旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第8章 謎の黒い騎士
第38話:村の宝物


 

 

 サチ達の冒険の旅は、徐々に魔物が企む陰謀の確信に迫って行く。

 それは何かに導かれるように…。

 

 

 ジョニーの気の趣くままやって来たのは、寂れた感の漂う村。

 

 

「久しぶりに来たが、この村は様変わりしたのぉ」

「ジョニじい、ここ来た事あるの?」

「この村は有名な鉱山があってのー。若い時分に宝石探しに来た事がある。あの頃は相当な賑わいじゃったが。落盤事故があったせいなのである」

 

「ジジイの若い頃って何年前だよ!」

 

 

 そこへ別の声が混じった。しゃがれた男性のものだ。

 

「落盤事故が起きたのは今から200年は前じゃ。そちらは…人ではないようじゃが?何用か」

 

 

「決して怪しい者では!私達、魔物討伐の旅をしていて、この人は私達の仲間です」

「まあ何でも構わん。お前さん方もこの村の宝を渡せとか言うのかね?」

 

「宝?大昔にジョニーが宝石探しに来たみたいだけど、今回私達の目的はそれではありません」

「宝石とな!いや懐かしい。ワシのひい爺様がそんな話をようしとったわい」

 

「あの…あなたはこの村の?」

 

 年老いた男はこの村の村長と名乗った。

 

 

 魔物を連れた旅人に対して、態度があからさまに冷たい理由は簡単。

 今この村は、死霊の王と呼ばれる魔物から脅しをかけられているのだ。

 

 

「死霊の王って、ジョニー知ってる?」

「何とも言えんのー」

「何だよその答え。忘れたんだろ、耄碌したな」

 

「ムムっ!であるっ」

 

「否定しないって事は図星か。無理に思い出さんでいいぜ!で?宝を渡さないと村を滅ぼすって、その鉱山で採れる宝石渡せば済むんじゃねぇの」

「宝石なぞ事故の後は跡形もないわい。じゃろうて、村長殿?」

 

「ああ。宝などこの村にはない。そう何度も説明したが引き下がらんのだ。次の満月までに用意しなければこの村は…っ。ワシの代で村を潰すなど、先祖に顔向けできんわい!」

「私達がその魔物に説明して来ます。いる場所はご存じですか?」

 

 

「ちょっと待ってよサチ、死霊の王なんて名前からしてヤバい奴なんじゃないの?安請け合いはダメよ。ねえジョニじい?」

 

 やはりジョニーはとぼけるばかり。

 

 

 そしてついには早口でまくし立てる。

 

「この先はサチ殿にお任せするのである。用事を思い出したのでそれがしはこれにて!ボヨン!」

 

 

 あっという間にいなくなった。

 

 

 

「行っちゃった…」

 

「魔物を仲間にするなど、気狂いのする事じゃ」

「そうかもしれません。でもあの人は裏切らないって信じてます」

「お前さん方は魔物退治をして歩いておるとな?それ自体も信じられんが!」

 

 

 一行を眺め回して発せられたこの言葉はしかし、簡単には覆せない。

 

 何せ今サチは完全に海賊スタイル。

 さらにリリはスター、アイミーに至っては聖職者だ。

 ボシュは良くて武闘家辺りか。

 

 今ばかりは勇者の装備を身に付けておくべきだったと悔んだボシュだが。

 あっさり開き直る。

 

「俺達は別にどっちでもいいぜ?この村がどうなろうと知ったこっちゃないしな!」

 

 

「お兄ちゃんっ」

 

 

 村長の物言いは初めから一貫して冷たい。

 リリはあえてコメントを控え、しばし沈黙を貫く。

 

 ここで先に口を開いたのは村長であった。

 

「とはいえ…。困っているのは事実。ワラにもすがる思いじゃ。死霊の王がいるのはあの山の先の大岩の森。行くのはお前さん方の自由。何が起きてもワシは責任など取らんぞ?」

 

「何て言い草だ!別のとこ行こうぜ?皆」

「待って。そこに魔物がいるなら、私達は行く。退治しないといけないから。もちろん何が起きても村長さんは責任なんて取らなくていい」

 

「おい、マジかよ…。チッ」

 

 

「ボシュ。皆も、異論があるなら今言って」

 

 

 アイミーは兄を見つめるが、反論する様子はない。

 そんな二人を観察していたリリが結論を出した。

 

「このパーティのリーダーはアンタよ。サチが決めた事にアタシらは従う。でしょ?二人とも」

「ああ」

「はい。異議なし」

「って事で。さっさと行こうか!」

 

 

 村長はどこか後ろめたさを見せつつも背を向けた。

 

 

 

「しっかし感じ悪ぃジイさんだな!今回ばかりはジョニーの肩持ちたくなったぜ。何だよ、気狂いって?腹立つぜっ!」

「ジョニじいの肩持つなんて珍し~」

「しょうがないよ。魔物に脅されてる最中じゃさ。何も信用できなくなる。ねえサチ?」

 

「何にせよ、結果さえ出せば認めてくれるわ」

 

「よし、発散してやる!暴れさせろ!」

「存分にやってー」

 

 

 

 

 

 

 

 こうして足を踏み入れた大岩の森。

 

 

「本当に岩ばかりで歩きずらいっ」

「気をつけろアイミー。ほら掴まれ」

「ありがとう、お兄ちゃん」

 

 歩きずらそうなアイミーに手を差し伸べるボシュ。

 

「ロングスカートにして最初にこれなんてっ。これも試練の一環とか?」

「アタシは動きやすくてサイコー!」

 

 

「ってリリ姉、その太股むき出し何とかしろっ」

「あらボシュったら。部分的なんだからいいじゃん。このチラリズムがソソルでしょ?」

「っ、状況考えろっつー意味だよ!」

 

「って事は、別の状況ならオーケーって事ね」

「はあ?!誰もオーケーなんて言ってねー!」

 

「二人とも、ケンカしないでっ」

 

 

「皆、前方注意よ!」

 

 不意にサチが叫ぶ。少し先の茂みが揺れている。

 

 

「来るか?お前ら下がってろ」

 

「気を付けて。名前からしてどんな敵か分からない」

「実体のない攻撃の効かない魔物だったり…」

「死霊ってくらいだからあり得るね」

 

 

 

 そんな事を口々に言いながら茂みを凝視する事数分。

 飛び出して来たのは猪サイズのサイが2体。全身は太いトゲで覆われている。

 

 

「王って雰囲気はゼロだな」

「だわね」

「固そうだけど、もし霊なら攻撃が通り抜けちゃうのかも」

 

「デンタザウルスよ!刃の防御という技を持ってる。それされたら攻撃しちゃダメ!」

 

 

「その技を使われる前に倒しゃいいんだろ?ギガ空裂斬!」

 

 それでも倒れない。見た目通りの固さらしい。

 

 

「人間共め、何かいろいろと言ってくれたな?望みの刃の防御だ、食らえ!」

 

 

「それならアタシが。これでどう?しおさいのセレナーデ!」

 

 リリは一歩前に出るや例のハープを奏でる。それに合わせて美声を披露。

 

 するとたちまち魔物が魅了されたではないか。

 その隙を狙い、空間を引き裂くような渦が現れる。

 

 

「ななっ、どうした事か、体が言う事を聞かんっ」

 

「今よボシュ、止めを刺して!」

「任せろ。怒り倍増、ギガ空裂斬っ!」

 

 

 攻撃をもろに食らった魔物。固そうに見えた体が真っ二つになって転がる。

 

「うぐぐ…やられた」

「やられた!」

 

 

「死霊の王とやらも大した事なかったなぁ」

 

「いや待て、オレが王様だって?ただの下っ端!」

「なぁんだ、やっぱり?」

「それで、本当にそんな名前の魔物はいるの?」

「ああ!我らがボスがそうさ!…うう」

 

「おい、まだくたばるな?なぜ村を脅した」

 

 

 魔物の語るところによれば、ボスこと死霊の王がいにしえのオーブという宝を欲しがっている事を知り、先回りして探し始めたとか。

 

 

「それをボスに差し出せば、オレは一目置かれるって訳だ!」

「魔物の世界もシビアね~」

「あの村にはないって村長さんが言ってるけど」

「いーや。あの村にあるはずだ!…ゲホホ」

 

「とにかくないもんはないんだよ。もう眠っていいぜ、あばよっと」

 

 

 ボシュが容赦なく魔物を斬りつけて終わった。

 

 

「変な話。どっちかがウソを言ってる事になるよね」

「どっちかって魔物に決まってるじゃん」

 

「あながちそうとも言い切れないかも」

 

 

「前から思ってるんだがサチ、お前って時々魔物の味方になるよな」

「そういうつもりはない。私はただ、公正に判断しているだけ」

「そうね。あの村長なんか怪しかったし!」

「確かにカンジは悪かったけどな」

 

 

 

 一行はすぐに村に戻る事にした。

 

 

 

 

 

 

 戻ってみれば、村長が誰かと言い合いをしている。

 

 

「あれ誰だろう?村人じゃなさそう」

「どう見ても騎士だが」

「黒尽くめの騎士って何か怪しー」

 

 

 一行の姿に先に気づいたのは黒い騎士だ。すぐに逃げるように立ち去ってしまう。

 

 

 サチ達が村長の元へ駆け寄る。

 

 

「村長さん。また何かトラブルですか?」

 

「お前さん方、よくぞ無事に戻って来たものだ。本当に大岩の森へ行ったのか?」

「ああ行ったぜ!んでもって倒して来たぜ、小玉のサイ野郎をな」

 

 

 信じられないという顔で一行を見回す村長だが、やがて肩を落としてため息をついた。

 

「どうやら、お前さん方は本物のようじゃ。これまでの無礼を詫びる。済まんかった」

「頭を上げてください。さっきの人は誰ですか?」

「知らん。物凄い勢いで宝はどこかと迫られた」

 

「またかよ!」

「ないものはないって言うしかないよねぇ」

 

 

「…いや。それが実はあるのじゃ。かつてこの村に、いにしえのオーブと呼ばれる玉が。正確にはあった、じゃな」

 

 

「え?それって…どういう事ですか?」

「魔物のみならず俺達にもウソついてたって事か」

「何か裏切られた気分っ」

 

 

 若干怒りをにじませた口調になる面々とは違い、サチは冷静だ。

 

「それで、その人に何て答えたんですか?」

 

 

「落盤事故の事は知っているな。あの時、玉は地の底に沈んだ。もう誰も手が届かない!どこにあるのかと聞かれれば、炎の鉱山と答える他あるまい」

「つまりさっきのアイツもそれ狙ってるのか」

「魔物といいその人といい、そのオーブに何があるんだろう」

 

 

「とにかく、私達も炎の鉱山に行こう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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