旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第26話:光の玉

 

 

 楽し気なサチ達一行の声に混じり、どこからか不穏な声が響く。

 

 それは光の玉の持ち主であるサチだけに届いていた。

 

 

『必ずや玉を我が手に…』

 

 

「ん?今誰か、何か言わなかった?」

「言ってないぞ。空耳じゃねーの?疲れてるんだよ、サチ」

「いや。空耳ではない。立て続けじゃのう…全く油断も隙もない連中じゃわい」

「何?また敵?」

「えっ、まだ皆回復してないよ、早く薬草飲んで!」

 

 

 つい先ほど大量の赤い手の魔物を倒したばかり。

 

 

 アイミーが慌てて革袋から薬草を取り出すも、手渡す前に何かに吹き飛ばされる。

 

「きゃあ~っ!!」

「アイミー!」

 

 

 アイミーを受け止めたのはジョニーであった。

 

「ケガはないかの?」

「ジョニじい、大丈夫、ありがとう…」

「サチ殿、またしても狙いはおぬしじゃ。重々気を付けよ」

「そんな、サチまだ回復してない、これをっ」

 

 アイミーが新たな薬草を手に立ち上がろうとするのをジョニーが止める。

 

「離して、ジョニじい!」

「おぬしは今魔法使い。僧侶の時とは違い回復魔力が弱い。今飲ませても即効性は期待できぬ」

「それなら私も戦うまで。行かせてっ」

 

 アイミーの強い意思に、ジョニーが折れた。

 

 

「アイミー殿はたくましくなったのう…。分かったのである。気を付けて行くのである」

「ありがと、ジョニじい大好きっ」

 

 

 こんな状況にも関わらずポッと頬を染めるジョニーであった。

 

 

 

 いつの間にか空が暗黒に染まって、辺りは魔物の濃い瘴気が重く漂っている。

 

 

「その玉を寄こせ!」

 

 姿を現したのは紫色の魔人。

 4本伸びた腕にはそれぞれ剣、斧、こん棒を持っている。

 

 

「魔王の使いじゃ。かなりの強敵ぞ、気を抜くでないぞよご一行!」

 

 傍観者と化したジョニーは姿を消す。

 戦いにおいては一切手を貸さない。

 

 

「なぜこれを欲しがるの?」

「それに閉じ込めたるはニンゲンの魂。我らの糧じゃ。すっかり抜け殻になってしまったようだが、また集めればよい」

 

「あの紫の光は魂だったって事か」

「げぇ…気味悪っ、ボコタの玉見てゾッとしたのはそういう事かぁ」

「そして今の玉が、浄化された姿なのね」

 

「そうとなれば。サチ!絶対に渡しちゃダメよ!」

 

 

 

 ここに一番勝負が幕を開けた。

 

 まずは先手必勝で、サチとボシュが得意技を仕掛ける。

 そこへ反撃の余地を許さずリリも参戦。

 そして最後にアイミーの落陽をお見舞いする。

 

 

「諦めの悪いニンゲン共よ、魂をその玉に封じ込めてやる。潔く我らの糧となるのだ」

 

「断る!ギガ空裂斬!」

「覚醒の炎!」

 

「まだまだ甘い!」

 

 魔人が斧を振り回す。サチとボシュが攻撃をもろに受けてしまう。

 

 

「サチ!ボシュ!二人に何するのさ!ウィンドスラッシュー!」

「お兄ちゃん、死なないで!落陽!」

 

 泣きそうな顔になりながらも果敢に戦うアイミー。

 

 

 そんな折、リリが無意識に踊り始めた。

 

 

「リリ姉、何してるの、今はそんな事してる場合じゃっ…」

 

「芸術って癒し効果、あるのよ、はいターン!」

「そうじゃ!リリ殿その調子じゃ、踊り子には回復の力が備わっておる。よくぞそれに気づいた」

「さすがアタシ!」

「凄い…知らなかった。私も何だか癒されてきた!ねえリリ姉、さっきの技今やってみていい?」

 

 アイミーは雨雲の杖を握り締めて訴える。

 

「ざざん波ね。今のアタシじゃ無理だし。よし、それに託そう、構えはこうよ!行けアイミー!」

 

 

「え~い、ざざん波!」

 

 

 掛け声と共に物凄い威力で水が溢れ出す。

 アイミーが耐え切れずに尻もちを付きそうになるのを、後ろでリリが支える。

 

 

「何という事か…まさかここでニンゲンにやられるとは…無念。魔王様、申し訳ございま…っ」

 

 魔物のつぶやきは濁流によって途切れ、流れと共に消え去った。

 

 

 

「…やった」

「やれたじゃない!凄いよアイミー!そんでもって、経験値マックス!」

「これでアイミーも賢者ね。おめでとう」

 

 

 サチがボシュに肩を貸しながらアイミー達の元へ集まる。

 

 

「サチ、お兄ちゃん、ケガは?」

「大した事ない。それより、凄かったな今の。やったじゃないかアイミー」

「うん。リリ姉のお陰。リリ姉ぇ…っ」

 

 後ろを振り返ってリリを見上げるアイミー。

 

 

「よしよし、よくやったよ。さて。二人分の昇進祝い、盛大にやろうじゃない?」

「もちよ。ついでに衣裳替えもね」

「おお!イメチェンするぞ!」

「え。お兄ちゃんまさか、また何か買うの?そんな立派な鎧持ってるのに?」

 

「いやだってな、これ来てると皆俺の事勇者だと勘違いするんだ」

「勘違いじゃないよ。ボシュは立派な勇者だもの」

 

 

「ダメなんだよ!俺だけがそう見えたら。4人で一つなんだから」

 

 ボシュは最後まで声を張って主張した。

 

 

 その直後にリリに背をパンパン叩かれ、発言の真意に気づく。

 自分は今、物凄く熱い言葉を吐いてしまったと。

 

 

「嬉しい事言うね~、ボシュ君!アタシゃ泣きそうだよ~」

「って、全然泣く気配ねーだろ」

「お兄ちゃんも皆の事、宝物だと思ってたんだね。私も嬉しいっ!お兄ちゃん大好き~」

 

 さらにアイミーに抱きつかれ、照れはピークに。

 極め付きはもちろん、サチのウインクだ。

 

 

 ボシュは頭から蒸気を噴き出してフリーズしたのだった。

 

 

「あれ、お兄ちゃんからもモヤモヤ出てる」

「おかしいね、玉はサチが持ってるよね?」

 

「俺は何も出してねーっ」

 

 

 

 

 再び青空が戻った草原にて、こんなやり取りが繰り広げられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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