旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第5章 商人と光る水晶
第22話:護衛の仕事


 

 

「リリ姉、踊り子に転職おめでとう!」

「サチも海賊に昇進おめでとう!その海賊ターバン帽がようやく活躍するじゃん?」

「リーダーさんがまたパーティ初の上級職だね!」

 

「リリ姉のは転職っつーか、元サヤに収まっただけ感満載だがなー」

「ノンノン。今までの踊り子とは訳が違う。これもれっきとした転職だわよ?」

「そうだよ。私のせいで、転職が遅くなっちゃってゴメンねリリ姉…」

 

 

 ようやく転職を果たしたリリ。

 他の3人とはかなりレベルの差が開いている。

 その上リリの目指すスーパースターは、踊り子に加えもう一つ職を積まねばならない。

 

 

「謝らないで。これ被ってバンバン挽回するんだから?ね、ボシュ!」

「おうよ。俺もあと少しでバトルマスターだ!背に腹は代えられねぇ」

 

 平時の今もボシュの頭にはスライム帽が乗っている。

 突然現れる魔物にも対応するためだ。

 

 

 

 現在一行はリリの衣装探しのため、通りかかった町に寄っている。

 女性ものの衣服売り場を見つけ、女3人がいそいそと店に入って行く。

 

 

「あんまりいいのないね、ここ」

「でもアタシは何かしら替えたいんだよね…ん~と、取りあえずこれと、これでいいや」

 

 手にしたのは濃いグレーに緑のラインが入った、ホルターネックのメンズライクな胸当て。

 そして白地に群青と金の模様が入ったパラシュートパンツ。

 赤の布ベルトはリボンのように見える。

 これまでのヘソ出しに加え、肩からデコルテラインまでもがさらされている。

 

「結構肌出るね…お兄ちゃん大丈夫かな」

 

 ちなみにボシュはジョニーと外で待機中だ。

 

 

「リリ姉、これもどうかな!」

 

 サチがどこからか持って来たのは、キツネ耳のカチューシャ。

 額にワンポイントが付き、さらにイヤリングまでセットになっている。

 

「へ~カワイイ、こんなのどこにあったの?」

「お店の人に出してもらった」

 

 

 奥で店主らしき年配のオジンがこちらを見てニヤケている。

 

 

「相変わらずやるねー」

「これ着けてるとね、魔力がちょっとプラスになるらしいよ」

「いいじゃん!買う!」

「リリ姉ったら、すっかりそういう系信じるようになったね」

 

 リリの目が、何か?と訴えて来る。

 その少し上に視線を向ければ、スライム帽が呆けた顔で笑っている。

 

 

「サチも職変わったんだし何か買えば?」

「私はこの海賊ターバンで満足。サイコー!」

 

 クルリと一回転して小首を傾げる姿は、どう見ても海賊ではないのだが。

 

 

「じゃあじゃあ、アイミー、何か買わない?」

「私もいい。髪型変わって満足してるから」

 

「全く欲のない子達だわね~」

「そのうちいいのあったら買うよ。いつでも」

「アタシ衣裳替えしすぎかなぁ」

「大丈夫。お兄ちゃんが一番お金かかってる人だから!」

 

 だね~と、笑い合う。

 

「リリ姉の武器だけど、ボシュが前に使ってたオチェーアノの剣でいい?」

「いいよ。このカッコなら細身の剣が似合いそうっ」

 

 案外見た目重視のサチパーティである。

 

 

 

 早速着替えて店を出る。

 リリの姿に、待ち構えていたボシュが目のやり場に困ったのは言うまでもない。

 

 

「踊り子というより仮面騎士じゃな。凛々しいのう…もっとよく見せてほしいのである!」

「ジジイ、セクハラだぞ」

 

 ボシュが大剣をキラリと反射させて威嚇すると、ジョニーとリリの距離が一気に開いた。

 

 

「さ、それじゃ次の町に向かおう」

「ジョニじいと一緒に進むの久しぶりだね!」

「いつもどっか行ってるもんねー」

「リリ殿の転職後の姿を真っ先に見たかったのでな」

「あら嬉しい。喜びの舞いでも披露しようかしら!」

 

 

 早足で少し前まで進んだリリが、前方で舞う。

 

 それを眺めながら3人プラス1が近づいて行く。

 

 

「やっぱリリ姉の踊りはステキ。私も踊りたくなるっ」

「うん!軽やかだし華やかだし、キレも加わった?」

「魔物との戦いで、俊敏さとか筋力が付いたんだろ」

 

 

 そうコメントしつつ普通にリリを見ているボシュに、アイミーが突っ込む。

 

「あれ、お兄ちゃんリリ姉の事見ても平気なのね!良かったー」

「っ!俺とした事が、気づけば普通に見てたじゃねーか!」

「いいじゃない。見てあげてよ。踊り子は見られるのが仕事なんだから?」

 

 

 続けてサチがボシュにウインクを飛ばす。

 

 ダブルパンチを食らったボシュであった。

 

 

 

・・・

 

 

 

 賑やかな道程が続き、次の町へとやって来た。

 

 

「そこを何とか!」

「無理なものは無理。最近魔物が増えすぎてこっちが手を借りたいくらいだ。他を当たれ」

「他ったって、そんなのいないの分かってるでしょうが?…チっ」

 

 

 城の門前で男と兵士が言い合っている。

 

 

「揉め事か?あれは人間同士って事でいいよな」

「そうだね。どっちも人間みたい」

「あのオジサン、兵士に門前払いされた感じだわね」

 

「声掛けてみよう!」

「またサチ、そうやって首を突っ込む!やめとけ、変なヤツだったらどうする?」

「変なヤツって?」

 

「このジジイみたいなスケベとか?」

 

 ジョニーを見てこんな事を言うボシュ。

 

「失敬であるっ!」

「って言いながら、横でリリ姉の事ばっか見てるじゃねーか。どこ見てるんだ?え?」

「どこだと思う?言ってみるのである」

 

「そりゃ後ろからじゃねーから胸だろーが。むっ…むねっ?!俺は見てねーぞ!」

 

 自分の発言にさえ照れまくるボシュは、やはり初心である。

 

 

 

「いつになったら慣れてくれるんだろうね、君は」

 

 リリがポツリと呟いた。

 

 

 

 

「あの、どうしたんですか?」

「君達は旅のお人かい?」

「はい、今この町に来ました」

 

 

 そして商人の男性は、後からやって来たボシュを見るなり目を輝かせる。

 

「もしやあなた方は勇者様ご一行とか!」

 

「またこの下りか…」

「はい!」

「おい、サチ!」

「いいじゃん、もう観念しな」

「そうだよ、お兄ちゃん?」

 

「俺のせいだ…この格好のっ!」

 

 一人だけ鎧に身を包むボシュの嘆きなど誰も耳に入れず、商人の話に耳を傾ける。

 

 

「私は行商をしているのですが、ここ最近魔物に狙われる事が多くて困っているのです」

「ここでも魔物のせいで困っている人がいるのね」

「兵の人に護衛を頼んだのですが、魔物の相手でそれどころではないと断られてしまって…」

「兵隊は王様を守るのが仕事だからな」

 

「国民だって守るでしょう?私はここの民ですよ!」

 

 国に雇われている兵士の本分を知るサチだけに、ここはキッパリと伝えたい。

 

「兵士は民間人一人の護衛はしないわ。よければ私達が護衛しましょう」

「おお!勇者様に護衛していただけると?それは有り難い!」

「ずっとは無理だけど、ここにいる間なら。ね、皆」

 

「別に構わねえよ。魔物がアンタを狙ってるなら、一緒にいた方が遭遇率も上がる」

「アタシら、魔物退治して歩いてるので」

「私達でよければお供します」

 

 

 商人は一行に向けて深々と頭を下げる。

 

「お願いします!私はボコタと言います。では早速、仕入れ先に向かいたいのですが」

「行きましょう」

「あれ。ジョニじいがいない」

「いつからいないかも分からなーい!」

「まあいいじゃねぇか。アイツがいるとこのオッサンも怖がる」

 

 

 

 

 町に着いて早々、一行は次の場所へ移動となる。結局ジョニーは別行動となった。

 

 

 そして向かう先はなぜか山だ。

 

 アイミーがさり気なくボコタに尋ねる。

 

「あの、仕入れ先って、隣りの町とかじゃないんですか?」

「ええ。今日仕入れるのはキノコです。重宝されるヤツがこの山に生えていましてね!あ、誰にも言わないでくださいよ?横取りされたら商売できなくなる!」

 

「安心してください、アタシら、ここに長くいるつもりないので!」

 

 

 リリの返答に安心した様子のボコタを見て、サチと並んで歩くボシュが耳打ちする。

 

「あいつガメついな~。欲に溺れてそうな顔してるもんな」

「商売人は皆そんなものよ」

「そうかぁ?何で狙われるって、自分から魔物の住処に足突っ込んでるだけじゃねぇの?」

「それもあるんだろうけど、それだけかな…」

 

 サチは何か引っかかりを覚えた。

 

 

 

 やがて目的地に着き、ボコタは慣れた様子でキノコを見つける。

 

 探し方を教わり、アイミーとリリも手伝い始める。

 

 そんな折、草むらがガサガサと言い出す。

 深い緑の中に、黄色と黒の玉模様が視界に入った。それも一頭ではない。

 

 

「出た!キラーパンサーだ!」

「ボコタさん、私達の後ろに避難を」

「お願いします!あ、キノコ、できるだけ潰さないでくださいね?」

 

「ふんっ、そこまで面倒見られるか、ギガ空裂斬!」

 

 

 一瞬にして魔物は塵と化した。

 

 

「素晴らしい、さすが勇者様だ!また魔物が来ないうちに、さあさ、お嬢さん方も手伝ってくださいな!」

「それってウチら?」

「みたいだね。私達お兄ちゃんの付き人と思ってるかも」

 

「ならサチも?」

 

 難しい顔で腕組みをした今のサチは、どう見ても付き人には見えず。

 

「ありゃ現場監督って感じかー」

「あの海賊ターバン帽がヘルメットだったら完璧だね」

「ぷぷっ、笑っちゃうじゃない、アイミーっ!」

「リリ姉が先に言い出したんでしょ」

 

 

「お嬢さん方、おしゃべりは後でね!」

「「はい!」」

 

 二人の声がハモる。

 

 

 こんな調子で手伝わされたリリとアイミー。何だかんだとキノコ採りを楽しんだ。

 

 

 

「次はこれを町に戻って売ります。さっきの兵士達も買いたいと言っていたので、まずは城へ行きましょう」

「ただで手に入れた物を売るとは!兵隊と商売の話までしてたとか、抜かりないな」

「きっとやり手なんだよ」

「サチさんは見る目あるね!そう、私はやり手の行商、だから魔物が邪魔しに来るんだろうね」

 

「いや。それは絶対違うと思うぜ?」

 

 

 

 その後キノコは飛ぶように売れた。

 

 

 冷やかしていたボシュもキノコが気になり出す。

 

「なあそれ、そんなに美味いのか?」

「そりゃもう!勇者様も召し上がってみますか」

「あっ、いや遠慮しとく。あと、俺は勇者じゃ…」

 

「さあボコタさん、次は?」

 

 さり気なくサチが遮る。ここで否定されるとややこしくなるので。

 

 

「おっと。そうだった、時間がもったいない。次は別の町で紙芝居をやる予定だ」

「紙芝居?今時?アタシ子供時代すらあんまり経験ナシだわ」

「おや、そうなのですか?これは私のお手製ですよ!」

 

 ボコタが布袋から四角い木箱をチラと見せた。

 

 

「ま~た金かかってねぇじゃねえか。やり手というよりセコイんだな、根本が!」

 

 ボシュは呆れ顔だが、アイミーは目を輝かせて覗き込む。

 

「私、紙芝居好き!どんな話なんですか?」

「そういや、お前は昔からそうだったな~」

「一緒に見に行っても、お兄ちゃん最後まで見た試しないよね。いつも途中で飽きて筋トレ始めるんだもん」

「何かそれ想像つくわ~」

 

 

「さあさ、町に着いてからのお楽しみって事で、すぐに向かいましょう」

 

 

 

 ボコタを先頭に、一行は再び歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

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