「カンパーイ!そしてダーマの試練達成、おめでとー!」
「リリ姉のサポートあっての達成だよ。ありがとね!」
「いやいや、アタシは至って普通の事してただけ」
「だけどリリ姉も良かったじゃない。神秘の水晶?どう使うか分からないけど、凄そうな武器もらえて」
「水晶は武器か?って思うが、ま~敢闘賞って事で!有り難く使わせてもらえ」
ここで話は少しさかのぼる。
ワイトキング戦後、サチ、ボシュ、アイミーの3人は見事その絆により最後の試練に合格。
晴れてそれぞれの職を極めた者という称号を得たのであった。
これで次なる職業へと移る事が可能となった。
ダーマ神殿にて授与式が厳かに行なわれ、また試練設定がないスーパースターリリには、特別に新たな武器が与えられたのだ。
「だけどこんな水晶持ってたら、スターじゃなくて占い師みたーい」
「お、試しに何か占ってみろよ」
「だからっ、占い師じゃないってば?」
「サチの玉より結構大きいね」
「残念ながらこれはポケットには入りません!」
サチが光の玉を取り出して見せる。
「いつ見てもキレイ!増々輝いてない?」
「無造作にそんなとこ入れててよく落ちないな」
「私も思う。宙返りしたり飛ばされたりしてるのにって」
ちなみにサチの技には、空中で何回転もして勢いをつけながら斧を振り下ろす等があり、かなりアクロバティックだ。
「だけど、サチがそれ失くしたらすぐ分かるね」
「オーラが消えるもんねー」
「ま、あんだけやって失くさないんだから、それはもうお前の体の一部になったんだろ」
「持ち物にも心がある。武器や防具と心を通わせる事ができたらいいよね」
皆がサチの言葉にしんみりと頷く。
それぞれの愛用武器を思い浮かべている事が分かる。
「で?アタシはこれかぁ。どうやって心を通わせるか、だわね…」
リリは難しい顔で水晶を覗き込んで見る。
が、何も見えてこないし感じない。
「睨めっこしてても始まらないぜ。そん時が来りゃできるさ。あのハープん時みたいにな」
「あれ、お兄ちゃん最初にリリ姉があれ使った時いなかったよね?」
「あ?…いっけね、口が滑った」
「え?何なに、もしかしてあの時のショー見てくれてたの?ボシュ君!」
「みっ、見てねえ!ちゃんとは…。声は…聞こえたが」
「え~そうだったの?ヤダ~言ってよ~」
リリがボシュに絡みつく。
「離れろっ、何だよ、聞いてて悪いのか?」
「逆逆、嬉しいの!」
そのまま頬にチュっと音を立てて唇が触れる。
「んなっ!どさくさに紛れて何をするっ」
「相変わらずカ~ワイっ」
「あ~ズルい、私もやる。ボシュ君~」
「はあ?サチ、飲みすぎだ!アイミー、グラス取り上げろ」
「イヤでーす。サチが私のお姉さんになるの賛成なので!」
「何の話だ、何の!」
いつもながら賑やかな夜である。
一息ついてサチが話題を変える。
「ねえ皆。次の職業は決めてる?」
「俺はゴッドハンド狙いだから次はパラディンだ」
「私は魔法戦士しかないよね。戦士っていうのが不安でしかないけど」
「今のアイミーなら大丈夫だって。自信持って」
「本当はこのポジションにはリリ姉がいたはずなんだけど!」
「流れだから仕方ないね~。観念しなアイミー!それでサチは?」
不服そうなアイミーとは逆に、リリはどこか嬉しそうだ。
当初は強力な魔力を持っていたリリがアタッカー候補であった。
しかしながら乗り気ではなかった本人。
この流れは果たして偶然か仕組まれたものか。
「私は取りあえずレンジャーになろうかな。魔物マスターと悩んだけど」
「ドラゴーンなだけに?今やサチはドラゴンもありだと思えてしまう自分が怖い」
肩をすくめて一人語りをするボシュを笑いながらリリが言う。
「アタシはむしろドラゴン狙いと思ってたよ。って事はニンジャになるの?」
「忍びってカッコ良くない?姉さまのために影ながら活躍するのっ」
「なぜに影ながらだ?堂々としとけよ」
「案外謙虚なんだね、サチって」
「そうなのかなぁ。何か時々ズレてるんだよねこの子は!」
「ズレてたとしても芯はブレてない。問題ない」
「おお…。何かボシュも成長したねぇ」
自分がどう言われようがどこ吹く風。
サチはどこか遠くを見つめて目を輝かせる。
その先にいるのはもちろん、ドラちん姉さまただ一人である。
「いいなぁ。私はそういう憧れとかないし。何となくで道を決めていいのかな」
「いいんだよ。案外それが合ってたりするし」
「これからまた変わる事もできる。いろいろ試して決めたら?」
「うん、そうだね。やってみないとだよね」
「そうそう!しかしボシュがパラディンか。身を挺して仲間を守るってヤツよ?できる?」
「俺だってそのくらいの心意気はある」
「バトルバカ卒業だもんね~」
「おい。やっぱりバカって言ってるじゃねーか!訂正しろ!」
「まあまあ!また始まっちゃったよ」
「ホント仲いいね」
「そうなのかなぁ」
「だけどボシュ、本当に逞しくなったね」
「日に焼けて黒くなっただけだよ」
「うん、それはある。最初に会った時は白い方だったもんね」
リリと言い合うボシュを眺めながら、サチとアイミーが語る。
「今度のパラディンは、一番乗りでただ突っ込んで行くだけじゃ務まらない。動きも遅くなるし、力も弱くなる。自分よりも仲間優先。ボシュもいろいろ学べると思うよ」
「あの口の悪さもどうにかなるといいんだけど」
「ふふ!でもそれだと、ボシュらしさがなくならない?」
「やだサチったら!お兄ちゃんの口の悪さ、個性だと思ってる?」
「それもアリかなって」
「…。やっぱリリ姉の言う通りズレてるかも…」
はてさてこの先の冒険やいかに…。
この当時はまだ「ドラゴンのさとり」は存在しませんでした。