旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第30話:壊されたほこら

 

 

 サチとアイミーが見事に様変わりした美しい森を進んで行く。

 

 

 若緑で溢れるその光景に、スミレ色がチラチラと見え隠れしているのに気づく。

 それはどうやらドレスの裾のようだ。

 

 

「サチも気づいた?あれってレチェア王女様かな」

「そうみたい。もう森から魔物がいなくなった事を察知したのね。さすが王女様」

「だからって一人でお散歩?お供の人も連れずになんて変だよ」

 

「う~ん…それもそうだ。よし、こっそり行ってみよう!」

 

 

 

 近づいて見れば、やはり王女は一人だ。

 

 斜め上を見ながらブツブツと言っている。

 

 

「だから!あのガキンチョの話はちゃんと聞いてやったじゃない。え?そうじゃない?じゃあ黙って聞いてなくても良かったワケ?もう、なら先にそう言ってよ!」

 

 

 王女の声色に怒気が混じり始めて、二人の耳にも会話の内容が届く。

 

 

「何だか言い合ってるみたい。でも誰もいないよね」

 

 アイミーのコメントに無言で頷いたサチ。注意深く周囲を観察する。

 とその時。

 

 

 

「ボヨ~~ン!」

 

 

 

 音もなく影が近づいたと思えば、それはジョニーであった。

 

「わあっ!…ビックリした、ジョニじい?いつからいたの」

 

 アイミーが声を気にして口を塞ぎながら驚くも、サチは反応もせず王女の近辺観察を続ける。

 

 

「妖精と会話しているようじゃな」

 

「やっぱりそうか。人間の私達には見えないのよね」

「え、妖精?それってティンカーベルみたいにキレイ?見たかったなぁ」

「…まあ、そういう事にしておこうかの」

 

「え。って事は…虫みたいな気持ち悪い系だったり?」

 

 

 アイミーが一人忙しなく表情を変える間も、サチの表情はやはり変わらない。

 

 

「ジョニじいが来たって事は、何か起こる?」

「そうやって人を魔の使いみたいに言わんでくれたまえ?」

「吉か凶かは教えられなくても分かるもの」

 

「どういう意味じゃい」

 

「ヤダ、ジョニじい、悪い知らせ?怖いよっ」

「安心せい、サチ殿もアイミー殿も、本当に頼もしくなられた。きっとやり遂げるのである」

 

 

 何を?と問う間もなく、ジョニーは来た時同様音もなく立ち去った。

 

 

「行っちゃった。結局何しに来たんだろ。ねえ、何を話してるのか、行ってみる?」

「ダメ。私達が行ったら、妖精は隠れてしまうわ」

「そっか…」

「お城で待たせてもらおう」

 

 

 こうして二人は改めて城に足を向けた。

 

 

 

 

 

 

 一方、村長宅にやって来たボシュとリリ。

 

 息子マッテオと対面し、無事話を済ませる事ができた。

 

 

「お恥ずかしい限りです…。今思えば変でしたね、あの森はもっと美しかったはず。まさか魔物に乗っ取られていたとは!怒りで周囲が見えていませんでした」

 

「しっかし。あれだけいた魔物に一度も遭遇しないなんて、ラッキーなヤツだな!」

「ってボシュ、言い方っ」

 

 マッテオは気分を害する事もなく、少々肩をすくめて笑う。

 

「全くです。それにエルフの王女が酷く僕を下に見るので、さらに怒りが倍増してしまって」

「仕方ないさ。相手は何百年も生きてるんだ」

「ですよね。見た目やら口調がアレなので」

「俺達は会ってないから何とも言えんが。アレとは?」

 

「アレって事は何?子供っぽいとか…」

 

 勝手に立派な王女様を想像していたリリは、少々ガッカリしてしまう。

 

 

「まあ、一言で言えば今時のギャル、でしょうか」

「ギャル?!想像の斜め上行ってたわ…」

「ここだけの話、僕は嫌いじゃないんですけど」

 

 

 こんなセリフを吐くマッテオに、リリは直感する。これはもしや恋の始まりかと。

 

 

「俺はうるさい女は苦手だな!」

「勇者様は硬派でいらっしゃるのですね」

「あのだから、俺は勇者じゃ…っ」

「そうなんですの、ウチの勇者は硬派で照れ屋ですの、オホホホ!」

 

 リリがボシュの主張を遮って大袈裟に返した。

 

 

「マッテオ、この方々とならば心強いじゃないか。例の件、お前から話してくれ」

「はい。もし誓いのほこらが壊された事が事実なら、村は大変な事になりますから!」

 

 

 

 マッテオの話によると、過去にこの村で大暴れした魔獣ゲリュオンを封印したほこらがあるらしい。

 そこには二本の牙のうちの一つが収められており、もう一本はエルフが同じくほこらに封印しているそうな。

 

 

「誰かが牙を奪ったかもって事?それ集めたら復活できるの?」

 

「はい。エルフの森が魔物に奪われていたのも気になります。もうすでに封印が解かれているやも…?確認に行こうにも、やはり恐ろしくて…」

「それでいい、自分の命が一番大事だ」

「勇者様にそう言っていただけると、心が軽くなります…!」

 

 

 ボシュはもう勇者を否定しなかった。

 

 

「よし!今から見に行くか」

「サチ達と合流してからの方がいいんじゃない?」

「いや。ほこら見に行くだけだろ、先に結果が分かった方が効率的だ」

 

「…そうね」

 

 この時リリは思った。ボシュはこんなに頼もしかっただろうかと。

 皆立派に成長しているのである。

 

 がしかし、自分はどうなのだろう?遊び人なぞしている自分は?

 

 

「どうかしたか?リリ姉」

「何でもなーい。そうと決まれば、マッテオさん、案内お願いしまーす!」

 

 

 

 

 こうして向かったその場所は、村の外れの林の中にあった。

 

 いや、正確に言えばなくなっていた。

 

 

「ない!確かにここにあったんです、石を積み上げたほこらが…っ」

 

「えぐられたような形跡があるね」

「この土の湿り気の感じだと、荒らされたのは最近だな」

「マズいですよ!これでエルフのほこらも壊されていたら…っ」

 

 マッテオの顔が真っ青になって行く。

 

 

 一方のボシュはワクワクが止まらない。

 

「そいつ、そんなに強いのか?腕が鳴るぜ!」

 

 

 

・・・

 

 

 

 エルフの城で王女の帰りを待っていたサチとアイミー。

 

 だが、レチェアがいつになっても戻らない。

 そこへ侍女がオドオドしながらやって来た。

 

 

「もしかしたらレチェア様は、誓いのほこらをお一人で確かめに行かれたのかもしれません」

「誓いのほこら?」

 

 

 ここで二人もゲリュオン封印の話を知る。

 

 

「サチ、王女様に何かあったのかも!どうする?」

「さっきの妖精と何か関係あるのかも…。よし、行こう!」

「万一に備えて、こちらからも戦える者を何人か同行させます。どうかレチェア様をお守りください!」

 

 

「「精一杯力を尽くします!」」

 

 

 

 

 

 

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