旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

38 / 72
第37話:スーパースター誕生

 

 

 そんなこんなで峠一つ越えた先の町までやって来る。

 そこはなかなかの賑わいであった。

 

 

「いい感じの町ね!魔物の気配も感じないし」

「ここはまだ汚されておらん貴重な町じゃ」

「ならジジ…ジョニーじいさんがいたらマズくないか?」

 

「まあ…そうとも言えるのー」

「ジョニじいはいいのよ。ねえ、姉さまにいつ会えそう?」

 

 珍しくサチの方がジョニーにベッタリだ。

 ジェネラルのマントを掴んで離さないほどに!

 

 

「積極的なサチ殿も魅力的じゃのぉ。ポヨン」

 

 

「ぐぐ…ここは辛抱っ」

 

 エロジジイが!と叫びそうになる口を塞ぐボシュであった。

 

 

 

 

 

 店が並ぶ通りに来ると、女性陣の目が輝き始める。

 

「いい!ここ最近で一番の品揃え!ここならいいの見つかるんじゃない?アイミー」

「うん!私、もっと賢者らしい服がいいな」

「アタシもスターに相応しい格好がいいんだけど」

「それはやめとけ。悪目立ちするぞ?」

 

「私に海賊の装備似合うのかな…」

 

 またも珍しくサチが不安そうだ。

 

 

「何でも着こなすサチが、何言ってる?ほら、行って来いよ!」

 

 ボシュがサチを鼓舞する。が、共に店に入ろうとはしなかった。

 

 

「お兄ちゃん?一緒に来てよ」

 

「俺はいいや。別にほしいもんないし。ちょっとその辺ぶらついて来る」

「迷子にならないでね~」

「なるかよっ!」

 

 

 

 

 しばらくして、リリも抜かりなく下衣をゲット後に一足先に店を出る。

 

 マント付きの白いタイツスタイルとなったリリ。

 自慢の美脚を惜しげもなく周囲に見せつけながら通りを闊歩する。

 

 

 

「そこのお嬢さん、ショーに出てる子?」

 

 

「そう見える?」

「なんて美しい…サインくれ!」

 

 

 たちまち人だかりができてしまった。

 

 

「アタシってば罪な女っ。皆さ~ん、ショータイムはこれからよ?」

 

 キツネ耳のカチューシャを装着したリリ。

 広場の中心に立ち、観客の前でお得意のダンスを披露した。

 たちまちその場は拍手喝采に包まれ、さらに客が集まる。

 

 

「ヤバい最高っ!久々の感覚~、超ノッて来たわ」

 

 

 いつの間にかリリの手には小型のハープが。

 ライラック色で貝殻の装飾が施されているそれは、とても美しくリリに似合いであった。

 それをつま弾きながら歌い、そして舞う。

 

 

 

 

 

 一方、買い物を終えたサチとアイミー。

 

 店を出ると、どこからかリリの歌声が聞こえてくる。

 

 

「これって、リリ姉の声だよね」

「歌ってる?!何で?!」

 

「何か楽しそうっ、行ってみよう!」

「待ってサチ、その海賊の装いで行く気?」

「大丈夫、この短剣は隠しとくから」

 

「そういう問題じゃなくてーっ」

 

 

 アイミーは薄い水色の模様の入ったツーピース。

 今回はロングスカートに戻した。ツインテールの髪にリボンが結ばれている。

 

 そしてサチは赤いマント付きの上衣に武器の収納が可能なパンツルックの下衣だ。

 水竜の短剣という武器を新たに携えている。

 これは全てジョニーの見立てである。

 

 

 

 声が聞こえる方角に進むと、ちょうどリリがショーを終えたところだった。

 

 

「あ!サチ、アイミー!もしかして見てくれてた?」

 

「どうしてこんな事に?ビックリなんだけど!」

「とってもステキだった、さすがスーパースターだね、リリ姉!輝いてるよ」

「もっと言って~」

 

 

 興奮冷めやらぬ広場では、まだあちこちから指笛やら歓声が聞こえる。

 

 

「その持ってるの、どうしたの?いつものブーメランじゃないね」

「それがさー、歌い出した辺りでいきなり空から降って来て?適当に触ったらいい感じで音が鳴ったので使わせてもらった!」

 

 

「それはクレセントムーンという武器じゃな。スーパースターの得意武器である」

 

 どこからか現われたジョニーが解説する。

 

 

「これ武器なの?!どうやって使う訳?」

「敵を前にすれば、今のように自然と体が動くのである!」

 

「…そんなもの?」

「アイミー、ここは深く考えない事」

「そうだね。サチのそういう割り切った考え、私も見習わなきゃ!」

 

 

「それよりアイミーもサチもステキになったじゃん!ちゃんと賢者様と海賊に見えるよ。これも試練が順調な証拠かな?」

「である!着々と進んでいるのである。こりゃドラちんも、うかうかしておれんぞーい」

 

「そんな事ない。姉さまのパーティは皆すっごく強いんだから楽勝よ?」

 

 

「個々が強いだけではダメなのじゃ。チームワークというものが、あやつのパーティは皆無じゃからのー」

 

「その点なら、私達はバッチリだよね」

「アタシもそう思う。そういうのも試練に関係するのかー」

「当然である。最も重要かもしれぬのである!」

 

 

「姉さまを追い抜いちゃうなんてダメっ」

 

「別に良かろう。それが実力の差というものじゃて」

「そうだよ。ここで気を遣ってサチが止まったら、お姉さん怒るよ?きっと」

「怒る怒る、目に浮かぶ~」

 

 

「そうかな…そうだね。うん!突っ走ろう!」

 

 

 サチが夕陽に向かって走って行く。

 その後ろをジョニーが追うも、リリとアイミーはポカンと見つめるばかり。

 

 

「私達も走った方がいいのかな」

「いや~いいっしょ。アタシちょっと疲れたー。走るより飲みたい!で、ボシュは?」

「分かんない。そのうちお腹減ったって顔出すよ」

「だね。お店探して先に行っとこ!」

 

 

 

 

 実はボシュもリリのショーを見ていた観客の一人であった。

 通り向こうの角から覗き見ていたボシュは、ショーが終わっても動けずにいた。

 

 

 何せ、こうまじまじとリリの芸を鑑賞したのはこれが初めて。

 初対面の折には、露出度高めの衣装を前に赤面しきりでそれどころではなかった。

 

 

「…アイツやべぇ。マジでスターなのか?」

 

 

 

 仲間までも魅了してしまう効果抜群のクレセントムーンであっ…

 

 

「ちょっと待ったー!武器の力じゃなくてア、タ、シの、実力です!」

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。