旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第39話:海賊船登場

 

 

 休む間もなく次の場所へ足を急がせる一行。

 

 やって来たのは、これまた岩むき出しの山々が連なる地帯だ。

 

 

 

「自然を切り崩しすぎだ。欲深な人間共にはうんざりだぜ」

 

「うむ。ボシュ殿、珍しく意見が合致したのである」

 

 

「ギョっ、じじい、いつの間に?!」

 

 振り返ればそこにジョニーの姿が。

 

 

「ジョニじい、来てくれたの!一気に心強くなった」

「ホント~、何だかんだ言って、やっぱ気になってたんでしょ。アタシらの事~」

 

 

 サチも心のどこかでホッとする。

 今回のトラブルは今までのよりも何倍も危険なニオイがする。

 自分達が首を突っ込んで本当に良いのかと、内心迷いがあったのだ。

 

 

「着いたのはいいが、この鉱山跡地をどう進む?」

「魔物の居場所になら案内できるのである」

「本当?じゃあお願いしようかな」

 

「おいサチ!そうあっさり乗るなよ」

 

「あら、ダメ?」

「いいじゃん。どっちみち魔物退治するんだし」

「そうだよ。元々宝探しに来たんじゃないんだから」

 

 

「魔物あるところに宝あり、かもよ」

 

 

 

 

 ジョニーの後を付いて行くと、削り取った山肌の合間にぽっかりと穴が開いている。

 

 

「トンネルってより洞窟だな」

「どこまで繋がってるんだろう」

「崩れたりしないよね…」

 

「ここ一帯は強固な地盤になっておる。そうそう崩れはせん。この中から気配がするのである」

 

 

「ありがとう、ジョニじい。皆行こう」

「ジョニじいは…入れないもんね」

「健闘を祈っておるぞ、アイミー殿、それからお三方」

 

「俺達、付け足しみたいに言われたぜ~」

「ジョニじいの今のお気にはアイミーか。な~んかちょっと負けた気分っ」

 

 

 こんな会話をしつつ一行が奥へと足を踏み出した時、思い出したようにジョニーが声を張る。

 

 

「そう言えば、サチ殿の入手された水竜の短剣じゃが、マール・デ・ドラゴーンという海賊船がおまけに付いとった。この先で目にされても驚かんように。船長はサチ殿じゃからの!」

 

「船?私が船長…」

「おいおい、短剣のおまけで海賊船が付いて来るってどういう武器だよ!」

「分かった、教えてくれてありがとうジョニー」

 

 

「って、普通に受け入れやがった…」

 

 呆気にとられるボシュ。気づけば皆から遅れを取っている。

 

 

「置いてくよー」

 

 先を行くリリの声が岩壁に反響して美しく響く。

 

 

「お、おお!…」

 

 あの日に聞いたリリの歌声が脳内で再現されて、意識が持って行かれそうになる。

 足元の悪いこんな場所でぼんやり歩いていれば当然…。

 

 

「いって…っ!危ねーとこだったぜ」

 

 蹴つまずいた。

 

 

「お兄ちゃん、足元暗いんだから気を付けてねー?」

「分かってるよ!」

 

 

 

「皆、光が見えて来た。何かいる」

 

 先頭のサチが小声で言う。

 

 

 狭かった穴の先は急に広々とした空間になっていた。

 

 そこにいたのは、青い体躯に白の鎧を着た人型の魔物だ。

 頭と膝辺りから炎が上がっているが、どこか弱々しく見える。

 どうやらお疲れのご様子。

 

「…今度は何だ?またワイの縄張りに勝手に入って来やがった。いい加減にしてくれ!」

 

 

「いた、炎の戦士!」

「さっきのオジンもワイを知っていたな。ワイってば有名なのかぁ?うふっ」

「さっきのオジンってまさか」

「「黒い騎士!」」

 

「何でもいいが、倒していいか?全然弱そうだし」

 

 

「待って。聞きたい事がある」

 

 サチはぐったりした様子の魔物に話しかける。

 

「はあ?誰に言ってんの、もしかしてワイ?」

「他に誰かいる?さっき来た人はどこに?」

「あいつめ、今度会ったら八つ裂きだ!」

 

「その人にやられたのね。もしかしてオーブの事と関係ある?」

 

 

 オーブの名が出るや、魔物の態度が急変する。

 

 

「そっ、そんなもん知らねー!何でワイだけっ、やってらんねー!」

 

 魔物が洞窟のさらに奥へと逃げ出した。

 

 

「おい待て!」

「追い駆けよう」

 

 

 

 追って行くとさらに大きな空洞になっており、巨大な石像が直立している。

 

 

「さっきの野郎はどこ行った?」

「あの石像、息してない?胸の辺りが微かに動いてるよ…」

「寝てるみたいだわね。しー、起こさないようにっ」

 

 

 恐る恐る前を通り過ぎようとした3人だが。

 

 

 サチが足元にあった小石に思い切り蹴つまずいて声を上げた。

 

「うわぁっ、つまずいたぁー」

 

 

「おいっ、バカか?お前!」

「何よ、ボシュだって入口のとこでつまずいてたじゃない」

「状況が違うっつってんの!ってあれ見られてたのか…。おい見ろ、起きちまったぜ?」

 

 

「オレ様の眠りを妨げる奴は誰だ。生きてここから出られると思うな?」

 

 ゴゴゴ、と地響きを伴って石像が動き出す。

 

 

「ちょっと聞きたいんだけど!」

「またそれかよ…」

 

 サチが石像に話しかける。

 

「度胸のある人間だな。このオレ様に話しかけるとは?気に入った。言ってみろ」

 

 

「…マジかよ」

「ここに誰か来なかった?炎の戦士以外で」

「ああ、そういえばさっき、誰かが通り過ぎたような気はする」

 

「その程度って事は、黒の騎士は起こさずにすり抜けたのね」

「フツーの感覚のヤツはそうするだろ」

「サチはわざと起こしたって言うの?」

 

「ああ!そう思うだろ?リリ姉も」

「あまりにもわざとらしかったもんねー。サチに演技力ないって言うのは知ってたけど!」

 

 

「オレ様を起こしたのが運の尽き。おしゃべりは終わりだ!死ね人間共、押し潰してやる!」

 

 

「俺にやらせろ。ギガ空裂斬!」

 

 何かとイラついていたボシュは、一太刀で石像を倒した。

 

 

「何度見てもスッキリするね~、ボシュ君のそれ!」

 

「むむむ…無念。人間なんぞにやられるとはっ」

「石像のオジサン。もう一つ教えてほしい」

「「石像の、オジサン?!」」

 

「何じゃ…」

 

 

「答えんのかよっ」

「しっ、静かに!」

 

「いにしえのオーブを知ってる?」

「知らん」

「じゃ、この先には何があるの?」

「この洞窟を抜けると孤島がある。我らが王様の城がな。人間には渡れん場所だ。悪い事は言わん、引き返せ」

 

「優しいのね、石像のオジサンって」

「優しい訳じゃない。オレはもう死ぬ。どうせなら最後くらい…役に立ちたい」

「俺ら敵だぜ?」

「見れば分かる。その敵と対等に話そうとするヤツは…ぐふっ」

 

「もうしゃべらなくていいんじゃない?」

 

 

「…お前が、気に、入ったから…だ」

 

 真っ二つにされた石像は動かなくなった。

 

 

「ヤダ~、サチったら魔物まで射止めちゃった。さすがはオジンキラー!」

「そんな~。キングスライムの心掴んでるリリ姉には負けるよ?」

「どっちもどっちだ!」

「それより先に進もう?黒の騎士に宝を奪われちゃうよ!」

 

「そうだった、行くぞ!」

 

 

 

 

 

 

 一行は洞窟のさらに奥へと進む。

 

 

「風が吹いて来てる…外に出られそうだ」

「潮の香り。海がある?」

 

 

 風の吹き込む方へと足を進めると、開けた先には予想通りの海洋が広がっている。

 遥か先にぼんやりと島らしきものが見えていた。

 

 

「あれか…」

 

「外に出られた!見晴らしいいねぇ」

「まさか海なんて…。これじゃ先に進めないよ」

 

 

 ジョニーが残した言葉がサチの脳裏をかすめ、静かに短剣を手に取る。

 

「マール・デ・ドラゴーン…」

 

 

 こうつぶやいてみるも何も起こらない。

 

 

 

 今度は短剣を天に掲げ、大声で叫んだ。

 

「出でよ、マール・デ・ドラゴーン!我はここにあり!」

 

 

 

 するとどうした事か、突然巨大な船が大波を立てながら目の前に現れたではないか!

 

 

「おお…スゲー」

「一体どこからやって来たの?こんな凄いの!」

「海賊が乗ってるのかな…」

 

「そうだとしても、船長はコイツなんだ、心配ない」

 

 ここはもう受け入れるしかない。ボシュはそう思って前を向く。

 何にせよこれで島へ行けるのだから。

 

 

「さあ皆、乗り込むよ。目指すは死霊の王のいる孤島の城!全速前進ー!」

 

 

 水竜の短剣を掲げたままサチが甲板に立つ。そのやや後方に立った3名。

 

 アイミーがきょろきょろと周囲を見回す。どうやら船内には人っ子一人いない様子だ。

 

 

「不思議…誰も乗ってないみたいなのに、どうして進むの?」

「それは恐らく魔力だな。そうだ、そうに違いない!」

 

「ボシュ、自分に言い聞かせてない?」

「現実は小説よりも奇なりって言うもんな!」

「お兄ちゃんも何とか納得しようとしてるんだよ」

 

 

 

 潮風が皆の頬を打つ。船のスピードが上がっている。

 

 

 

「皆、島が見えて来たよ」

 

「洞窟がもうあんなに遠い。メチャ速くない?この船!ただの木造船とは思えない…」

「マール・デ・ドラゴーンって、まるでドラゴンって言ってるよな?ふざけた名前だが、今後役に立ちそうだ」

 

 

「サチは本物の海賊になった。リリ姉も本物のスーパースターに。私は、成長してるのかな」

 

 

「アイミー。大丈夫、ちゃんと成長してる。もう熟練の賢者だよ。ねえボシュ兄貴?」

「ああ!雨雲の杖が板について来た。頼りにしてるんだぜ?あのレインボーは最高だ」

「俺が俺が!って前のめりのボシュに頼りにされたんじゃ、本物だわね」

 

「この分だと、今回のボスを倒せば試練に合格できるかも。皆、力を合わせて頑張ろう!」

 

 

 おー!という威勢の良い声が大海原に響く。

 

 すぐに波音にかき消されたものの、皆の表情は自信に溢れている。

 

 

 

 それぞれの顔を順に見ながらサチは思う。きっと大丈夫だと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「ドラゴーン」を乗り物として使えるようにしてみました!
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