旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第40話:地獄の門

 

 

 ほどなくして島に到着した。

 

 一行が陸に上がると、船は現われた時と同じように、どこかへいなくなった。

 

 

 

「一体どういう仕組みなんだ?」

 

 

「ボシュ!行くよ!」

 

 何もないただの大海原を見つめていたボシュに声が掛かる。

 

 

「遠くから見た時は分からなかったけど、酷いヤブ!まるでジャングルだね」

 

「アイミー、足元気を付けろ。スカート引っ掛けるな?」

「うん、ありがと」

「リリ姉、手を貸すよ。掴まって」

「サンキュ」

 

 

 二人一組になってヤブをかき分けながら進んで行く。

 

 

 

 それを抜けると、不気味な城がそびえ立っていた。

 

 

 

「ここね」

 

「今度はどんな王様がいるんだろ」

「どうせ訳アリだろ。何を言われてもキレない、を目標にしよう」

「うんいいね、目標立てるのって凄くいいと思う!」

「我慢は体に良くないよー」

 

 

 こんな会話をしながら城の敷地に足を踏み入れる。

 

 

「誰もいないのかな」

「見るからに朽ち果ててるもんな」

 

 

 取りあえず一行は上を目指す。王様やらラスボスは高い所にいるのが定番だ。

 

 

 

 

 

 辿り着いたのは天井が高くだだっ広い部屋。

 最奥に玉座があり、誰かが座っている。

 

 

「どう見ても王様じゃないよね、あれは」

「黒尽くめの、男の人…って」

 

 そして同時に声を上げる。黒い騎士!と。

 

 

 

「…何て間が悪い連中だ」

 

 騎士もたった今辿り着き、玉座に思わず座ってしまったところだった。

 

 

「オジサン!いにしえのオーブは手に入れた?」

「おじっ…おじさん、この俺が…そんな呼ばれ方を…」

 

 少々ショックを受ける黒の騎士だが、すぐに気を取り直して声を張る。

 

「貴様らと遊んでいる暇はない。俺は行く」

 

 

「おい待て!行くにしても、質問に答えてからにしろ、コラ!」

 

 騎士は素早い身のこなしで、すでに立ち去っていた。

 

 

「ボシュくーん、キレないんじゃなかったの?あとガラ悪いよ?」

 

「ああ?口が悪いのは自覚してるが、ガラが悪いだと?」

「ほら~そういうとこ!職変わってから磨きがかかったみたーい」

「私もちょっと思ってた。両親から品行方正を叩き込まれて来たのに。もう忘れちゃったの?」

 

「品行方正とな…。アンタ見れば納得だけど、ボシュも?だとすると、抑圧された感情爆発的な?これはマズいね、試練に影響するかもよ~」

 

 

「なっ。試練に、影響だと…?」

 

 

 急にボシュが黙り込む。不安になってチラとサチを見る。

 

 

「ん?なぁに?」

「…っ。いや。そんな事より、あのオッサン追うぞ!」

 

 

 会話に加わって来なかったサチのお陰で、ボシュは本来の目的を思い出す事ができた。

 

 

 

 踵を返し部屋を出ようとしたその時。

 誰もいないはずの玉座に、ぼんやりと人影が浮き上がる。

 

 

「ねえ見て!何か出てきた!」

「透けて見える、幽霊だよっ…」

 

「皆落ち着いて。あの格好からして、きっとこの城の王様だよ」

 

 

『さよう。…ようやく出番だ。ワシはこの城の主。遠い昔に滅んだ身だが、そなた達に伝えたい事があり待ちかねていた』

 

 

「私達に?さっきの人には?」

『先ほどワシの玉座に勝手に座りおったあの者の事か?ああいう奴には教えん』

「気を悪くしちゃったのねぇ」

 

「うんうん、勝手に座ったらダメだよね」

 

 感情のこもった王のコメントのお陰で、目の前の亡霊への恐怖感が薄れたアイミーであった。

 

 

 

「それで、王様の伝えたい事って?」

 

『あ奴はいにしえのオーブを持っておった。黄泉の扉を開こうとしているなら由々しき事…』

「やっぱアイツが持ってたんじゃねぇか!」

「先越されてたね。悔し~!」

「黄泉の扉って、言葉通りあの世とこの世の繋がる所、って意味だよね?」

 

「私達が阻止します。必ず!その扉はどこに?」

 

 

 

『王家の谷だ。どうか、あの扉だけは開かせるな…』

 

 こう言い残し王の亡霊は消えた。

 

 

 

 

 

 大急ぎで教えられた場所へと向かう面々。

 

 そこは森の中にあり、墓地が広がっていた。

 

 

 

「嫌な予感が…」

 

 

 リリがこうつぶやいたと同時、墓場の影から斧を持った魔物が飛び出して来た。

 

 青の目出しマスクとマントを付けたマッチョ系だ。

 

 

「出やがったな。お前が大ボスか?」

 

「俺が大ボスな訳ないだろ、盗っ人め!ここの宝は渡さないぞ!」

「宝?ここにあるの?オーブじゃないよね」

「何だそれは。ここにあるのは王家の墓に眠る宝。全部俺のモンんだ!」

 

 マッチョが斧でリリに斬りかかる。

 

 

「させるか!リリ姉、下がってろ」

「ありがと…」

 

 

「食らえ、ギガ空裂斬!」

 

 

「一匹にも容赦ないね…」

「でも見てアイミー、殺してないみたいよ」

 

 

 

 魔物は瞬殺された訳ではなく、まだピクピクしている。

 そして驚いた事にボシュが魔物に話しかける。

 

「俺らは墓の宝になど興味ない。そんな事よりお前の知ってる事全部教えろ。この島のボスは誰だ?どこにいる?」

「それを早く言ってくれよ!勘違いで殺されるなんて割りに合わねえ…まぁいいや。ボスの名はワイトキング様だ。近々何やらなさるらしいが…俺ら下っ端にゃ知らされてねえ」

 

 

「案外ペラペラしゃべりやがるな」

 

「じゃあ、黄泉の扉ってどこにあるか知ってる?」

「ああ…それならこの谷の一番奥にある。お前ら人間だろ?あれは地獄の門だぜ。やめとけ」

 

 

 こんな話は途中から誰も耳に入っていない。

 墓場を抜けた先の谷間が一番奥だ。すでに4人の意識はそこに向いている。

 

 

 

「行くよ」

 

 サチの短い合図だけで、3人は一斉に動き出す。

 

 

 

「きっともうあのオジサン着いてるよね」

「動き、素早かったもんね」

「あの人が門を開こうとしてるかは分からないけど、とにかく急ごう」

 

 

 

 

 

 その場所にはすぐに到着した。

 

 そこに番をするように並ぶ一つ目の3体の魔物。それぞれ両手に丸こん棒を掲げている。

 真ん中の緑のマントをまとった魔物が言った。

 

「我は地獄の使いなり。人間共、いにしえのオーブを渡せ!」

 

 

「私達の前にここへ来た人がいるはずよ。その人が持ってるわ」

「良かった、まだ魔物には渡ってないみたいだわね」

「でも黒の騎士が悪者ならマズいよ!」

 

 

「我は悪魔の使いなり。ボスはオーブを待ちかねている。渡せ!」

 

 

「おい、話聞いてたか?さっきのオジンが持ってるっつってんだろ」

 

「我も悪魔の使いなり。渡せ!」

 

 両サイドの赤マントの魔物が口々に言う。

 

 

「こいつら話通じないぜ?やっていいか?」

「やって。早く扉に向かわなきゃ!」

 

 

 ボシュは早速お得意の斬撃を3体に食らわせる。だが倒れない。

 

 

 

「敵の魔力が強い。次で倒さないと攻撃される」

 

「私にやらせて。落陽!そして追撃レインボー!」

 

 レインボー効果恐るべし。3体とも崩れ落ちた。

 

 

 

「やった!アイミー、ナイス!」

「おい、奥の方から霊気感じないか?これってヤバくね?」

「門が開かれたのかもっ」

 

 

「生と死の境目がなくなっちゃう!」

 

 

 

 

 魔物が何やらつぶやいていても、誰一人気に留めず走り去った。

 

 

「お、オーブを、渡、せ…ぐふっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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