旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第19話:石にされた人々

 

 

 町に着いた頃には日も暮れかけていた。

 

 

「ん?子供がこっちに来るぞ」

「こんな時間に、迷子さんかな?」

 

 

 大人達が足早に通り過ぎて行く。というよりも存在に気づいていない様子。

 その子供は迷わず近づいて来る。

 

 

「おい坊主。早く家に帰れ。この辺は魔物が多いから、食われちまうぞ?」

 

「バーカ!ボクが食われるワケないじゃん。アハハ!」

 

「なっ、何だと?クソガキが!」

「お兄ちゃんっ、子供相手にムキにならないでっ」

「ボシュ、抑えて!この子なんだか様子がおかしいわ」

「そういえば、誰もあの子を見てない。見えてないの?」

 

「気を付けて!そいつ、魔物かも!」

 

 

 リリが叫んだ時、子供が魔物の姿に変わった。

 背格好は変化なし。小さな緑色のいわゆる悪魔だ。

 

 

「お前がミニデーモンね」

「ピンポーン!ボーンナイトとメタルライダー、それにリザードマンまでやられたって聞いて、思わず見に来ちゃったよ」

「見に来て損したな、死ぬ時が早まったぜ!サチ、下がってろ」

 

 ボシュが背から降ろした大剣を構える。

 

「なるほどね。皆それでやられたのか」

「ボシュ待って!石にされた人達を元に戻す方法を聞き出してからだよ!」

「私達まで石にされないように、守りの盾でガードしよう!」

 

 アイミーがボシュを、リリはサチをプラチナトレイで守る。

 

 

「ふ~ん。そんなのも持ってるのか。だけどアイツには勝てないよ!じゃ、バイバーイ!」

 

 

「あ、待て!ほら逃げられちまったじゃねーか!」

「だってまだ、戻す方法が分かってないんだよ?」

「大抵、敵を倒したら元に戻るんだよ」

「戻らなかったら?」

 

「うぐっ。だから、そんときゃそん時だろ!」

「考え無し!」

「何だと?」

 

「ちょっと二人とも!こんな道の真ん中でやめて。サチも何とか言ってよ、サチ?」

 

 

 そこにいたはずのサチがいない。

 

 

「あれ、サチがいない。ピートさんも!」

「おいマジかよ…久々に放浪癖が出たか?しかも今回は道連れ付きで!」

「もう暗くなるよ。どうする?」

「どうするって探すに決まってるでしょ!」

 

「いや。安易に動き回らない方がいい。ピートだけが消えたならともかく、サチも一緒となれば魔物にさらわれた線は薄い」

「そうよ。とにかく宿を探してから、ジョニじいの待つ酒場に行こう」

「もう、サチったら…さっきあんな目に遭ったばかりなのに」

 

 

「アイツなら心配ねーよ。そんな気がするだけだが」

「アタシもそう思う。行こ、アイミー!」

 

 

 一人で探しに行く事は避けたい。アイミーは二人の意見に従う事にした。

 

 

 

・・・

 

 

 

 一方、サチとピートはボシュの読み通り、魔物にさらわれた訳でもなく、単に無断で別行動を取っていた。

 

 

「ね、サチさん、おかしいでしょう?」

 

「本当ね。町の中にこんなに石像が立っているのは不自然だわ」

「きっと魔物に石にされた人間なんですよ!」

「でもそうすると、普通に暮らしている人々が気になるな…」

 

 

 皆石像になど目もくれず、至って自然な様子で行き交っている。

 

 ピートが石像が多い事に気づき、サチに声を掛けた事から始まった別行動。

 その数を数えたりしているうち、いつしか二人で別の方向に来てしまっていた。

 

 

「ここは思い切って、町の人に聞いてみよう」

「そうですね」

 

 

「あの、すみません!」

 

 サチが声を掛けたのは初老の紳士。オジン・キラーの腕の見せ所である。

 そうして、まんまと情報を得た。

 

 

 町で一番繁盛しているという酒場の場所も抜かりなく聞き、二人は迷わずそこへ向かった。

 

 

 

 

「来た来た!こっちよ、二人とも!」

 

「リリ姉!やっぱりここであってたね」

「合流出来て良かったです」

 

 

 真ん中の席を陣取ったリリが手を上げている。

 ジョニーも堂々とテーブルの輪の中に加わっていた。

 

 

「驚きだろ?この広さ!リリ姉が働いてた店以来だぜ」

「感激である!さあさ、サチ殿。ワシの隣りへ」

「おい。さり気なく呼びつけて何企んでる?ピート、ジジイの隣り行け!」

「ええ…っ、僕ですか」

 

 ジョニーが心なしかしょんぼりした事には、皆気づかぬふりだ。

 

 

「また何も言わずにいなくなって。心配したんだよ、サチ!」

 

 サチはアイミーとリリに挟まれた。

 

「で?何か情報持ち帰ったんでしょう?」

「さすがリリ姉。お見通しだね」

「情報って?」

 

「おい、そっちでコソコソ話すな、共有しろ!」

「もちろん。ピートがね、町に石像が多い事に気づいて。町の人に聞いてみたら、やっぱりミニデーモンの仕業だった」

 

 ジョニーは無言で酒をあおっている。

 ヤケ酒なのか、はたまた余計な口を挟まぬためかは不明だ。

 

 

「どういう事だ?他の奴らは平然としてたぜ?」

「そこなのよ。それが、取引をしてるみたいなの」

「取引?相手は魔物だよね」

「信用できる訳ないっしょ!」

 

「もちろん、人を化かしたり石にしたりする魔物です。信用なんてできません。ですが、利害が一致すれば可能なんです」

「食料とかを渡すの?」

「それって人間じゃんか!まさか人柱立ててるとか言わないよな?」

 

 

「そのまさかよ。あの石像は、この町で犯罪を犯した人達だった」

「けど、そのうち悪人も尽きるでしょ」

 

「そう。だから町の人々は目立たないよう、目を付けられないよう、淡々と生活してる」

「そんなの平穏な暮らしって言える?おかしいよ!」

「だからあん時仕留めときゃ良かったんだ、あのクソ小悪魔!」

「だ~か~ら~」

 

 

「石化を解く方法だけど」

「ウソッ、分かったの!?」

 

 

 サチはピートの方に目を向ける。それを受けてピートが説明を始めた。

 

「どうやら石解きの錫杖というのがあるようです。それを手に入れられれば皆を…っ」

「つまりあのチビを殺しても、石になった奴らは戻らないと…?」

 

 だから言ったでしょ、とリリが視線でボシュに言う。

 

 

「おぬし達、よくぞそこまで答えを導いた。あの者達の振る舞いはワシとて許しがたい。償いに錫杖はワシが取りに行くのである!」

「待って、あの者達って、相手はミニデーモンだけじゃないって事?」

「ああ…。しまった、である」

「である、じゃねー!説明してもらおうか。それと、取りに行くってありか知ってるのか?」

 

 

「今晩は妙に酔いが回るのが早いのー。もう年じゃのー。ここらで退散するとしよう」

 

 ボヨン、と一歩下がるジョニー。

 

 

「おい、逃げる気か?魔物って奴は逃げ足が速いんだよな!」

「お兄ちゃん!言いすぎだよ!」

 

「何でもいいじゃない。錫杖取って来てくれるなら有り難いわ」

「そうよ。これでアタシらは、あの小悪魔その他に集中できるし」

「わざわざ偵察しに来たくらいだもの。対策を練ってやって来るかもだよね」

「だな。せいぜい大勢引き連れて来やがれってんだ」

 

「何とも頼もしくなったの、ボシュ殿!では良い夜を~。ボヨン」

 

 お休み~と女子3人の声がハモった。

 

 

 

「ねえねえ、今のさ、ニンジャのドロン、に似てない?」

「本日これにて。ボヨン」

 

 こんなサチの一言に、一斉に笑い声が上がる。

 

 

 

 今回も、決戦前夜を思わせない楽しい夜であった。

 

 

 

 

 

 

 

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