旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

28 / 72
第6章 異種族共存の道
第27話:身も心もワイルドに


 

 

 兄妹ほぼ同時に上級職へと昇格を果たしたボシュとアイミー。

 

 恒例の衣裳替えが行なわれた。

 

 

 ボシュは鎧を上下とも脱ぎ去り、上衣はダークグレーのラフなタンクトップに胸当て。

 下衣は同色系のマント付き。軍隊風のブーツでキメる。

 さらに髪型もガラリと変え、下ろしていた髪を逆立ててバンドで留めたスタイルに。

 

 一気にワイルドな男に変身だ。

 

 

 一方のアイミーも、これまでの大人しめスタイルからギャル系へと変身。

 上衣は赤系のジャケット、下衣は青チェックのプリーツミニスカート。

 お揃いの生地であつらえたショートブーツの履き口部分がオシャレさを惹き立てる。

 

 

 ついでにサチもエメラルドグリーン調の衣裳からダークトーン調に衣替え。

 上は獣の毛で作られたベスト。下はこれまた獣皮の腰巻でワイルドな仕上がりだ。

 

 

「アイミー、スカート短すぎるんじゃないか?」

「出た、兄貴チェック!全く過保護ね~。サチだってヘソ出しルックよ?そっちは?」

「別に誰がどんなの着ようが関係ねー!過保護とかそういう訳じゃなくてだなっ…」

 

「そうだよね、短いよね、私もちょっと思った。だって賢者だよ?もっとこう清楚な方がさ」

「あらいいじゃない。職はどうあれ、そういうの楽しめるのはね、若いうちよ?期間限定!」

「あとキャラにもよる」

 

 それな、とリリがサチに同意を示す。

 

「サチだってリリ姉だって着こなせるでしょ。若いんだし」

「ノーとは言わないけど、私は着ないな」

「アタシもー。せめて20代前半だったらねー」

「あんまり変わらないと思うけど!」

 

「リリ姉は美脚なんだから、着ていいと思うよ?」

「美脚は否定しない。あのね、20代の前半と中盤には大きな溝があるんです。まー、どうしてもって言うなら着るよ。タイツなしでね!」

 

 アイミーは黒タイツも装着している。

 

「えー凄い、私はタイツありだから履けてるよ」

「タイツ姿に燃える男もいるからね~、気を付けなよ、うら若いお嬢さん?このカッコならツインテールも生きたわね。若い若い!」

 

 

 リリのセリフが耳に入ってしまったボシュ。

 タイツが破られたその先の、生娘の白い生足なぞを想像し一人真っ赤になる。

 

 

 ちなみに現在ジョニーとは別行動中である。

 二人が衣裳替えをする時まではいたので、アイミーのタイツ姿はしっかりと見ている。

 そのすぐ後に用事があると言って消えて行ったのだ。

 

「今じじいがいなくて良かったぜ。アイツまさか、タイツフェチだったり?なあアイミー、タイツはやめた方が…」

「あらん、ボシュ君!生足の方が好きって?そっかそっか、どうする?アイミー」

 

「はあ?!いや違うっ!そうじゃなくて!」

 

 

「お兄ちゃん、私タイツなしでミニスカは無理だよ。戦ってる最中にめくれたらって気になって、集中できなそう!」

「姉さまのパーティにいるララも賢者だけど、生足でミニスカ履いてたよ。ガーターベルト付きでね」

「あー、ボシュの事妙に気に入ってた人ね。迫られて直視できないでいる光景、傑作だった!」

 

 

 リリとサチが思い出して笑い転げる中、アイミーは真剣だ。

 

「お兄ちゃんの言う通りにするよ。どうしたらいいかな、私」

「いや、俺の言い分なんていいんだ。俺はただ、世の男共の目が気になっただけで…」

 

 

「優しい兄貴だね~。アタシもそういう兄さんほしかったな」

 

 いつもの冷やかしとは違う切なげな顔で呟くリリ。

 

 

「アイミー自身は気に入ってるの?」

 

「こんなカッコした事なかったから戸惑ってる。でも変わりたいってずっと思ってたし、これでやってみようかな」

「なら決まりね。大丈夫、今までの服も持ってるし、この先で他にいいのあるかもだしさ」

「そうよ。嫌になったらアタシが貰うかもだし?」

「タイツなしでね」

 

「そうなった時のために、リリ姉用にガーターベルト入手しとく」

「きゃ~カッコ良さそう!見てみたい」

「こうなったら、ファッションショーでも開く?」

 

「いいね、楽しそう!私被りものもイケるよ」

「待ってよサチ。被り物って、アンタ一体どういうショーを想像してる?」

「だってそうしないとボシュが見に来てくれないでしょ」

 

「え、お兄ちゃんのためなの?サチ優しい、ありがとっ」

 

 アイミーがサチに抱きつく。

 

 

「盛り上がってるとこ悪いが、こんなとこで道草食ってていいのか?俺は先に行くぞ」

「そうよ、先に進まなきゃ、待ってよボシュ!」

 

 サチがボシュの隣りに並ぶ。

 

 

 ワイルド系がこう揃うと、後方の二人は一層付き人感が倍増か。

 

 

「…なんかアタシら、相変わらずまとまりない格好だわねー」

「見た目なんてどうでもいい。気持ちが同じ方を向いていれば。サチも言ってたでしょ」

「だね。ホント大人になったね、アイミー!このこのっ」

「リリ姉ったらやめてよ、スカートめくれるっ」

「着慣れないの着ると気ィ遣うよね~」

 

「そう思うならやめてってば!」

 

 いたずら心が湧いたリリは、アイミーのスカートをめくろうと手を伸ばす。

 

「もうっ、ジョニじいみたいよ?」

「こうされた時の対処法を学ぶべし!」

「着慣れてないのに、対処法なんて分かんないっ」

「お手本を見せてあげたいのは山々だけど、みんなパンツスタイルなんだよねー」

 

「ずる~い、リリ姉もスカート履いて!」

「ロングしか持ってませ~ん」

 

 

 ロングはさすがの男達もめくろうとは思うまい。

 こんな会話は先を行く二人にも当然届いている。

 

 

「おい、不毛な会話がまだ続いてるが、ほっといていいのか?」

「いいじゃない。嵐の前の静けさ、またすぐに強敵がやって来る。今のうちだけよ」

 

 

 はは!と乾いた笑いを一つ零し、ボシュが両手を頭の後ろで組み空を仰ぐ。

 

 

「確かに。いー天気!平和な証拠だ。この先の村は確か、エルフも住んでるんだよな?」

「そう。昔は円満に共存していたらしいけど」

「けど?今は違うのか」

「異種同士は何かとすれ違ってしまうものよ」

「やけに説得力あるが、そういう経験でも?」

 

 ややおどけ気味にボシュが問う。

 

 

「男と女だって異種同士よね」

「なっ、何だよ急に!」

 

 

 立ち止まったサチはボシュを至近距離で見つめる。

 

 

「考え方が違う人同士は、分かり合えないのかな」

「そんな事はないだろ?ちゃんと話し合えば」

「そうだよね。話し合わないとだよね」

 

「ただ、本当に相容れない連中ってのもいるからな。そういう奴らと分かり合おうとしたってムダだ」

「その見極めが難しいね」

「難しくなんてないさ。考えるな、感じろ!って言うだろ?」

 

「なになに、ボシュったら見た目がワイルドになったら、中身までワイルドになった?」

 

 

「リリ姉、待ってよぉー」

 

 パタパタと二人が距離を詰める。

 ボシュの突っ込みどころ満載のセリフが聞こえて来たからだ。

 

 

「俺はもともとこういう人間だが?」

「え~そうだっけ。もっといろいろ、ちっさかったよね~」

「何が小さかった?」

 

 サチが改めてボシュを上から下まで眺めて言う。

 

「って、どこ見てんだよ!」

 

「どこって全身だけど。どこだと思ったの?」

「ここはチェリー君の名誉のために、あえて指摘は控えようよ、サチ」

「だから!どこだよ!」

 

「うつわ?」

 

 

 アイミーの一言に固まる一同。

 

 

「あ、えっと、体って意味だけど。ほらお兄ちゃんって男性としては体格的に小さい方でしょ?」

「ビックリしたー…。そっちね」

「全く持って。時々際どい発言するからね」

 

 サチとリリがこそこそと話しているのを、アイミーが不思議そうに見る。

 

「どうしたの、二人とも。早く行こ!」

「そうだそうだ、行くぞ!で、何の話してたっけ?」

 

 

 

 再び歩みを進める一行。次の目的地はすぐそこだ。

 

 

「エルフは今、人間を警戒してる。慎重に接触しないといけない」

「アタシらがさらに亀裂深めたなんて事になったらマズいもんねー」

「仲直り、してもらえるといいなぁ」

「今回もアイミーの言葉で改心してくれるといいんだがな」

 

「有り難~い神のお告げ的な?」

「イヤだ、神だなんて恐れ多いっ。そもそも天女様って言われてたのはサチだよ」

 

 

 一同がサチを見る。

 

 

 今のサチは海賊、というよりも山賊か。

 

「ん?何?」

 

「そのモヤモヤが後光だって言い張れば通用するんじゃね?」

「でもサチの演技力微妙だわよ?あ、玉をアイミーが持てば?」

「それだ!アイミー、光の玉持ってみろ」

 

 

 勝手に話が進み、あれよあれよとサチの玉がアイミーに渡るも…。

 

 

「何も変わってる感じしないけど」

「光らないねー」

 

 玉はすぐにサチに返され、瞬間にオーラが復活。

 

「サチの何かに反応してるんだよ、きっと」

「何かって?」

「血筋とかか?実はお前、どっかの王族の娘だったりして!」

 

 

 この言葉にギクリとしたのはリリだ。当の本人は至って平然としている。

 

 

「私が?そう見える?」

「冗談に決まってんだろ」

「ビックリしたー、一瞬そうかもって思っちゃった」

「ね、ね~!」

 

 ここは話を合わせようとリリも加わる。チラリとサチに目配せをしながら。

 

 この機会に打ち明けてはどうかと心から思う。

 だがサチは何食わぬ顔で微笑むばかりだ。

 

 

「ま、アタシがどうこう言う事じゃないかー」

 

「リリ姉、何か言った?」

「何でもない!さあアイミー、賢者一発目の大仕事が待ってるよ、ガンバだね!」

「プレッシャー掛けないで?リリ姉ももうすぐ次の転職控えてるんだからガンバだよ」

「アタシはお気楽よ。次は遊び人だもーん」

 

「しっかし、遊び人って職があるとは驚きだよな」

「侮るなかれ。遊び人のレベルを通常よりも上げると、賢者になれるんだよ」

「マジか?遊び人恐るべしだな。俺もなるかな~」

「なってもいいけど、今みたいに敵をガンガン倒せなくなるよ?」

 

「そうそう。だって遊び人だもん。居眠りしたり転んだり?」

「でも、転ぶのは技にもなるんだってね。あと石投げたり!」

「やっぱ俺はいいや。性格的にアイミーも無理だな。リリ姉、健闘を祈る」

 

「おうよ!とすると、サチもなれそうよね」

「もち。でも私はいいかな。賢者よりもレンジャーになりたいので」

 

「異議なし」

 

「おや~ボシュ君珍しい、いつも反対するのに?」

「レンジャーには興味あるが、俺はパラディンからのゴッドハンド狙いだからな」

「あれ、サチはドラゴン目指してるんでしょ?レンジャーだとニンジャじゃない?」

「まものマスターやってドラゴンにもなるよ」

 

「スゴっ、特級職2制覇する気?」

「あと、守り人と天地雷鳴士!姉さま魔剣士目指してるって言ってたからそれも気になるなぁ」

「いくつ制覇する気!?」

 

 

 楽観主義とは恐ろしいものだ。

 言い換えれば頼もしいリーダーである。

 

 

 そう思うようにする3人であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ドラゴンという職業について。この時はまだ誰でもなれる職ではなかったのですが今や…
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。