旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第23話:闇の玉

 

 

 ボコタの案内でやって来た次なる目的地にて。

 

 

 辺りを見回してサチが一言。

 

「何だかこの町、閑散としてるね」

「アタシも思った。いつもこうなの?」

「いいえ、いつもはもっと賑わってます。何かあったのかな…これじゃ商売あがったりだ!」

 

 

 店などが並ぶ賑わいそうな通りも人の姿がない。

 

 

 そこへ一人の老人が近づいて来た。

 

「ボコタじゃないか。ここに来ても、もう商売はできんよ」

 

「おお、毎度どうも。何かあったのかい?」

「町の外れにアリが住み着いてな。皆恐れて家に閉じこもっとるんじゃ」

「アリ?そんなの踏んづけちまえばいいだろうに!」

「踏めるものなら踏んでくれ。精々逆に踏みつぶされるのがオチじゃ。ではな」

 

 老人はそそくさと去って行った。

 

 

「困ったな。これじゃお客が来ない。仕方がない、俺がそのアリ退治をしてやるか」

「ボコタさん、お爺さんが言ったアリは、きっとただのアリでは…」

 

 

 サチの言い分も聞かず、町の外れに足を向けるボコタ。

 

 

 面々は顔を見合わせため息を付く。

 

「ったく勝手なオッサンだ!護衛を置いて行きやがった。痛い目見ても知らねえぞ?」

「イジワル言わないで追い駆けよう」

「町の人達の怖がり方、間違いなく魔物だものね」

 

 人っ子一人いない通りを見渡すリリ。

 女子3人が意気投合したところで、ボシュに反論の余地はない。

 

 

「分かったよ!行きゃーいいんだろ、行きゃー」

 

 

 

 

 

 早足で進むと、少し先から男性の叫び声が聞こえた。

 

 

「ボコタさんの声だよ!」

「やっぱり出たね、読みは当たったわ」

「急ぐよ、皆!」

 

 

 そして尻もちを付いて震えるボコタが視界に入る。

 その前方には巨大なアリ、というかクワガタが。

 

 

「勇者様、サチさん、魔物です!退治お願いします!」

 

「な~にが退治お願いします、だ。報酬ガッポリふんだくるぞ?」

「ボシュ」

「何だよサチ。小言なら聞かねー…」

「あれは爆弾アリよ。爆弾飛ばして来るから気を付けてね」

 

「…あ?ああ」

 

 

 ボシュはてっきり報酬についての下りをサチにたしなめられると思っていた。

 アイミーのように!

 

 だがサチの言葉は自分を気遣うものだった。

 

 

 意表を突かれたのと嬉しかったのとで若干混乱しつつ、軽快に大剣を引き抜いたボシュはアリの群れに得意技を仕掛けた。

 

 

「おお!何と豪快な一撃、素晴らしいの一言だ!」

 

「世辞はいい。これからは単独行動は控えてもらおうか」

「済みませんでした…。商売にならないと分かり、焦ってしまったのです」

「あのお爺さんもイジワルよねー。魔物だって言えばいいのに?」

「もしかしてワザトかも」

 

「誰かが人柱になれば、魔物がしばらくは大人しくなるってか?」

「ええっ、それってまさか私ですかっ、ひどい!」

 

 

 さすがに落ち込んだ様子のボコタに、サチが優しく声を掛ける。

 

「あなたが私達をここに案内してくれたお陰で、この町に平穏が戻りました。また商売できます」

「そうですよね!あの爺さんだけが客じゃない、私は負けませんっ」

 

 たった一言で元気を取り戻したボコタであった。

 

 

「あの立ち直りの早さは認めてやろうじゃないか」

「そういうところが、やり手、なんじゃない?」

 

「さて。今日は紙芝居はやめておきます。せっかくなので、ずっと行きたかった場所に付き合ってもらえますか」

「それは?」

「スライムが住み着いている塔があるんです」

 

「スライムっ!」

 

 リリが食いつく。

 そんなリリの頭にはもちろんスライム帽が乗っている。

 ちなみに現在ボシュのスライムは荷の中だ。

 

 

「…。念のため聞きますが、そちらのお嬢さんはスライムとどういうご関係で?」

「カンケイ?あらやだっ」

 

「リリ姉っ、違う。もちろん敵対関係です!ほら、仕留めた獲物を飾って楽しむ事、あるでしょ?そういう感じ」

「ああ!なるほど納得しました。いやぁ、実は心配していたのです。スライムは殺せないとか言われたらどうしようかと」

「それはないぜ。あのジジイの親戚も迷いなくやっつけてるしな!」

 

「あの、ジジイとは?」

「何でもないです!お兄ちゃん、しーっ…」

 

 慌てたアイミーが口元に人差し指を立てて、ボシュに念押しする。

 

 

「それで、その塔には何があるの?」

「そりゃお宝に決まってるでしょう!ほら、これもそこで見つけたんですよ」

 

 そう言って懐から取り出した物を手の平に載せるボコタ。

 

 注目が集まったそこにあったのは紫に光る玉だ。

 

 

「紫水晶ですか?」

「ええ。これは高値で売れますよ!しかもこれね、色が変わるみたいなんです。最初は透明だったんだよ」

「ねえそれ、サチの持ってるのに似てない?」

 

 

 アイミーのコメントに、サチがポケットを探り持っていた玉を取り出す。

 

 

「おお!それをどこで?」

「ある人にいただいたんです」

「あれ?その玉、何か前と雰囲気違くない?」

「きっと、闇の玉から光の玉に変わったんだね」

 

「変わった?」

「これを持って魔物を倒して行くと、魔力が強まって行くそうです」

「魔物を倒す、か。私にはできませんし、魔力が強まっても使い道がありませんな!」

 

「初めは透明だったって言ったよな?」

「ええ」

「つまりサチのとは逆の現象が起きてるって事にならないか?」

「力が弱まってる、みたいな事?」

 

「闇の玉がもっと悪くなったら、暗黒の玉とかになるのかな…何だか怖いっ」

 

 

 サチも思うところがあったのか、アイミーの意見に大きく頷く。

 

「ボコタさん、その玉は持っていない方がいいみたい。返しに行きましょう」

 

「イヤですよ!返すんじゃなく、もっとお宝を分けていただきに行くんですから」

「分けてって、勝手に持って来ただけだろ」

「そうですけど!だって、あんな所にあっても、それこそ宝の持ち腐れじゃないですか。こういう物はね、世の中で循環してこそ生きるんです」

 

 

「それっぽく聞こえるけど、要は自分の金儲けのためって事よね」

「サチ、どうする?」

「取りあえず、そのスライムの塔に行ってみよう」

 

 

 そういう事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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