アイミーとボシュが加わり、サチの仲間探しの旅は続く。
「早くもう1人探さないと。時間がもったいないから、姉さまの元に戻る途中で見つけよう」
「ねえ?どうしてそんなに急ぐの?」
「戻るって、もしや俺達までその女に会うのか?」
「うん。連れて来いって言われたから」
「…行って何が始まるんだ?」
「素質を見定めてくれるって!」
若干気後れ気味のボシュ。横目で見ながらアイミーが言う。
「私は会ってみたい、サチのお姉さんに!きっと素敵な人なんだろうなぁ」
「そりゃ~ステキなんてもんじゃないわ。最強のクールビューティなんだから!もう大尊敬っ」
「へぇ、クールな感じなんだ。サチとはタイプ違いそうね」
「お前はクールとはかけ離れてるからな!」
こんな会話をする3名は、どちらかといえば皆童顔寄りである。
「ボシュはどっちがタイプなの?」
「たっ、タイプ?!俺の?」
「そう言ったけど。声裏返ってるよ?何、慌てて」
「お兄ちゃん硬派で通ってるけど、実は綺麗な女の人苦手なの。特に年上?」
「こらアイミー!余計な事しゃべるな!」
「サチが年上じゃなくて良かったね、お兄ちゃん?」
「例え年上でも、こいつなら問題なかったよ」
「ボシュ君?それはどういう意味かな。色仕掛けも一通り姉さまから学んだの。やってみる?」
突然サチの目が据わった。猫なで声をボシュの耳元で発する。
ボシュの顎に軽く指を掛けてくすぐり、クイと持ち上げた。
「なっ、何だよいきなりっ、やめろよ!昼間っから酒でも飲んだか?」
「あら。私の息、お酒臭い?」
至近距離でサチが吐息を吹きかける。
「お兄ちゃん、墓穴掘ってる…まさか挑発してる?…訳ないよね」
アイミーの呟きは二人には聞こえていない。
大きく息を吸い込んで、声を張るアイミー。
「あのぉ!この茶番、いつまで続く?私先に出発するからね!」
「あん!アイミーったら待ってよ。私も行く!早くしないと姉さま呆れてどっかに行っちゃう~」
あっさりと背を向けられたボシュが取り残される。
「あいつ…、一体いくつの顔を持ってやがる?」
今後、下手に絡むのはやめようと心に誓うボシュであった。
・・・
堅実なアイミーが加われば、路頭に迷う事も行き倒れる事もない。
「今日はこの辺で宿を探しましょう。この先は山だから夜は危険よ」
「そうだな。あそこの宿屋はどうだ」
「良さそう。ねえサチ、サチ?」
振り返れば、先程までいたサチの姿がない。
「おかしいな、さっきまで後ろにいたよな」
「何で一本道ではぐれるワケ!」
元来た道を引き返そうとした時、側の茂みの中からガサガサと音がして動きを止める。
「…何、早速魔物とかやめてよね?」
「下がってろ、俺がやっつけてやる」
「お兄ちゃん気を付けて!」
アイミーを庇いボシュが一歩前に出る。
武器は所持していない。その身一つが武器である。
「出て来い化け物!俺が相手だ!」
ボシュの威勢の良い掛け声に続いたのは、場違いな間延びした声だ。
「おぉ~~~~~~い」
「待って、この声って…」
「サチに化けた魔物かもしれない、気を抜くな!」
再びボシュが構えた時、勢い良く藪の中から真っ赤な巨大な何かが飛び出して来た。
「ぼよ~ん、ぼよ~ん」
「うわぁ~っ!!何だ?!」
風船のような弾力で弾き飛ばされたボシュ。
地面を転がるも、素早く体勢を整え前方を見据える。
「何ヤツ…っ、どう見ても魔物だ、ぶちのめしてやる!」
「ちょっと待ったぁ!」
「サチ!どこに行ってたのよ」
「声が聞こえて。行ってみたら、この人達が困ってたから助けたら、付いて来た」
「助けたって、魔物を助けたのか。バカか?」
「…ぼよぉぉん」
「ねえお兄ちゃん、この人、人?まあいいか、何だか悲しそうだよ」
「魔物に襲われてたのよ。って事は、彼らは魔物じゃないって事じゃない?」
「いやだって、このなりはどう見てもスライム…」
「我らはスライムジェネラル、ジョニーと呼んでくれたまえ!サチ殿には命を助けられた。よって我らはこの恩を返さねばならん」
「ほ~ら、やっぱりスライムじゃねーか。敵だ!」
「まーまー、聞いて。恩返ししたいって言われて、私が魔物討伐の旅に出る話をしたら、一緒に来たいって」
「…マジかよ。このオッサン達が最後の一人ってか」
「それは違う。仲間は人間じゃないとダメなの。もう1人はちゃんと探すよ」
「つまりこの人達はお供って事ね」
「そうなのである。よろしくなのである!」
深紅のどデカい物体が、小人騎士を乗せてボヨンボヨン跳ねている。
「何かカワイイっ!いいじゃないお兄ちゃん、私は賛成だな~」
「俺に拒否権があるなら行使したいところだが…」
「ゴメ~ン、ないみたい」
「やはりな!勝手にしてくれ」
「は~い、勝手にしま~す。じゃあジョニーさん、お供する事を正式に許可します!」
デカすぎて宿には入れなかったため、ジョニーは野宿となった。
「ねえ、あの小人さんだけでもお部屋に入れてあげれば良かったかな」
「それがね、彼らは一体、分離はできないんだって」
「サチ、ちゃんと聞いてたんだ」
「変な生き物!やっぱ魔物だ」
「そりゃ魔物にもいろいろいるよ。人間もね」
「仲間になってくれるなら頼もしいじゃない、お兄ちゃん」
楽天家の女二人に言いくるめられるのは、これからきっと恒例になるのだろう。
「それよりサチ、いつ俺達から離れた?全然気づかなかったんだが」
「ほんの数分前なんだけど」
「いなくなる時は申告してよね?心配するから!」
「ゴメンなさい…すぐに戻るつもりだったの」
「それで一人で魔物退治しちまうんだから、大したもんだよなぁ?」
「お兄ちゃん。そういう嫌味な言い方は禁止」
「全く…すっかり風紀委員気取りか!」
「別にそんなつもりじゃ…。ゴメン、出しゃばった事した?」
アイミーに上目遣いで問われて、サチはすぐさま首を横に振る。
「全然!パーティに一人はこういう人が必要よ。ありがとうアイミー。これからもよろしくね」
「ホント?嬉しい!なら、バンバン行くから」
「そこはお手柔らかに!」
妹の視線が痛いボシュであった。
近所を散歩中にスライムジェネラルに出くわした時は驚きました。。。
今思えば、これはまさに運命的出会いでした。