旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第28話:エルフの森

 

 

 出くわした魔物を倒しながら目指す村に到着する頃には、リリは遊び人への転職を済ませる事ができた。

 

 

 少しでも変化を加えたいと、リリは手持ちのオレンジのバンダナを頭に巻く。

 

「ようやく着いたぜ」

「ここで何かゲットできたらいいな~」

「それ必要か?上級職になったらでいいだろ」

「だ~って。これじゃ遊び人っぽくないじゃ~ん!」

 

「リリ姉の遊び人、たぶんすぐに終わるよ」

「そうだよ。上級職3人もいるんだぞ?」

 

 

「はーい。アタシは遊んでまーす」

 

 すねた様子で道端の小石を蹴るリリ。

 

 

「すでに遊び人に徹してるぜ」

「さ、私達は村長さんに挨拶に行こう」

 

 

 

 

 

 向かった村長宅では、ちょっとした親子ゲンカが勃発中であった。

 

 

「父さんは甘いんだ!僕が行って来る!」

「マッテオ!待ちなさい!」

 

 一行と入れ違いで家を飛び出した村長の息子マッテオ。

 

 サチ達の前を勢い良く走り抜けて行った。

 

 

「あの。ごめんください」

 

「おお、お客人にみっともない姿を見せてしまった。済まないね」

「いいえ。何かあったんですか?」

「息子と話が合わなくてね。困ったものだよ」

 

 

 聞くところによると、最近村で盗みやら放火が頻発しているそうだ。

 治安の悪化はエルフの仕業だとの噂を信じきっている息子が、エルフの長に苦情を言いに行ったのだとか。

 

 

「確かにエルフはいたずら好きで有名だが、人間に危害を加えるような事はしない!」

「そうですね。エルフはとても長寿な種族。性格も気長で温厚な人達が多いですし」

「よくご存じで!ええとそれで、あなた方は?」

 

「済みません、突然首を突っ込んで。たった今この村に着いた旅の者です」

 

「おお、それはそれは!もしや、魔王の使いを倒したという勇者様ご一行では!」

「勇者一行ではないが、魔王の使いとやらは倒したぜ」

 

「そうですかそうですか!そんなお強い旅のお方がこの村に!有り難い事です…」

 

 

 ボシュの手を固く握って涙ぐむ村長。

 

 

「そっ、そんなにか?」

「実は、村へのいたずらの他にも困っている事がありまして…」

「どんな事ですか?」

 

「はい、かつてエルフと人間が力を合わせて倒した魔物がいるのですが、それが近々復活するとかしないとか。確かめる事さえ恐ろしく、かと言ってこれ以上村の混乱を放置する訳にも…もうどうしたらよいか…」

 

「どうして急にそんな事に?」

「きっと我々の仲違いが原因で、魔物を封印する力が弱まっているのです」

「それはいけません、早く仲直りしないと!」

 

「その矢先にバカ息子が乗り込んで行きました…」

 

 がっくりと肩を落とす村長。

 

 

「話し合い、必要ですね。私達もエルフの森に向かって、息子さんを止めて来ます」

 

 

 

 そういう事になった。

 

 

 

・・・

 

 

 

「村長の息子、マッテオだったか?早とちりもいいとこだな!」

「あの勢いじゃ、ある事ない事言い散らすだろうねー」

「増々仲が悪くなっちゃう!」

「皆、急ごう」

 

 

 早足で息を切らしながら語る面々。

 

 眼前に広がる森は、どこかおどろおどろしい雰囲気が漂っている。

 

 

「ここがエルフの住む森?アタシもっと綺麗な所想像してたわー」

「ホント。もっとこう、童話の世界みたいなでしょ」

「何かおかしい。気を抜かないで。エルフの他にも何かいるかも」

 

「何かって、まさかの魔物か?」

 

 ボシュが剣の柄に手を回して言う。

 

 

「これは間違いなく魔物の瘴気よ」

「だわね」

「うん。私もそう思う。気を付けよう」

 

 

 

 

 さらに奥へと進むと、予想通りに魔物が現れた。

 

 

「メイジキメラ!虫みたいだけど危険なやつよ、気を付けて!」

「ガの幼虫か?気色悪ぃ、食らえ、さみだれ斬り!」

 

「中途半端な攻撃じゃダメ、アイツ回復魔力持ってる。ライデイン!」

 

 

 サチの的確な措置で、魔物を討伐し終える。

 

 

「小さいのに手強かったね。そんな魔物もいるんだって勉強になった」

「だわね。一々回復されたんじゃ、ムダに時間も体力も使っちゃう」

「だから一気に片付ける」

 

「ああ。見た目にだまされた、次からは注意する」

 

 ボシュが珍しく反省の言葉を口にした。

 

 

「さあ急ごう。ここにマッテオが一人で入ったなら危険だわ」

「そうだな。こうなると、エルフ達が無事なのかも気になるな」

「皆魔物にやられちゃってたりしないよね…?」

 

「ねえサチ。エルフって強いの?」

「生命力的には強いよ。だから長寿なんじゃない」

「リリ姉は戦闘能力があるのかって聞いたんだろ」

「…まあね」

 

 サチが目を瞬く。

 

「良く分かってるね、リリ姉の事」

 

「別に!この流れなら誰だってそう考えるだろ!」

「そっか」

「で?強いの?」

「エルフが温厚だっていうのは知ってるよね?彼らは争いは好まない」

「それはつまり弱いって事?」

 

「いいえ」

「じゃあ強いんだ!」

 

 

「戦ってる姿を見た事ないから、知らなーい」

 

 

 このセリフを聞いて3人がコケた。

 

 

「ヤダ!二人ともそのコケ方上手~い、遊び人に即転職できる~」

「するかよっ」

「この流れだと答えをもらえると思うじゃないっ」

「いくらサチでも全てを知ってる訳じゃないっしょ。ジョニじいなら分かるかもね~」

「こういう時にアイツ、どこに行っきやがった?」

 

 

 

 急ぎ足で向かった先に、見るからに城と分かる建物が見えて来た。

 

 

「きゃっ、こっちは理想的!やっぱこれよ、こういうお城にスライム侍らせて住みた~いっ」

「スライム?マジかよ…。あんなののどこに魅力を感じるのか理解できん…」

「女の子はね、丸っこいツルんとしたのに心躍るのよ」

「ザッツライっ!サチなら分かってくれると思ってた!」

 

 リリがサチに抱きついて言った。

 

 アイミーはイマイチ分かっていないようで、あえて話題を変える。

 

「あのお城にエルフの王様がいるって事だよね?マッテオさんもあそこにいるかな」

「だといいが。行き着いてない可能性もある」

 

 

 

 さらに足を進めて城へとやって来た。

 

 城門は鍵もかかっておらず門番もいない。

 

 

「全く無警戒だな」

「きっと魔物の群れがやって来て、皆慌てて中に逃げ込んだんだよ。勝手に入っていいのかなぁ」

 

 

 アイミーが悩む側から、サチがズンズンと中に進む。

 

 

「あっ、サチ!声くらいかけた方がっ」

「この緊急事態に、声なんてかけても無意味よ。行くわよ、皆!」

「それでも一応、礼儀ってものがさ?」

 

 

 アイミーがこうつぶやきつつも先に進もうとした時、後ろから声がかかった。

 

「お待ちください、あなた方はどちら様です?」

 

「あっ、ほら、やっぱり勝手に入っちゃダメだよ!済みません、怪しい者じゃないんです!」

「エルフの長の方にお会いしに来ました。先に村長の息子さんも来てると思うんですが」

「ああ、人間の。先ほど怒鳴り込んで来た青年ですね」

「良かった、無事に来てたわねー」

 

「まだいますか?」

「いいえ、すぐに帰られました。レチェア王女に散々言い散らして」

 

「想像通りの展開だな」

 

 一瞬すれ違っただけだが、マッテオの形相を見ている一行には想像できる。

 

 

「きっと王女様困惑してるよねー。温厚な人にそこまで強く言ったとしたら?」

「可哀そうだし申し訳ないっ!」

「今回の件、いろいろ行き違いが起きているようで、私達が仲裁のために来たという訳です」

「行き違い、ですか。ですが、今の状況では王女様が人間にお会いになるか…」

 

「そこを何とか!」

 

「おい、あんまりグイグイ行くなよ」

「ボシュもお願いして!」

「…。しゃーねぇな、ええと、ここは冷静な話し合いの機会をいただきたく?」

 

 リリとアイミーも続けてお願いしますと頭を下げる。

 

 

「わたくしには判断致し兼ねますので、王女様に聞いて参ります」

 

 

 幼そうに見える小柄な女性エルフの後ろ姿に、再びお願いします!と揃って頭を下げた。

 

 

 

 すでに門は抜けており、敷地内にて足止めとなった一行。

 

 

「あいつも子供みてーに見えたけど、年は行ってるんだろ?エルフって不思議な生き物だわ」

「お兄ちゃん。あいつとか不思議とか言わない!」

「女性の年の事は言わない!」

「チっ、うっせえなぁ」

 

「ボシュ」

 

「んだよ、お前まで説教か?サチ。何だよ、早く言えよ」

 

 

 オーラを放ちながら無表情で立つサチは妙に神々しい。

 果たして何と言われるのか。ボシュは少しだけ緊張するが…。

 

 

「あの人の、いや人じゃないか、年は恐らく200歳は軽く超えてるはずよ」

「…」

「何で分かったって?王女様の侍女的な立ち位置みたいだったから、子供ではないよって、聞いてる?質問に答えたんだけど」

 

 無言のままのボシュにサチは首を傾げる。

 

 

「あ、ああ!そうか、俺質問したんだよな」

「自分の発言も覚えてないの?大丈夫?」

「大丈夫だ。ここにお前みたいなヤツがいて救われたぜ…」

「ん?」

 

「何でもない。それより、ここの城主は女って事か」

「そうみたいだね」

 

 

「あ、さっきの人戻って来たみたい」

 

 

「お待たせしました。通して良いとの事です、付いて来てください」

「「ありがとうございます!」」

 

 

「お兄ちゃんは王女様の前でしゃべらないでね」

「あーあー。殺し合いにならない限りは出しゃばらねーよ。精々お前らで説得してくれ」

「ボシュ君たら、すねちゃった~」

「リリ姉、王女様の前で居眠りしたり蹴つまずいたりすんなよな?」

 

「うぐっ…。それは不可抗力でやってしまうのっ」

 

 

「ボシュとリリ姉は控室で待ってて。私とアイミーで行って来る」

「それがいいね。待ってる間にケンカしないでよ?」

「バーカ、そこまで子供じゃねーし」

「右に同じ」

 

 

 サチの提案で、王女の間には二人で行く事となる。

 

 

「あの二人、仲が悪いよね…困っちゃう」

「そう見えるけど、案外意気投合する時もあるじゃない」

「そうだけど、何だか心配!」

 

「ならアイミーも待ってる?いいよ、それでも」

「ううん、私も行く」

 

 

 

 

 そしてついに王女と対面する。

 

 興奮冷めやらぬ様子の王女はとても若く見える。

 美しいドレスをまとい、気品のある動きで室内を行ったり来たりしている。

 

 がしかし、口調はギャルであった。

 

 

「何か、私の思ってた人と違う…」

「そうだね。かなり怒ってるみたい」

 

 

「ホンっト超ムカつくんですケドっ!これだから若者はイヤ。こんな時だっていうのに…。あなた方も若いわね。まだ言い足りないの?」

 

「初めまして。私達は旅の者で、サチと言います。こっちはアイミー、外であと二人待たせています」

「そんな大勢でまた文句?だったら今度はこっちだって黙ってないから!」

「今度は、と言うと、マッテオの言葉は黙って聞いてくださったのですね」

「そうよ!口を挟む暇がなかっただけだケド」

 

 

「それは本当にごめんなさい…!」

 

「何であなたが謝るの?文句言いに来たんでしょ」

「違います!村で起こるいたずらがエルフさんの仕業だなんて、私達は思ってませんから」

「あら。話が分かる人間もいたみたいね」

 

「本当に村に何もしていないのですね?」

「当たり前でしょうよ、魔物に森を奪われてる状況で、一体何のためにやる訳?それどころじゃないっつーの。意味分かんないんですケド!」

 

 整った顔が真っ赤に染まる。腕組み姿で頬を膨らませる王女。

 

 

「やっぱり魔物が森を占領してるんだね…」

「先ほどの村長の息子さんは勘違いしてしまっているのです。私達がきちんと説明しますので、どうか許してもらえませんか」

「って言われてもねぇ。実際誰かが村にイタズラしてるんでしょ?真犯人を突き止めない限り納得しないんじゃない、あのガキンチョは!」

 

「がきんちょ…」

 

 

「私達が真犯人を突き止めたら?」

 

「そうね。でもそんな事より、私達としては魔物から森を奪い返してもらった方が有り難いわ」

「でしたら、それも引き受けます」

「え。マジ?嬉しいんですケド!あなた若そうだけど天女の生まれ変わりとか?」

 

 

「私はただの人間です。ではまた来ます」

 

 

 

 サチに続きアイミーがペコリと頭を下げ、王女との謁見を終えた。

 

 

 

 

 

 

 

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