旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第41話:いにしえのオーブ

 

 

 一行は慌てて谷の最奥に駆け込むも誰もいない。

 

 

「もしかして一番乗り?」

「なワケないって。どういう事さ?」

 

「あ、誰か来たみたい」

 

「あのオッサンじゃないな。もっと老人だ」

 

 

 

 近づいて来たのは見覚えのある人物。どうやら村長のようだ。

 

「そなた達、よくぞここまで辿り着いた。村の宝は手に入れたのだろう?早く渡してもらおう」

 

 

「随分言い分がコロコロ変わるな。宝は地の底、もう見つけられないんじゃなかったのか?」

「そうよ。どうして手に入れたって断言するのさ?」

「村長さん、一人でここまで来たの?」

 

「来れるはずがない。この島までは魔力を持った船でないと渡れない」

 

 

 サチの言葉が決め手となった。村長は突然くつくつと笑い出す。

 

「バレてしまったか。そうよ、こやつの体を乗っ取って戻って来たまで。バレてはもう用はない」

 

 

 村長の体がゆらりと揺れ、実体のない影が浮き上がる。

 たちまちくず折れた老体に見えない攻撃が迫る。

 

 

「ダメ!殺さないで!」

 

 サチは意識のない村長の体に覆い被さる。

 

 

「サチ何やってんだ!」

「バカ!自分を盾になんてダメっしょ?!」

「サチっ」

 

 

 サチ目がけて黒い攻撃が降って来るも、なぜか攻撃は跳ね返される。

 

 

「…何だ?お前の体から立ち昇るそれは…」

 

「光の玉が守ってくれたみたい。これはお前達が人間の魂を閉じ込めるために使う闇の玉よ」

「おい、持ってる事バラしたら奪われるぞ!」

「安心しろ、そんな小物になぞ興味ない。我が欲するはただ一つ、いにしえのオーブのみ!」

「残念だけど、私達は持ってないの」

 

「ではなぜここへ来た!ウソを言うな、早く出せ!」

 

 

「黒尽くめのオッサンが来ただろ。持ってるのはそいつ。俺らはそいつを追って来たの。分かったか?」

 

 ボシュが丁寧に説明する。魔物には言葉が通じにくいとの認識によるものだが。

 

 

「人間共め。共謀して我を愚弄する気か。許さん!」

 

 

「やっぱダメかー」

 

 

 

 黒い影が徐々に実体を整え始め、長身の人型となった。

 

 肌の色は紺色で、青と黄のボロボロの僧衣と僧帽を身に付けている。

 手に持った杖のヘッドには骸骨があしらわれている。

 

 

「お前が死霊の王ね」

 

「我はワイトキングなり。目障りな人間共め、もうよい。皆殺しにしてから宝を探すとしよう」

 

 

 これまでの魔物とは別格の瘴気だ。

 ゾンビ系はとにかくこれがキツイ。思わずアイミーが顔を歪ませる。

 

 

「大丈夫か?アイミー」

「うん…これでも結構免疫付いたのよ?獣臭さよりはマシっ」

「…っ」

 

 ボシュは健気に強がる妹に掛ける言葉が見つけられなかった。

 早々に決着を付けるべしと気持ちを改める。

 

 

 だがしかし、ワイトキングは魔力も凄まじかった。

 

「ここは我のテリトリー。足を踏み入れたが最後、死あるのみ!」

 

 

「先手必勝!ジャッジパラライズ!」

「おお、新技か!」

 

 サチが短剣を掲げ左斜めに駆け抜ける。

 キン!と音が響いて闇の空間が切り裂かれた。

 

 

「なかなかやるな。だがそんな力では相手にならん」

 

「ムカつくヤツ、これならどうだ、ギガブレード!」

「ボシュ、最後の切り札はまだ早いって!」

 

 リリの声は届かなかった。

 

 

 ボシュの技は確かにワイトキングに直撃したかに見えた。

 が、敵に変化は見られない。

 

 

 

「見てられん、手を貸してやる。有り難く思え?今ヤツは闇の衣という技を使っている、どんな攻撃も無意味だ」

 

 突如黒の騎士が姿を現した。

 

 

「お…お前っ!隠れてやがったのか?」

「また小物が増えおったわ。ん?お前は確か…なぜここにいる?」

 

 ワイトキングが首を傾げている。

 

 

 正体を明かされるのを阻止するかのように、騎士がどちらにともなく声を張った。

 

「しゃべくってる暇があると思うか?」

 

 

「ボシュ!気を抜かないでガードして!」

 

 離れた位置からサチも叫ぶ。

 

 

「まあどうでもよい、これで終わりだ。出でよ、凍える吹雪!」

 

 辺りは見る見る銀世界となり、視界も奪われる。

 

 

「なんっだ、何も見えない!」

 

「きゃあ!」

「リリ姉!どうした!」

「今誰かアタシのお尻触ったっ」

「はあ?こんな時にそれかよっ」

「だってぇ!」

 

 

「全くのん気な者共だ。ぼやっとするな、敵の攻撃が来るぞ!」

 

 

「オジサン、どうして助けてくれるの?」

「さあな。食らえ、ダーククライ!おい女、今だ、攻撃しろ!」

 

「言われなくてもやる。きっとここでも…。マール・デ・ドラゴーン、来て!」

 

 サチの声に反応したように大津波が押し寄せる。

 

 

「何だ急に?波に飲まれるっ、逃げろ!」

「大丈夫。皆ここにいて。ちょっと行って来るね」

「これは一体…っ」

「サチの、技なの?」

 

 

 

 大波に乗って先ほどの海賊船が現われた。

 瞬時に飛び乗ったサチの合図で、船は魔物をひき殺さんと襲い掛かる。

 

 

「何という破天荒な技っ…あのお方のために我らの世界をつくるはずが…口惜しや」

 

 ワイトキングは海賊船と共に、波によってその場から姿を消した。

 

 

 

 

「凄かったね~、さっきの出来事がウソのように元通りだわ」

「あの船って、サチが呼べばどこへでも来るって事?」

 

「そうみたい。一か八かだったんだけど、当たりだった」

「それでジイさんが驚くなって言ってたのか。事前に聞いてても驚くよなーあれは!」

「魔物も驚いてたのには笑えたね!」

「破天荒なっ!てな。全く破天荒なサチにピッタリの技じゃないか」

 

 

「サチ、最初の剣からガラリとイメージ変わったね」

「アイミーだって、雨雲が似合うようになったわ」

「でもこれはリリ姉のっ」

「適材適所。いいって事よ。使ってやって、その杖も喜んでるわ」

 

「…ホント?」

「うん、ホント」

 

 リリはにっこりと微笑んで答える。

 

 大事な物でも仲間が使うなら何の問題もない。心から信頼する仲間なのだから。

 

 

 

「全くお気楽な者共だ。本当にお前らが選ばれし冒険者達なのか?」

 

 

「オジサン、さっきは手を貸してくれてありがとう。それで、いにしえのオーブはあなたが持っているのよね?」

「ああ。持っているとも」

「大ボスも倒した事だし、一件落着か?」

 

 ボシュのコメントにリリとアイミーが同意を示した時、黒の騎士が鼻で笑った。

 

 

「お前達は何も知らないのだな。オーブはこのまま俺が持っていた方が良さそうだ」

「何だよ。つーかお前誰なんだよ?」

「チッ…面倒なヤツらめ」

 

「オジサンの言う通り、私達は何も知らない。だから教えてほしい」

 

 サチが騎士の目を真っ直ぐ見ながら願い出る。

 

 

 

 しばしそれを見返していた騎士。口を開きかけてやめた。

 

「俺はお前らと違って忙しいんだ。時間がない、もう行く」

 

 

 それだけ言うと、またも素早い動きで一行の前から消え去った。

 

 

 

「逃げ足早えーんだよ、アイツ!」

「何者なんだろ」

「急に現われたり消えたり、幽霊、なんて事はないよね…透けてなかったし」

「アイミー的には、そこ基準なワケね」

 

「あーあ。なーんか後味悪いが。サチ、次はどうする?」

 

 振り返ったボシュは、しゃがみ込んでいるサチに視線を移してある事を思い出す。

 

 

「いっけね、村長の事すっかり忘れてた!」

「そうだった!無事なの?」

「大丈夫みたい。リリ姉、目覚めの薬草飲ませてあげて」

「オッケー、ちょっと待って」

 

 

 

 

 しばらくして村長が目を覚ました。

 

「んん…ここはどこじゃ?ワシはなぜこんな所におるのか」

 

 

「ここは魔物のすみかだった島よ。乗り移られて連れて来られたみたい」

「何じゃとっ…それで、どうなったのじゃ?!」

「魔物は倒した。宝は持ってかれたがな」

「でも魔物にじゃないよ?凄い剣幕で言い寄ってた男。敵か味方か分からないんだけどね~」

 

 村長は発言者に順に目を向ける。

 そして自分に寄り添い、一人だけ目線を合わせて膝を折っているサチを見た。

 

 

「お前さん方が、助けてくれたのか」

 

 

「私達は、宣言通り魔物退治をしただけ」

「だけ、じゃねーだろ。サチは体張って魔物からアンタを助けたんだ」

「…それは本当か?サチさんとやら」

 

「人間が魔物の犠牲になる事に耐えられないだけ。だから私は、仲間と共にこの旅を続けているの。村はもう大丈夫よ」

 

 

 サチの微笑みに耐え切れず、村長は俯いて黙り込んだ。

 地面がポツリポツリと涙で濡れて行く。

 

「数々の無礼、心からお詫びしたい…村だけでなく、ワシまで救ってくださるとはっ」

「頭を上げてください、早く村の皆に知らせてあげて。もう魔物に目を付けられる事はないと思います」

 

「断言はしないのね」

「今や至る所に魔物が蔓延ってる。悪の根源を断ち切らない限り、断言はできない」

 

「ごもっともじゃ。それで構わん。本当に世話になった。村に帰って是非おもてなしさせてくだされ」

 

 

 

 

 こうして一行は再びサチのドラゴーンにて幻の海を渡る。

 

 村長が突如現れた海賊船に肝を冷やしたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




この黒い騎士がドラゴンボールの某キャラの声と知り、ついそっち寄りの言動に…(汗)
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