旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第34話:父への想い

 

 

 一行は王子の案内で城の秘密ルートを通り、王様に気づかれず外に出た。

 

 

 道中、詳しい経緯が語られる。

 

 サチ達同様に王子もある時、何の罪もなく牢屋に入れられたとの事。

 それは誕生祝いの直後だったとか。

 

 

「それって俺達の時と似てるな。宴会直後だ」

「はい。そこに鍵を解くヒントがあるのでしょうか…」

「実の父親にそんな仕打ちをされて、つらかったですよね…」

 

「本当は優しい父なのです。明るくて頼もしくて。なぜこんな事をするのか分かりません」

 

 

「お母様は?」

「母は僕が生まれてすぐ亡くなっています」

 

 

 リリとアイミーは感情移入して今にも泣きそうだ。

 

 

「何か俺達、いい時に来たな。サチの勘は侮れない」

「でっしょ!アタシの言った通りっ」

「何でサチじゃなくてお前が自慢げなんだよ」

 

「いいじゃない。ね、サチ?」

 

 

「父が子に冷たく当たるのは、自分の体裁を守るため。立場が立場なだけに、それを責める事はできないけれど…」

「もしかして、サチもお父さんに何かされたの?」

 

「いいえ。何も。どちらかというと、私が、かな」

 

 意味深な発言に、その場がシンとなる。誰も突っ込めない空気だ。

 

 

「ゴメン、変な話したね。私がダメな娘ってだけよ。きっとチョザレさんのお父さんは、何か事情があるのよ。だって、いいお父さんなんでしょ?」

「そう信じたいですが…。魔物に憑りつかれでもしたのでしょうか」

 

「ならなおの事、魔物ぶっ潰さないとな!」

 

 

 

 

 こうして到着した最果ての塔。

 

 そこを囲むように魔物が周囲に結集している。

 

 

「あれは源氏カブトね」

「前に見た爆弾アリに似てるな」

「今のボシュなら楽勝だよ。得意技でよろしく!」

 

 

「任せろ!いざ、ギガ空裂斬!」

 

 

 サチの言い分通り、ものの見事に一掃。

 

 

「凄い…ここまでの力とは。頼もしい限りです!さあ、塔の中に入ってみましょう」

 

 

 

 進んで行くと、上に上るごとに魔物が配置されている。

 大盾を持った魔人やら真っ赤な血に染まった刀、腐ったトマトまでいる。

 

 主に赤系が出そろい異様な光景だが、それもボシュとサチで瞬殺だ。

 

 

 

 そして辿り着いた最上階は静かであった。

 

 

「誰もいないね。留守かな?」

「リリ姉、留守って…」

 

 

 そこにはただ巨大な石像がドンと鎮座しているのみ。

 

 

「微動だにしないが、これ魔物じゃないのか?」

「違うみたい」

「ならやっぱりリリ姉が言うように留守なんだね」

 

「仕方ありません、出直しましょう」

 

 

 

 

 だがしかし、城に戻ってみれば王様がいない。

 

 

 側近が慌てた様子で語る。

 

「チョザレ様が牢からいなくなったと知るや、血相を変えてどちらかへ行かれたのです。警護の者は連れて行ったようですが、この私を残して!」

「僕がどこへ向かったかは知らないはず。一体どこへ…」

 

「最近ご様子も変ですし、心配で心配で!」

 

 

「私達、探してきます」

「助かります、僕も行きます!」

「お前はここに残った方がいい。王様が戻って来るかもしれない。また入れ違いになるぞ?」

 

「…ああ、そうですよね。ではそうします」

 

 

「お兄ちゃんカッコいいっ」

「全く。アンタの兄貴って頭イイよね」

「そうだよ。文武両道に育てるってウチの方針だもん」

「アイミーもしっかりしてるもんねー。アタシは奔放に育ったから、今こんなカンジー」

 

 

「リリ姉、アイミー、どうする?王子様と残ってもいいよ」

「もち行くよ」

「私も行く」

 

「分かった。じゃあ皆で行こう」

 

 

 

 

 

 4人は城を出て再び森の中へ。

 

 

「で、何で森に?」

 

「王様が町に行くとは思えない。もしかしたら最果ての塔に行ったのかなって」

「あの話だけじゃ、他に思い浮かぶ場所ないもんねぇ」

「あそこは魔物の巣窟なのに、危険だよ!」

 

「だから護衛だけは連れてったのか。よし、塔に戻るぞ」

 

 

 

 急いで戻るも王の姿はなかった。

 

 

 

「困ったね。一体どこへ行ったやら」

「また行き違いになったのかな…」

「来た意味ねーってか!ついでに森の魔物退治でもして行こうぜ」

 

「うん。…」

 

 

「サチ、どうしたの?」

「さっきから誰かに見られてるような気が」

「え?まさか魔物がいる!?」

 

 アイミーが辺りをキョロキョロするも、何もいない。

 

 

「魔物じゃないと思う。取りあえずお城に戻ろう。魔物退治しながらね」

「よっしゃ!発散するぜ!」

「血がたぎってるね~、若者よ」

「今戦えば“怒り”が発動しそうなんだ」

 

「そりゃ腹いせってヤツじゃん。それも含まれるの?」

「さあ」

 

 

 ボシュは率先して先頭を行く。そしてお待ちかねの魔物が現れた。

 

 

「おっ、大盾魔人野郎か。そんじゃ早速。ギガ空裂斬!」

 

 

「あれ?今誰かに見られてたような…」

「ほら、次が来るよ!今度はリリ姉やってみて、スーパースターの技、見たいわ」

 

「えっ、ちょっと待ってよ、スーパースターの技って何?!きゃっ、腐ったトマト嫌っ、デュアルカッター!」

 

 襲って来たのはお化けトマト。

 突如手にしたブーメランでリリが戦う。

 

 

 ブーメランは命中率抜群で、トマトを潰し戻って来た。

 

 

「ヤダぁ。血が付いたみたいになっちゃった」

 

「リリ姉、カッコいい技だね!ブーメランなんて持ってたんだ」

「分かんないけど、気づいたらあった。サチの斧みたいに」

「懐に入れるにはそっちの方が安全だな!」

 

 

 

 一息ついたのも束の間、さらに森の奥から声が響く。

 

 

「助けてくれーっ!」

 

 

 声の方を一斉に振り返る面々。

 

「「王様の声!」」

「行くぞ!」

 

 

 

 急いで駆け付けると、2名の護衛は倒され王様だけが尻もちを付いて震えている。

 その目の前には3体の魔物。

 シルバーの悪魔2体に淡い赤系の悪魔が1体だ。

 

 

「ヘルビーストにホラービースト!」

 

 

「体が痺れて動けんのだ…っ」

 

「見るからに悪魔っ、怖くて腰抜けても変じゃないですよ、強そうな敵だもの」

「そう、あいつらは強いよ。試練突破のために持ってこいだね」

「おう!大歓迎だぜ。アイミー、いやリリ姉、王様を守っててくれ」

「オーケー!アイミー、やまびこ発動、祈ってるよ」

 

 

 いつもはアイミーが後方支援に回るが、今回は別だ。

 

「怖いけど、私頑張るっ」

 

 

「で、あっちの護衛は殺されたのか?」

「多分違う。あいつら、魔力で混乱や麻痺攻撃をしてくるの。だから二人とも、ちゃんと身を守りながら戦って!」

 

 息ピッタリで了解、と二人の声が揃った。さすがは兄妹である。

 

 

 

 今までのようには行かなかったが、何ターンか技を繰り返して敵を倒す事に成功。

 

 見事3人ともノルマ達成を果たす事ができた。

 

 

「今麻痺を解く薬草をお出ししますね、護衛の方、すぐに目を覚まされます。さっきは腰が抜けたなんて言ってゴメンなさいっ」

「いやいや。何から何まで申し訳ない。あんな態度を取ったというのに助けてくださり…」

「やっぱ何かあんだな。話してもらおうか?」

 

 

「それより息子は!一緒ではないのですか?チョザレは無事ですか!」

 

 王は周辺に目をやりながら慌てた様子で言う。

 

 

「王子様はお城で待機しています。無事ですよ」

「良かった…」

 

「それで、王子様と私達を牢に閉じ込めた理由は何なんですか?」

 

 

 

 

 子が父を想うように父も子を想っている。

 

 時には悲しい事に、その想いが思わぬ不幸を呼ぶ事もある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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