一行は王子の案内で城の秘密ルートを通り、王様に気づかれず外に出た。
道中、詳しい経緯が語られる。
サチ達同様に王子もある時、何の罪もなく牢屋に入れられたとの事。
それは誕生祝いの直後だったとか。
「それって俺達の時と似てるな。宴会直後だ」
「はい。そこに鍵を解くヒントがあるのでしょうか…」
「実の父親にそんな仕打ちをされて、つらかったですよね…」
「本当は優しい父なのです。明るくて頼もしくて。なぜこんな事をするのか分かりません」
「お母様は?」
「母は僕が生まれてすぐ亡くなっています」
リリとアイミーは感情移入して今にも泣きそうだ。
「何か俺達、いい時に来たな。サチの勘は侮れない」
「でっしょ!アタシの言った通りっ」
「何でサチじゃなくてお前が自慢げなんだよ」
「いいじゃない。ね、サチ?」
「父が子に冷たく当たるのは、自分の体裁を守るため。立場が立場なだけに、それを責める事はできないけれど…」
「もしかして、サチもお父さんに何かされたの?」
「いいえ。何も。どちらかというと、私が、かな」
意味深な発言に、その場がシンとなる。誰も突っ込めない空気だ。
「ゴメン、変な話したね。私がダメな娘ってだけよ。きっとチョザレさんのお父さんは、何か事情があるのよ。だって、いいお父さんなんでしょ?」
「そう信じたいですが…。魔物に憑りつかれでもしたのでしょうか」
「ならなおの事、魔物ぶっ潰さないとな!」
こうして到着した最果ての塔。
そこを囲むように魔物が周囲に結集している。
「あれは源氏カブトね」
「前に見た爆弾アリに似てるな」
「今のボシュなら楽勝だよ。得意技でよろしく!」
「任せろ!いざ、ギガ空裂斬!」
サチの言い分通り、ものの見事に一掃。
「凄い…ここまでの力とは。頼もしい限りです!さあ、塔の中に入ってみましょう」
進んで行くと、上に上るごとに魔物が配置されている。
大盾を持った魔人やら真っ赤な血に染まった刀、腐ったトマトまでいる。
主に赤系が出そろい異様な光景だが、それもボシュとサチで瞬殺だ。
そして辿り着いた最上階は静かであった。
「誰もいないね。留守かな?」
「リリ姉、留守って…」
そこにはただ巨大な石像がドンと鎮座しているのみ。
「微動だにしないが、これ魔物じゃないのか?」
「違うみたい」
「ならやっぱりリリ姉が言うように留守なんだね」
「仕方ありません、出直しましょう」
だがしかし、城に戻ってみれば王様がいない。
側近が慌てた様子で語る。
「チョザレ様が牢からいなくなったと知るや、血相を変えてどちらかへ行かれたのです。警護の者は連れて行ったようですが、この私を残して!」
「僕がどこへ向かったかは知らないはず。一体どこへ…」
「最近ご様子も変ですし、心配で心配で!」
「私達、探してきます」
「助かります、僕も行きます!」
「お前はここに残った方がいい。王様が戻って来るかもしれない。また入れ違いになるぞ?」
「…ああ、そうですよね。ではそうします」
「お兄ちゃんカッコいいっ」
「全く。アンタの兄貴って頭イイよね」
「そうだよ。文武両道に育てるってウチの方針だもん」
「アイミーもしっかりしてるもんねー。アタシは奔放に育ったから、今こんなカンジー」
「リリ姉、アイミー、どうする?王子様と残ってもいいよ」
「もち行くよ」
「私も行く」
「分かった。じゃあ皆で行こう」
4人は城を出て再び森の中へ。
「で、何で森に?」
「王様が町に行くとは思えない。もしかしたら最果ての塔に行ったのかなって」
「あの話だけじゃ、他に思い浮かぶ場所ないもんねぇ」
「あそこは魔物の巣窟なのに、危険だよ!」
「だから護衛だけは連れてったのか。よし、塔に戻るぞ」
急いで戻るも王の姿はなかった。
「困ったね。一体どこへ行ったやら」
「また行き違いになったのかな…」
「来た意味ねーってか!ついでに森の魔物退治でもして行こうぜ」
「うん。…」
「サチ、どうしたの?」
「さっきから誰かに見られてるような気が」
「え?まさか魔物がいる!?」
アイミーが辺りをキョロキョロするも、何もいない。
「魔物じゃないと思う。取りあえずお城に戻ろう。魔物退治しながらね」
「よっしゃ!発散するぜ!」
「血がたぎってるね~、若者よ」
「今戦えば“怒り”が発動しそうなんだ」
「そりゃ腹いせってヤツじゃん。それも含まれるの?」
「さあ」
ボシュは率先して先頭を行く。そしてお待ちかねの魔物が現れた。
「おっ、大盾魔人野郎か。そんじゃ早速。ギガ空裂斬!」
「あれ?今誰かに見られてたような…」
「ほら、次が来るよ!今度はリリ姉やってみて、スーパースターの技、見たいわ」
「えっ、ちょっと待ってよ、スーパースターの技って何?!きゃっ、腐ったトマト嫌っ、デュアルカッター!」
襲って来たのはお化けトマト。
突如手にしたブーメランでリリが戦う。
ブーメランは命中率抜群で、トマトを潰し戻って来た。
「ヤダぁ。血が付いたみたいになっちゃった」
「リリ姉、カッコいい技だね!ブーメランなんて持ってたんだ」
「分かんないけど、気づいたらあった。サチの斧みたいに」
「懐に入れるにはそっちの方が安全だな!」
一息ついたのも束の間、さらに森の奥から声が響く。
「助けてくれーっ!」
声の方を一斉に振り返る面々。
「「王様の声!」」
「行くぞ!」
急いで駆け付けると、2名の護衛は倒され王様だけが尻もちを付いて震えている。
その目の前には3体の魔物。
シルバーの悪魔2体に淡い赤系の悪魔が1体だ。
「ヘルビーストにホラービースト!」
「体が痺れて動けんのだ…っ」
「見るからに悪魔っ、怖くて腰抜けても変じゃないですよ、強そうな敵だもの」
「そう、あいつらは強いよ。試練突破のために持ってこいだね」
「おう!大歓迎だぜ。アイミー、いやリリ姉、王様を守っててくれ」
「オーケー!アイミー、やまびこ発動、祈ってるよ」
いつもはアイミーが後方支援に回るが、今回は別だ。
「怖いけど、私頑張るっ」
「で、あっちの護衛は殺されたのか?」
「多分違う。あいつら、魔力で混乱や麻痺攻撃をしてくるの。だから二人とも、ちゃんと身を守りながら戦って!」
息ピッタリで了解、と二人の声が揃った。さすがは兄妹である。
今までのようには行かなかったが、何ターンか技を繰り返して敵を倒す事に成功。
見事3人ともノルマ達成を果たす事ができた。
「今麻痺を解く薬草をお出ししますね、護衛の方、すぐに目を覚まされます。さっきは腰が抜けたなんて言ってゴメンなさいっ」
「いやいや。何から何まで申し訳ない。あんな態度を取ったというのに助けてくださり…」
「やっぱ何かあんだな。話してもらおうか?」
「それより息子は!一緒ではないのですか?チョザレは無事ですか!」
王は周辺に目をやりながら慌てた様子で言う。
「王子様はお城で待機しています。無事ですよ」
「良かった…」
「それで、王子様と私達を牢に閉じ込めた理由は何なんですか?」
子が父を想うように父も子を想っている。
時には悲しい事に、その想いが思わぬ不幸を呼ぶ事もある。