旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第25話:アクセサリーの効能

 

 

 商人ボコタと別れ、サチ達の旅が再開する。

 

 

「アイミーったら、あんな説得の才能があったなんて!ビックリしたわよ」

「私、別に説得したつもりないけど」

「偽りのない言葉だからこそ、ボコタさんの心に刺さったんだよ」

「また成長したな、アイミー」

 

 

「ヤダ、皆してっ、照れるじゃない!」

 

 隣りにいたボシュの背を力いっぱい叩くアイミー。

 

 

「いって!本気で叩くヤツがあるかよ」

「素手で良かったじゃん。雨雲だったらヤバかったよ?」

「勘弁してくれ…」

 

 

 今や雨雲の杖はアイミーの武器となっている。

 そしてまだ登場した事のないリリのオチェーアノの剣。

 

 その時はすぐにやって来るであろう。

 

 

 

・・・

 

 

 

 一行は深い森に差し掛かった。

 不意に足を止めたサチの表情が何やら硬い。

 

 

「…疼いてる」

 

「ちょっと~なぁに?サチったら!こんな真昼間から欲求不満?」

「っ!お前らっ、何つー破廉恥な会話してんだっ」

 

 たちまち真っ赤になったボシュだが、サチは真顔だ。

 

 

「…サチ?マジでどした?」

「これが…疼くの」

 

 サチはポケットから光の玉を取り出す。

 

 途端に玉は激しい光を放ち、一行の目を貫く。

 

 

「なんっ…?眩し!」

「ムムム、この現象は…っ」

「何なのさ?知ってるの、ジョニじい!」

 

 

 やがて光が落ち着いて来るも、今度はサチ自身からオーラが立ち昇っている。

 

 

「ちょっとサチ!体から何かモヤモヤしたの出てるよ!」

「体が、何かに包まれてる感じがする」

「サチ殿の持つ光の玉が覚醒したようじゃ」

「覚醒だと?…」

 

 サチがさらに強くなる事を恐れているボシュに、ジョニーが付け加える。

 

「ボシュ殿の黄竜眼のリングは、すでに覚醒しておるようじゃがのー」

「俺のも…?」

 

 言われたボシュは自分の指に嵌まったリングを見下ろす。

 

 

「光ってないが?」

 

「光れば完成などと誰が言った?」

「単純だわね~、チェリー君は!」

「何だと?って、そのチェリー呼びやめろっ!」

「ジョニじい、私のイヤリングは?」

 

 アイミーがボシュを押し退けて、耳元で揺れるイヤリングを示す。

 

「おお、アイミー殿の魔氷のイヤリングも出来上がりじゃ」

「やった、出来上がり!だから私、体力付いたのね」

「確かに俺の攻撃力も上がってる」

「やったじゃん、二人とも!」

 

「リリ姉のは?ジョニじい」

 

 アイミーがリリの胸元に視線を送りながら尋ねる。

 

 そこにはロザリオがあるのだが、服の中に仕舞っているため見えてはいない。

 

 

「おい。どさくさに紛れて別ンとこ見てんじゃねぇぞ?エロジジイが」

「はて。一体どこの事じゃろ?言ってみい」

「ま~た同じ下りやってる。これでしょ、別ンとこ見られるのもヤだから出すわよ」

 

 鼻の下が伸びかけたジョニーが、やや残念そうに口をすぼめた。

 

「何拗ねてんだよ!」

「全く余計な事を、である!」

 

 

「もうっ、そんな話はいいから!ロザリオどうなってるか教えて、ジョニじい様?」

「おお…何と愛らしい。アイミー殿は可愛いくていい娘じゃのう。ワシの嫁に…」

「おい!どさくさが過ぎるぞ!」

 

 

「…もうどうでもよくなって来た。ねえサチ。これ、何か変わったと思う?」 

 

 言い合いが妙な方向に発展してしまい、途方に暮れたリリは後方でオーラを放ち続けるサチを振り返る。

 

「リリ姉のロザリオはパワーアップアイテムじゃないの。耐性が多少付く程度。お守りみたいなもの」

「そう言えば貰った時言ってたよね。はい解決ー」

 

 不毛な言い争いに終止符を打ったのは、リリの一声ではなかった。

 

 

 明らかに邪悪な空気が漂って来たのだ。

 今ではサチやリリだけでなく、ボシュもアイミーもそれに気づけるだけの力を身に付けている。

 

 

「ちょうどいい、今回は物足りなかったんだ。俺が一気に片付けてやる」

「気を付けるのじゃ。ワシの勘では、これまでのとはレベルが違うようである」

「怖い事言わないで、ジョニじいっ」

「愛らしいアイミー殿を怖がらせたくはないが、事実なのじゃ」

 

 

 そして悪の気配は背後に迫った。

 反射的に振り返る一同。

 

 そこには槍を構えた大柄の甲冑男が、微動だにせず立っている。

 

 

「背後を取られた。いつの間に…っ」

「鉄鋼魔人じゃ。なるべく距離を取るのである!」

 

 

 ボシュが身構えるも、魔人はサチの方しか見ていない様子。

 

 

「どうやらターゲットはサチみたいね」

「もしかして…あの光の玉?」

 

 

「ニンゲンよ、その玉を渡せ。それは我らのもの」

「私はこれを然るべき人から譲り受けた。あなたの物じゃない!覚醒の炎!」

 

 

 サチの得意技が炸裂した。それはこれまでとは別次元の威力となっている。

 それでも一度よろめいた魔人は体勢を立て直す。

 

 

「この程度で勝てると思うな。愚かなニンゲンよ」

 

 魔人が槍で激しく攻撃してくる。

 

 

 盾で防御するも、弾かれて立ち尽くすサチ。

 

 

「玉を寄こすのだ」

「誰が渡すかよ!サチ、そのまましゃがめ!ギガ空裂斬!」

 

 またもよろめいた魔人だが、再び立ち上がった。

 

 

「くっ、まだ倒れねぇか、しぶといぜ。アイミー!」

「任せて!落陽!」

 

 

 上空に現われた巨大な火の塊が、魔人目がけて落ちる。

 さすがに力尽きたのか、片膝を折った魔人はそのまま消えて行った。

 

 

「油断しちゃダメ!前方にまだいる…赤い何かが動いてるよ!」

「何だありゃ?」

「あれ、前にも見たような…ほら、土から出てきた…」

 

「「手!」」

「ブラッドハンドよ!増えたら厄介だわ、すぐにやっつけよう!」

 

 

 木々の生い茂る薄暗い地面に、真っ赤な手がすでにいくつも突き出ている。

 リリがオチェーアノの剣を引き抜いて構える。

 

「ここはアタシにやらせて。化け物覚悟!ウィンドスラーッシュ!」

 

「まだだわ、全然足りないみたい」

「…ゴメン、力不足で」

「気にすんな。ったく、気持ち悪いっつってんだろうが!これでどうだ、ギガ空裂斬!」

「まだみたい。私も行くわよ!覚醒の炎!」

 

 

 消しても消しても、新たな手が次から次へと現われている。

 

 

「よぉし、今度は仕留めるよ。アイミー、雨雲貸してくれる?新技よ、食らえ、ざざん波!」

 

 リリは雨雲の杖をアイミーから拝借して構える。

 

 

 それはいつもの火ではなく、水が溢れ出す技であった。

 鉄砲水と化したそれは、地面の土をえぐり魔物を根こそぎ一掃した。

 

 

「凄い、リリ姉!いつの間にそんな新技習得したの?しかも、威力半端ない…」

「実はさ、こっちの技の方が先に覚えてたんだよね。ほら、アタシがこれ振り回すといつも雨降る~って言ってたでしょ」

「言ってたな、そういや」

 

 

 それはボシュとリリが偶然再会した早朝。あれから早半年となる。

 

 

「それを使えるだけの力を身につけたって事ね。リリ姉、頑張ったね。踊り子でも凄く頼りになるわ」

「ふふっ。でもやっぱキツイね。アイミーに伝授しとく」

「私にできるかな…」

「アンタは素質ある。文句なしにできるって!でも上級職になってからがいいかも。賢者になるんでしょ?」

 

「うん…そうだけど」

 

「それがいい。あと少しでアイミーもレベルアップできそうだしね。…あ、ボシュ!今のでマックスじゃない?」

 

 何とボシュの経験値は振り切れている。つまり転職が可能になったサインだ。

 

 

「おお!って事は、俺もついに…」

 

「バトルマスターに昇格、おめでとう、ボシュ」

「おめでとう、お兄ちゃん!」

「やけに早くない?サチが昇格してまだそんなに経ってないよ」

 

「コイツのお陰だ。次はアイミーが被れ、ほら」

 

 

 ボシュは被っていたスライム帽をアイミーの頭に乗せる。

 

 

「いいの?」

「早くお前がさっきの技使うとこ、見たいんでね」

「お兄ちゃん…っ」

 

「はいはい、兄妹愛を見せつけるのは後にして、早いとこ森を抜けよ。何だか気味悪いっ」

「そうね。今ので体力を消耗したし。陽の光も浴びたいわ」

 

 そんな事を言うサチからは、光のオーラが相変わらず立ち昇る。

 

 

「サチのオーラ見てるだけでも癒されそうだけど」

「そう?気の済むまで見ていいよ!」

 

 

「なあ。誰でもその玉持ったら光るのかな」

「さあ。試しに持ってみる?」

「お、いいのか?」

「いいよ」

 

 意外とあっさりサチは光の玉をボシュに手渡した。

 

 

「そう簡単に光らないでしょー」

「そうだよ、きっと特別な何かが…」

 

 

 

 そんな事を話しながら、太陽が降り注ぐ開けた場所に戻った一行。

 

 

「どうだ?」

 

 

「う~ん、周りが明るすぎて分かんないね」

「もう一回森の中に行ってみる?」

「アタシは遠慮するー」

 

「やっぱ返すわ。俺が光ってもな」

「そういう特殊効果が似合うのはサチくらいだよね」

「どういう意味?」

 

 ポカンとしながら玉を受け取るサチ。消えていたオーラが再び復活する。

 

 

「サチ殿は神々しいと言う意味じゃ!これは何かの予兆に違いない、素晴らしいぞよサチ殿!」

 

「ヨチョウ?」

「悪い方の予兆じゃなきゃいいけどー」

「変な事言わないで、リリ姉!」

「アハハ!」

 

 

 

 この陽気さこそがサチのパーティーである。

 

 

 

 

 

 

 




「ひかりのたま」のオーラは、特定の装備と合わせて持つと現れます。
本当はボシュにもオーラが現れていたのですが…。
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