旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第18話:ピートの決意

 

 

「くらえ、ギガ空裂斬!」

 

 

 

 大剣を右から左に振り抜き、魔物の群れをバッタバッタとなぎ倒して行くボシュ。

 

 大型のお化け鳥からハチの化け物、ピンクの豚やら紫の化けネコが一瞬にして塵と化す。

 どの魔物も攻撃の隙も与えられず消えて行く。

 

 

「こりゃいいや!最高だぜ!」

 

 今回の武器はかなり相性が良かったらしく、向かうところ敵なしのボシュである。

 

 

 

「ちょっとー。たまにはアタシらにも出番くれない?つまんな~い」

「体力は無限じゃないよ。程々にしないと」

「水を得た魚というよりは、バカの一つ覚え、である!」

 

 

 ジョニーの一言にピクリと反応したボシュが、ようやく大剣を背に収めた。

 

 

「誰がバカだって?ちゃんと聞こえてんぞ!おいコラジジイ!」

「お兄ちゃんっ、落ち着いて?皆心配してるんだよ?」

「バカにしてるの間違いだろ。特にコイツはな!」

 

「そうじゃない。わざとだよ。ねえジョニじい?」

「そーそー。実際ジョニじいの言葉で戦うのやめたじゃん?」

 

 

 魔物はまだいるのに、ボシュが戦いを中断してまでしたかった事。

 それはジョニーへの反撃である。

 

 

 

「覚醒の炎!」

 

 視界に入っていた敵が、一瞬にして光に包まれる。

 そして空間を切り裂く音が響いたかと思うと、魔物は一匹残らず炎の中で塵となった。

 

 

「お見事、サチ!」

「相変わらず凄い技だね…」

 

「そうだ、今度の敵はアイミーがこの雨雲でやっつけてみてよ」

「え~っ、無理だったら!」

「決めつけないの。少しずつやって行かないと。アタシがいなくなったら、この杖宝の持ち腐れだよ?」

 

「いるもん。リリ姉はずっといる!」

「まあいるけども。踊り子は魔力少ないのよ。アタシに無理強いさせる気?」

 

 

 こう言われてはアイミーは言い返せない。

 

「でも私の魔力だってまだ少ないよ」

「そのために俺がいるんだろ?これのお陰で無敵だぜ。今まではリリ姉に頼ってたが。これからは俺も頼ってくれよな?」

「お兄ちゃん…。分かった、やってみる!」

 

 

「何やら感動的シーンじゃのう。サチ殿は加わらなくて良いのか?」

「…私だって感動してるわ。っ皆が、こんなに立派に強くなって!嬉しくて泣きそう」

 

 

 グスっと鼻を鳴らすサチの背に、ジョニーはそっと密着してみる。

 

 

「どさくさに紛れないで?」

「いやぁ!パンツスタイルはヒップラインが際立って非常に良いのである!」

 

 

「おいジジイ。いい加減にしないとコイツの餌食にするぞ?」

 

 いつからいたのか、ボシュがサチの横で低音ボイスを響かせる。

 

「それは堪忍である。それで攻撃されればワシでもただでは済まんじゃろうて」

「ジョニじいでも?」

「ボシュ殿。その闇払う光の大剣はなかなかの武器じゃ。使い道を誤らぬよう気を付ける事だ」

「そんなの分かってる」

 

 

「あの!サチさん!」

 

「ピートさん。どうかしましたか?」

「僕に稽古をつけてくれませんか!」

「は?俺じゃなくてサチに頼むか」

「…えっと、会話から何となく、ボシュさんもサチさんに教わってるのかなと思ったので」

 

「あー、分かっちまったかぁ」

 

 大剣の扱いについて、ボシュがサチからアドバイスをもらっていたところを、ピートは抜かりなく見ていた。

 

 

「それでサチさん…どうでしょう?」

 

「そうね。力を付けてムダになる事はない。いいわ。ただし、私の稽古は厳しいわよ?」

「そうだぞ、コイツ見かけに寄らずスパルタなんだ」

「そうなんですね。見た目は天女様なのに」

「天女かどうかはさて置き」

 

「何よボシュ。いいじゃない、天女で!ほら、この辺とか」

 

 サチはエメラルドグリーンの袖口の薄衣をひらめかせ、クルリと一回りしてケープをはためかせた。

 

 

「おお!美しいっ」

「そうかぁ?」

「ボシュ殿は見慣れてしまったようじゃ。慣れというものは恐ろしいのー」

 

「恋人づくりに苦戦しそうね。アイミー、ドンマイ」

「なっ、何で私に言うの?」

「兄貴の婚期が遅れるって事は、妹にも影響ありって事じゃん」

 

「ええ~っ、それは困るよ?お兄ちゃん!」

「そこ!勝手に話を膨らませるな!」

 

 

「さ、ピートさん。あっちの話は気にしなくていいから早速始めよう。剣はどのくらい使える?」

「ええと…子供の頃に学校の授業で習ったくらいで」

 

 

 

 

 いつしか二班に分かれ、旅は続く。

 出くわした小物を相手にピートの稽古が始まる。

 

 

「今度の敵は少々手強そうじゃぞ、ご一行」

「ギョっ…気味悪っ!人っぽい魔物が一番気味悪いよね」

「それって幽霊さんを連想させるからだよ、リリ姉」

「おいおいアイミー、幽霊にまでさん付けなくていい!」

 

 

 現われたのは土気色をした巨人。一見人間だが、どう見ても死人の色だ。

 大きな盾を両手に持って、ガシャンガシャン音を鳴らしている。

 

 

「うるさいなぁ…。早く黙らせよう。ピートはお休みね。アイミー、リリ姉の雨雲持ってここへ」

「あ、はいっ!ついに来たのねっ」

「大丈夫。いつもリリ姉がやってたところ見てたでしょ。まずは同じようにやってみて」

 

 

 後方には、いつでも応戦できるようにボシュとリリが控えている。

 二人がいてくれる強みを胸に、アイミーが意を決して構える。

 

 

「よおし、行くよ、落陽!」

 

 

 アイミーの掛け声と共に、上空に大きな火の塊が湧き出す。

 リリのよりも大きさは劣るものの、魔物を倒すには十分の威力だった。

 

 

「ふう…。どうかな、やった?」

 

「お見事。よくできました!」

「きゃ~、できたよ、リリ姉!お兄ちゃん!」

「上出来だ」

「魔力を上げて行けば、アタシと同レベルの玉が作れるようになるよ。って、大丈夫?息が切れてるよ」

 

「これ、結構体力いるね…。ちょっと休憩させて」

 

「しばらく休んでて。後は私達で片付ける。ボシュ、」

「おうよ!」

 

 

 盾の魔人の次は、黒い影のようなものが現われる。

 体力が回復してきたボシュが一気に蹴散らす。

 

 

「凄い、皆さん、桁違いの強さですね…」

 

 次々に現れる敵をほぼ一瞬で倒して行く面々に、ピートが驚きを隠せない。

 

 

「また化け物が出た!今度はガイコツに包帯男っ」

「ったく、ハロウィンの仮装かっつーの」

「私にやらせて。これで終わらせる、覚醒の炎!」

 

 

 目的の地に近づくにつれ、魔物の数が増えて行くのはいつもの事。

 そしてどんどん強くなって行く事も。

 

 

「ミニデーモンがつるんでいるのは、確かボーンナイトとハートナイトじゃ。それからリザードマンもいたかの」

「ナイトっていい響きだけど、どうせロクなヤツじゃないよねー」

「そうだよ、どうせさっきみたいな幽霊さんよ」

 

「何だ、リリ姉。イケメンなら魔物でもオーケーってか?」

「そんな事言ってないし!」

「好みのタイプだったとしても言えるか?」

「うう…それは」

 

 

「心配無用。どちらもリリ殿のお眼鏡に叶うような輩ではない。ガイコツとワシの親戚じゃ」

「ジョニじいの親戚の人?」

「人ではないがのー」

 

「それなら戦う必要ないんじゃ?」

「親戚とは言え、話の通じる相手ではない。単に同種族という意味である」

「なぁ~んだ。で、石にするのがお好きな魔物ちゃんのつるむ相手なら、そいつらも石好き?」

「石もそうじゃが、固いものが好きじゃな。よう言うとったわ、人間はヤワヤワで嫌いじゃと」

 

 

「ふざけた言い草ね!今すぐ殺したいわ、早く出て来なさーい!」

 

 

「サチったら、いつになく過激だわね」

「だって盗賊だぜ。このくらいじゃないと?」

 

「…今なんて?盗賊って聞こえましたが」

「ああ。アイツは今盗賊だ」

「えええっ、天女様はいずこへ!」

「ピートさんが幻滅しちゃうよ、サチ、穏やかに行こう!」

「何だろうがこの大剣で切り裂いてくれる!」

 

 

「まあ…あの程度ならば問題なかろう」

 

 

 

 

 

 そうして待ちに待ったナイト組が現われた。

 

 

「生きてた時はイケメンだったって線もあるけど…考えないようにしよう」

 

 

 馬に乗ったガイコツを前にリリがつぶやいた瞬間、ボシュのギガ空裂斬が真横に走る。

 空間をも切り裂く強烈な一振りで、ガイコツ騎士達は言葉を発する暇もなく消えて行った。

 

 

「呆気ないぜ!ジジイ、悪いな。アンタの親戚なのに?」

「気にせんでくれたまえ。所詮は小物じゃ」

 

 

 

 

 

 道を進んで行くと、開けた場所に出た。

 

 

「良かった、町がありそうだよ!」

「山で野宿はヤダなって思ってたとこー」

「日も暮れて来たし、あの町で一泊しよう」

 

 

 一同が気を抜いた時、上空が急に暗くなった。

 

 

「何だ?急に暗く…」

 

「きゃっ!」

「サチさん危ない!」

 

 

 気づいた時には、上から羽の生えた鋭い牙の青い魔物が迫っていた。

 

 サチは剣を構える暇もなく盾で身を守るも、諸共押し潰される。

 一番近くにいたピートが慌てて持っていた剣で魔物を一刺しするが、当然そんな一撃で倒せるはずもなく逆に暴れ始める。

 

 

「バカ野郎っ、サチ、俺の手に掴まれ!」

 

 

 下敷きになったサチをボシュが引きずり出した瞬間、ジョニーが青い物体に勢いをつけて圧し掛かった。

 体格的にはジョニーが上だが、見た目が柔らかそうなため押し潰せるのか疑わしい。

 だが、鳥は全く動く気配がない。

 

 

 

「…やったの?」

「当然じゃ、リリ殿。コイツはリザードマンじゃな」

 

 

 魔物は瞬間的に圧死していた。

 

 

「じいさんが言ってた魔物、全部出て来たな」

「そうすると、ミニデーモンも来るのかな…」

 

 辺りを用心深く見回す面々。魔物の気配は今のところない。

 

 

「ピートさん、ありがとう。助かりました」

「いいえ、サチさんが鍛えてくれたお陰です」

「まだまだだな。急所を狙わないからこうなるんだ。余計にサチが苦しんだぞ?」

「私は大丈夫だから。勇気を出して戦ってくれた事に意味がある」

 

 

「お兄ちゃんたら、自分が散々サチに言われて来た事言ってる」

「言わせといてあげなって」

 

 こそっと交わした二人の会話は、幸いボシュには届いていない。

 

 

「今のはワシも焦ったわい…しかし、あやつは人間を切り刻むのが好きな魔物。上から押し潰してくるとは意外じゃった」

「そうなんだ。ジョニじいもありがとう。やっぱり強いんだね」

「いやいや。年には勝てんよ。これからは気を抜くでないぞ?若者達よ!それではワシは一足先に町の酒場でやっとるぞ~い」

 

「分かった。あんまり飲みすぎないでね」

 

 先ほどの緊迫感はどこへやらで、陽気に弾んで行ったジョニーにサチが手を振る。

 

 

 

「サチ、ケガは?」

「平気。ちょっと呼吸が止まっただけ」

「それ平気って言わないから!すぐに薬草煎じてもらいな」

 

「済みません…僕のせいで」

「あなたのせいじゃない。油断した自分のせいよ。アイミー、宿に着いたらでいいか…」

 

 サチが振り返ると、すでにアイミーの手には煎じた薬草が載っていた。

 

「はい。飲んで。今すぐ!」

「ら。アイミー、人の話は最後まで聞くものよ?」

 

 

「時と場合によるの!ジョニじいも言ってたでしょ。またいつ魔物が襲って来るか分からないんだよ?」

 

 

 有無を言わせぬ態度で迫るアイミーには、サチも反論できず。

 大人しく出された物を口に放ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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