魔物の消え去った城はしかし、酷い有様だ。
「アイミー、凄いじゃないか!何だよ今の?初めてだよな、いつの間に習得した?」
「ホント!追撃レインボーって何?その杖って虹も出せるんだね。さすが雨雲なだけあるわ」
「って、感心するのそこかよ…」
「私、猛烈に頭に来てた。それで、体が勝手に」
「強烈な技習得したね、アイミー。凄いよ」
「えへへ…っ」
一行が喜んでいる中で、王様は未だ魔物の姿のままの息子を抱き上げて涙を流している。
「王様かわいそう。何か手はないのかな…」
アイミーがつぶやいた時、それに答えるようにどこからか声が響いた。
『えっとー。注目~って、見えてないか!人間に戻す方法、知ってるんですケド』
「この声よ、妖精さん!やっぱりいたのね!」
「ウソ、これが?アタシにも聞こえたっ、ヤっバ」
「うろたえるな、幻聴かも知れな…」
「妖精さん!その方法を教えてください!」
アイミーがボシュの言葉を遮って何もない空間に話しかける。
『どうしよっかな~』
返された返事に幻聴説を引っ込めたボシュだが、ここぞとばかりに突っ込む。
「知ってるんだったら、あのガイコツが出て来る前に戻しとけよな」
『それアタシが殺されるヤツ!バカなの?』
「魔物には妖精の姿が見えるから」
「あー、それな」
「お兄ちゃん、今バカって言われたのに怒らなかった。大人になったねぇ」
「感心するとこそこかよっ。サチを見習っただけだ。妖精も魔物も似たようなモンだろ」
『失礼なんですケドっ!全然違います、プンプン!ムカつく事言うとマジで教えてあーげない』
「待って待って!美しい妖精さ~ん、お願~い」
リリが優雅にクルリと一回転してお辞儀する。
一行には見えていないが、妖精もつられて空中でクルリと回転。
そしてご機嫌も一転。
『どうして美しいって分かったワケ?アタシってば見えなくてもオーラ放ちまくり?キャッ』
「何となくリリ姉とキャラ被ってねえか?」
「気のせいっしょ。それで妖精さん、どうやるの?」
『こうやるの!』
上から金の粉が降って来た。
王子の上に降り積もる金粉。その量は半端ない。
「降らせすぎじゃねー?」
「どうだろう」
そして王子が金粉に埋まる。
「チョザレ!」
「ぶはっ!苦しいっ、ゲホゲホ…っ」
金粉を巻き上げて姿を見せたのは、人間に戻ったチョザレ王子であった。
王が熱く息子を抱きしめ、何度も何度も謝る。
「話は聞いていました。父さん、もういいんです。悪いのは全て魔物なんですから。勇者様方、本当にお世話になりました」
こうして王様の悩みは解消、親子仲良く城の修復に勤しんだそうな。
今度こその盛大な宴が開かれてまたもや満腹になった一行は、早々と次なる旅に出る事にした。
・・・
「いつまででもいてくれって、あそこにいたら太っちゃうってば」
「私手遅れかも。少し太ったみたい。スカートきつくて…」
「えっ、アイミーってばマジ?ワンサイズ上げなきゃだね」
「うん…何か買って行こうかなぁ。でも寄り道はよくないよね」
「心配しないで。実は私もキツいの。次の町でお店見てみよう!」
「やったラッキー!便乗して何か買っちゃお♪」
そんな長閑な空気に魔物の気配が混じる。
「何ヤツ!俺が相手だ!」
「ボヨヨ~~ン。相手は不要であるっ、ようやく追いついたのである」
「ジョニじい!」
「小耳に挟んだのじゃが、スカートが入用とか」
「地獄耳だな、エロジジイ」
「そうなの。この辺にいいお店ない?」
「おぬしらもダーマの試練を受けている最中と見たが。進ちょく具合はいかがかの?」
「どうして分かったの?」
「ダーマ神殿にはワシも行っておったからのー」
「魔物の分際で何しに行くんだ?」
「お兄ちゃんっ」
「よいよい。ちょうどドラちんパーティも受けておっての。何かと助言をしていたら遅くなったのである」
「えっ、姉さまも試練受けてるの!同じタイミングなんて嬉しすぎっ。やっぱり私と姉さまは心が通じ合っているのねっ…うう」
陶酔した表情で両手を胸の前で組み天を仰ぐサチを、面々は慣れた様子であしらう。
「良かったねー」
「なー」
「うんうん」
「で、ジジイよ。助言って?」
「サチ殿とアイミー殿には教えよう」
「俺は?」
「はて。である」
ボシュが歯噛みする。ここは上辺だけでも取り繕うべきと判断。
「ジョニーじいさん。俺はバトルマスターを極めたい。どんな試練も受けて立つ。教えてくれないか」
「ボシュが初めて名前で呼んだ!マジなのね」
「いいえ。私達は自分の力で乗り越えてみせる。ジョニじいは見守っていて」
「おお…何という謙虚さと意志の固さじゃ!さすがはワシの見込んだ勇者姫」
ジョニーの最後の一言には当然疑問が湧く。
「「勇者姫?」」
「あっ!ほら、見た目そんな感じだからでしょ、ねえジョニじい?」
「これは失敬。今は立派な海賊であったのー」
「そうよ!海賊でしょ!も~ビックリ発言~」
「ホント、マジでビックリした」
「でもサチって、どこかそんな雰囲気あるよね」
「ね~。やっぱオーラのお陰?」
未だにサチからはオーラが立ち昇る。
「そうじゃ。せっかく海賊になったのなら、それなりの武器を持たんと試練も先に進まん。アイミー殿のスカートも買わねばならんし、これから店に行くのであるっ!」
一人完結して、ジョニーは方向転換。
先頭に立ってボヨンボヨンと進み出した。
「何か分かんねーけど、店、案内してくれるみたいだぜ?」
「行こう!」
「行く!待ってジョニじい、姉さまの事教えて!元気だった?私の事何か言ってなかった?」
一番乗りでジョニーの横に陣取ったサチが質問攻めにしている。
それを眺めながら3人が語る。
「始まったな」
「ホ~ント、姉さま一筋!ってカンジ。リリ姉ちょっぴりヤキモチ~」
「だけどジョニじいって、本当に何でも知ってるね」
「全く。ダーマの試練て人間が受けるヤツだろ?謎深まる、だな」
「ドラちんさんなら何か知ってるのかな」
「サチよりアイツと付き合い長そうだし、何かしらは知ってんだろ。けど俺は聞けないなー」
「何か怖いもんねぇ、あの人」
たった一度しか会っていない3人だが、あの時の事は忘れもしない。
クールビューティーすぎるあの人物を、サチがあれほど慕う理由は何なのか。
「ほら、人は見かけによらないって言うじゃない」
「ま、惚れちまったモンは仕方ね~よな」
「そうそう。理由なんてないのよ。愛には!」
「何か違う話になってない?」