旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第33話:疑惑の王様

 

 

 麓に降りて来ると、眼前に立派な王国が広がっている。

 

 

「今までのとこより栄えてそうだな」

「こっちの町の方がいいお店ありそうじゃない?リリ姉」

「エルフの森にはなかったからね~」

 

「衣裳替えはいいって言ってなかったか?」

 

 

「あの時は本当にそう思ったよ。でも時間があるならしたいな。だってスーパースターよ?」

「スターかぁ。手の届かない存在にならないでね、リリ姉?」

「約束はできない。な~んてね!」

「もう~っ」

 

 キャハハッっとリリの高い笑い声が辺りに響く。

 

 

「ったく。お前らがこうやって騒いでないと落ち着かないってのが困るよな~。俺も大概毒されたな」

「私達に染まってくれてありがとう、ボシュ」

 

 ボシュを見てウインクを飛ばすサチ。

 

 たちまちボシュの顔が真っ赤に染まる。

 

 

「威圧じゃなくて、魅了って特徴があれば良かったなぁ」

「そりゃお前、完全に海賊じゃねーよ」

「だね、あはは!」

「大体、海賊って雰囲気ねーんだよな、お前。何で選んだ?」

 

「たまたまこのターバン貰ったのもあるけど、逞しくなりたかったから、かな」

 

「ふうーん。女なのにか?」

 

「女だからこそよ。きっとボシュには分からない」

「ああ。分かんねーな」

 

 

 少し先を歩いていたサチが振り返って、今度はボシュの手を掴む。

 

「さ、王様に会いに行こう!困った事ないか聞かないとね。勇者様?」

「なっ、手、離せっ!あと、俺は勇者じゃねー!」

 

 

 こんな光景を後ろから見ていた二人は…。

 

 

「あら~?何だかいい雰囲気っ、サチ、将来アイミーのお姉さんになるかもよ!」

「サチがお姉さん、ステキ!応援しちゃおうかな。でもリリ姉、いいの?」

「何でアタシに聞くのさ」

 

「だって…」

 

「アタシはスライム一筋でーす」

「それって本気だったの?!」

「ほら、早く行くよアイミー!」

 

「待ってよ~」

 

 

 

 

 いつもの構図で距離が縮まり、一行は揃って王国の湖畔にそびえる城に辿り着いた。

 

 

「本当にここであってるのか?妖精がいるようには見えない荘厳な佇まいだが」

「レチェア王女様が、ここに妖精が行くって言ってたって。また何かをしに来たのかも」

「そうだろうね。妖精のお城にしては大きすぎる!」

 

「リリ姉、真面目な顔でその当たり前すぎる答え、ちょっと笑えるっ」

「いや。分かんないぜ?妖精でも巨大なヤツもいるかも」

 

「ヤダぁ~、夢が壊れるっ」

「それだと妖怪だわね。もはや敵。ってか、妖精って敵じゃないの?サチ」

 

「人間に悪さをすれば敵。しなければ違う」

 

「もっともだな!」

 

 

 

 

 今度の城はたくさんの兵が門前に並んでいる。

 

 

「そうそう、これが普通だよな。ちゃんとしてるぜ」

「それだとエルフがちゃんとしてないみたいよ?」

 

「二人とも!静かに」

 

 

 すでに前方にてサチが門番と話をつけている。

 

 

 

「皆、入っていいって!」

「あっさり許可下りたな」

 

「勇者様ご一行なら大歓迎、って」

 

「お、おい!まさか勇者だって名乗ったのか?!」

「名乗ってないよ。勝手に向こうが」

「いつものパターンだわね」

「だね」

 

 

 中に入ると、兵達が一斉にひれ伏す。王の間までビップ待遇で案内された。

 

 

「これはこれは!魔獣ゲリュオンを倒した勇者様ご一行にお会いできるとは光栄だ!ようこそ我が王国へ。これから歓迎の宴を開こうぞ!」

 

 グレーのヒゲを蓄えた大柄な王様はアルマンと名乗った。

 

 

 一行も順に挨拶を終えて、あれよあれよという間に宴会が始まる。

 

 

「いいのかな、こんな接待受けちゃって」

「そうだよ、俺ニセモン勇者だぜ?詐欺罪とかにならないか?」

「分かんないよ…でもここまで来て帰りますって言えないよ」

 

 

 ソワソワする3人とは相反し、サチは堂々と振る舞っている。

 

「皆どうしたの?もっとしゃんとして。魔物を倒したのは嘘じゃない。頼りになるって思われないと何も始まらないよ?」

 

 

「だよな!俺達は魔物退治に来たんだし。勇者だろうがそうじゃなかろうが関係ない」

 

「アタシはスーパースターよ!オホホホ!もっとスポットライト持って来て!」

「リリ姉、それちょっと違う気が…」

「さあアイミー。食べよう?大丈夫、毒は入ってないみたい」

 

「それは心配してないけど?!」

 

 

 

 戸惑いはあれど、豪華な料理を前にどうでもよくなる。

 

 気づけば皆普通に楽しんでいた。

 

 

 

 

「あ~腹いっぱい!満足満足」

「私もちょっと食べ過ぎちゃった」

「アタシもー。ここにいたら太りそう」

 

「同感…」

 

 最後につぶやきつつ、ふと王様の方に目を向けたアイミー。

 

 

 目が合ったのに王様は不自然に目を逸らした。

 

 

「どうしたの?アイミー。お腹でも痛い?」

「ううん。何でもない」

 

 アイミーの視線の先を追ったリリだが。

 そこにはアルマン王が気前よく酒をあおる姿があるばかりだ。

 

 

「どうかした?」

「何でも。王様がちょっとばかり気になっただけ」

「何かあったのか?」

 

 

 そんな会話が耳に入ったかは定かではないが、王様が唐突に立ち上がった。

 

 そして一直線にこちらにやって来る。

 

 

「不届き者らめ。即刻地下牢にぶち込め!」

 

「はあ?何だよそれ。俺ら今何かしたか?」

「歯向かう権利などお前達にはない」

「言ってる意味が分からんが、そっちがその気なら容赦しないぜ」

 

 

「ボシュ待って。ここは穏便に」

「何でだよ、いきなりこんな扱いされて黙ってられるか!」

 

「いいから。言われた通りにしよう」

 

 サチは逸るボシュをなだめてどうにか剣を収めさせた。

 

 

 

 

 

 そして一行は歓迎ムードから一転、牢屋行きとなる。

 

 

「何かゾッとする…ここ地下ってより洞窟だわね。奥に何かいそうっ」

 

「一体どういう事なんだろう。王様、最初の時と全然言ってる事が違う」

「ねー。まさかの二重人格?勘弁して!サチ、どうする?」

「見張りも大した事なさそうだし、突き破って脱出すればいい」

「お兄ちゃん!そうやってすぐに乱暴な手段に出ようとしないで」

 

「乱暴ってお前な、俺ら十分手荒な扱いされてんだぞ?」

 

 

「皆、静かに。気配がする」

「魔物か?」

「大きくはないみたいだけど…」

 

「けど?」

「場所も場所だし、最小限で退治した方がいいね」

 

 ひそひそと話すサチ。

 

 

 徐々に暗がりに目が慣れた3人にもようやくその姿が確認できる。

 

 それは小さな可愛らしいイカのような魔物だ。

 

 

「ヤバい、ちょっとカワイイ…っ」

 

 

 気づいた見張りの兵達が逃げ出すのは早かった。

 

 

「手慣れてんなー。さてはここに住み着いてる魔物か。あれで見張り務まんのか?」

「さあ…」

「リリ姉に情が湧かないうちにやっつけないと。ここは私がやる。斧まつりー!」

 

 

 クルクルと器用に斧を振り回し始めたサチ。

 

 牢の格子ごと弾き飛ばし、あっさり魔物を一掃。

 

 

「ああ…一瞬だった。もっと見たかった!」

「そんな事より、あっちの牢に誰かいるみたい!」

 

 

 

「僕はアルマンの息子、チョザレです。魔物を退治していただき感謝します」

 

 

 

「ええ?!息子っていうと王子様だよね?どうしてこんな所に?」

 

 慌ててそちらに移動する面々。

 

「って、鍵掛かってないぜ?いくらでも逃げられんじゃねーか」

「さすがに兵達も、王子の僕を閉じ込める事ができなかったようです」

「どういう事ですか?」

 

 

 王子の話によれば、王様の言動がおかしくなったのはある場所に行ってからだという。

 

 

「そうすると、その最果ての塔ってとこに行けば何か分かる?」

「あるいは。ですが行ってみたくても、あそこは魔物の巣窟で有名で非常に危険です」

「それなら問題ない。俺達が魔物を始末してやる」

 

「本当ですか?それは心強い!でしたら早速向かいましょう」

 

 

 

 チョザレと一行は、あっさりと牢屋を抜け出したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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