ほどなくして島に到着した。
一行が陸に上がると、船は現われた時と同じように、どこかへいなくなった。
「一体どういう仕組みなんだ?」
「ボシュ!行くよ!」
何もないただの大海原を見つめていたボシュに声が掛かる。
「遠くから見た時は分からなかったけど、酷いヤブ!まるでジャングルだね」
「アイミー、足元気を付けろ。スカート引っ掛けるな?」
「うん、ありがと」
「リリ姉、手を貸すよ。掴まって」
「サンキュ」
二人一組になってヤブをかき分けながら進んで行く。
それを抜けると、不気味な城がそびえ立っていた。
「ここね」
「今度はどんな王様がいるんだろ」
「どうせ訳アリだろ。何を言われてもキレない、を目標にしよう」
「うんいいね、目標立てるのって凄くいいと思う!」
「我慢は体に良くないよー」
こんな会話をしながら城の敷地に足を踏み入れる。
「誰もいないのかな」
「見るからに朽ち果ててるもんな」
取りあえず一行は上を目指す。王様やらラスボスは高い所にいるのが定番だ。
辿り着いたのは天井が高くだだっ広い部屋。
最奥に玉座があり、誰かが座っている。
「どう見ても王様じゃないよね、あれは」
「黒尽くめの、男の人…って」
そして同時に声を上げる。黒い騎士!と。
「…何て間が悪い連中だ」
騎士もたった今辿り着き、玉座に思わず座ってしまったところだった。
「オジサン!いにしえのオーブは手に入れた?」
「おじっ…おじさん、この俺が…そんな呼ばれ方を…」
少々ショックを受ける黒の騎士だが、すぐに気を取り直して声を張る。
「貴様らと遊んでいる暇はない。俺は行く」
「おい待て!行くにしても、質問に答えてからにしろ、コラ!」
騎士は素早い身のこなしで、すでに立ち去っていた。
「ボシュくーん、キレないんじゃなかったの?あとガラ悪いよ?」
「ああ?口が悪いのは自覚してるが、ガラが悪いだと?」
「ほら~そういうとこ!職変わってから磨きがかかったみたーい」
「私もちょっと思ってた。両親から品行方正を叩き込まれて来たのに。もう忘れちゃったの?」
「品行方正とな…。アンタ見れば納得だけど、ボシュも?だとすると、抑圧された感情爆発的な?これはマズいね、試練に影響するかもよ~」
「なっ。試練に、影響だと…?」
急にボシュが黙り込む。不安になってチラとサチを見る。
「ん?なぁに?」
「…っ。いや。そんな事より、あのオッサン追うぞ!」
会話に加わって来なかったサチのお陰で、ボシュは本来の目的を思い出す事ができた。
踵を返し部屋を出ようとしたその時。
誰もいないはずの玉座に、ぼんやりと人影が浮き上がる。
「ねえ見て!何か出てきた!」
「透けて見える、幽霊だよっ…」
「皆落ち着いて。あの格好からして、きっとこの城の王様だよ」
『さよう。…ようやく出番だ。ワシはこの城の主。遠い昔に滅んだ身だが、そなた達に伝えたい事があり待ちかねていた』
「私達に?さっきの人には?」
『先ほどワシの玉座に勝手に座りおったあの者の事か?ああいう奴には教えん』
「気を悪くしちゃったのねぇ」
「うんうん、勝手に座ったらダメだよね」
感情のこもった王のコメントのお陰で、目の前の亡霊への恐怖感が薄れたアイミーであった。
「それで、王様の伝えたい事って?」
『あ奴はいにしえのオーブを持っておった。黄泉の扉を開こうとしているなら由々しき事…』
「やっぱアイツが持ってたんじゃねぇか!」
「先越されてたね。悔し~!」
「黄泉の扉って、言葉通りあの世とこの世の繋がる所、って意味だよね?」
「私達が阻止します。必ず!その扉はどこに?」
『王家の谷だ。どうか、あの扉だけは開かせるな…』
こう言い残し王の亡霊は消えた。
大急ぎで教えられた場所へと向かう面々。
そこは森の中にあり、墓地が広がっていた。
「嫌な予感が…」
リリがこうつぶやいたと同時、墓場の影から斧を持った魔物が飛び出して来た。
青の目出しマスクとマントを付けたマッチョ系だ。
「出やがったな。お前が大ボスか?」
「俺が大ボスな訳ないだろ、盗っ人め!ここの宝は渡さないぞ!」
「宝?ここにあるの?オーブじゃないよね」
「何だそれは。ここにあるのは王家の墓に眠る宝。全部俺のモンんだ!」
マッチョが斧でリリに斬りかかる。
「させるか!リリ姉、下がってろ」
「ありがと…」
「食らえ、ギガ空裂斬!」
「一匹にも容赦ないね…」
「でも見てアイミー、殺してないみたいよ」
魔物は瞬殺された訳ではなく、まだピクピクしている。
そして驚いた事にボシュが魔物に話しかける。
「俺らは墓の宝になど興味ない。そんな事よりお前の知ってる事全部教えろ。この島のボスは誰だ?どこにいる?」
「それを早く言ってくれよ!勘違いで殺されるなんて割りに合わねえ…まぁいいや。ボスの名はワイトキング様だ。近々何やらなさるらしいが…俺ら下っ端にゃ知らされてねえ」
「案外ペラペラしゃべりやがるな」
「じゃあ、黄泉の扉ってどこにあるか知ってる?」
「ああ…それならこの谷の一番奥にある。お前ら人間だろ?あれは地獄の門だぜ。やめとけ」
こんな話は途中から誰も耳に入っていない。
墓場を抜けた先の谷間が一番奥だ。すでに4人の意識はそこに向いている。
「行くよ」
サチの短い合図だけで、3人は一斉に動き出す。
「きっともうあのオジサン着いてるよね」
「動き、素早かったもんね」
「あの人が門を開こうとしてるかは分からないけど、とにかく急ごう」
その場所にはすぐに到着した。
そこに番をするように並ぶ一つ目の3体の魔物。それぞれ両手に丸こん棒を掲げている。
真ん中の緑のマントをまとった魔物が言った。
「我は地獄の使いなり。人間共、いにしえのオーブを渡せ!」
「私達の前にここへ来た人がいるはずよ。その人が持ってるわ」
「良かった、まだ魔物には渡ってないみたいだわね」
「でも黒の騎士が悪者ならマズいよ!」
「我は悪魔の使いなり。ボスはオーブを待ちかねている。渡せ!」
「おい、話聞いてたか?さっきのオジンが持ってるっつってんだろ」
「我も悪魔の使いなり。渡せ!」
両サイドの赤マントの魔物が口々に言う。
「こいつら話通じないぜ?やっていいか?」
「やって。早く扉に向かわなきゃ!」
ボシュは早速お得意の斬撃を3体に食らわせる。だが倒れない。
「敵の魔力が強い。次で倒さないと攻撃される」
「私にやらせて。落陽!そして追撃レインボー!」
レインボー効果恐るべし。3体とも崩れ落ちた。
「やった!アイミー、ナイス!」
「おい、奥の方から霊気感じないか?これってヤバくね?」
「門が開かれたのかもっ」
「生と死の境目がなくなっちゃう!」
魔物が何やらつぶやいていても、誰一人気に留めず走り去った。
「お、オーブを、渡、せ…ぐふっ」