草効果ですっかり元気になったピートは、立ち上がって訴える。

 良く見れば腰には剣が収められている。

 

「これは友人の剣です。拝借してきました。大の男が女性に守られるだなんて、友人に笑われてしまいます」

「戦いに加わってもらうかは追々見極めます。すぐに発てますね?」

「もちろんですが、あの場所に戻っても奴らはいませんよ。どこからやって来た魔物なのか…」

「それは心配ないみたいよ?」

 

 リリが示した先で、赤い物体がボヨンボヨンと跳ねているのが見えた。

 

 

「何です?あれは」

「頼もしい私達の仲間です」

「人には見えませんが…大丈夫なんですか?」

「まあ、男には無害だ。良かったなお前、男で!」

 

「はい?」

 

 

「久しぶりなのである!これはボシュ殿。何やら雰囲気が変わられたのー」

「お。分かるか?戦士らしくなったろ」

「立派な見た目なのである!して、そちらのお方は?」

 

「ちょっと待て。見た目って強調すんじゃねー!」

 

 ボシュの反論は誰も聞いてはいない。

 

 

 サチが淡々とピートを紹介し、状況説明をする。

 

 

「という訳なの。ジョニじい、人間を石にできる魔物に心当たりある?」

「それは恐らくミニデーモンじゃな」

「ミニってチビって事か?大した敵じゃなさそうだな!」

「侮るなかれ、である。奴らは固いもの好きの魔物達とつるんでおる。そ奴らが厄介なのじゃ」

「なら、固いものが好きすぎて人を石にしたとか?単純すぎっ」

「イタズラ好きの性分が出ただけじゃろ」

 

「だから言ったでしょ。翻弄して楽しんでるって」

 

 

 怒り心頭のサチを、ジョニーが珍しそうに眺める。

 

「サチ殿はご立腹の様子じゃの。その不服そうな顔、妙にあやつに似ておるのー」

「それって、もしかして姉さま?似てる?ホントっ」

 

 途端にサチの機嫌が良くなる。怒りはいずこへ?

 

「凛としていて、近寄りがたい感じ、確かに似てるね」

「ホント?アイミー!リリ姉もそう思う?」

「あそこまで威圧感はないけど。まあ、そこそこ?」

「俺はどっちも、全然怖くねーがな!」

 

「あのぉ~…」

 

「あっ、話が反れた。それじゃジョニじい、その魔物の住処に案内して!」

「了解したのである」

 

 

 ジョニーはそれ以上ピートに深入りする事もなく、サチにだけ頷いて先頭を歩き出した、改め弾み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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