旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第29話:新技習得

 

 

 城を後にした一行は、エルフの森を魔物を蹴散らしながら抜けて行く。

 

 

 蹴散らしているのは主にボシュ。その顔はどうにも不満そうだ。

 

「何で引き上げるんだよ。このまま森の魔物、今全部ぶっ倒そうぜ?なあサチ!」

 

 

「お兄ちゃん、前にも増して怒りっぽくなったね…」

 

「“怒り”は、バトルマスターの特徴なの。気にしなくていいよ」

「厄介な特徴だわね~」

「ボシュ、やり足りないだろうけど、今日はやめよう。犯人捜しは張り込むしかない。しばらくはこの村に滞在する事になる」

 

 

「やった~!エルフ達お洒落だし、何かいいものゲットできるかもっ」

 

 言うなりフラフラと一人脱線し始めるリリ。

 

 

「リリ姉!どこ行くの!」

「遊び人だから仕方ないよ、好きにさせてあげよう」

「うん…そうだね」

 

「いい気なモンだよな~。んじゃ、俺は今のうちに新技でも編み出しておくか。この後は自由時間でいいんだろ?」

「そうだね。晩ご飯までご自由に。きっと夜にはジョニーも戻って来ると思うから」

「いつも不思議。どうやって私達の居場所把握するのかなぁ」

 

 

「ニオイとか気配とかあんだろ。さ、俺は体力もあり余ってる事だし、発散するぜ!」

「それ分かる!私もあり余ってる!」

「ならサチ、ちょっと付き合えよ。相手がいた方が鍛練にやり甲斐がある」

「いいよ。私も海賊の技磨きたいし!アイミーはどうする?」

 

「私はいいや。心配だからリリ姉と合流する」

「分かった。じゃ後でね」

 

 

 ちなみにサチの海賊のワザには、威圧の他にも真空破やら斧まつり等がある。

 

 早速斧をどこからか取り出したサチ。

 

 

「…なあ、斧なんていつ入手したんだ?」

「さあ。海賊の装備みたい」

 

 

 隠し持っていた斧に慄いたボシュであった。

 

 

 

 

 

 こうして二手に分かれ自由時間を過ごしたその夜。

 

 村の中央の宿屋にて、ご馳走を前に話は盛り上がる。

 

 

「へぇ~。ボシュ新技体得したの。次の戦いが楽しみだわね」

「サチがいろいろ知ってて有り難いよ」

「いろいろって?」

「俺の大剣って、マジで勇者の剣らしくて。ちなみに今は身に着けてないが、あの時に買ったガイアーラの鎧はオチェアーノの剣の装備らしい。しかもバトルマスター用!」

 

「でも身に着けてないんじゃ意味ないじゃん」

「さすがのお兄ちゃんも、パーティの空気を読んでるんだよ。ね?」

 

 

 リーダーが山賊のような海賊で、生真面目なミニスカ賢者と遊び人のパーティである。

 そこへ一人だけ鎧姿はないだろう。

 

 

「…ま、そういう事にしてくれ。で、今回の新技だ。まだ体が興奮してるぜ!」

「いい武器手に入って良かったね、お兄ちゃん」

「大金はたいた価値はあったんだー、何より!」

 

「このギガブレードは、持つ者の力に比例して強力になる。でもその分、消耗も激しい」

 

「もっともっと体力付けないとな!」

「それで行くとやっぱ、それぞれの職業に適した装備にする事は重要だわね。ま、遊び人のアタシは置いといて?」

「それ言うと、サチの海賊帽はいいとして武器が合ってないよな」

 

 

 何せサチの剣は勇者姫の剣と呼ばれるものだ。

 

 

「それってさ~、やっぱサチは海賊じゃなくて別の道進むべきだったんじゃ?」

「リリ姉。それ以上は」

「何?それ以上って。何かあるの?」

「何もないよ」

「サチ、もういいんじゃない?アタシら、こんだけ仲も深まってるんだし」

 

 

 皆の料理を口に運ぶ手が止まる。

 

 

 黙ったままのサチを見てボシュが言う。

 

「無理に聞き出さなくていいだろ。言いたくない事の一つや二つ、誰にでもある」

 

 

 いつもサチの発言に心を軽くしてもらっているボシュ。

 借りは返すとばかりのコメントだ。

 

 

「なあ、それより作戦考えようぜ!俺の新技はかなり強烈だからな、驚いて腰抜かすなよ?」

「言いすぎ!腰なんて抜かさないし~」

「あ、そう言えばね!リリ姉、転んで敵を突き飛ばす技覚えたよ、ね!」

 

 

 それは本日たまたま道端でつまずいた事による発見であった。

 

 

「アイミーったら、それ言わなくていいヤツ。ボシュとの差が開き過ぎて恥ずかしいじゃん」

「えっ、あ、ゴメンっ」

「ま、いいよ。あとね、石投げの命中率も上がったよ。これで魔力封じられてもへっちゃら~」

「そうよ、遊び人は場合によっては頼りになるんだから。リリ姉、今後とも頼りにしてるよ?」

「場合によりけりだわねー」

 

 こんなやり取りに笑いが零れる。

 

 

「ジョニじい来なかったね」

「どっちみち、この店じゃ入れねーからちょうどいいじゃねえか」

 

「サチ、何か聞いてたりする?」

「ううん。連絡手段も持ってない」

「だよね~。分かってたけど聞いてみた。だって何かアンタ達、秘密抱えてそうなとこが似てるからさ~」

 

「確かに。あのジジイもただのジジイじゃねー事は確かだからな」

「それはそうだよ。姉さまのお師匠だものっ」

「そういう意味で言ったんじゃねーんだが」

 

 

 若干下がり気味だったサチのテンションが、ここで一気に上がった。

 

 

「もっともっと強くなって、早く姉さまのパーティと冒険できるようになる!皆、頑張ろ!」

「強くなるのは賛成だな」

「私も、もっともっと皆の役に立ちたい!」

「アタシは今んとこ傍観者で。んでもってスーパースターよ!待ってなさい?」

 

 

 こうして賑やかな夜は過ぎて行った。

 

 

 

・・・

 

 

 

 翌朝。エルフの森にてボシュ念願の魔物討伐が行われる。

 

 

「随分いるな、ザコ共、全滅させてやる!」

 

 

 気力体力フル満タンのボシュが先行で退治して行くも、魔物は続々と姿を現す。

 

 

「一気に出て来ていいんだぜ?ギガ空裂斬!」

「覚醒の炎!」

「私だって時には。ウインドースラーッシュ!」

「リリ姉のそれ久々に見た!落陽!」

 

 

 敵は足に重りを引きずるガイコツだったり、赤い手だったり、大盾を持つ魔人だったり様々だ。

 なかなかに数が多く、皆次第に体力が尽きて来る。

 

 

「真空破ー!」

「サチ、そんなのできたの?!スゴっ」

「じゃこれは?斧まつりー!」

「サチはいいよな、どっちも全体攻撃の技だ。俺のは単体だぜ、さみだれ斬り!くっそ、そろそろ限界か…」

 

「お兄ちゃん、あの赤い手嫌いだよね。あればっか狙ってる!」

「バカ。アイツは仲間を呼ぶ。先に始末しないと増えるだろ」

 

 

「やるじゃん、そこまで考えて攻撃してたなんて?」

「考えるだろそのくらい?ってかお前らまさか、何も考えてないのか?!」

 

 

「アタシは気持ち悪いの先に狙うー」

「私も!どうしても可愛いの後回しにしちゃう」

 

「か、カワイイだと?!どれが該当するか分からん…。サチ、それでいいのかよ?」

 

 

 最後の一撃を与え終えたサチが振り返る。

 

 

「私も可愛いの後回しだね。だって、仲間になってくれるかもしれないし!」

 

「だよね~!良かった、リーダーの許可いただきっ」

「だけど、仕掛けて来たら容赦しないで。そこは割り切ってね、二人とも」

「もちろん。おいたをする子はお仕置きだよ」

「どうやら今回はカワイイ子にはありつけそうもないけどね~」

 

 

 現われるのは槍を持つ二足歩行のイノシシやら、翼の生えたゴリラ、土気色の手ばかり。

 

 

「そっか。なら容赦しなくていいね。ざざん波、行くよ!え~い!」

 

 絶えず土から生まれ出ていた手が、前回同様に鉄砲水によって流されて消え去った。

 

 

 

 

 ようやく森には元の空気が戻って来る。

 

 

「あースッキリした。あの瘴気ってヤツは極力吸い込みたくないな。胸が悪くなる」

「全くだわ。でも新技登場せずで残~念」

「あれしたら俺、当分動けなくなっちまう」

「そうなの?そんなに体力使うんだ…」

 

「本当に最後の手段。そういう約束で教えた」

 

 オーラを放ちながらサチが語る。今やなぜそんな事を教えられるのか、などと問う者はない。

 

 

「少し休んだら、レチェア王女の所に行こう」

「そうだね。森を取り返したって伝えに行かないと」

 

「後は真犯人探しかー」

 

「どうせさっきの魔物共の仕業だ。解決したも同然。アイミーなら説得できる、やって来い!」

「そんな無責任にっ」

「それ案外行けるかも。王女の一番の悩みは森を奪われてる事だったみたいだし」

「だからって私が説得なんて冗談だよね?サチがいるのに!」

 

「冗談なんかじゃないよ。だって私今海賊だし。海賊の言葉なんて聞くと思う?あと他にここにいるのは…」

 

 

「バトルバカに遊び人」

 

 

「おい!何だよバトルバカって」

「えーそんな事言ってないよ、バトルマスターって言ったよー」

「ウソだ、ちゃんと聞いたぞ俺は!」

 

 棒読み口調でリリが訴え、さらに口論が白熱する。

 

 

「まあまあ二人とも!私頑張るから、ケンカしないでっ」

 

「お二人さん、そんな体力残ってるなら、マッテオの所に行ってそっちの誤解を解いて来てくれると嬉しいな」

「まさか二人でって事?」

「私達は一度王女様に会ってる。同じメンツが行った方がいいとなれば…」

 

 

 苦虫を嚙み潰したような顔で、リリとボシュがお互いを見る。

 

 

「俺は別にいいぜ。遊び人さんはどうせその辺で居眠り始めるだろうから、俺一人で行くさ」

「寝ないし!あ、でも転んでボシュを突き飛ばしちゃったらゴメン。先に謝っとくー」

「心配ない。避ける」

 

「はあ?女の子がつまずいてるのに避ける?ヒド~い、手くらい貸しなさいよっ」

「だってお前、わざとやる気だろ?手なんか貸すかっ」

 

 

 こんな言い合いを繰り広げながら、二人は村長宅へと消えて行った。

 

 

 

「何だかんだ言って二人で行ったね」

「だからやっぱり気が合ってるんじゃない?」

「ケンカするほど仲がいいって?そうかなぁ」

 

「リリ姉、兄妹がほしかったって言ってた。きっとボシュの事そんな感じに思ってるんじゃないかな」

「弟って?それなら、リリ姉は楽しんでるね。お兄ちゃん短気だし、すぐにムキになるから」

 

「だから私も、時々からかいたくなるっ」

 

 

 

 アイミーは兄を少しだけ哀れに思ってしまう。

 次からはもう少し優しく接しようと思うくらいに。

 

 

 こんな決意はすぐに崩れ去るであろうが?

 

 

 

 

 

 

 

 

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